蝶ヶ岳~High and Low


- GPS
- 12:27
- 距離
- 10.9km
- 登り
- 1,473m
- 下り
- 1,387m
コースタイム
- 山行
- 5:45
- 休憩
- 6:11
- 合計
- 11:56
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
途中から残雪あり 雪は緩い |
予約できる山小屋 |
蝶ヶ岳ヒュッテ
|
写真
感想
この記録は2023年5月のものです。
非公開のまま放置していましたが、諸々の経過も加えてリリースします。
1日目『雄大』
GWの晴れ間を選んで残雪期テント泊。
残雪があるのは高地なのでテント装備は積雪期とあまり変わらず、20キロ程度はあり体力的に厳しいので5,6時間でテン泊地に着ける山を選択。
5時ごろ三股登山口第1駐車場に到着。
前日までのレポで満車覚悟だったが、直前で降りてくる黒のワンボックスとすれ違い着いてみたら運よくトイレ前の広めの良い場所がひと枠が空いていた。
控えめに半分くらい使って停めていたら、しばらくしてきた車が同じように停められた。
徹夜で走ったので仮眠しようと思っていたが、眠気など吹っ飛んでそそくさと出発。
久しぶりの大荷物を背負っての山行なのでスローペース。
日帰りの方が多いので、後続に道を譲りながらすすむ。
事前情報通り、まめうち平あたりから積雪。
チェーン装着。
10時ころから雪が緩んできたのでアイゼンに換装。
このあたりからは、疲労が表れてくる自称『4時間の壁』に差し掛かり森林限界から先は急斜面の雪面の直登と日差しの強さも相まって休み休み登る。
そして登り切った瞬間、目に飛び込んできたのは雲一つない青空に突き刺さるような”槍ヶ岳”、そして穂高連邦から続く表銀座の稜線。
“北アルプスの展望台”の噂に違わず、『雄大』で大迫力のすばらしい眺め。
こうした素晴らしい景色が登山の最高のご褒美ですよね。
まずはテントを張って、あとは360度のパノラマを堪能しながら運動後の一杯。
サイコーですね。
GWなのでテント場はコミコミ。
そのせいか夜は少し騒がしかったかな。
まぁ、仕方がない。
2日目『生還』
などと書くと、蝶ヶ岳で何を大げさなと思うでしょう。
でもやはりこうやって記録をアップできることは大事なことなんだと思います。
理由は 『滑落』 してしまったから。
あとで思うと、初めて登った山で残雪もあり、登りは緊張感を持続してたが下山は同じルートで緊張が緩んでいたと思わざるを得ません。
下山時、第2ベンチ下の尾根と尾根の間で樹木が途切れる部分をトラバースするところで、一瞬視界が消え、そのあとザァーっという音、そして白く暗い視界。
気が付いたら理由もわからないまま、雪の斜面を高速で滑り落ちている感覚に襲われました。
ヤバい・・
しかし、どこを向いてどんな体勢なのかわからず、首を左右に振ると、景色が逆さに流れ、仰向けであること、そして頭を下に落ちていることがわかりました。
右手にピッケルを握っているのに気づき滑落停止姿勢をとろうとピックを雪面に引っかけたたところ、運よく体が回転し頭が上になり(おそらくザックが抵抗になって)上体が起き上がって、尻で滑る姿勢になったその瞬間、数メートル前方にある数本の立木が目に飛び込んできました。
体を守るために無我夢中で左足を幹めがけて蹴りだしていました。
蹴りだした左足はうまく幹の中心を捉えて堪え、体が気に打ち付けられるのを和らげ、運よく停止することができました。
左足のアイゼンは幹に深く突き刺さり、足首からは激しい痛みを感じました。
突き刺さったアイゼンから左足を外し、木を抱え込んで気持ちを落ち着かせ、両腕、右足、頭など状態を確認したところ他は支障があるような異常は感じず安堵しました。
周囲の状況を見回すと、いま掴まっている木を逃すとその先ははるか下まで木1本ない斜面。
もし、弾き飛ばされていたらどこまで落ちていったのか。
しかしまだ雪の斜面の途中。
ここからどうやって逃れたらいいのか。
滑落した跡を見上げて、どれくらい登れば登山道なのだろうか、この足で上り返せるのか。
(写真はその時撮ったもの)
食い込んだアイゼンを引き抜き履きなおし、立ち上がり雪面を踏むと、固く凍っていて痛む足で直登は難しい。
左側に数メートル行ったとことに樹林帯があり、そこまでは雪面を削って足場を作りながらいけそうだ。
トラバースしながら樹林帯を進むことも考えたが、基本は元の場所に戻ることが最短の方法ということは今までの経験で学んでいる。
樹木伝いに登りかえせないかと思いながら樹林帯の木の根元にたどり着くと逆に雪が締まっておらずズボズボで踏み込めず進めない。
ふたたび固い斜面を足場を作りながらトラバースしながら上り返していたところ黄色いジャケットの人影が上のほうに見えたので声を上げ呼び、気づいてもらえた。
「道迷いですか?」と声を掛けられ「いえ、そこから落ちました」と答える。
登山道の位置を教えてもらい、目指した位置よりも左手前に登山道が下ってきていることがわかる。
そこまで移動してもらえ、最後は手を貸していただき引き上げてもらいました。
とても不安な状況で出会えたことはかなり勇気づけられました。
ありがとうございました。
助けて戴いた方と、滑落したあたりを見ながら7,80mくらい落ちたかなと。
(帰ってからGPSの軌跡で見ると距離で60m高低差40mくらいだったのでほぼ目測通りだったのでしょう。)
痛めたのが左足だけで済んだのは幸運以外の何ものでもないです。
ただこのままでは登山口まで足が持つのかわからないので、気休めでテーピングで足首を固めた。
一応ダブルストックで体を支えながらなら一歩づつゆっくりと歩くことができた。
それでも歩くのはとても辛く、降りてる最中は、左足を庇って頑張る右脚やポールで体を支え続ける両腕、そして痛みに耐えて歩き続ける左脚に感謝と自分の不甲斐なさを詫びながら、なんとか4時間ほどかけて降りることができた。
(こういう時には自我と身体は一体であって別でもあるような不思議な感覚がある)
幸い痛めたのが左足でAT車だったので運転することも出来、自力で帰宅することも出来ました。(今時MT車はないか)
帰宅後、足を見ると腫れまくってくるぶしも無くなんだかわからない状態。
不幸にもGWで病院もやっていない。
今シーズンは終わりかな。
家について緊張も解けて思い返す。
もし‥‥
滑り落ちたところに岩などが露出したところがあったら・・
立木の手前で体勢が変えられていなければ・・
立木に弾き飛ばされていたら・・
正直なところ、だんだんと恐怖が沸き上がってきており、実は未だ自分はあの斜面に横たわっていて、こうしてレポを書いているのも意識が混濁して幻覚を見ているのではないかというような思いに駆り立てられます。
どうぞ、皆さんはご安全に。
その後
くるぶしもわからないほど腫れあがっていたので、翌日、念のため病院に行きレントゲンを撮りましたが骨折はなく、酷めの捻挫と衝撃で毛細血管が切れて内出血した程度で済みました。
足の骨が折れなかったのは底の堅い登山靴とアイゼンで靴底が曲がらず防寒でソックス2重履きがクッションとなり和らげてくれたのかと。
思い返せば、事故に至るまでにサインが出ていました。
前日になんだか今日はアイゼンが裾に引っかかるなという感じがありました。
歩き方が悪くなっていたのだと思います。
で、翌日トラバースでまた引っかけてしまったのではないかと。
いつもと違う、と感じたら、それをサインだと気づいて、そこでしっかりと修正するか止めるか判断することが大事だと。
特に山では些細なことも命にかかわるということを身をもって知りました。
追記
1ヶ月通院したがこの医者がヤブで湿布だけ。あまりにも治らないので他の整形外科に行ったら足首周りのほとんど靭帯が重度の損傷でこれで何でギブスしてないの?という言われた。
当然、転院したが、初期治療を誤ったことで杖なしで歩くまでに4か月かかり、リハビリが終わるまで7か月、日常生活で痛みを意識しないで済むまで1年。
今は山に入って登れはするものの、下山後はしばらく痛みが続く状態。
ボチボチやるしかない。
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