三俣山 ※晴れのちどしゃ降り。天気に振り回されっぱなしの一日だった。
marnim
- GPS
- --:--
- 距離
- 12.6km
- 登り
- 888m
- 下り
- 883m
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| 天候 | 晴れのち雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2007年09月の天気図 |
| アクセス |
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感想
９月５日は会社の創立記念日。事務所の社員が一斉に休むと業務に支障が出ることから、翌６日と交代で休むことになっており、私は６日に休むことになった。いずれにしても平日にお休みが頂けるとあって、こんな日に山に登らない手はない。今回はくじゅう連山の一つ「三俣山」に登ることにした。くじゅうには何回も来たことがあるが、くじゅう登山の表玄関口である長者原からスタートしたことはなく、非常に楽しみにしていた。
出発当日、いつもの通りやまなみハイウェイを南下、長者原ビジターセンターにやってきた。ここから見る三俣山は威風堂々としており、三俣山とその奥で噴煙を上げる硫黄山との景観はくじゅうを代表するものだ。山容はどこから見ても三峰に見えることから名付けられたが、実際は西から西峰、�己�、本峰(主峰）、南峰、北峰の五峰となっており、「五俣山」ということになる。さて、その五俣山…ではなく、三俣山に向け出発だ。
出発してすぐに２本の木道が伸びており、ここがタデ原湿原である。平成１７年に坊ガツルとともにラムサール条約に登録され、山岳地域にある中間湿原としては国内最大級の規模であり、貴重な動植物がいる。そのタデ原湿原を過ぎると、進路を右にとり自然研究路を行く。自然研究路はすぐに森の中へと吸い込まれ、森林浴をしながらの歩きは凄く気持ちいい。森を抜けると旧鉱山道の道と合わさり、この道を進んでいく。途中、４人組のパーティーを軽くパスし、健脚ぶりをアピール。砂防ダムを越えると、旧鉱山道と別れを告げ山道に入る。キツメの登りが続き、汗が滴り落ちる。日差しも強烈で真夏の開聞岳でもそうであったように、ヨタヨタしながらの千鳥足で登っていく。ペースもガクッと落ちた。
しかしココまでさっきの４人以外登山者に遇っておらず、大人気のくじゅうはやっぱり平日来るに限る。辛抱強く登っていると眼下に長者原が良く見えてきた。すると先程分れた鉱山道と合わさり、硫黄山が眼前に迫ってくる。ココまでくると硫黄臭がしてくる。スガモリ越直下のガレ場を登っていると、先の方で一人の年配登山者が登っていた。すると、その登山者は立入禁止の硫黄山の方へ進むではないか。「オイオイおっさん。そっちは立入禁止や。でっかく立入禁止と書いた案内板もあるのに見えへんのか？死ぬ気やないやろな？」そう思っていたら、その人がクルリと引き返し、ズンズンこっちに向かってきて、ほぼ同じタイミングでスガモリ越に着いた。見ればその人のザックには、環境省自然観察公園指導員の腕章を付けているではないか。話をすると、なんでも、来週子供たちを連れて三俣山に登りに来るので、その下見に訪れたとのことであった。
くじゅうは自分にとって庭のようなもので、三俣山も何十回も登っているが、先日の台風でどこか崩落したりしていないか確認しに来たとのこと。先程、硫黄山の方へ向かった理由を聞いてみると、くじゅうの歴史などを織り交ぜながら延々と話してくれるのだが、もう一つピンとこない。
間違っているかもしれないが、私なりに要約してみると、その昔くじゅうの御池は御神体としてあがめられ、池のほとりに猪鹿狼寺（いからじ）と法華院白水寺の上宮が祀られていた。二寺は九重山信仰の中心をなした寺院であったが、明治新政府による廃仏毀釈が推し進められると、それら二寺を示す祠をくじゅうのある場所に、隠した？とのことで、硫黄山の方へ向かったのは、その祠の一つがあると聞いて、行ってみたが見当たらなかったとのことだ。やばいやばい、さっき、この人が硫黄山へ向かったとき、思わず「おじさん、そっちは立入禁止だよ。危ないよ！！」と言いかけたが、言わないでよかった。言っていたら「まさに釈迦に説法だった。」
また、環境省の公園指導員について訊くと、これは都道府県知事に認められた者で、自然公園の保護と利用を行う。年齢は７０までとなっており、自分はあと２年で退任となる。今のうちにこのくじゅうをもっと素晴らしいものにしていくのが私の活動であるとのことで、くじゅうも霧島のように登山口駐車場を有料化する動きがあったが、「ダメダメ。オレがいるうちはそれはさせない！」と、熱く語っておられた。その後もこのスガモリにも昔宿泊施設があった、あそこの橋は私が直した等々、色々な話を聞かせて頂いたが、あまりのんびりもできないので、そろそろ別れを告げ、三俣山に登ることにした。
クマザサに覆われたいきなりの急斜面、想像通りかなりキツイ。キビシメの斜面を喘ぎながら登っていると、心臓が物凄くドクドク動いているのが分かる。何回か息を整えながら、最後は気合で登りきり、ようやく三俣山西峰(1678ｍ）に着いた。眼前には噴煙を上げる硫黄山の迫力が凄い。写真を撮ったあと休憩もほどほどに、西峰の奥にある新たなピークに向かう。斜面を下がったあと、また登りが始まった。さっきの西峰の登りとは比較にならない。着いたピークはなんの標識もなく、位置的に三俣�己�と思われる。ちょうどガスが出始め、景色はあまりよく見えない。しばらく待ったがガスが晴れないので次のピークに行きかけると、ガスが晴れた。「オオーー。坊ガツルから大船、平治が見事だ。」�己�からの眺望を楽しんだ後、すぐそこにある三俣本峰へ向かう。�己�から２〜３分で本峰に着いた。
折角だから、本峰の標識と自分とを一緒に写したいのだが、平日のため誰もおらず、岩の上にタオルを咬ませ、セルフタイマーで撮った。「よしよし、即席だがなかなかの出来。さすがはオレだ。」天気は雲ひとつ無い快晴となり、眼下には長者原から湧蓋山等が一望で、先程の�己�と反対側の景色が素晴らしい。この景色を堪能した後、今度は南峰を目指す。南峰に着くとおにぎりをほおばり、素晴らしい景色を見ながら休憩とした。
すると、向こうの�己�に先程の公園指導員の先生がいた。先生は�己�からまっすぐこっちに向かっている。南峰に着くと、またもや意気投合、色々な話を聞かせてもらった。くじゅうの山々やそこに咲く花のこと、山登りの道具のこと、地図のこと、なかでもくじゅうの代名詞であるミヤマキリシマが近年あまり咲かなくなったことを寂しく語っておられた。徐々に天気は雲が出始め下り坂に。互いの安全を祈念して先生とお別れした。
南峰から�己�、西峰と経由してスガモリ越への急斜面を下る。下っている時、一瞬だけエアポケットに入った。ゴロ石の上に足を掛けた瞬間、石がゴロッと転がり、バランスが崩れる。「ウワァーー！！」叫んだ瞬間斜面を一回転、足が「グキッ」となった。「ヤバイッ！足をひねったか？」「ん？動く、動く。オーー、大丈夫助かった。足は無事に動く。」しかし、両足と右腕に大きな擦り傷を負い、血が出てきた。まぁとにかくコレだけで済んで助かった。
スガモリ越を過ぎ、北千里浜に着くと法華院温泉に進路をとり、慎重にガレ場を下っていく。さすがに今度転んだらただのアホだ。「ポツリ。ポツリ。」「クソ、いよいよ降ってきやがったか。さっきまであれだけ晴れてたのに……。雨具を着るほどでもないが、黒い雲が遠くに立ち込めてきており、アレがこっちに来るとやばい。急ぎ足で法華院温泉へ向かう。小一時間歩き、いよいよ(280)法華院温泉山荘だ。
この山荘のことは、とある温泉ガイドブックに次のように紹介されていた。「法華院温泉山荘……登山口から登ること２時間、標高１３０３ｍと九州最高地点に湧く秘湯で、登山者のみが入ることを許された温泉だ」。温泉マニアの端くれとして、この温泉に興味を惹かれない訳が無い。というよりこれがきっかけとなり登山にも興味を持ち始めたのだ。あれから２年、その憧れの温泉にようやく着いた。興奮を抑えながら、中に入ると山小屋とは思えないほどの綺麗さにビックリ。入浴料金を支払い浴室に向かう。「オッケー！」平日山行の特権で誰もいない。浴槽からは湯が贅沢に掛け流され、温泉好きとしてはよだれが出る。これを言っちゃ怒られるが、露天があればなお最高だろう。
温泉に呑気に浸かっている間に、雨は本降りになってきた。「まぁ、時間もあるし。雨が小雨になるまでゆっくりしていこう。」それから、１時間以上ゆっくりしていたろうか、雨も少し小雨になったので、雨具とザックカバーを準備し出発だ。歩き出してすぐ、坊ガツルに着くと、雨も止んで薄く光が差してきた。「なんじゃ今日の天気は？降ったり止んだり。ハッキリせんかい！！」
雨具をザックにしまい、歩き出す。しばらく歩くと、「ん？」またも小雨が振り出してきた。見ると、遠くにはぶ厚い雲がやって来る気配あり。これは急がねば。急ぎ足で雨ヶ池を越えるとだんだんと雨が強くなってくる。森の中に入ると、バケツをひっくり返したような猛烈な雨が降り出した。思わず「キャー！助けて」と叫ぶも、誰も聞くはずがない。思えばこんなにずぶ濡れになったのはいつ以来だろう？傘もない、雨宿りもできない山の中では仕方が無いが、それにしても物凄い雨。１時間に３０mmは軽くいっている。標識を見ると長者原まで２キロ以上もあり、まだまだ時間がかかりそうだ。とにかく歩くしかない。気合で歩き続けたが、長者原に着いた時にはボロぞうきんのようになっていた。
「ああ、やっと着いたか。」体はクタクタのボロボロ。と、その時雨が止みやがった。「今頃かよ！クソッ！！」ザックを車に入れ、ふと携帯を見ると、「エッ？マジで？濡れてしもとるやんけ！おいおいマジかよ？」既に電源も入らなくなっており、「ダメだこりゃ」と諦めるしかない。会社名義の携帯なので、電話帳データが消えたのは痛い。「でも、この状況ではどうにもならん。」気を取り直して温泉へ向かう。
まず向かったのが長者原近くの(89)「九重星生ホテル山恵の湯」だ。ここは再訪だが、まずこのクタクタな体を癒そうと近くの名湯にお邪魔する。さすがは山恵の湯。硫黄泉・酸性緑礬泉、冷鉱泉、単純泉という４つの泉質があり、全て源泉掛け流しとなっている。特に硫黄泉の湯の花は物凄い。「おー、やっと生きた心地がした。」服も着替えて気分一新。次は筋湯温泉を訪問だ。筋湯と言えばまずは、(90)「うたせ大浴場」だ。こちらも再訪だが、中に入ると幾筋もの湯滝が物凄い轟音とともに落下しており、その強さも強すぎず弱すぎずの丁度いい塩梅。贅沢にも寝そべりながら２本の湯滝を使うと効果倍増だ。うたせ湯の後、筋湯の共同湯（281)薬師湯と(282)せんしゃく湯に入ったあと、筌の口温泉に向かう。以前、筌の口温泉共同湯にはお邪魔したので、今回はその隣の(283)「新清館」にお邪魔する。
温泉ファンの間でこの新清館の露天がかなり高い評価を得ており、楽しみにしていたのだ。「ワオーー！」その露天はひっそりと静まり返った森の中に、黄色い湯を満々と満たしており、こんな静かな環境でも確固たる存在感を示している。平日で誰もいない貸切状態というのも手伝って、物凄くリラックスできた。最後はこちらも温泉ファンの評価の高い「第二筌の口温泉 震動の湯」に行こうとしたが、改装工事中でしばらく休業するとの貼紙が。仕方なくそのすぐ先の、(284)「山里の湯」に行くことにした。
受付で料金を払うと、若いオーナー曰く「ここは数年ぶりに営業を再開したのだが、以前と泉質が変わり炭酸泉になったとのこと。しかも長湯や七里田の通称ラムネ温泉より温度が高いとの説明を受け、目を輝かせながら入る。なるほど、浴槽の湯口からは炭酸の泡がブクブク出ており、近づくとむせ返るほどの炭酸ガスが発生している。泡付きは長湯や七里田ほどではないが、炭酸泉にしては温度が高いので物凄く気持ちいい。思わず長風呂になってしまった。最後にオーナーと少し話すと、今は無きスガモリ小屋を経営していたのはオーナーのお父さんだったらしく、思わずビックリ。私も今日まさにスガモリを通って三俣に行った話をし、大いに盛り上がる。しかし、飛び入りで入った温泉がこれほど良いとは……。道端で金を拾った感覚に似ている。
しかし今日も本当に色々あった。どしゃ降りにあい、天気に振り回された一日だったが、山頂からの素晴らしい景色と下山後の至福の温泉を満喫できたので良しとしよう。ただ一つ心配なのが携帯……。後日その携帯、ドコモショップに持っていくと、濡れの度合いが小さかったため、電話帳などのデータはセーフだった(汗）。会社に事情を言って、有り余っているポイントで機種変更を実施。前より新しい機種になってしまい、いいのか悪いのか？（ラッキー）。
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