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記録ID: 6821135
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沢登り
北陸

【越美国境】西高倉谷 探索 (明治期石積堰堤と新緑の谷)

2024年05月18日(土) [日帰り]
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GPS
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距離
12.2km
登り
853m
下り
846m

コースタイム

時間を詳細に書いてもあんまり意味のない記録だと思うので,コースタイムは省きます。だいたい全部で8時間ほどの山行でした。
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2024年05月の天気図
アクセス 高倉谷沿いの林道の西高倉谷・東高倉谷二俣の手前付近にある路肩に駐車。高倉谷沿いの林道は舗装されているが,狭路が続き駐車スペースはあまりない。なお,西高倉谷沿いの林道は車での進入困難。
コース状況/
危険箇所等
・ 西高倉谷の上流域(小草・大草堰堤や樹林の美しい源流域)へのアプローチとしては,谷通しに行くよりも,東高倉谷の林道を車で廃村高倉まで入り,そこに車を置いて廃林道伝いに小さな鞍部を越えて西高倉谷の流域に入ったほうが効率的。西高倉谷の下流域で見るべきものは出合付近の西高倉堰堤(明治期造成,登録有形文化財)くらいで,あとは巨大な堰堤がいくつかできていて通過に苦労するばかり。
・ 今回入渓した西高倉谷は,谷自体に大きな困難はないので,沢足袋or沢靴さえあれば何とかなる。
需要は全くないと思いますが,今回歩いた西高倉谷の詳細図。黄緑の線が地形図に載っていない廃林道。(東高倉谷にも多数の明治期堰堤がありますが,記載を省略しています)
需要は全くないと思いますが,今回歩いた西高倉谷の詳細図。黄緑の線が地形図に載っていない廃林道。(東高倉谷にも多数の明治期堰堤がありますが,記載を省略しています)
明治期の高倉砂防堰堤の案内板。西高倉堰堤って登録有形文化財だったのね。初めて知った…。
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明治期の高倉砂防堰堤の案内板。西高倉堰堤って登録有形文化財だったのね。初めて知った…。
西高倉堰堤。明治期に作られたもので,国登録有形文化財。現代で言うとロックフィルダム? 石積みが美しく,まるでお城の石垣を見ているかのよう(実際,伝統的な城郭建築と同じ石積み技術が使われているらしい)。
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西高倉堰堤。明治期に作られたもので,国登録有形文化財。現代で言うとロックフィルダム? 石積みが美しく,まるでお城の石垣を見ているかのよう(実際,伝統的な城郭建築と同じ石積み技術が使われているらしい)。
堰堤の上から。(右岸側に巻き道あり。切り立っているので注意)
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堰堤の上から。(右岸側に巻き道あり。切り立っているので注意)
西高倉堰堤の上の左岸側に,完成当時のものと思われる苔むした記念碑がある。(「念」の字だけがかろうじて読み取れる)
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西高倉堰堤の上の左岸側に,完成当時のものと思われる苔むした記念碑がある。(「念」の字だけがかろうじて読み取れる)
その先は無味乾燥な現代の巨大堰堤に阻まれ。
その先は無味乾燥な現代の巨大堰堤に阻まれ。
右岸側の高い位置にある謎の水平道で上流へ。(京都北山のユリ道のような美しい道。本当にただの廃林道だろうか? 狭い道幅といい,古道みたいにみえるけど…)
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右岸側の高い位置にある謎の水平道で上流へ。(京都北山のユリ道のような美しい道。本当にただの廃林道だろうか? 狭い道幅といい,古道みたいにみえるけど…)
しばらく行くと,謎の水平道は急に消失。あんなに明瞭だった道は,一体どこへ。
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しばらく行くと,謎の水平道は急に消失。あんなに明瞭だった道は,一体どこへ。
やみくもに登ると,急に舗装道路が。ここは間違いなく,西高倉谷と東高倉谷の間にある鞍部だ。
やみくもに登ると,急に舗装道路が。ここは間違いなく,西高倉谷と東高倉谷の間にある鞍部だ。
そのすぐ下が廃村高倉。深い谷間の中とは信じられないほどの高原的な雰囲気で,今は本当に何もない空き地。
「秋ならば,茅葺の数軒の家がススキの中で肩を寄せ合ってひっそりと静まりかえり,赤く熟した柿が青空の中に実っている。」(昭和47年刊「秘境・奥美濃の山旅」から引用)
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そのすぐ下が廃村高倉。深い谷間の中とは信じられないほどの高原的な雰囲気で,今は本当に何もない空き地。
「秋ならば,茅葺の数軒の家がススキの中で肩を寄せ合ってひっそりと静まりかえり,赤く熟した柿が青空の中に実っている。」(昭和47年刊「秘境・奥美濃の山旅」から引用)
廃村高倉の唯一の遺構と思われる,鞍部に残る石垣。古い地図では鞍部に卍マーク(寺院マーク)があるので,高倉集落の寺か道場の跡でしょう。
廃村高倉の唯一の遺構と思われる,鞍部に残る石垣。古い地図では鞍部に卍マーク(寺院マーク)があるので,高倉集落の寺か道場の跡でしょう。
東高倉谷。さっきまで西高倉谷にいたのに…。廃村高倉の鞍部を使えば東と西の谷を簡単に行き来できる。地形の不思議だ。
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東高倉谷。さっきまで西高倉谷にいたのに…。廃村高倉の鞍部を使えば東と西の谷を簡単に行き来できる。地形の不思議だ。
廃村高倉の上にある,西高倉谷と東高倉谷をつなぐ鞍部からは,西高倉谷の上流に向けて地形図に記載のない廃林道が続いている。(明治42年測図の陸地測量部地形図では,ほぼ同じ経路を通って西隣の多留美谷に乗り越す点線路が描かれているので,その古道を拡張して作られた林道と思われる)
廃村高倉の上にある,西高倉谷と東高倉谷をつなぐ鞍部からは,西高倉谷の上流に向けて地形図に記載のない廃林道が続いている。(明治42年測図の陸地測量部地形図では,ほぼ同じ経路を通って西隣の多留美谷に乗り越す点線路が描かれているので,その古道を拡張して作られた林道と思われる)
林道が尽きたところが,ちょうど西高倉谷の奥の二俣の手前。そこから入渓。
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林道が尽きたところが,ちょうど西高倉谷の奥の二俣の手前。そこから入渓。
植林は既に微塵もなく,ブナやカエデ,サワグルミやトチノキなどの美しい若葉の谷が広がる。
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植林は既に微塵もなく,ブナやカエデ,サワグルミやトチノキなどの美しい若葉の谷が広がる。
谷自体は期待に反して残念ながら小滝ばかり。でも雰囲気は悪くない。
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谷自体は期待に反して残念ながら小滝ばかり。でも雰囲気は悪くない。
いやむしろ雰囲気はすごくいいです
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いやむしろ雰囲気はすごくいいです
右俣の5m滝。前衛の小滝を併せれば4段10mほど
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右俣の5m滝。前衛の小滝を併せれば4段10mほど
さすが越美国境の谷やね
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さすが越美国境の谷やね
左俣の10mナメ
ニリンソウやラショウモンカズラ,それからワサビが多い。
ニリンソウやラショウモンカズラ,それからワサビが多い。
帰りは,行きは廃林道でカットしてしまった区間の谷も歩く。おや,結構ええやん。
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帰りは,行きは廃林道でカットしてしまった区間の谷も歩く。おや,結構ええやん。
最も奥地にある明治期石積堰堤である,大草堰堤。行きにくいところにあるので,ちょっとレアかも。
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最も奥地にある明治期石積堰堤である,大草堰堤。行きにくいところにあるので,ちょっとレアかも。
これはその一つ下流にある,やはり明治期の小草堰堤。残念ながら崩壊してました…
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これはその一つ下流にある,やはり明治期の小草堰堤。残念ながら崩壊してました…
帰りの林道で。あっ
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帰りの林道で。あっ
クマたん…。偶然にも歩く方向が同じで,十分な間隔は保ちつつも,後ろをついて歩く形になった。3分ほど一緒に歩いたあと,ようやく物音に気付いたクマがすっくと立ち上がってこちらを確認,山の斜面の上へ脱兎のごとく逃げていった。
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クマたん…。偶然にも歩く方向が同じで,十分な間隔は保ちつつも,後ろをついて歩く形になった。3分ほど一緒に歩いたあと,ようやく物音に気付いたクマがすっくと立ち上がってこちらを確認,山の斜面の上へ脱兎のごとく逃げていった。

感想

 今回もマイナー谷。越美国境の古峠,高倉峠の福井県側にある高倉谷である。
 ネット上には東高倉谷の枝谷の遡行記録が一本あるくらいで,福井岳人倶楽部の「越の谷」にも記録がない。しかし,山域的に小粒でも険谷ぞろいの大河内川に隣接しており,地形図を見ても水線がイイ感じのうねり方をしているので,何だか期待できそうな気がしていた。
 実際に入渓してみると,最大5mほどの小滝が出てくるくらいで大きな滝場はなく,ちょっと期待外れ。しかし,源流域は素晴らしい樹林に包まれ,どこまでも清澄な流れが美しく,水もおいしかった。このへんはさすが越美国境の谷である。
 ところで,高倉谷といえば明治期の石積み堰堤。といっても,今回の山行で現地の案内板を見て,初めてその価値を知った(この谷には冬季に高倉峠へのアプローチのために2回も入ったことがあるにもかかわらず…)。特に国登録有形文化財の西高倉堰堤は,古城の石垣を見るような美しさがある。最奥地の大草堰堤は,人気のない一面の新緑の谷の中で,今も立派に仕事を果たしていた。現代のコンクリート製の堰堤は谷の中で出会うとぎょっとしてしまうが,昔の野面積みの堰堤は見事に風景に溶け込んでしまっていて,面白い。
 
 帰りの林道で,カーブを曲がると目の前にクマがいた。道端の草むらに鼻面を突っ込んで,さかんに山菜を食べている様子である。こちらがフェルトソールの沢足袋を履いていて足音がしないせいか,こちらの存在になかなか気づかない。偶然,クマの歩く方向とこちらが帰りたい方向が同じだったため,クマの後ろをついて歩く形になってしまった(もちろん,クマを必要以上に驚かさないよう,十分な間隔は維持した)。
 これまで何度か山の中でクマに出会ったことはあるが,大体クマのほうが先にこちらの存在に気付いていて,一瞬で逃げて行ってしまう。今回のように,クマに全く気づかれていない状態で,これほど近くから,そしてこれほど長時間にわたって,クマを観察できるのは初めての経験だった。
 といっても,クマも一応違和感は感じるようで,山菜を食べながらもこちらを何度もチラチラ見るのだが,クマはあまり目が良くない動物なのか,こちらが動きを止めていると人間だと認識できないようだ。そのまま3分間ほど歩いただろうか。
 と,ザックにぶら下げていたチェーンスパイク(滝の高巻きに使用する)がチャランとわずかに音を立ててしまった。さすが聴覚は鋭いようで,クマは「ん?」という感じで後ろ足で器用に立ち上がり(胸の白い月の輪がはっきり見えた),耳をピンと立ててこちらをまじまじと見た。そして赤ヘルをかぶった変な人間が後ろにいることにようやく気が付くと,山の斜面を一気に駆け上がって逃げて行ってしまった。独り立ちして間もないと思われる,体格のほっそりした若いクマだった。

※ 廃村高倉…木地師が定住した集落と言われている。明治30年頃は16戸ほど。昭和43年までに全戸離村して廃村。昭和38年の豪雪(いわゆる三八豪雪)が離村のきっかけだったという。主な生業は製炭。

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