志渡内畚(和賀山塊) 北東稜を登る
- GPS
- --:--
- 距離
- 15.9km
- 登り
- 1,459m
- 下り
- 1,457m
コースタイム
- 山行
- 13:07
- 休憩
- 0:23
- 合計
- 13:30
天候 | 晴れ時々曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2024年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
雪山バリエーションです。 |
写真
装備
個人装備 |
初めは登山靴+ワカン。屋敷沢から尾根に取りつき
急斜面を前にアイゼン装着。その後は林道に下山するまでアイゼン装着。
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感想
JR田沢湖駅のある仙北市生保内(おぼない)地区からは、羽後朝日岳がよく見える。その山塊の左側にある三角形の山が、志渡内畚(しとないもっこ)である。昨年は北西稜を登った。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5284790.html
今年はなんとか北東稜を登りたい。あのスッキリとした稜線を、晴れ渡った空のもとで登りたい。北東稜自体は短いし急峻ではないのだが、問題はそこにどうやって取り付くかだ。北東稜は延々と北へ尾根を伸ばし、尾根の基部から取りついたのでは、私の足では日帰りはとても無理。この尾根西側のシトナイ沢か、東側なら生保内川を渡渉してから、この稜線に取り付くしかない。何度も地図を眺めてルートを考えた。
尾根から沢に下る時、問題は沢岸が岩盤になっていることが多いということだ。だから沢岸の等高線が少しでも広くなっている尾根を下降に選ぶ。だが下り立った沢の対岸が、登り易い尾根とは限らない。そこで沢を移動するとなれば、雪崩や滝などに遭遇するリスクも高まる。さらに日帰りとなれば、志渡内畚からあまり離れない方がいい。
あれこれ考えても結論は出ず、行って現地で判断しようと腹をくくった。ダメなら引き返すだけだ。入山は屋敷沢を選んだ。林道は荒れているのか、道型が不明瞭なので、沢沿いの歩き易い所を渡渉を繰り返しながら適当に進む。やがて沢は細くなってきて、ワカンのまま沢を進んだりもした。そして尾根に取りついて間もなく、アイゼン装着。シトナイ沢の左岸尾根に上がるまでは、時間も体力も節約したい。
シトナイ沢左岸尾根から、シトナイ沢に向けて小さな支尾根を下る。途中でルンぜに移り、50mほど慎重にクライムダウン。幸い柔らかい雪が、沢に下り立つまで岩盤を覆い隠していた。
シトナイ沢を渡渉して、対岸の急斜面に取り付く。左手にもピッケルが欲しいところだった。尾根に上がっても雪は軟らかいままで、沈み込みが大きく、なかなか進まない。
ようやく、志渡内畚北東稜から伸びる長い尾根に上がった。さらに北に伸びる稜線や、岩手との県境稜線の眺めが素晴らしい。だがこの頃から、急に雲が広がってきた。休憩後、また一歩一歩の歩みを続ける。こんな深い山を今歩いているという喜びと、遅くとも午後2時頃までに志渡内畚に登頂して、今日中に下山しなければ・・という緊張が交錯する。しかし稜線上もクラストした雪面はほとんど現れず、歩みはゆっくりだ。
北東稜は予想した通り、きれいな尾根が山頂まで続いていた。何度も足を止めて、周囲を眺め渡す。三度目となる志渡内畚登頂。もうここに立つことは無いかもしれないと思いながら、すぐに南陵へ、下山にかかる。羽後朝日岳から北方に伸びる稜線上(シトナイ沢左岸尾根)に立って、ようやくほっとした。ここからの下山は3度経験している。
立ち止まって羽後朝日岳の肩の方向を見ると、なんと動く人影が!岩手側から入山して羽後朝日岳を越え、二ノ沢畚まで足を伸ばして戻る途中のmametan3さんに違いない。この軟雪の中、あの細い稜線を辿って二ノ沢畚まで行ってきたのか!そしてこれから羽後朝日・大荒沢・沢尻と登り返しながら、長いルートを下山するのか。大きく両手を振ったが、登りに集中しているようで、気付いてはもらえない。だが肩に登り着いた所で、私に気付いてくれた。概ね600mぐらい離れているだろうが、そばに立って、互いの健闘を称え合っているような感慨が湧いてきた。
気持ちはとても元気になって、明瞭な尾根を下っていく。支尾根上の丸い平らなピーク、p528からは、北向きの支尾根を下った。たぶん昨年下山にとった支尾根のルートが一般的には良いのだろうが、杉やヒバなどの枝がうるさい。今回は早めに八木沢に下りて正解だった。
念願だった志渡内畚の北東稜を登ることができて、深い満足感に浸っている。ただし、反省点も多い。そろそろ、深い山中で体調不良になって行動不能・・というリスクも真剣に考えなければと思う。と同時に、心拍数が上がらないようにゆっくり歩けば、10時間ぐらいは雪山を歩くことが可能だと、自分で納得できた今シーズンだった。
コメント
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13時間にも及ぶ格闘、お疲れさまでした。今は充実感で満たされていると存じます。
kamadamさんは私より先に気づき私の姿を見守ってくれてたんですね。知りませんでした。ありがとうございます。私は肩に着く直前に気づいて声を上げましたが、聞こえたでしょうか? 稜線を登る写真をPCで拡大しましたら手足が判別できるくらい映っていました。家宝にさせていただきます。
過去2回、志度内畚に至ったレコも拝見しました。昨年の北西稜にしても、一度尾根に上がってシトナイ沢に急下降しさらに登り返すというあまりにもハードな行程だと思います。 なんといっても一人ラッセルで、特に今年の雪は沈み込み雪でトレースのあった私よりもはるかに体力を消耗されたとお察しします。田沢湖町から見える稜線のスカイラインをたどりたいという強烈なモチベーション…。ルートの発想とモチベーションはkamadamさんしか浮かび上がらないものだと思います。
2012年牛形山から焼石主稜線、さらに天竺なども拝見しました。先週の小滝山のコメント欄でkamadamさんからいただいた秋田側からの志度内、二ノ沢畚などのルートは、昨年今年のレコで少しイメージできるようになりましたが、焼却場までの道など未知のことが多く今はちょっと踏み出せないです。偵察から始め、いつか私もたどってみたいとは思っています。
昨年に続きkamadamさんとニアミスしたことは私にとって勲章です。いつか山でお会いしkamadamさんの人となりに触れてみたいものです。
あの人影の無い稜線上で、mametan3さんに間違いない姿を見つけた時は、心が震えました。よく、「勇気と感動をもらえました」なんていうコメントを耳にしますが、まさにその言葉の通りでした。それにしても、2年連続で同じ場所からmametan3さんのお姿にお目にかかるなんて・・
「あの山に登りたい」という目標を持ち続けること、モチベーションを保ち続けることの意義・大切さを教えてくれたのは、前にも書きましたが、mametan3さんです。少しでも見習おうと、私も今は、オフシーズンも時々筋トレをしたり(5分程度ですが)、たまにはスキー場を登ったりしています。キツイと思った時に頑張れるのは小さな目標があるからですし、仕事や日常生活でストレスを感じた時も受け流すことができるのは、「あの山に登りたい」という思いが助けになったりしています。
ところで、私がmametan3さんや他の皆さんに素朴に感じるのは、一度歩いたルートに再び望むモチベーションはどこから来るのだろう・・ということです。もちろん、悪天候などで到達できなかったから再挑戦というのは、私もあります。すばらしいルート・景観だから、季節を変えてまた来たいということもあります。mametan3さんが踏破された、岩手側からの和賀岳や二ノ沢畚、志渡内畚・・は半端ないロングルートですよ。キツイからこそ、また挑戦してみたいということでしょうか・・
もしもお会いすることができたら、伺ってみたいテーマです
焼石連峰は色々なロングルートが取れますね。スキーを駆使するmametan3さんのレコ、これからも楽しみにしています
kamdamさんワールドの神髄ともいうべきご教示、ありがとうございます。2年連続で同じ日に同じ山域を登るということが、志向・思考が同じということですよね。見た瞬間、kamadamさんに違いないと確信しました。「勇気と感動を…」それはまさに私の方でして、嬉しくて顔はくしゃくしゃだったと思います。本当に力がみなぎってきました。
「あの山に登りたい」という思いは、地形図を見るうちに「その場所はどんなロケーションで、どんな景観が待ち受けているのだろう?」という好奇心から来ていると思います。 これは多くの方々が持ち合わせている感覚だと思います。
それから私のレコ文に記そうかと思いつつ載せなかったことがあります。それは「2度登りたい病」という“病”?にかかっていることでして、1度目は必死に登るので景観を楽しむことがあまりできないので2度目も登りたくなる、2度目でしっかり確認したい、ルートを味わいたいという思いです。特効薬はなく、2回目を登るしかないようです。
いや〜、でもkamadamさんは“道なき道を一人ラッセル”ですよ。人類未踏の道のりですよ。 既成ルートを少し長く歩く私とは次元が違います。kamadamさんのような方が同世代にいることはまさに驚異であり、勇気をいただいています。これからもお互いに山登りできる心身を維持して、自分らしい登り方を模索していきましょう。kamadam師匠、これからもよろしくお願いいたします。
昨日は県外へ出かけておりまして、返信が遅くなってしまいました。
なるほど、「2度登りたい病」ですか・・納得です。二ノ沢畚からの羽後朝日岳の姿など、本当に美しいものには、何度でも出合いに行きたいものですね。それにしても大変なロングルートで、何度も踏破することを考え、実行できるのは、mametan3さんしかいないと思います。
私のことを持ち上げすぎなのですが、「人類未踏の道のり」は無くとも、雪が藪を覆い隠してくれるお陰で、自分オリジナルなルートを描ける楽しみは大きいですね。別にプロやエキスパートじゃなくても、こんな面白いことができるよ!というのをお見せ出来たら・・という思いは、ほんの少しですがありますね。それと前にも一言書きましたが、羽後朝日岳に関しては、秋田県の山なのだから、秋田の人は一度は秋田側から登ろうよ・・という個人的な思いはあります。岩手側と違ってヒバなどが多く、下部では歩き辛いということはありますが・・
いつか山友の多い人を誘って、その人を通じて広めてもらおうかな・・などと密かに考えています
他に、同年代のmametan3さんにお会いできたら伺ってみたいテーマは、日頃の体力作りのことです。私はあちこちに老化現象が出てきて、それがますます「あと何度雪山を登れるだろう」という思いになり、一つ一つの山行の貴重さを高めることになっているのですが、まだ20年登れるとなったら違ってきますね
いつかお会いできる日が来ることを楽しみにしています
これぞ究極のkamadamワールドとも思える激闘の残雪レコ、勝手ながら暫し興奮が治まりませんでした。志渡内畚集大成の ″北東稜″ 踏破、おめでとうございます、そして本当にお疲れ様でした。mametan3との相互キャッチも力になりましたね。
いつもながら周到なルート設定、確実な登攀技術、正確なルーファン、安定した体力、そして相当なリスク想定等々粋を集めたkamadamワールドには多くのスノートラッカーの憧れや学びになっていると思います。
あの山のあの稜線に立ってみたい・・・魅了して止まない山ほど罪なものはありませんね。(笑)
実はtonkaraさんからは厳しいご指摘を受けるかもしれないな・・と思っておりました。
ルートは行ってみて、現地で判断する・・そういうこともあるでしょうが、それならそれなりの準備はしておく必要がありますね。私の場合はロープは持参せず(現地で使用できるほど習熟していない)、沢へ下りた訳ですので。軟らかい雪が急斜面にも付いていて、たまたま運が良かったとも言えます。もちろん、前週にも和賀山塊に入っていて、ある程度予想していたことではありますが・・
おっしゃるように、志渡内畚の、あるいは自分の山歩きの集大成になるかも・・という思いは正直ありました。でも行くとまた歩きたいルートが目に入ってきてしまう 罪作りです(笑)
いつまで1,000m以上の雪山へソロで登れるのかわかりませんが、自分の山歩きの集大成にしたいと考えているルートは、和賀山塊に描いています。あの山のあの稜線に立ってみたい・・という思いを、もう少し持ち続けたいと思います。
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