新宿〜松本〜穂高〜中房温泉
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2002年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
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感想
【北アルプスの風】
新宿〜松本〜穂高〜中房温泉
2002/08/10(土)1日目
出発前の朝食は納豆と卵と米。いつもはパン食なのだが「少しでもpowerをつけておけば」という木蓮のありがたい配慮による。0830自宅を出て最初の乗換駅、津田沼に向かう。歩きはじめてしばらくはザックの重さが気にかかったが最寄り駅習志野駅に着く頃には慣れてしまった。とはいえ乾燥重量16kgのザックの重さは肩に堪える。予備電池の他、様々な道具を増やしたせいだろう。現地からは水の重さが加わることになる。
津田沼駅で信州穂高駅までの切符を求め、総武線で新宿に向かった。日常の生活を離れ旅立つ心で、徐々に気分が高揚してきた。特急「あずさ」自由席を確保する為には、遅くとも1時間前に並ばなくてはならない計算。人波でごったがえす新宿駅は帰省、旅行客で溢れていた。6番線ホームに並ぶこと1時間、1030 始発「あずさ55号」自由席5号を確保できた。塩山、石和、甲府と次々と通過してゆく。忘れ物を置いてある南アルプス、裾野たおやかに広がる八ヶ岳が視野に入ってきた。食い入るようにそれらの山並みを見つめる自分、まるで子供のようだ。
1320松本駅着、構内6番線1340の電車で穂高に向かう。ニス塗木製の椅子が昔と変わらずにホーム並んでいた。弁当、お茶を購入した。ボタン式ドアをオープンしてザックで席を確保。出発までの10分で弁当を広げガツガツと食べた。欠食児童ならぬ欠食爺の喰いっぷりは「お品がない」なものであった。よほどお腹が空いていたのだろう。
安曇野を北に向かって電車が走り始めた。稲穂の緑に染まる田園風景がのどかに広がっていた。トマトの赤、茄子紺の色を重ねる夏の空が眩しい。大糸線沿線から見た北アルプスの展望写真が入り口ドアの上に貼ってあった。入れ替わり立ち替り、そのドアの前に立って見つめる人が絶えない。「あの人はどこの山に登るのだろうか。」私も傍によってまじまじと眺め期待に胸を膨らませた。
1420穂高駅到着。大勢の人が一緒に降り立った。見覚えのある木造の駅舎を出てバス停に並び、@1610円を支払って乗り合いバスで中房温泉に向かった。先年、中房登山口から燕岳を目指し、ザックの重さに耐え切れず頓挫した苦い記憶が蘇った。あれから3年という時間が流れた。再びの頓挫は許されない。昨年11月から今日まで重ねたトレーニングは何の為にあったかと自らを鼓舞したことだ。
1530中房温泉到着。登山口の佇まいが懐かしい。案内版と登山計画書のポストにも覚えがあった。
標識 景色 ポスト
今にも壊れそうな登山口売店を訪れ幕営を申し込む。1人孤影を託つ、目つきの悪い気難しそうな親爺が出てきた。常軌を逸した傲慢な態度で指示をする。「ここら一帯は私有地だから周囲を妄りにうろつかないように」「露天風呂には決して入らないように」「入ったことが判ったらテントを畳んで出て行って貰う」と刺のある発言が続く。「何という厳しい物言いをする親爺だろう」誰に対しても、こんなエラソーな態度で接するのだろうか。「昔も今も、きっと幸せではなかったのだろうなあ」といらざる事を考えてしまった。
テント 1630テント設営を終えた頃、ようやく陽が翳り始めた。隣のテントの人が戻ってきた。「よろしくお願いします」互いに挨拶を交わしながら、それとなく明日以降の計画の事などを話した。同じく燕を経、常念岳から三俣へ降りるということだった。茨城県から車で移動して来たというのにはちょっと驚いた。彼の話から近くの旅館で貰い風呂ができることが分かった。明日からしばらくはお風呂に入れない生活となる。「せっかくだから夕食前に入って来よう」。
古びた佇まいの木造の温泉宿を訪ねて「お風呂を貰いたい」旨を告げた。「右手の奥に行って下さい」と指示された。受付で@700円を払い、ギシギシと音を立てる廊下を奥に進み、立て付けの悪い戸を開けると檜の匂いのする小さな露天風呂があった。ちょっと温めの温泉、でも肌がつるつるして気持ちが良かった。備え付けの浴剤で身体と頭を丁寧に洗った。綺麗さっぱり沐浴し、店先で冷えた牛乳を一本飲んだ。味が濃くて美味しかった。湯治客が浴衣姿で設えてあるベンチで夕涼みをしていた。「おや、珍しい赤ポストまであるじゃないか」なんとなく「ほんわり」する気分。
飯炊き 無洗米0.8合をアルミコッヘルで炊飯。火加減と炊飯の時間の調整が難しい。どうしても「おこげ」になってしまう。中華スープと鰯缶詰という粗食だったが美味しく食べることができた。珈琲で仕上げ。既に日はとっぷりと暮れかけていた。1人の晩餐を終え眠りの支度に取りかかった。水道管から出る「温泉の熱い水」で洗顔歯磨きを済ませた。トイレは綺麗に使われていた。数人の湯治客が浴衣姿でのんびりと往来していく。ここは湯治場「中房温泉」であって、登山者は単に通過するだけに過ぎない。店の親爺が神経を尖らせる訳が何となく理解できた。
全ての道具をテントに入れて寝る支度を整えた。エアマットを入れても十分のスペースがある。今回、シュラフは持参せずシュラフカバーだけで過ごす軽量化作戦を取った。少しでも荷物を軽くしたかった。
ランプを灯して地図を眺めて過ごしたものの、旅の興奮もあってなかなか寝つけない。2100近くになっても睡魔が来ないのには困った。ラジオをつけてFM 音楽に聞き入ったが、ますます寝つけない。旅館の店先に自動販売機があったことを思い出しテントを出た。振仰いだ漆黒の夜空にダイヤモンドをちりばめたような星々が明るく瞬いていた。
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