【フィリピン】Tibiao川左俣遡行〜マジャアス山頂〜Bantang川右俣下降

- GPS
- 36:54
- 距離
- 25.0km
- 登り
- 2,085m
- 下り
- 1,992m
コースタイム
- 山行
- 5:14
- 休憩
- 5:23
- 合計
- 10:37
- 山行
- 7:50
- 休憩
- 0:24
- 合計
- 8:14
- 山行
- 8:31
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 8:31
天候 | 概ね晴れ、3日目の午後に3時間程度の雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2025年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
●使用したレンタカー店 CarHub-Iloilo Car Rental Services https://www.facebook.com/share/15H2KbKTko/ 1日1300ペソで三菱のMirageを借りた。安かったが問題なく走り、良かった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【遡下降共通】 ・Flores〜Bantang川合流点は、ゴーロのみ。途中までは川の左岸側に径路があり利用可能。 【Tibiao川遡行】 ・Bantang川合流点〜Tibiao川二俣は、下部はゴーロ。途中から小滝が出てくるが、いずれも直登できるか小さく巻ける。 ・Tibiao川左俣に入ると、滝が連続する核心部となる。 40m滝は下部を右から巻き、上部は水線を直登。 3段40m滝は右岸から巻くと途中で径路に出た。 50m2条 Katumbal Fallsは左から取り付いて左の水流を横断し、水流の間の岩を登ってテラスに出る。以降は容易。 120m Bantawug Fallsは登れそうにないので、左岸から巻いていくと、途中で径路に出た。この径路はさらに上へ続いていたが、どこまで行けるのかは不明。この径路には沢の方向へ続く枝路もあり、それを利用して沢に戻る。 ・奥ノ二又の手前にはこの辺りでは貴重な幕営適地があるが、増水には弱い。 ・奥ノ二又で右に入ると、厄介なCS滝を経て水は伏流となる。最上部の1:1二又で間の急な薮を強引に登ると、以降は顕著な滝はない。 ・詰めの薮はそれなりにきついが、棘は殆どない。 【Bantang川下降】 ・二俣までは、クライムダウン、飛び込みと立木を支点とした懸垂下降のみで下れる。 ・Bantang川二俣のすぐ下流にあるゴルジュは、水線下降するにはしっかりしたキャニオニングの装備・技術が必要となりそう。今回は右岸から巻いた。 ・それより下流もクライムダウン、飛び込みと立木を支点とした懸垂下降のみで下れる。 |
その他周辺情報 | ・マジャアス山[Mt. Madja-as](麓の沢を含む)に入るためにはクラシの役所で許可をもらう必要がある。所要1時間程度。1人1日あたり150ペソだが、3日以上入る場合は3日分で良いらしい。 ・Katumbal Falls、Bantawug Fallsの名称は、3日目の午後に小屋で出会ったガイドから聞き取ったもの。Bantawugは辞書に掲載される単語ではないため、綴りに間違いがある可能性もある。Katumbalは唐辛子の意で、現地付近にそういう草が生えていることによる命名らしい。Bantawugは「長い」の意らしいが、Bangkaw「長い槍」の聞き間違いかもしれない。 ・岩質は角礫岩主体で、凹凸が多く、フリクションが良いため、沢登りに向いている。 ・ヤマビル少々 ・棘のある植物は少ない ・地形図:https://www.namria.gov.ph/downloads/topomap50/3454-IIICulasi.jpg |
写真
装備
備考 | ・ラバーソール適 ・クライミングシューズ不要 ・ロープは50m2本。2本とも使用した。 |
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感想
【計画の経緯】
フィリピンの沢の面白さは、2024年1月のアンブラヤン川下降〜キブンガン川遡行で実感した。その直後に行ったミンドロ島の沢は登れない滝が多かったが、他の沢はどうだろうかと思って地図や空中写真を見ていると、パナイ島最高峰のマジャアス山に、ナメ滝が続いていて面白そうな沢を発見。行く機会をうかがっていたが、日本の沢に行くにはまだ比較的寒い4月の、航空券の安いタイミングで行くことにした。
【記録】
○入渓まで
4/12は島内最大の都市、イロイロへの移動のみ。セブパシフィックの飛行機は1時間半以上遅れたが、待っていてくれたレンタカーを借りる。それからすぐに近場の宿へ。
4/13は観光と準備の日。島内唯一の世界遺産であるミアガオ教会と、眩い白さで著名なGarin Farmを一応観光してから、スーパーでガス(CB)と即席麺を買い、少々川エビ観察を楽しんでから、Floresへ下見に行く。問題なく駐車はできそうなことを確認し、近所の宿へ。
4/14早朝に入渓準備していると、集落の住民に、山で泊まるならばガイドと許可が必要と言われる。川に行くならばということでガイドは付けなくても自己責任となったが、それでも許可は必要ということで、市街地の役所へ戻り、900ペソを払って許可証を得る。ガイドなしでも許可証はすんなり出たので良かった。その後、警察署とFloresのバランガイホールでログブックにログインの記入。
これでようやく入渓できる。
○4/14 山行1日目 Tibiao川遡行
長いゴーロを吊り橋や漁具を眺めながら進んでいくと、徐々に小滝が出てくる。時折、何か作業をしている地元の方にも出会ったが、にこにこしていて友好的であり、少し前のミンダナオ島でけんじりさんが受難したようなことにはならず、良かった。それほど面倒なものはなく進み、等高線が混んで谷が険しくなりそうな手前で幕営。
○4/15 山行2日目 Tibiao川左俣遡行
等高線の混み方や空中写真から、今日が核心であろうと気合を入れて臨んだ。
登れる滝が多く、50m近いKatumbal Fallsも登れたのがハイライト。120m程に見える大滝Bantawug Falls(?)を高巻き、快適なナメ滝群を登った所で幕営。海も見える、開放的で素晴らしい幕営地だった。
高巻く滝も少なくはなかったが、それほど困難ではなく、棘や蔓の多い薮の高巻きが多かった去年のカツイル谷と比べ、かなり快適に感じた。
○4/16 山行3日目 マジャアス山登頂
振り返れば海、開放的な沢を、徐々に細くなる水流を辿っていくと、最後は薮に突入。少しで登山道に出て、さらに一投足で山頂。パナイ島最高峰に沢から登頂成功。残念ながら山頂ではガスに包まれ眺望なし。
下山しているとスコールが始まり、雨に当たりながら急な登山道を下っていくと、10名程度の登山者が休む立派な小屋が現れた。雨の中これ以上進むのは避け、今日はここまで。ここでは現地の登山者やそのガイドから様々な話を聞くことができ、なかなか興味深かった。登った沢の主要な滝の名前も聞き取ることができて良かった。
○4/17 山行4日目 Bantang川下降
小屋の脇を流れるBantang川を降ると、想像以上にゴルジュが発達していて、何度も懸垂下降&泳ぎ。登った沢とは随分違っていて驚く。水も澄んでいて美しい渓相で、予想外に充実した沢下降になった。が、この沢を遡行するのはなかなか面倒だろう。
登った沢ではあまり見かけなかった、白っぽいサワガニ類が多かった。
○4/18 山行5日目 下山
Bantang川の、滝がある部分は既に終えていたので、5日目はゴーロ歩きのみ。集落が近くなると漁師の姿も見えてきて、途中の吊橋で沢下降終了。最後は牧歌的な耕作地の合間を縫うように歩き、フィリピンの原風景を堪能。橋の上に停めた車に戻ると、川は子供達で賑わっていた。川遊び客目当てに僅か7ペソでアイスキャンデーを売っていたので、購入して下界の味を楽しむ。
最後にバランガイホールと警察署でログアウトの記入をして、下山の手続きも完了。
【総括】
海外遡行において、登れる滝が多くて面倒な高巻きが少なく、渓相もよいという沢を見つけるのが難しいということは、これまでの台湾やベトナムでの沢登りから分かっていた。そんな中、今回の沢はまさに沢登り的に面白くて快適で、景観も素晴らしく、しかも島最高峰に詰めあがるという、最高の沢だった。またこのような、もしくはもっと素晴らしい沢の発見を目標に、海外遡行の試みを続けていきたいと思う。
開放的な渓相、現地らしい生き物の観察、怒涛の連瀑、超巨岩にクソデカ大滝、山岳民族や山ヤとの遭遇など盛り沢山。
その土地ならではの自然や文化に触れながら、久しぶりの重厚感溢れる沢旅ができて最高だった。やはり長い沢は良い。
記録の詳細はたもしまが記載してるため、その他印象に残ったエピソードを追加しようと思う。
【現地山ヤとの遭遇】
今回の周回ルートは一部登山道を通るため、3泊目は整備されたキャンプ地を使用。そこで地元山岳民族のガイド4人と、お客さん6人?くらいの大所帯パーティーと遭遇。やはり「ガイドはいないの?」と突っ込まれてしまった。沢登りに来た事を撮った写真も見せながら説明し、「こりゃガイドの方が遅れるわ」とご理解(?)いただいた。
お客様さんと言っても、大層な荷物を担いで悪い山道を7日間ほどかけて縦走する根っからの山ヤに見えた。「なぜ沢が好きなのか?」と聞かれ、改めて簡潔に答えるのは難しい問だなと返答に迷っていると、「我々が山を好きな理由と同じだね、すぐには答えられない」という旨のお言葉をいただき全力で首を縦に振って返した。
民族、言語の壁を超えて何かが通じ合った瞬間に見えた。
【山岳民族の翁、初めてのトーテムカム】
目尻にゴルジュのような皺を刻んだ、精悍な顔つきをした御年60の翁。言うまでもなく現地人パーティーの最年長だ。聞けば、Bantawug Falls、Katumbal Fallsの名付け親らしい。
ザックから出して干してあるトーテムカムに興味津々のご様子。英語は通じないため、ノリと身振り手振りで使い方を教えると、河原の岩にある適当なクラックに決め始めた。引っ張っても抜けない事を確認すると、中学生男子みたいなキラッキラの笑顔になって大はしゃぎ。そのままテンション上がって、決めたカムを放置し苔むして根が張った薄かぶりの7mほどの岩を裸足で登っていった。彼にはカムもロープも不要かもしれない。
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