【奥越】大雪の荒島岳


- GPS
- --:--
- 距離
- 8.3km
- 登り
- 1,135m
- 下り
- 1,135m
コースタイム
- 山行
- 8:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 8:00
天候 | 雪 |
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過去天気図(気象庁) | 2025年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・ 当然だが既存トレースは大雪で完全にリセットされてノートレースの状態。一番ラッセルが深かったのは出だしの勝原スキー場跡で,スキーで膝〜モモくらいのラッセル。それより上部は強風で雪が飛ばされているためか,多少マシだった(シャクナゲ平への急登では再びラッセルが深くなる)。「もちがかべ」を越えてしまえばほとんど沈み込まない。 ・ シャクナゲ平以降は,「もちがかべ」をはじめ,急登が断続的に現れる。いずれもスキーで越えられるが,雪が硬い箇所があるので注意が必要。 |
写真
装備
備考 | スキー使用。降雪中で雪が柔らかかったため,クトーやアイゼンは使用しなかった。 |
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感想
荒島岳は,常時除雪が行われている国道から直接取り付くことができるうえ,降雪直後でも駐車地の確保が容易なため(もちろんこれらも除雪作業員の方々の大変な御尽力があってこそなのだが),大雪などの状況下で他の山がアクセスすら望めない場合,自分的にまず候補に上がる山の一つである。そのせいか,ここ数年,毎年のように冬季の荒島岳に登りに来ているのに,いつも悪天時ばかりで,晴天のこの山に登ったことが一度もない。当の荒島岳にしてみれば不本意なことに違いないとは思うけど。
今回も,今季最強寒気が目下到来中,各地で時間降雪量の観測史上最大更新を連発している中での登山ということで,もちろん当初はシャクナゲ平まで行ければいいや,あとはブナの森とスキーを楽しもうという腹づもりだったのだが,稜線に上がってみると意外に視界があるし風も強くない。なら行けるところまで…ということで,もちがかべはスキーで右手を巻き上がって越え,一時は山頂まですんなり到達できそうにさえ思えたが,「山頂まで412m」の看板が立つca1420mピーク(通称・中荒島岳)に上がったところで猛烈な吹雪と同時に,空と雪庇の境目すら見分けがつかない完全なホワイトアウトに遭遇。これ以上突っ込めば帰路を見失うか,雪庇を踏み抜くか,どちらにしても命はないだろう。ここからなら,まだ疎らに立つ灌木の影を道標にして帰れる。あっさり撤退を決めた。
山頂まで412m。晴天なら青空に映える純白の雪稜を楽しみつつ,弾むような歩調で軽々と登れる距離だろう。しかしひとたび吹雪かれれば,そのわずか約400mが白い壁となり,白い地獄となる。山の面白いところでもあるが,それ以上に恐ろしいところでもある。
その代わりに,というわけではないとは思うが,帰路のスキーは最高に楽しめた。
ところで,この寒い時期に怪談めいた話で恐縮なのですが,ちょっと奇妙な体験をしたので書き留めておきたい。まあ,山では割とよくあることだと思うけど。
まだ夜明け前の薄暗い中,序盤の勝原スキー場跡を登りながらふと振り返ると,ヘッドライトの小さな光がふらふらと後ろを登ってくるのに気がついた。しかもいつの間にかけっこう近くまで来ている。こんな悪天の日に他にも登山者がいるなんて,と驚くと当時に,これでラッセルを二人で回せば楽になるぞウシシ,と他力本願なことを考えていた。スキー場跡の上部で追いつかれるかもな,と思ったが,アテが外れて追いつかれることもなく,一人のラッセルが続いた。
さっきのは見間違えだったかな,と思って休憩ついでに足を止めて下を眺めていると,木立の間にやはり誰かが登ってくるのがちらちらと見える。全体的に黒っぽいウェアを着ていて,フードを深く被っているようだ。カチャン,カチャン,とスノーシュー(あるいはスキー)を蹴立てる音さえ微かに聞こえてくる。ああやっぱり見間違えではなかったのだ,と安心する。そんなことが何回か続いた。
しかしシャクナゲ平で大休止を取っても,いっこうに誰も登ってこない。一体どうしたのだろう。下の方で早めの休憩を取っているのだろうか?
それでもその人はもう一度姿を見せた。山頂直前の中荒島岳への急登を登りながらふと振り返ると,風雪の合間に,黒い人影が一つ手前のピークの上に立っているのが見えた。そこに立ち止まったまま進もうとせず,こちらをじっと眺めている様子だった。徐々に風雪が強まる中,進むべきか戻るべきか迷っているのかもしれない。私が中荒島岳のピークに登り上げたとき,その姿も白い吹雪に遮られて見えなくなった。
撤退を決めた後,文字盤の凍ったコンパスを頼りに下降を続けながら,あの人も無事引き返せただろうか,と考えていた。視界が十分でない中,間違った尾根に降りてしまうこともないとは限らない。そうなると,険しい鬼谷側に降りてしまってややこしいことになるが…とけっこう真剣に心配していた。
しかし,風雪に均されながらも微かに残る往路のトレースを追いながら,登ってきた尾根を下っていくうちに,ふとあることに気がついた。
どこまで下っても,雪上には,私一人分のトレースしか残っていなかった。
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