ハライド→青岳→エチ川

天候 | 晴→快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2024年07月の天気図 |
感想
山行記録678
令和6年7月7日 (日) 七夕夏空 〜青岳→エチ川 │
単独 地図:御在所山
週間予報では、この土・日の天気の予想が猫の目のように、雨だと言ったり晴だと言ったり、どれが本当なのか…。そんな感じで見ていた。日本海の梅雨前線に向かって暖湿気流が流れ込みやすい状況には変わらないが、太平洋高気圧が一時的に強まる兆候もあって、どの程度膨らんでくるかで天気は大きく変わる。
金曜日、「短期予報解説資料」を見てみると、日本海北部を東進する低気圧に伴うシアーライン(つまり弱い寒冷前線)の先端が、土曜日に北陸をかすめるために一時的に大気の状態が不安定になるが、日曜日は太平洋高気圧が強まって安定してくるらしい。ただし、日射しの影響で気温が高くなると、大気の状態が不安定になるので注意が必要だというから、はたしてどれぐらい雲が取れるか?、そんな状況である。
そして、日曜日の三重県の予報は「晴」。降水確率も10%以下。そして、津の最高気温予想が37℃。つまり日射しが降り注ぐことを示唆している。おそらく風は西風で、フェーン現象も加わるんだろう。滋賀県の予報は晴時々曇。降水確率も高いところで20%である。
そういったことを考え合わせれば、雲の取れ具合によってはエチ川の日サロでヒルネもいいかな、となる。だったら、雲の様子次第でどうにでも動けるように、2週間前の予定をそのまま繰り返してやろうか。
そんなわけで性懲りもなく、日の出とともに朝明に向かう。よく晴れてはいるが、山の西側には雲が広がっている。地上はほとんど風がないが、上空では顕著な西風が吹いているのが分かっている。地表近くの空気はそれなりに涼しいが、真冬のような放射冷却でもないだろうから、逆転層ができているとは思えないが、いずれにしても空気の層が違うと思われる。層の境目はどのぐらいの高さなんだろうか。おそらく上の層はハッキリした西風で、今広がっている雲は、風が山越えで波を打つための層積雲だと考える。気温が上がれば取れていくと思うが、さ〜て!。
5:40出発。先々週と同じような時間に同じルートを登り始める。空気はヒンヤリしていても、太平洋高気圧の縁を流れてくる湿気を含んでいるから、すぐに汗が噴き出してくる。急ぐ必要はない。ゆっくり行こう。
尾根が合流すると、風が吹き通って気持ちがいい。ただし東風だから、まだ地表付近の空気の層の中らしい。それとも山の風下で渦になって吹き返してきているのかな。
この前のヤマボウシは花も終わっしまった。そんなことを思いながら登っていくと、少し離れた樹の根元で何かが動く。「リス」。この間のヤツか、それとも別のヤツだろうか。まっすぐ樹に登って行って、枝を伝って消えていった。
7:00ハライドに到着。西風に変わっている。昨日見た850hPa(上空1500m程度)の風と相当温位の予想天気図では、この付近に表示される矢羽根は20〜25kt/s(10〜13m/s)だったから、このあと県境稜線に上がったらそこそこ風があるかも知れない。ただ、先月の釈迦の時とは気温がまったく違うから、気持ち好いと感じるかもしれない。御在所のレーダーのドームを見上げながらそんなことを考える。
そんなハライドにも夏は近づいている。アキアカネがあっちこっちに舞っている。朝のお食事タイムのはずだから、枝に留まって落ち着いている個体は少ない。それでも目の前の松に留まっているヤツをモデルに、夏の元気なとごあいさつの代わりに写真を撮らせていただいた。
7:07出発。2週間前に来たばかりだから、腰越峠への下降点は探さなくても入っていける。それに、脇の樹をつかんで岩を降りるところにイバラの樹が混じっていて、考えもナシに握りしめると手に穴が開くことも…。
腰越峠で念のために地図を広げる。だいたい1000m辺りまで150mぐらいの急登だと確認したら、今日は何の迷いもなく登り始める。
例によってキツイ登りではあるが、国見尾根のような荒っぽい登りではないから、変にペースを乱すこともなく登っていける。時々、近くの地面からセミが飛び立っていく。おそらく今朝羽化したヤツだろう。それから、たぶんヒョウモンエダシャクか、ヤマキマダラヒカゲかな、やたらに群れ飛んでいるのを目にしながら登っていく。
ハライドを見下ろす高さになると、傾斜は少し緩んでくる。気がつけば、セミの声が目立って増えてきた。ヒグラシに似た鳴き方ではあるが、「カナカナカナ……」の前に「ジージージー」と低く鳴く。エゾハルゼミだろう。「時期やな〜」。
ヤシオ尾根道の分岐にさしかかる。ここまで来れば、あとひと登りで尾根の平頂部に登りつく。ブナやミズナラの森もすっかり緑が深くなって夏の装いである。森を抜けていく西風が汗を乾かしていく。気持ちの好い風を楽しみながら歩いて行くと、やがてヌタ場にさしかかる。このところ雨が少ないので、ヌタ場も乾き気味。イノシシも虫が落とせなくて困っているかもしれない。
ブナの大木の根元で立ち止まる。「お久しぶりです」。ついこの間も根元から樹冠を見上げたような気がするが…、ここに来るのは1年ぶりである。いつものように真下から見上げると、薄雲で少し光を弱めた太陽が、風に揺れる樹冠の向こうに見え隠れ。まるでブナの葉がざわめいて瞬くような…。
「また来ます」。ヌタ場を後にして青岳に向かう。8:31、久しぶりの青岳である。相変わらず見晴らしがいい。岩に腰を下ろして下界を見渡す。アキアカネのお食事タイムもそろそろ後半に入ったようで、あっちこっちの枝先で翅を休めている。以前よりも少なくなったとは言え、これだけ大挙して登ってきてくれると、細かい虫が捕食されて少なくなるから、山も少しは快適になる。ただし、アカウシアブが出てくるまでではあるが…。
「さて…、雲は取れたか」。岩の上からエチ川の方を見渡す。頭上には雲が広がり気味で、雲がとれたとは言えないが、全体的にはスキ間も多い。これだったらエチ川でヒルネもアリ。と言うより、カンカン照りではかえって火膨れになってしまって、あとの始末が悪いだろう。そうと決まれば今年の初日サロと決めて、根の平峠に向かって歩き出す。
ヤマキマダラヒカゲかヒョウモンエダシャクか、そこかしこで数頭が群れ飛ぶ様子が見られる。めまぐるしく動き回るので羽の模様がよく見えない。色合いはヤマキマダラヒカゲだと思う。多くは低空飛行である。羽化したばかりではないかと思うが、早速交配相手を探しているのか、それともなわばりの主張なんだろうか。夏の御在所ではヤマキマダラヒカゲが単独で飛ぶ姿を見かける。ヒョウモンエダシャクは、そろそろ時期も終わりに近いと思うが、実際どうなんだろう。
大岩が折り重なる尾根を通過して北西尾根を分けると急降下が始まる。すっかり元のルートは廃れてしまって、脇道がメインとなってきている。いつ来てもあまり好きになれない急降下。間違っても登りには使いたくないとも思う。
左側にタケ谷の沢音が近づいてくる。略奪地形にでもなりそうな近さ浅さである。下るにつれて沢音は遠ざかっていくようなイメージがあるが、今日はいつまでも消えていかない。このところ、山の東側はそれほど降っていなくても、西側には大雨警報が出たりしているから、その影響だろうか。
いつになく長く感じる下り。しかし歩いていく限り終わりはある。なだらかになった斜面をしばらく歩けば根の平峠。水を一口飲んだら千草街道を西に取る。タケ谷でポリタンに水を継ぎ足してトコトコ歩いて行くと、千草街道とタケ谷道との分岐。いつの間にか丸太で橋が架かっている。
荒れ荒れのタケ谷道を下り、半ば廃道と化した昔からの道を藪漕ぎのごとくくぐり抜けて、旧渡渉点に到着。そのままいつものソファーに移動してヒルネ開始である。
川だから風がよく通る。陽射しが長い時間遮られると寒ささえ感じるが、雲のすき間から太陽が顔を出すと、夏至とほとんど変わらない高度の陽射しは非常に強く、空もこの時期としては澄んでいるから、たちまちジリジリ暑くなってくる。雲の切れ間は時間とともに広がっていく。今の時期は虫が少ないのも手伝って、本気のヒルネが始まる。
12時を回るとほとんど快晴。いい加減にしないと火ぶくれになってしまって始末が悪いから、ボチボチ帰り支度など・・・、ダラダラと・・・。
というわけで、「また来ます」とあいさつしてエチ川を後にする。いつの間にかすっかり夏空。色と言い、コントラストと言い、陽射しの暑さと言い。そして根の平峠。気温27℃。乾いた西風が吹き降ろしているだろうから、100mあたり1℃上がるとすると下界は35℃か。下りたくないが仕方がない。ボチボチと下山しよう。
久しぶりではあるが通いなれた千草街道。十分に涼んできたからだろうか、思いのほか足取りが軽い。しかし、こんな時は得てして調子に乗ってヒザを言わしたりするので注意しないといけない。
それにしても…。陽射しが熱すぎる。一番上の堰堤上の川原歩きは、短いとはいえ陽射しを遮るものがないから、たちまち体が火照ってくる。堰堤の下で、伏流水を抜く管から落ちる水に頭を突っ込んで冷やしてみる。後は風が熱を持って行ってくれる。
朝明のキャンプに戻ってきた。考えて見れば、今日は山の中では一人も会わなかった。この時期に…、意外中の意外である。
15:03、カンカン照りの駐車場に帰還。気温は31℃。それでも、車のドアを開け放っておいて後片付けしている間に、中の熱気が意外なぐらいに抜けてしまったのは、この時期にしては空気が澄んでいるからだろうか。
エチ川に、夏のあいさつ。いつもなら、早ければ5月の下旬にも足を運ぶが、今年は天気都合で、とうとう七夕までお預けになっていた。そして、今日行けたのもまた天気都合である。なにしろここまで晴れるとは思ってもいなかった。どれぐらい雲が取れるか、と思いながら入山したが、気が付けば夏空。とは言えこれも、つかの間の夏空ではある。
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