記録ID: 45465
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ハイキング
九州・沖縄
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)51・長崎へ。
2006年12月06日(水) 〜
2006年12月09日(土)


- GPS
- 80:00
- 距離
- 72.1km
- 登り
- 1,147m
- 下り
- 1,176m
コースタイム
12/6 引揚げ公園ー大串ー大瀬戸ー雪浦
12/7 雪浦(停滞)
12/8 雪浦ー新長崎港
12/9 新長崎港ー長崎
12/7 雪浦(停滞)
12/8 雪浦ー新長崎港
12/9 新長崎港ー長崎
過去天気図(気象庁) | 2006年12月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
12/6 昨夜遅かったので今朝は寝坊。まあ、今日もナイトハイクすればいいでしょ。ということでのんびり朝食。公園内の看板によるとハウステンボスの前身は「引揚げ援助局」というものであったとのこと。これは第二次大戦後、海外に出兵しておられた方々が日本へ帰国するための施設だったそうで。この公園はそれを記念するものなのだ。例の怪しいオブジェは「お帰りなさい」という意味合いを込めて両手を広げているのかもしれない。そうじゃないのかもしれない。いずれにせよ、ハウステンボスで遊ぶ人達の多くにとっては、そんなの知ったこっちゃねーだろうな。 11時頃出発。西海大橋を渡って西彼杵半島へ。橋が掛かってることから分かるように、針尾と西海は地続きではない。なんつー地形なんだらうね。しばらく大村湾を見ながら東海岸を歩いてみる。内海とあって何とも覇気のない景色だ。西海岸も見てみようと思い、大串から峠を越えて大瀬戸を目指すことにする。と、その途端におまわりに呼び止められた。まったくうるせーこった。しかしおまわりっつーのは何かね、家出人と徒歩旅行者の区別も付かんのかね。徒歩旅行者っつーカテゴリーは通じないのか。歩いて移動しちゃいけないってか。大きな荷物を背負って歩いてちゃ迷惑だってか? 「何処へ向かいますか?」 などと聴いてくるので、 「取り敢えず長崎です。」 と答えると、 「それじゃ方向が違うようですが?」 などとトンチンカンなことを言ってくる始末。別に俺は近道がしたいわけじゃないのだよ。何処に向かって歩こうが、違法じゃないんでしょ? 峠を越える頃、日が暮れる。予定通り、ナイトハイクの予感。大瀬戸は海岸に向かって急な下り坂である。明るいうちに歩けば、眺めが良かったであろう。日が沈んでしまえば、あるのは唯、漆黒の闇ばかり。夜景すらない。それどころか、食料を買える店もない。困ったな。坂の上にはコンビニとかあったけど海沿いまで降りてみると民家もまばら。今更戻るのもいとだるし。地図には「ショッピングセンター」の記載もあったが、すでに閉まっている。真っ暗といってもまだ7時だよ?かろうじて開いていた駄菓子屋さんみたいなところで、即席めんとシーチキンをゲット。侘しい夕食になりそうな予感。 大瀬戸には砂浜がなく野営には不向きなので、海沿いの道をもう少し進んでみる。夜の海は静かだが、不気味に何事か囁きあっているかのやうだ。雪浦には砂浜があるが、傾斜が急で寝にくそうだ。近くにパーキングがあったので、広場の片隅で野営。 12/7 予想外の雨。たしか佐世保で見た週間予報では週末まで保ちそうだったのだが。週間予報なんてアテにならんな。不覚にもコンクリートの上にテントを張ってしまった。水捌けが悪いのでシュラフまで濡れてしまった。砂地にテントを移動して停滞モードに突入。最近では、雨の日は休みと約束が決まっている。 雪浦へ買い物に。昨夜の大瀬戸の有様を思うとちょっと不安だったが、さひわひAコープがあった。大量の鳥皮を一パック100円で購入。他にネギとキャベツを買って帰る。 買ってきた食材は蒸し焼き風の鍋にする。こいつを肴に昼間から一杯調子で、佐世保で買ったつげ義春の『貧困旅行記』など読み耽る。おなじ旅でも色んな旅があるものだ。テント担いで、各地を転々と野宿して歩くなんてのは、貧乏臭くはあるが、実は超モダンな旅の姿なのかも知れない。おまわりさんにチクチクいぢめられたりするのは、時代が付いてきてないだけなのかもしれない。単に世間とずれちゃってるだけなのかもしれない。しかし少なくとも、居住空間と調理道具をひと纏めにして担いで歩ける、なんていうのは現代の技術のなせる業であらう。野宿だって、狼や盗賊が真顔でその辺をウロついていた時代には、今よりよっぽど覚悟がいったに違いない。おまわりなんて幾ら来たって鬱陶しいだけで、命までは盗られやしねえからな。 12/8 低気圧の通過で気温が大分上がる。5℃くらい違うんじゃないのか?雨もすっかり上がり、小春日和とはまさにこのこと。昨日ぐっすり眠ったので目覚めもすっきり。8時頃出発。 ギンギラと輝く海に小島がポコポコと浮いているのが見える。池島あたりだろうか?何か意味ありげな佇まいである。まるでチェスのコマを並べたやうな・・・。あの配置自体が「はい、王手飛車取りです」みたいなメッセージを表現しているかのやうにみえる。というわけで、あれらの小群島を「チェックメイト諸島」と呼ぶことにした。ナニ、イケてない?じゃ、却下。(あとで知ったが、池島は日本最後の炭鉱があったんだとか。知っていたら見に行ったものを。) 道端でみかんが売られている。ここ九州は柑橘類の豊富な土地柄である。10個くらい入って一袋100円。購入してみる。安いけど美味いのよ。でも量が多すぎるのよ、重いのよ。モリモリと立て続けの三個ほど頬張りながら歩く。このあたり、西彼杵半島の西海岸は「外海(そとめ)」と呼ばれているようだ。地図で見ても分からないが、起伏が激しくて、険しい地形が続く。入江から入江へ、いちいちアップダウンがあって煩わしい。 お昼頃「遠藤周作文学館」に到着。ラジヲで得た知識から『沈黙』という作品を読んだだけのにわか仕込みだが、キリシタン文化ってものにちょっと興味がある。というか、キリスト教文化って面白いと思う。言ってることとやってることが激しく異なってるとことか。原始キリスト教の話なんかも、わりと好きだ。別に深く研究したことはないけど。キリシタンと縁の深い土地柄でもあるし、『沈黙』に描かれている時代の背景なんかが分かるといいなぁ、などと思いつつ文学館訪問。結果的には、その辺の情報に関しては見るべきものはなかった。遠藤周作の創作活動については結構詳しくなれる。ま、「遠藤周作記念館」だからね、当たり前か。すぐ傍には道の駅があってそちらはかなり繁盛している。それにひきかえ、こちらは閑散としちゃってるな。もう少し展示を工夫しないとダメだな。綺麗な施設なので勿体ない。ベンチに座ってみかんなど頬張ってみる。目の前にはキリリと引き締まった海。チェックメイト諸島が遠くにぼんやり見えている。静かで良い、という考え方もある。ひとしきりまったりして、3時頃ようやく出発。今日は長崎郊外までのつもりだから、急ぐことはあるまい。 新長崎漁港という所で野営。テント設営後、ポテチ齧りながらビールなんて飲んでいると、タグボートが賑やかに入港して来る。なんかクレーンを載せた巨大な浮き台みたやうなものを引っ張っている。夕暮れ時である。ライトがきれーだなぁ、なんて思っていると、そいつがなんとテントのすぐ傍に着岸しやがった。ナニしてんだよ?ビックリしちゃうなぁ。変なテントがあるんで向こうもビックリしたみたいだ。船から出てきたおっちゃんがキョトンとしている。 「釣りですか?」 「いえ、キャンプです。」 「・・・?」 おっちゃん苦笑していた。こんな所でキャンプ?てな顔。確かに何でこんなとこで寝てんだっつー話だ。 晩飯は油揚げと納豆の味噌煮込みうどん。二丈町の砂浜でチリペーストを作ってからというもの、ひたすら辛いものばかり食べ続けている。ピリ辛なんてものじゃない、激辛だ。完全にカプサイシン・ジャンキーだな。 夜更けにおもむろにラッパを吹いてみる。なんともいい感じだ。そのままラジヲの深夜放送など聴きつつ夜更かし。 12/9 昨夜やってきた例のクレーンが早朝から作業を開始。否が応でも目覚めるより他ない。超特大の目覚ましだ。そんなに腹は減ってないが(昨夜うどん二玉平らげた)、念のため朝食にインスタントラーメンを作ってみる。途中でお腹が空いたりしたら寂しいからね。そうこうするうちに雨。何なのよ。確かに予報は曇り時々雨だけど、のっけから来るか?ラーメンなんて作ってないでさっさとパッキングすれば良かった。涙のびしょ濡れテントとなりにけり。泣きながらテントを撤収していると、現場監督風の人がやって来て言う。 「何か釣れたとですか?」 「いや、釣りじゃないんで・・・。」 じゃあ何だっつー話だけど、やはりキャンプじゃ通用しなかったやうだ。きっとツーリズムとは無縁に見えるんだろうね。俺もそれについては反論はない。超モダンなスタイルだからね。一口では説明し難い。こんな雨降りの時には特にそうだ。「札幌から歩いて来た」なんてことを言うと、ますます混乱を招くことになりかねない。こういうときは笑って誤魔化しておくに限る。あははは。 今日は長崎市街まで。15kmほどの移動である。長崎の町には密かに期待している。たしか「夏解」という映画の舞台だったと思う。坂の町はいいよ。 コンビニで麦チョコ買ってポリポリ、ポロポロやりながら行く。最近は何処ででも麦チョコが100円で買えるようになってうれしい。トンネルをくぐって峠を越えると、いよいよ長崎市街に突入である。坂を下ってゆくと、鉄道や市電が合流して来る。沿道が次第に活気づいてくる。楽しげな商店街なども見えるが、明日にでもゆっくり見物することにして、今日の所は取り敢えず長崎駅へ急ぐ。天主堂も平和公園も見てみぬフリして、一息で長崎駅まで。さて、さっさと寝床を決めてしまおう。 サウナもネットカフェも心が休まらないので、何処かに安い宿をとってみたいものだ。海員会館が安いという話を聞いたことがあったので電話してみる。誰も出ない。週末だからか?仕方なく電話帳を繰ってビジネスホテルなどを物色していると、素泊まり3150円の宿を発見。上出来でせう。早速電話してみると、巧いこと部屋が取れた。場所は市電の「思案橋」という駅で下車すればすぐ傍とのこと。長崎の市電は一律100円という気前のよさ。利用客が多く、元気に運行している。札幌も見習えと言いたい。それにしても思案橋とはなんとも風流な名前だこと。その語感が醸し出す風情たるや、都電荒川線の「面影橋」に匹敵すると言っていいであらう。 実際、着いてみると、そこはちょっと色っぽい感じの盛り場である。若造がたむろしてる下品な繁華街とは一味違う趣き。ムード歌謡が似合いそう。「雨の思案橋」とか「思案橋エレジー」とかって曲がありそう。おっさんと中年増がデュエットしてそう。などと色々と妄想が膨らんで来て、何やら股間がムズムズしてくる。散財しちゃダメだぞー、などと自分を諫めつつ、しばらく辺りをうろ付いていると件の宿を無事発見。ちょっと狭い路地を入った風流な一角にある古い商人宿である。つげ義春など読んでいたこともあって、妙に気分が盛り上がる。まだ部屋の準備が出来てないらしく、受付でおばちゃんと話をしたりして暇を潰す。おばちゃんは 「長崎は人口も4〜50万しかいないし、寂しいとこだよぉ。」 なんて謙遜していたが、どうしてどうして、活気があって楽しげな町である。こんな雨降りにも関わらず好印象だ。 部屋に荷物を置いて、取り敢えず洗濯に出る。コインランドリーに向かう道すがら、ちょっといい感じの餃子屋さんを見付けてフラフラと入ってしまう。一口餃子に瓶ビールで軽く一杯。僕は何故か餃子を相手にする時は、ジョッキより瓶ビールを手酌でやるのが好きだったりする。昼飯抜いて来たし、必要以上にうめぇなあ。薬味に柚子胡椒が置いてあるあたりに長崎を感じた。洗濯物を一杯抱えていたせいか旅人だって事がすぐバレて、店のオヤジが色々話しかけて来る。長崎の人ってなんか気さくな印象。たまたまかもしれないけど。 ここで道を訊いておいて、改めてコインランドリィへ。教えられた所へ行ってみると、小奇麗な感じの店である。最新式だが、少々お高い。僕としてはもう少し場末風なところが良かったんだが、まあいいか。例によって、缶コーヒーなど啜りつつ日記を付けてみる。僕は何故かコインランドリィで日記を付けるのが好きなのだ。これを「コインランドリィ趣味」と呼んでいる。 洗濯物が済んでしまうと、おもむろに町を散策してみる。宿に戻るのが面倒だったので、大量の洗濯物を小脇に抱えて歩く。回転寿司屋に入ってみる。いと不味し。ビールで流し込んで誤魔化しておく。帰り道、お土産にたこ焼きを買って帰る。 宿の受付は既に閉まっていて鍵が掛っている。宿の一階が居酒屋になっているので、泊まり客はそこから厨房の脇を際どく抜けて宿に入る、という仕組みになっている。なんとも妙な宿だ。泊まり客は殆どいないらしく、客室は何処もシンと静まり返っている。何とも侘しい限りだ。部屋には小さいながらタイル張りの風呂が付いている。湯を張って浸かってみる。こんな侘しい湯船に身を浸していると、「俺は此処に居るな」という意識が妙に鮮明になってくるやうだ。やがて何とも言えぬサウダージが襲って来る。週末とあって、街は何処か落ち着きなく、夜更けまで騒がしい。窓の下でも何事か罵り合う声が聞こえて来る。いとわびし。 |
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