奥穂〜西穂

コースタイム
9月21日 涸沢 10:00―ザイテングラートー12:30 穂高岳山荘テン場
9月22日 穂高岳山荘 5:00―5:40 奥穂― 6:50 ジャン ―8:10 天狗のコル
―8:50 天狗の頭―9:55 間の岳 ー 12:00 西穂ー12:20 ピラミッドピーク
ー13:00 西穂独標ー14:00 西穂山荘テン場
9月23日 西穂山荘テン場 6:40―8:10 登山口―8:30 上高地BT
天候 | 9月20日晴9月21日雨9月22日晴9月23日雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
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写真
感想
山に興味を抱いた時から、このかっこいい響きと、その独特の山容に惹かれ、
何時かは奥穂〜西穂を縦走したいと思っていました。去年から二度計画していましたが、
全て雨で実現していません。今回やっと天気に恵まれ(というか単独なので天気に合わせて)
念願のジャンの頂きに立つことが出来ました。しかし、
私にとっては体力的に限界に近い厳しいものでした。西穂山荘に着いた時は、
ヘロヘロモヘジで何よりも膝が痛く、もう上高地に下山することは出来ず、
予定を変更して西穂山荘での一泊を余儀なくされました。
ストックを使わず9時間の過酷な岩稜帯の登下降は、予想以上に膝を痛めつけギブアップ寸前でした。
5時に穂高岳山荘のテン場を出発し、ヘッデンを点けて先ずは奥穂を目指します。
すでに数個のランプが岩壁に揺れ動いています。途中で空が白みかけヘッデンを消し、
40分で奥穂に到着。いよいよ奥穂〜西穂、縦走のスタートです。いきなり最初のハイライト、
馬の背に突入します。前半は信州側を進み、中番はリッジの中央を行きます。
ネットでは恐怖のあまり、それこそ馬の背中をまたぐが如く進んだなどの記述も見かけますが、
岳人はそんなことはしません。両手を腰にあてスックと岩鋒に立ち、朝日を背に受け、
颯爽とリッジの真ん中を進む、岳の主人公気取りで、記憶という印画紙にしっかり焼き付けながら進みます。
後半は素直に後ろ向きに、手足は乏しいですが3点確保で下降します。まだ体力が有り余っている時なので、
皆が言うほど怖さは感じません。
引き続き、次のハイライト、ロバの耳が前方に見えます。ここは写真で見ると、
垂直の岩壁に見えます。実際に先行者が岩壁に取り付いているのを目の当たりにすると、
その迫力たるや凄い光景です。しかしネットの記述通りで、いざ取り付いてみると、
手足が豊富で恐怖心も感じること無く難なくクリアー出来ます。
この先の飛騨側へのトラバースも高度感は満点ですが、しっかりしたバンドで、鎖も設置されていて、
たとえ通過中にクシャミに襲われたとしても、落下はしないでしょう。次は今日三番目のハイライト、
憧れのジャンダルムです。前方にトップと最後尾がアンザイレンし、
中に二人がカラビナをザイルに架けたヘルメット装備の4人パーティーがいます。
どうやら直登するようです。彼らが途中まで登る様子を見ていましたが、それほど難しいようには見えません。
しかし上部がどうなっているか、調査もしていないので、ここは素直に信州側の巻き道を進みます。
巻き道と言っても、前半はバンドのトラバースに近く緊張します。
5m程進むとアンダーしかホールドがなく左手のホールドが有りません。
しかたなくクシャミが出ないことを祈りながら岩を手の平で押さえるようにして2、3歩進みます。
ここはバンドが2段になっていて、どうやら上の岩棚が正規のルートらしく、
いくつもペンキマークが見えます。上のバンドに移動できそうな場所で、
移動するとそこはガバのオンパレードでした。トラバースを終え、
傾斜の緩いガレ場を10mほど登ると、呆気なくジャンの頂上です。
前日にデジカメのバッテリーが切れてしまったので、
やむなく操作の良く分からない携帯で山頂に居た登山者に一生の記念の勇姿を撮ってもらいました。
次の天狗のコルへ向かうとすぐ、初めて対向者に会いました。還暦を過ぎたと思われる女性ですが、
まだ対向者に会う時間ではないので、聞けばコルで一泊したそうです。
北鎌でも数箇所テントを貼れる場所がありますが、私が予てから妙案と企んでいる、
稜線一泊のユッタリ縦走です。しかし痩せ尾根の稜線上の露営は雷や天候の急変のリスクを考えると
多分実行には移さないと思います。
天狗の頭で小休止していると、見ず知らずの年配から「○○さん行くよ」の声が。
どうやら手袋に大きく書いた名前を見たようです。渡りに船とばかり、即席三人パーティーの誕生です。
後で聞けば相模原在住の社長とその若い従業員です。
途中何度かルートのアドバイスを受けながら進みます。天狗の頭からの下降は有名な逆層スラブです。
ここはビブラムならフリクションが良く効き、足場は良いですが、手掛かりが全く有りません。
しかし中央に鎖が最下部まで設置されているので、余り鎖に体重をかけないで慎重に下れば楽勝です。
次の間の岳の登りでは社長がコースを間違えてガレ場で四苦八苦しています。
従業員は元に戻れないか聞いています。このやりとりが聞こえ、こちらも緊張します。
しかし戻ること無く、暫くして正規のルートに復帰して一安心。このコースは北鎌と違って、
鎖に加えてペンキマークが随所にあり、ルートファインデイングならぬ、
マークファインディングをしっかりすればいいのですが、ガレ場ではペンキマークが乏しい所があります。
マークした岩が落下するためでしょうか。その後、一度、社長にルートの修正を指摘されましたが、
徐々に二人から遅れ気味になり、いつの間にか即席三人パーティーは元の二人パーティーと単独になってしまいました。
その後、私もこのようなガレ場に遭遇してしまいました。「オーイ」と声をかけても返事がありません。
やむなく踏み跡を頼りに進みます。すると対向者が現れ、これで合っているか尋ねると合っているとの返事にホットします。
眼前に西穂が見えるころから、体力の黄色信号が点き始めます。やっとの思いで西穂に着くと、
社長が待っていてくれました。携帯の電池はいざという時のために、なるべく温存したいので、
社長のカメラで最後の証拠写真を撮ってもらい、厚かましくも、後でメールで送ってくれと頼みます。
彼はメールのやり方が分からないけど、事務員にやらせるといって、快くシャッターを押してくれました。
他にも岩壁を登っている写真もあるから送ってやると言ってくれました。とても楽しみです。
西穂や次の独標の山頂は凄い登山者でひしめき合っています。
ロープウエイを使えば簡単にここまで来られるからでしょう。
しかし西穂からの下りも意外と厳しい道で、まだストックは出せません。
黄色信号から赤信号の点滅に変わるころ、ピラミッドピークに到着です。
社長も先に行ってしまったし、ここで大休止です。どうやらこの後はダブルストックで行けそうです。
しかし時既に遅し。両足の膝が悲鳴を上げ、ついに赤信号が点燈し始めたころ、
やっとのことで西穂山荘に到着です。
山荘に着くと部屋の予約を済ませ、建物から出迎えてくれた社長から握手を求められ、
それに両手でしっかり答える感動の一瞬です。でも社長の顔は真っ赤で、相当出来上がっている様子。
後で来るように勧められましたが、テン場は満杯状態で、先に設営にかかります。
ヘリポートの板場に場所を確保した後は、テントを張る力も残っていません。
1時間ほど板場の隣のテントの御婦人と山の話で盛り上がります。今日は彼女は小屋泊で、
連れの二人がテントで、今はテントキーパーとのこと。よくガイド付きのツアーに参加するようです。
早月尾根はしんどかったとか、白馬山荘より、村営頂上宿舎の方が食事が良いとか、
山小屋でお金を盗まれたとか、私が7月に親不知から栂海新道で道迷いをした事を話すと、
栂海新道なんて面白くも何んともないとか、私の経験した山域のことを話すと全て会話が発展し、
かなりの山行歴の様子。今回はロープウエイで山荘まで来て、まだ何処にも登ってないとのこと。
溝口在住と聞いたので、川崎労山のHPを見て、入会したらどうかとしっかり営業も忘れません。
すっかり話しに熱中していると、社長が手を振ってなにやら叫んでいると、御婦人が知らさてくれます。
聞けば急用が出来て戻らなければならなくなったとのこと。お金も払っているのにと苦笑していました。
社長さんは辛いですねと、ついフォローになっていない慰めの言葉をかけます。
でもかなり飲んでいるでしょうと聞くと、従業員はそんなに飲んでいないから大丈夫と大らかな返事。
これ以上は私に言う権利はないので、メルアドと、川崎労山、と名前を書いたメモを渡して別れました。
この後はどうにか最後の力を振り絞って設営し、未だ明るいうちからテントに潜りこみ、
ぼろ雑巾のように寝入ってしまいました。
あくる日は予報に反して雨。でも登山道を下るだけなので、
ダブルストックで登山口の帝国ホテル近くに下山しました。
帝国ホテル前ではバスに乗れない恐れがあるので、
梓川右岸の遊歩道を足取り軽くバスターミナルまで進みます。
山荘出発から1時間50分でBTに着き、9時20分のバスに乗り込みました。
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