記録ID: 38694
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ハイキング
近畿
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)36・日本海、再び。
2006年10月15日(日) 〜
2006年10月18日(水)
- GPS
- --:--
- 距離
- ---km
- 登り
- ---m
- 下り
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コースタイム
10/15 道の駅ー高月ー飯浦ー近江今津
10/16 近江今津ー熊川宿ー瓜割水ー北川
10/17 北川ー小浜ー勢浜ー加斗
10/18 加斗ー青戸ー和田ー三松海岸
10/16 近江今津ー熊川宿ー瓜割水ー北川
10/17 北川ー小浜ー勢浜ー加斗
10/18 加斗ー青戸ー和田ー三松海岸
過去天気図(気象庁) | 2006年10月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
10/15 道の駅からしばらく湖に沿って歩いていくと、道は小高い小山に遮られて大きく内陸の方に迂回している。この辺は古墳の多いところだそうで、なんちゃら古墳みたいな看板も立っていたりする。ひょっとしたらあの道を遮るようにしてせり出している小山も丸々一つのお墓なのかもしれない。 どうせ遠回りになってしまうので、もう一足延ばして高月まで行ってみる。渡岸寺というところに国宝の十一面観音様がいらっしゃるそうで。前にも言ったが、僕は見仏趣味などというものは持ち合わせていない。でもみうらじゅんか誰かが、琵琶湖周辺にはわりといい仏様が多くいらっしゃるんだよ、なんてことを言っていたやうな気がする。ちょっとひやかしてみてもいいだらう。 畑の中の一本道を高月へと歩いていると、暇を持て余した若者が、改造バイクで暴走してくる。ぶんぶんぶぶぶん、とエンジン音も高らかに古式ゆかしいスタイルで決めている。クワを担いだ野良仕事のばぁさま達が、呆気に取られたやうな顔でそれを見送っている。なんなんだ、このギャップは。まるで“下妻物語”じゃぁないか。頭痛がしてくる。 高月の地味な町の軒下を潜るやうにして細い路地を行くと渡岸寺に着く。一応くゎんこう地であると見えて、こんな狭い路地にも無理やりくゎんこうバスが乱入してくる。みんな国宝のご本尊さまがお目当てなんだと思うよ。ところが、なんとしたことか、その国宝の十一面くゎんのん様がいらっしゃらない。東京に巡業中であるとのこと。あんな東国のど田舎に、お労しいことよ。身代わりに設えられた等身大のパネルが物悲しい姿を雨風に晒していた。境内にしっぽをピンとおったてた猫がピョンピョン飛び跳ねている。人懐っこそうに見えたのでちょっと遊んでやろうかと思ったのだが、どうもこいつの様子が変だ。呼べば近くまで寄ってくるのだが、撫ぜようとするとひっぱたかれる。なんかの間違いかと思ってもう一回手を伸ばしてみる。やはりひっぱたかれる。なんなんだろう。ちょっとオツムが飛んじゃってる感じ。しばらく境内の喫煙所で様子を伺っていたら、やはり別のくゎんこう客の女の子もひっぱたかれていた。 あとはまっつぐな国道をダラダラと進んでいく。週末ということもあってかなりの交通量である。それもバイクのツーリングが多い。一口にバイカーと言っても実に様々なスタイルが存在するものである。アメリカン・ストロングスタイル、峠の走り屋スタイル、正統派ヤンキースタイル、などなど。それぞれのチームにカラーがあってみんなこれ見よがしに走り抜けていく。 ふと、琵琶湖は船で渡ったほうが情緒深いんじゃないか?と思い立って、最寄の飯浦という港に行ってみる。これがまた実に寂しげな船着場で、ホントにこんなとこに船がくるのか?という不安がこみ上げるのを禁じえない。ライダーで賑わうすぐ隣のドライブインとはエライ違いだ。一応時刻表には14時40分の便が記されている。あと三十分くらいだ。そのうちちゃんと券売所のおばちゃんも現れる。竹武島経由で今津港まで行く切符を買う。普通そういう買い方はしないようで、おばちゃんは「なに言ってんの?この子。」というやうな顔をしていた。まあ、車で来てる人なんかは素直に往復するものなのだろう。 竹武島というのは、お寺と神社が渾然一体となって祀られている岩山で出来た島である。ここにはその寺だか神社だかを参拝しに来るもので、それ以外の見所など何もない。というか、あまり勝手にウロついちゃいけないやうな雰囲気である。豊臣秀吉かなんかに縁のある由緒正しい場所なんだとか。そんなこと船に乗るまで一切知らなかった。折角なんで、400円の拝観料を奮発して参拝してみる。別に、感想といっては、「わぁスゴイなぁ」位しかないのであるが、参拝でもしてないと船の時間まで間が持たない。小一時間ほどで再び船に乗って近江今津へ。風が出てきた。デッキにいると波をかぶってしまう。僕はいわゆるデッキ愛好家なので残念だ。琵琶湖は風の強いところなのかもしれない。 昨日温泉に入れなかったので今日はなんとかしたいところだ。今津港の売店のおじさんに聞いたところ近くのホテルの風呂を300円で利用できるらしい。温泉ではないけどまあ、いいか。地元の人しかしらないプチ情報である。はやくも船は最終なのか、船着場の売店は店じまいの支度と見えてせわしない。 湯上り、コンビ二で缶詰と油揚げを買って、寝床を求めて湖畔を彷徨う。港のすぐ脇が静かな砂浜になっているがすぐそこまで民家があって、野宿なんてしてると照れくさい。犬の散歩の人なんかがたくさん来る。 10/16 風はやや強かったものの、月の綺麗な夜だった。朝日も実に綺麗。 直射日光を受けたテントはすぐに灼熱の地獄と化す。Tシャツ一枚になって8時ころ出発。ここから再び日本海へ抜けるべく峠越えにかかる。殺風景な峠道をたどるうちに、冷たい風が吹いてきてさすがにTシャツ一枚では肌寒い。トンネルからサラリと峠を越えると、熊川の宿はもうすぐそこである。なんでもかつては栄えた街道筋の宿場だとかで、ふるい街並みが残っている。道の駅の休憩所でぼんやりしているうちにうたた寝してしまったようだ。掃除に着たおばちゃんの気配で目を覚ます。 「もっと奥の方でゆっくり寝とったらええ。」 などと言ってくれるが、そう長居をしているわけにもゆくまい。旧街道の古い街並みを抜けていくが、くゎんこう用にかなりカスタマイズされている。柴又の参道筋で出汁をとって田舎風のお吸い物にしたらこんな感じになるんじゃなかろうか。 ゆるやかな坂道を下りきって、平坦地を上中を越えて行ったあたりに「瓜割水」という名前の湧水がある。なんでも「あんまり冷たいもんで、冷やしておいた瓜が割れた」とかって言い伝えのある、音に聞こえた名水なんだとか。しかし、水の冷たさの表現で「瓜が割れた」ってのは一体・・・。昔の人の想像力の絶大さには頭の下がる思いだ。国道を逸れて、脇道を山側へ少し登ったところに、やけに手入れされた一角が拓けている。その辺りだけヒンヤリと空気が冷たく感じるのは、湧水のせいなのか、それとも単に日当たりが悪いせいなのか。林の中の道を行くと、瓜割水は立派なしめ縄をかけられた岩の間から懇々と湧いていた。冷たくていと美味し。しかし瓜が割れるかっつーと、割れないと思う。どうやらここは「たくさん汲んでいく人はお金払ってね方式」のようである。温泉なら設備の維持費がかかるのは分かるけど、湧水でしょ。もしや、隣接するパークゴルフ場なんかに金かけてんじゃないのかと不安になってくる。ご神水でビジネスしちゃいかんでしょ。色々と大人の事情があるのかもしれないけど。 トボトボと夕暮れの道を行く。近くにもう一つ音に聞こえた名水があるらしかったが、もおいいや。北側を流れる北川って川の土手の上を歩いていく。あたりは農地の広がる閑散とした風景だ。人通りも少なく、寝るにはちょうどいい。しかし水が汲めるかな。 橋の近くの河原で野営。日暮れ後、怪しげな人影が。ヘッドラムプが闇の中で蠢いている。魚取りかなんかだろうか。 10/17 6時頃には目が覚めたが、今朝はどうしたわけかさっぱり起き出そうという気が起きない。ま、朝が遅いってのは今日に始まったことではないがな。川べりからは土手を挟んで向こう側にわずかになだらかな丘陵が続いているのが見えるだけで、あとはひたすらに青い空が広がっているばかりだ。寝転がったままテントの入り口に切り抜かれた風景を見ていると、遥かモンゴルあたりの草原に寝転がっているやうな気分になってくる。別にモンゴルの草原がどういう所かということについて格段の知識がある訳じゃないのだけれど、何となく、気分の上でって話である。現実にはただのちっぽけな河原の片隅なので。 昨日に引き続いてご機嫌の空模様。徐々にテント内の気温が上がってきて悶絶しはじめる。ゴロゴロしてるのも楽じゃない。こう云う時は悶絶してないで、さっさと荷物をまとめて歩き始めるに限る。 川沿いの道をひたすら歩いていく。10月中旬にしてはありえない陽気。Tシャツでも汗ばむほどだ。河口と港との境も判然としないまま、いつの間にか海辺に出ている。行く手に山が見えているので海はまだ先なのかと思っていたが、その小高い山は海の向こうにあるのである。いつの間にか入り組んだ若狭の海岸線に足を踏み入れていたのだ。僕は峠を越えて海へ抜けるときには胸いっぱいに海からの風を受けて爽快な気分で雄叫びを上げたりするのを常としているのだが、これでは拍子抜けだ。慌てて両手を広げて「海からの風じゃ〜」など高らかに宣ってみるが、今更盛り上がらない。 港をぐるりと巡って、冴えない裏道を選んで歩いているうちに、いつの間にか小浜の町の中心を素通りしてしまったようだ。お米とか地図とか色々買いたい物があったのだが、次の町までお預けだな。そのままなし崩し的に国道に出る。この国道がまた、質の悪い道で、なんとしても歩きにくい。狭い上にトラックが多い。トンネルにも歩道がなく、大変危険な仕様になっている。久々に疾翔大力様の御名に縋ってしまった。 青井というところに出た所で食堂に入ってランチ。駐車場にはトラックが何台か止まっている。やけに塩っぱくてアクにまみれた肉丼を食す。この店に集っている、運ちゃん達はみんなビールのコップを傾けている。さしずめベトちゃんとかシュバちゃんのことに思いを巡らせているのだろう。今のご時世だいぜうぶなのか?仮眠してから出発するのかもしれないけど、あんなのが無責任にトラック転がしてるのかと思うと徒歩旅行などといふものも少々不安になってくる。 もう一つ塩っぱいトンネルを抜けて、勢浜に出た所から海岸沿いに続く旧国道を行くことにする。かなりの遠回りだが、国道を歩くよりはましだろう。久々に日本海岸に出てきたことだし、ゆっくり海でも見ながら歩いたらよろしかろ。途中、初老の紳士に出会う。その方も歩くのが趣味だとかで、この辺の路地裏事情などを教えてもらう。とはいえ小生、一般的な市民とは行動様式がかけ離れているのであまり参考にならなかったりもするのだが。何にしても徒歩旅行なんてものに理解のあるひとに出会うとほっとする。 その紳士の言う通り、海沿いを加斗という所まで行くとおよろすい感じの四阿がある。今夜の泊まりはここがよろしかろ。しばしぼんやりしていると、先程の紳士が再び現れて、ビールなど差し入れてくれる。紳士持参の1/2.5万の地形図を見ながらあれこれ話す。 「この辺の国道は狭くて、歩くには適してませんよね?」 「それではこうしたら如何でせう?」 などと紳士も我が事のやうに楽しげである。 「僕は出来たら海沿いの、この辺を抜けて行こうかと思ってるんですけど・・・。」 「いやいや、それならばむしろこちらを行った方が?」 やっぱ地形図は楽しいよな。どんな裏道もばっちり載ってる。 日暮れ過ぎから海辺に降りてささやかに焚き火などして遊ぶ。狭くてお世辞にも綺麗とは言えない石コロの浜である。 10/18 四阿の下は、寝てみるとなんとなく落ち着かなかった。湿っぽいせいだろうか?風水的なもんが関係してるんじゃないかと想像しているのだが、確かなところは“ほめおぱす”に聞いてみないと分からない。聞いても教えてくれないかも知れないけど。 それはそうと9時ころ出発。朝食に佐野実プロデュースとかいういかがわしいインスタント・ラーメンを作って朝食としたが、これが非常に不味い。朝っぱらから不愉快だ。歩きにくい国道を青戸まで我慢して歩いて、「青戸の大橋」を渡る。この橋は南海上へ大きく突き出した大島半島へ渡るためのもので、かなり立派な橋である。別に大島半島に人口が密集しているという訳でもないので、ほとんど通る車とてない。まっつぐに続くさはやかな橋である。ようやく気分が晴れてくる。 橋を渡ってしまえばひたすら物静かな道である。左手に青戸入江を見やりつつ歩いていく。琵琶湖なんかよりも余程小さいがこれも海である。実に水が綺麗だ。 和田の港を際どく右手にやり過ごして、海水浴場に出る。正面にはひょっこりと葉積島、左に目を移せば海の向こうに青葉山が霞んで見える。実に素敵なところである。日本海にしては珍しくいい波が立つと見えて、サーファーが結構集まって来ている。 城山公園まで海沿いの道を気分良く歩く。ここいらの海岸線はかなり綺麗に整備されている。通りすがりのおっちゃんの話だと、原発があるおかげで町の財政は潤いっぱなしなんだとか。いくらでも予算とって来れるらしい。 一度国道沿いに出て買い物をせんとする。しかし漠然たる町が続いているばかりで、何処に行けば買い物が出来るのか判然としない。そろそろ地図が「中部」から「中国・四国」に移るので、新しい地図を買わねばならないのだが。なんとか晩のおかずだけ買って、先へ進む。まあ、この先まだ舞鶴の町があるしな。 再び海沿いに戻って三松まで行くと、広々とした砂浜が続いている。イノセントの権化のやうなところである。まだ3時頃と時間は早いが、今夜はここで野営とする。この先どんな展開が待ち受けているのか分からないわけだし、こんな素敵な場所を素通りしてしまう手はない。 夕方になってどうしてもお米を食べたくなって、国道まで行ってみる。コンビニに2kgパックのあきたこまちがあったので購入。近くにブックストアもあって、地図も手に入れた。 久々に焚き火で飯を炊く。真っ赤に燃える炭火で文化鍋で炊いた米ぐらい美味いものもないな。米粒がピンピンに立ってる。おかずはホルモン味噌煮。飯が進むんだ、これが。しこたま食って大満足。後はひたすら焚き火の火を眺めてぼんやり。こんなのが野宿の醍醐味なんでせうね。 |
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竹生島経由で渡るっつうのは良いと思うが、長浜からでなく飯浦から乗船するのが石崎の間の抜けたとこだとおもうんだ、俺は。瓜割水ぢゃあない、瓜割の滝だよ、全く。青葉山はあの開聞岳様相の山か?
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