オートルート2015(準備・総合編 3/3)
過去天気図(気象庁) | 2015年04月の天気図 |
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写真
感想
1. オートルート参加の動機
- 山スキー、あるいはバックカントリー・スキーを始めて14年ほどになるが、滑り派の私にとってオートルートはクラシカルな山歩きスキーであり、そのスタイルが常に魅力的に思えていたわけでは無い。しかし何かと話題に出てくるし気になる存在ではあり続けてきた。
- 2012年にVal D'Isereでスキーをした際に、2日ワンデイ・バックカントリー・スキーをしたが、アルプスの素晴らしい景色に感動してオートルートへの関心が高まったこと、50歳を超えて、体力が落ちる前に実現すべきだと思ったこと。
2. オートルートの印象の要約
- オートルートは素晴らしかった。圧倒的な山域の広がり、鋭角的な山、何とも微妙な青色に染まる巨大セラックや氷河帯など手間をかけてツアーに参加した価値は十分にあった。また6日間を歩ききったことに十分な達成感が得られた。
- 但し、上記の印象は天候に大きく依存する。どんなに準備しても天候で諦めなければならない状況を受け入れる覚悟は必要。天気は心配しても仕方ない、忘れろ、と何度も自分に言い続けたが、出発ぎりぎりまで気を揉むこととなった。
- 体力面は高度も含めて厳しいものだとは感じなかった。オートルートに入ってみると、老若男女問わず多くの人が歩いている。年齢の幅は広く下は高校生くらいから上は70歳位まではいたと思う。中央値は40歳位と感じた。
- 技術面ではスキーはどんな雪質でも安全確実に滑れれば問題ない。状況により一定の雪稜技術(クランポン、アイスアックスを使った登攀)が必要になるが、長い距離が続くわけではない。ガイドが万全の安全対策をとる。
- 滑りは登った分だけあるわけだが、最終日のツェルマットへの滑りを除けば、一本一本は長いものではない。またトラバースが多い。ほとんどが氷河の上の移動なので、クレバスがありどこを滑ってもいいというわけではない。日本の感覚では間違いなく滑るところが、ほとんど滑られていないのは、危険だからだ。この点に関してガイドは口を酸っぱくして注意していた。
- 個別要因ではあるが今回のガイドは(も)とても良かった。参加したメンバーが皆そう言っていたので、間違いないだろう。スタートから天候やトラブルで1日程度行程が遅れたが、いろいろなやりくりをして見事に予定通りツェルマットにパーティを導いた。オートルートを走破できたのはこのガイドによるところは非常に大きい。
3. なぜシャモニ・ガイド組合のツアーに参加したか
ツアー日程の選択の余地が多いからである。3月上旬から、4月下旬までの毎週土曜日、日曜日スタートのツアーが計画された。但し、全てのツアーが催行されるとは限らない。
ガイド組合の2015オートルート日程、料金などの発表
ガイド組合のウェブサイト上で2014年10月頃だったと記憶している。
http://www.chamonix-guides.eu
日程の決定と理由
参加したツアー日程:4月4日ー4月9日
- シャモニ、Sion(スイス)周辺の天候統計を見ると、4月が年間を通じて一番降水量が少ない月であること
- 多くの雪が残っているだろうと想定されること
- 個人的な休みの取り易さ
6日のツアーが標準的なものだが、Expressと呼ばれる3日で全ルートを駆け抜けるものもある。こちらは当然、要求される体力水準は高くなる。
申し込み日時
2014年11月、いつ埋まるのか分からないので決定次第すぐに申し込んだ。
手続き進行
ウェブサイトサイト上でまず申し込みを行う。この段階でどの言語を使うか選択する。選択肢はフランス語、英語、ドイツ語のいずれかである。私の場合は英語。申し込みをすると選択した言語での申込書と契約約款、必要となる装備品リストがが送られてくる。申込書には、ツアー参加可否を判断するための幾つかの問診があるのでそれに回答する必要がある。スイッチバックは出来るかとか、どんな雪でも安全に滑ることができるかとか、Yes/Noで答える質問以外に、今までやったことのある代表的なルートを書け、という質問もあった。日本のルート名を書いても分かるはずもないので、富士山3776mに2000-2300m地点から今年(2014年)スキーで3回、徒歩で3回登った。登頂所要時間はルート、状況により3.5-5時間くらい、全て日帰り、と記載しておいた。オートルートの最高到達点は3790mなのでそれを意識した。
デポジットやキャンセル料金やその手続き方法、天候の問題によるツアーのキャンセル、ルート変更、保険手配など契約約款内容を隅々まで確認する。その上で正式に申し込みをすることになる。一般約款はウェブサイトからpdfで取得できる。
70歳以上の人は医師の診断書が要求される。また申込者の技量、体力を総合判断してガイドが参加を拒否することができる。その際には代金は返金されない旨が記載されていた。
申込書郵送後、正式な契約書と請求書がメールで送付されて来る。
ガイド費用
2015年は1290€(但し、2月頃に1390€に値上げされた。これは1月にスイスフランがユーロに対して急騰したためと思われる。5泊のうち4泊がスイスの小屋である。契約約款の中で、途中で価格が変更される可能性があることは記載されていた。私には、契約段階での1290€が適用された。)
ガイド費用の中に明示的に含まれるとされていたもの
- ガイドサービス
- 小屋での夕食と朝食
- 昼食のサンドイッチとスナック
- ChampexからVerbierまでの移動費用とVerbierでのリフト代
- ビーコン、ショベル、ゾンデ、ハーネスのレンタル費用
ガイド費用の中に明示的に含まれないとされていたもの
- 個人的な飲み物
- 個人的な装備品やその他個人費用
- ツアー終了後のツェルマットからシャモニーへの移動費用90€(オプション)
遭難保険(リパトリエーション保険)
遭難保険の加入はツアー参加のための必須条件である。
ガイド組合の用意する保険があるが、地域的に日本人には適用されないので自分で準備しなければならない。その上で保険証のコピーを組合に送らなければならない。
ポイントは救助にかかる費用や、日本への搬送費用(リパトリエーション費用)を十分にカバー出来るものであることである。クライミング関係で使っているセブンエーを通じて三井住友海上の海外用山岳保険に加入。私の場合13日間、肝心の治療・救援費用1千万円で、その他死亡保障や携行品保障、賠償責任など含み、保険料は15430円。
ツアー出発確定
最低催行人数は4名。各日程4名集まったと思われる段階でDépart assuré(出発確定)とウェブサイト上に表示される。おそらく6名に達した段階で、その日程はウェブサイトから消える。客4-6人にガイド1人がつく。いつ頃、埋まって行くのか見当もつかなかったが、想像したより遅く3月最後の週末出発の日程が2月末頃埋まり、それから4月最初の週末が3月初旬にようやくDépart assuréとなり、2番目の週末と埋まっていった。
従って、航空券や現地での宿泊は手配したものの、日程によっては最低催行人数に達せずツアー催行されない、ということもあり得る。確認したわけではないが2015年のツアーも全て催行されているようには見えなかった。
組合との連絡
英語のできる担当者がいてメールでいつでも質問に応じてくれる。
最終連絡
ガイドからの最終連絡は4/4出発の場合、3/31にメールであった。必要な装備品や集合場所、時間などだ。直前に電話で連絡をとることもできた。
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