【小豆島】天使の散歩道


- GPS
- 04:20
- 距離
- 16.6km
- 登り
- 261m
- 下り
- 246m
コースタイム
天候 | 当日は☂️のち☁️ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
船 飛行機
|
その他周辺情報 | かつや旅館 https://www.acomo.jp/ |
写真
「あんたがつっついたことで今夜邪悪ななにかが殻を破って出てくるんや。それで島の人たちを恐怖のどん底に突き落とすんや」と同行人。
作ったアーティストに全力で謝れ!😫
感想
ひさしぶりの羽田。最後に利用したのはコロナ前だった。
ラウンジのちょっと薄いカフェラテを口に運びながら、窓の外を飽かず眺める。機体の周りを、さまざまな形の車が忙しなく動いている。名前はわからないが、コンテナをいくつも連結してくねくねと走る車がお気に入りで、見ているとつい口元が綻んでくる。
乗り物が好きで、ミニカーを大事にしていた子供の頃と同じ気持ちを今も持っていることに気付く。そういえば女の子らしい遊びは一切しなかった。
乗り込んだ機体はぐんぐん高度を上げていく。粉糖をかけたような山々が見える。その上に青空が広がる。今回の目的地、小豆島の予報は雨。この青空を持っていけたならいいのに。
まぁそんなことは叶わないけれど、今回もきっと楽しい旅になるだろう。
高松空港に降り立つ。仕事で先に高松入りしている同行人とはホテルで待ち合わせだ。リムジンバスから見える緑は、東京のそれより濃い。
部屋にスーツケースを置いて、早い昼食を取りに外へ出る。うどん県を自認している県だけに、商店街の至るところでうどん屋の看板を見かける。
入り口に活けられた牡丹桜が綺麗な一軒に入ることにする。
空腹を満たし、店を出るのと入れ替わりで多くの客が入ってきた。平日だけに、皆仕事の昼休みのようだ。同行人が読む日経を探して商店街を長々と歩く。四軒目のコンビニでようやく見つける。彼は読む本こそKindleに置き換わったけれど、新聞は今でも紙をばさばさとやりたいらしい。
喫茶店に入ろうか、といくつか当たってみるも、どこも満席の上に煙が立ち込めている。こちらでは、お昼にさくっとうどんを食べてその後珈琲を飲みながら一服し仕事に戻るのが作法なのかもしれない。
店に入ることは諦めてスタバでテイクアウトする。
同行人は仕事で外出。ひとりホテルの温泉でさっぱりすると、あれほど飲んだ珈琲の効き目も切れたのか、目蓋が重たくなってきた。
スマホの着信で目が覚める。「やきとり食べたい。傘持ってホテルの外出てきて」同行人、会食してきたんじゃなかったのか。すっぴんで寝ぼけ眼をこすりながら夜の高松の街に出る。
地元の人で盛り上がるやきとり屋の暖簾をくぐる。おじさんたちが上機嫌でコールを叫んでいる。お酒の席でコールを聞くのは学生の時ぶりだ。「僕、今日誕生日なんすよ」隣のカウンターの男性が嬉しそうに店主から贈られたシャンパンを開けている。卓上の串入れがいっぱいになっていく。
あまり年の違わなさそうな店主が煙草をふかし、飲みながらマカロニサラダをサービスしてくれた「作りすぎちゃったんで」
部屋に戻りやきとりの匂いが染みついた髪を洗い直して、遠い街に来たな、と思いながら眠りに就いた。
* * *
翌朝は雨。小豆島に渡る日だが、計画していた寒霞渓・星ヶ城山は諦めることにする。
急ぐ理由がなくなっちゃったね、とぎりぎりにホテルをチェックアウトし、昨日と同じうどん屋に入る。
バスで高松築港に向かい、土庄行きの高速艇に乗る。天気があまり良くないとあって、船は上下左右に揺れる。船酔いしたようだ。いつでも饒舌な同行人が話しかけてくるが、生返事しかできない。土庄港に着き、ようやく気持ち悪さから解放される。
バスを乗り継ぎ、小部不動尊登山口で下車。今日の宿「かつや旅館」はあっちかな、と適当に歩き出す。すると乗ってきたバスが私たちの前で止まり、中から運転手さんが「旅館はあっち、そっちは体育館ですよ」と教えてくれる。
近辺にはかつや以外にも二軒ほど宿がある。「なんで俺らがかつや行くってわかったんやろ?」‥さぁ?
港からバス二台を乗り継いでようやく辿り着ける宿。目の前に広がる綺麗な砂浜以外には、なにもない。部屋付きのお手洗いは和式。小豆島にはもっとアクセスの良い小綺麗なリゾートホテルがあるのだけど、なぜわざわさここなのか? それは同行人にとって思い入れのある宿だから。
「国民宿舎」と書かれた看板と、入り口に三個しかないスリッパ(三足、ではない。三個である)を眺める私を同行人がにやにやと見やる。「俺がむかし来た時も既に古めかしかったんや」彼は片足だけスリッパを履いて、部屋にスーツケースを置きに行った。
部屋の窓からは、ソテツが葉をそよがせる白い砂浜と、小さな島々が浮かぶ海が見える。歳月を感じさせる茶色い砂壁が、外に広がる景色をかえって引き立てているようだ。
雨は上がったものの、時計は12時を回っている。山に向かうには遅すぎる。夕飯に間に合うよう帰って来られるコースで、程よい運動量のところ‥土庄の「天使の散歩道」まで歩くことにする。
天使の散歩道=エンジェル・ロードとは、干潮時に現れる砂の道のこと。その道が島々をつないでいく。修道院でもあれば、日本のモン・サン=ミシェルと言えたかも。
瀬戸内の小島を眺めながら、16km強の道を歩く。左手には山々が聳えて、それを自然のまま生い茂る植物が勢いをもって覆っている。関東近辺の里山とは明らかに異なる景色だ。うぐいすが鳴き交わす声も心なしか賑やかしい。
ところどころに霊場への道標が立っている。いつかお遍路もしてみたい。
瀬戸内の島らしく、アーティスティックなオブジェもあった。舗装路だが、飽きず歩き続けることができた。
曇り空の夕刻だったが、天使の散歩道にはカップルが多く訪れていた。なんでも砂の道を大切な人と手を繋いで歩くと幸せになれるそうだ。アウェイ感を抱きながら歩いていると、同行人が一言「俺は恋愛とか超越してるんや」‥ちょっとなに言ってるかわからない。
帰りのバスを待っていたら、白いミニバンが私たちの前に止まった。運転席からおじさんが「どちらまで行くんですか?」と尋ねてくる。不思議に思いながら「小部の、かつや旅館です」と答えると「方向違うから、ごめんなさいね」と走り去っていった。
今のはなんだったんだろうね?顔を見合わせて10分ばかり経ったところで、今度は反対車線から「大変ですね」と言いながらこちらに渡ってくる人がいる。先ほどのおじさんだ。
「小部って、たしか路線が廃止してバス乗り継がないといけなかったと思います‥途中まででも乗っていったら」気になってわざわざ戻ってきてくれたようだ。
たしかに、土庄港からはバスを二本乗り継ぐ必要があった。しかしGoogleによるとこのバス停(国際ホテル前)からは一本で帰ることができる。そのことをおじさんに伝えると「それならよかった」手を振りながら車に乗り込み、来た道を引き返して行った。
おじさんの車に向かって大きく手を振りながら、「奇特な人だったね」と話す。なぜ見ず知らずの私たちにそこまで親切にしてくれようとしたんだろう? ようやくやってきたバスに乗り込んでからも、心の中でおじさんに「気にかけてくださってありがとうございます」と繰り返した。
夕食までの間、宿の周りを散策し同行人の思い出話を聞く。ある数日間の出来事がその人の人格形成に大きな影響を及ぼすものだな、と思う。
「ごはんは抜群にうまいんや」前もって聞かされていたが、本当に美味しかった。温泉宿的な豪華さに加え、どことなく人の温かさを感じる夕食だった。
彼がなぜここに私を連れてきてくれたのかわかったような気持ちで、延べられた布団に横になった。
* * *
朝、カーテンを開けると窓の外に絵葉書のような光景が広がった。綺麗な青空、南国に来たかのようだ。
ゆっくり朝食を取り、帰り方を考える。飛行機で帰るのは気が進まなかった。格段に早く東京に着くが、それでは気持ちの切替がうまくいかない。距離を時間で感じたかった。岡山を経由してのぞみで帰京することにする。
来た時とは異なる港、大部までスーツケースを引いて歩く。がらがらという音がうぐいすたちに耳障りじゃないかな、と気にかかる。
帰る日に好天だと、名残惜しさに拍車がかかる。すれ違う地元の人たちと「こんにちは」と挨拶を交わす。
大部港に着く。フェリーが出るまでに小一時間ある。「待合室あるから使ってください」港湾のおじさんに促されて建物の二階に上がる。
思いがけずWi-Fiが飛んでいたので、同行人はパソコンを広げて仕事。私はこのレコを書くことにした。
ふと同行人がポケットに手を入れたところで、顔色を変えた。取り出したのはかつや旅館の部屋の鍵。フェリーはあと15分ほどで来てしまう。返却のため宿まで歩いて戻るには遅すぎる。
彼があわてて電話をし、頭を下げながら返却の仕方について尋ねると「券売所の人に預けておいてください」とのこと。
私は付箋にお詫びとお礼の旨を書き鍵に貼り付ける。受付の人に預け、胸を撫で下ろした。
車を載せられるだけあって、行きよりも格段に大きく豪華なフェリーに乗り、岡山の日生港に向かう。
港が近づくと、たくさんの牡蠣筏が浮かんでいるのが見える。
駅そばの牡蠣料理を売りにしたお店で昼食にする。
名物の「カキオコ」牡蠣がごろごろと入ったお好み焼きだ。口の中が海のミルクでいっぱいになる。
日生駅から岡山に向かい、さらに駅のカフェで時間を潰してのぞみに乗った。
小豆島が、かつや旅館がどんどん遠くなっていった。
* * *
‥山行でなく参考にならないのに、長い長いレコになりました。にも関わらずここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
次回はしっかり「山登り」したいと思います。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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お天気はイマイチで残念でしたが思い出深い旅になりましたね😊
都会では「え?」と思うような暖かいご厚意も小さな島ならではですよね
白いミニバンのおじさんに心の中で感謝された reiさん、とっても素敵です✨✨✨
帰る日に限って晴れる事って私も体験した事があります・・・
雨で目的が達成できなかった事と、その土地への愛着が相重なって帰るのが嫌になりました😅
小豆島、私もいつか行ってみたいな
南国チックな風景とレトロな街並みを見たいです
海も良い色してますね
reiさんのレコ拝見させてもらっている間は私も小豆島にいるような感じでしたよ😁
これからもいっぱい歩いてくださいね😊
レコ楽しみにしてます
こんにちは🍙
長〜い感想の部分も読んでくださったのですね、ありがとうございます☺️嬉しいです!
四国はお遍路さんへのお接待文化があるので、ミニバンのおじさんもその感覚でお声がけくださったのかな‥と思ってます🤔いただいた優しさを、私も他の人に返していけたらいいなぁ。素敵なんて、照れますよ〜🌷
小豆島、初日はいまひとつの空模様でしたが、翌日は綺麗に晴れて、それに伴い海の色も違った表情を見せてくれました🌊
瀬戸内海の島は二つ目ですが、以前訪れた淡路島以上にのどかなところでしたよ😌
レコは、どなたかのお役に立てば、という気持ちと、自分たちの追体験で書いてます‥✏️
小豆島の雰囲気が伝わったなら、とてもとても嬉しいです✨✨
これからも、たくさん歩きますね😆
いつも私のページに訪問していただきありがとうございます
おお、ここに登場するカキオコはまさしく私がいただいたものそのもの!や いやぁ、おいしかったですねえ。カキフライもおいしそう。寒霞渓行けなかったようですけど、お二人でいい旅なされましたですね。エンジェルトンボロの干も満も見れたのは、これなんというかお二人にとって寿あるいは吉運の予兆。私が行ったときは時刻がまるで大外れで何もナシ・・タクシーの運転手さんにいただいた「時刻表」を見てがくぜんとしました。ある意味小豆島では山頂よりトンボロのほうが達成困難で大事ですわ
過去レコご覧いただき感謝です!
本当に、カキオコ美味しかったですよねぇ。これでもか、というくらい牡蠣がごろごろ入っていて‥今ランチで4個だけの牡蠣フライをいただきながらしみじみ思い出しております🦪笑
トンボロ、海だけに引いたり満ちたり忙しいわ〜とあの時は思ったのですが、よいタイミングだったのですね💡 トンボロの吉祥かは?ですが、たしかに特別思い出深い旅になりました☺️
山行頻度は高くないですが、ちょこちょこと遠征しておりますので、Happa64さんのレコを参考にさせていただきますね🌱
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