伊勢尾〜御池岳〜T字尾根
prthivi
コースタイム
- 山行
- 6:20
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 7:10
| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2015年10月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
問題なし。 |
| その他周辺情報 | 永源寺・八風の湯。 |
写真
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伊勢尾取り付き。GPSのカラビナが写り込んでしまった。
装備
| 個人装備 |
【トップ】<br />finetrack：L1（スキンメッシュ）
L2（メリノスピンライト）；L3（薄いやつ+復路でニュウモラップ）。<br />Mammut： GORE-TEX（ボタンブチのみ着用）<br />【ボトム】<br />finetrack：L1
L2。<br />Mammut：ソフテック・トラバース<br />【etc.】<br />ヘルメット
mont-bell ツオロミーブーツ
BDトレイルショック
Millet・Namuche
指なしグローブ。
|
|---|---|
| 備考 | finetrack製品はモデルがコロコロ変わる。 |
感想
昨年、痛い目に遭った伊勢尾。転滑落し、右太腿を岩に強打して、撤退。下山後まもなく、ぶわっっと膨れ上がって歩行困難になるほどだった。撤退の決断が1時間でも遅れていたら下降は不可能だったかもしれない。そんなマヌケで恐ろしい体験をして尻尾を巻いて逃げ帰ってから、一年が過ぎた。
もういいかなとも思ったが、やはり心の片隅に残って離れない。いつか登らないと、心は晴れないままだと思いながらも少し山から遠ざかっていた。色々とタイミングが合って、「今しかない」と思ったこの日、昨年撤退したルートと全く同じルートで計画を立て、山行に臨んだのである。
朝4時起床、5時に名神に上がる。天気は上々で、ワクワクするも緊張。前回、急勾配でバランスを崩した失敗を繰り返さないために、何をすべきか。それなりに考えてきたつもりだ。ザックの重さは15�圈５い鯣瓦�なければ大丈夫なはず…と自分に言い聞かせる。
なんとも涼しい御池橋。名古屋ナンバーの方が通りがかり、少し言葉を交わす。自転車をデポしに行くとのこと。
一応渡渉があるが、それほどのものではない。伊勢尾の取り付き付近は控えめの紅葉が美しい。これが緩やかなハイキング・ルートだったら心も躍るだろう。しかし、尾根の取り付きというのは大抵急勾配だ。
ウォーミング・アップがてら、焦らずじっくり歩を進める。ストライドは意識的に狭く、狭く。ぐんぐん高度を上げる。体調はいい。体力も、普段のトレーニングと最近の減量とが相俟って絶好調である。痩せた尾根を過ぎると、植林地帯とブナ林の境目を歩く。ふかふかとした落ち葉と美しいブナが休日のボーナスのように心を満たしてくれる。右手のアザミ谷へ急激に落ち込む斜面を朝日が射し、キラキラと照り返る。対して左手の植林は鬱蒼として暗いが、その先は道路である（崖があるが）。ここでは明るいアザミ谷に迷い込む方が怖い。さて、鈴ヶ岳が見えてくるP894までは、すんなりと行ける。ここで休憩して、急登に備える。
一応ヘルメットなんぞを被り、ストックをしまって全ての紐を締め直し、登攀開始。登攀は大げさか。しかし一部、四つん這いで進むところがあるのだから登攀と呼びたくなる。目指すは鈴ヶ岳の東のコルだ。
ズルズルと滑る斜面を慎重に登る。岩肌が見えてきても全く楽にはならない。勾配は上がる一方である。浮石だらけなので、岩には慎重に手を掛けねば。
荷重を常に意識して、前へ前へ。1150m付近が最も困難な地帯だ。ここは右へ右へトラバース気味に登る。途中、足元から少し大きめの石が落ちていったが、凄まじい転がり方にぞっとした。その石が木にぶち当たった音も、死を予感させるのに十分なデカさであった。
後ろから、先ほど御池橋で出会った名古屋のご主人が追いついてこられた。ほどほどの装備で慣れた感じ。ぐんぐん右手の方へトラバースしていき、見えなくなってしまった。うーんすごい（確かに後で確認すると、ひたすらトラバースしてコルに出られそうな感じはする）。
僕は前回の失敗を克服するために、ここを登っている。あの空の切れ目まで、登ろう。木々に助けられながら、ゆっくりと。岩を周り込んだり、木を掴んだり、時折ずり落ちながらも、何とか進んだ。正直、途中で嫌になった瞬間もあった。しかし引き返す態勢を取っただけで滑落しそうな処まで来てしまっている。このために時間だけはたっぷりとったのだと思うと、少し落ち着けた。
しかし等高線の詰まり方がえげつない所は、岩の張り出しが凄い。テーブルランドに上がる難易度は：
土倉岳＜T字尾根＜伊勢尾
で間違いないだろう。初心者の毛の生えた僕の感覚である。まぁこの辺りの谷を自由に渉猟する鈴鹿エキスパートの方々にとっては大したことないのかも。
一瞬も気を抜けないセクションから40mほど高度を上げると、やや緩やかな勾配になり、コルへと出ることができた。しかしここは登山地図で「迷」マークが付いている場所だから、あんまりホッとしてはいけない。でも、クリアした喜びが勝る。
鈴ヶ岳から鈴北岳に向かう一般的な登山道（難路とは記されている）の少し南に、水のない谷筋があり、破線の登山道になっている。この道をチョイスしてテーブルランドに向かった。コンパスやGPSがなかったら、変な方向へ行ってしまいそうな地帯ではある。ここからは滑落の心配のない道（というほどの踏み跡はないが）をテクテク歩く。ついに一般登山道と合流。大勢の人がいる！
しんどいけど危険ではない道を歩いてきたという雰囲気を醸し出しているではないか。なんかヤッカミ半分だな。自分で選んだルートじゃないか。
ほどなく天狗の鼻へ。
風が冷たい。しかし達成感が体中を駆け巡り、寒さを感じない。
「ああ、もう二度と来なくてもいいや」
なんて気持ちにすらなってしまった。
ボタンブチまで来ると、もう一気に興ざめである。耳障りなおしゃべりを聞かねばならない。昼飯には早かったので、珈琲にした。仙台の「珈巣多夢」ブレンド。伊勢尾に乾杯。
もう後はクルマに戻るだけだ。さっさとT字尾根を降りよう。
下降点からの急勾配も、伊勢尾の後では普通の登山道に感じられる。木の根や岩の足場がしっかりしており、掴める木も多くアシストには事欠かない。
ただし、尾根が少し広がるので下るときは方向に注意が必要だ。西側の左肢を下降するのは今回が初めてである。尾根は分かりやすく、注意すれば迷うこともない。もう少しでゴールだ、と浮かれたのだが、そう甘くはなかった。後半の急勾配に、思いの外苦戦してしまった。右に御池河原、左に林道を間近に見下ろす。だが両サイドともかなりの勾配である。特に左は普通の崖であり、道路へ降りようと思えば死のダイブとなるのは必定である。尾根はどんどん細くなり、木々をかき分けて極細道を降りて行く。ここもよくよく気を付けてみれば、足でも滑らそうものなら大参事となるポイントではないか。よくこんな所を通るなぁ。
結局、あまりに道が細くなるので取り付き（御池橋たもと）まで我慢できず、途中で御池河原に降りようと決意（だってすぐ近くなんだもの）。そろりそろりと、杉から杉へと掴まりながら、急斜面を降りて行った。まさに「着陸」と言いたくなるような安堵と共に河原を踏みしめた。
〈雑感〉今回のファイントラックのレイヤリングは完璧で、汗をかいていないのではないかという錯覚を起こすほどであった。着心地のゴワゴワ感は宿命とも言うべきものだが、それを補って余りある効果である。
ただしソックス・レイヤリングに関しては違う。僕にとっては、汗の排出というメリットが履き心地の悪さというデメリットを上回ることはなかった。靴のフィッティングが変わり過ぎるのも欠点だ。
ゲイターが好きで、いかにも登山らしくて、今までの山行では欠かさず装着していた。今回、思うところあって使わなかった。結果、通気性や利便性その他多くのメリットを得た。御池では要らんな。Mammutのトラバース・パンツは秀逸。足揚げのラクさも保温も強度も上々、と感じた。
〈余話〉帰り道、蛭谷で、第4回奥永源寺「匠の祭」に遭遇。「木地師の里」という響きをこよなく愛する僕は立ち寄らずにはいられなかった。筒井神社周辺に4つの会場を設け、様々な職人が作品を持ち寄り、即売していた。木地・木工、革細工、靴、版画、彫刻、能面、陶芸、ガラス、パン…。見るだけでもかなり楽しい。なかでも日野椀の「帯び溜」には目を奪われ、経年変化のサンプルに圧倒された。
思わず、購入。漆を木地の裏側に染み出るほど（！）塗り付けるため「剥がれ」がほとんど無いという。
集落では住んでるおうちは2軒のみという寂しいお話だったが、末永く存続してもらいたいと心から願う。
・・・さて、次は茨川廃村の探訪かな。
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