武奈ヶ岳


- GPS
- 04:41
- 距離
- 8.3km
- 登り
- 948m
- 下り
- 970m
コースタイム
- 山行
- 4:37
- 休憩
- 1:16
- 合計
- 5:53
天候 | 曇のち晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2023年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
よく踏まれた登山道 |
その他周辺情報 | 登山口に比良山荘、茶坊、などの飲食店 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
|
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感想
山の頂から海や湖を俯瞰するのは実に爽快だ。人生終わりに近づいている自分にさえ、未来があるような錯覚を与えてくれる。とにかく、広々と解き放たれる感じがいい。琵琶湖の周りは、この大湖を取り囲むように山々が並んでおり、そのいくつかは既に登ったが、スカッと開放感のある琵琶湖の風景を味わうことはできていない。深いガスに阻まれて琵琶湖はおろか足元の池ですら目視で捉えられなかった蓬莱山、冬寒という言葉が脳裏に浮かぶ悪天の春の日、寒風・赤坂山からは鉛色の空のもと悲しげに身を横たえる琵琶湖を見下ろしていた。東岸の霊仙山や北鈴岳からは白く霞んだ琵琶湖を、輪郭がわかる程度に拝むにとどまった。そういえば、先々週の御在所岳も山頂の標識によると東に琵琶湖がのぞまれるそうだが、背伸びしてみてもその姿をしかと見極めることは能わず、であった。
琵琶湖の展望台となれば、たぶん比良山地最高峰の武奈ヶ岳が最右翼に位置付けられるであろう。比良山には子供の頃、憧れのような気持ちを抱いていた。そこには、ヒサマツミドリシジミというゼフィルス(雄の翅の表面が金色に輝く小型の蝶)の稀種を産すると図鑑に書かれていたが、阪神間に住む子供にとっては遥か遠くの地、しかも六甲山より高い山である。当時はこの蝶の生活史も不明で、京都北山の杉ノ峠で谷風に吹き上げられてくるヒサマツミドリシジミを待ち構えて捕獲するというのが唯一の採集法とされていた。
それから60年近くの時が過ぎた。そして三連休の真ん中の今日、初めてその比良主峰、武奈ヶ岳を目指すこととなった。ここのところ毎日のようにスコール風の激しい雨が降る天気だったが、今日は次第に夏空が広がって猛暑日が予想されている。比良山地最高峰といってもその標高は1200メートル余りでしかない。暑さは果たして大丈夫か。基本、尾根通しのルートで水はないと思ったほうがよい。念のため標準の支度に加え、小さなペットボトルに水を凍結させて、持参することとした。
湖西道路はいつも混むので、予定通りに着けるだろうか。kinuasaのiPhoneに車のナビを託す。すると、湖西道路に乗るところで巧みに入口渋滞をかわした。そしてすぐ、「もっと近い道がある、変更するか」と言ってきた。すかさずイエスとタップで答えると下道に誘導。その後再び湖西道路に導かれると、渋滞区間の終わるあたりにピタリと出た。これには感心しきり。いい気分で最終目的地である「坊村駐車場」に予定時刻に到着。ヤマレコのPマークとは違うなと思ったが、広い敷地に誘われてそこにとめる。よく見ると「終日300円」と書かれた料金箱があり、ナビの成功に心が広くなっていた我々はポン、と払って出発だ。
下山パーティーの宴会場になるのか、登山口のお寺の参道には、雰囲気のいい料理屋が建つ。そこを抜けて植林帯の下の登山道に入ると、すぐにジグザグの急登となる。喘ぎながら登るが、この時間帯、まだくもりがちで涼しい風が吹き、年季の入った杉植林であることと山の西側斜面であるため陽射しが遮られて、熱にあおられることなく高度をあげて行ける。一旦、開けた地点に出て西側に眺望が得られる。正面に聳える山よりも高いところに行くということに意識が向き、これからまだまだ登るんだなと、気合を入れる。やがてモミが目立つようになると、広葉樹林帯にかわり、ひと頑張りすると稜線の末端に達する。比較的大きな木々が隙間を開けて立っており、風通しがいい。ここで一服だ。内緒でもってきた凍ったペットボトルを出してみると、まだ大きな氷が残っている。kinuasaに、ほいと渡すと期待通りの大反響だ。
休憩の後は傾斜の緩い稜線を進む。すぐに冬道分岐となって、夏道は山腹をまくようになり、小さな谷を斜めにわたって隣の小尾根を登って行く。実は地形図を見ていて、この谷で水を得られるかも、と微かな期待を抱いていたのだが、流水のあった形跡はあるものの、水は全く得られないのであった。谷を越えて小尾根に乗り、これを登って行く。冬道を合流するところで再び視界が開ける。ここからは灌木林となって明るい尾根道である。足元にはナツツバキの白い花が落下しているのだが、樹上の花を見つけることはできなかった。天気はがぜん良くなったが、ここまでくれば気温が上がっても大丈夫だ。御殿山の山頂に立つと正面に武奈ヶ岳の双耳峰がのぞまれる。
御殿山から鞍部までの下りが、せっかく登ったのに、と悔しいが、鞍部から先は比較的楽な登りである。視界も開けて周囲は草原に代わる。随所にヒョウモンチョウの類が舞っている。アキアカネの類も稜線に集まって、夏の暑さをしのいでいる。なにやらよい香りが漂っている。リョウブが開花前から芳香を放っているようだ。そしてついに右手の山の間から琵琶湖が姿を現わす。天気は一段と良い。しんどい登りの間は陽射しが少なく、山頂近くになって青空が思いきり広がるという理想的なパターン。武奈ヶ岳はグングン近づいて、ついに山頂に立つ。多くのハイカーがくつろぐ山頂から360度の眺望を楽しむ。琵琶湖は鮮明とは言えないながらも、その全容を惜しげもなくさらして迎えてくれた。
こうして、子供のころから気になっていた比良山の山頂を今日、踏むことができた。下山は往路を戻る。登山者が多いルートである。急斜面のジグザグ道で落石を起こさぬように注意しながら下っていく。下界に降りるにつれ、自分の体が焼き芋のように火照ってくる。なんという暑さ!朝からこの調子だったら、お陀仏だったかも。炎熱地獄の郷に降りたのち、例によって堅田に立ち寄って鮒ずしをゲットし、帰宅後の一献に備えるのであった。
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