Milfiord Track -オフシーズンなので2泊3日で踏破-
- GPS
- 19:10
- 距離
- 37.1km
- 登り
- 430m
- 下り
- 543m
コースタイム
- 山行
- 7:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:10
- 山行
- 7:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:00
- 山行
- 5:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 5:10
天候 | 5/3 晴れのち曇り 5/4 雨 5/5 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
船
(http://tracknet.net/MTwinter/) Te Anau中心街から徒歩15分のTracknet事務所前からTe Anau Downsまでバス、そこからMildford Track入口(Glade Wharf)まで湖上を船で移動。 Tracknetの事務所まで行かなくても、事前に宿泊場所を伝えておけば宿の前まで迎えに来てくれる。 帰路はSandfly PointからMilford Soundまで船、そこからTe Anauまでバス。 上記全てパックで190N$。 Milford SoundからのバスはそのままQueenstownまで行くとのことだったので、追加料金を払ってQueenstownまで乗せてもらった。 他にも同様な運行サービスをやっている会社があるようだった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
オフシーズンに入ってすぐのタイミングだったため、よく整備されている。 序盤ではトレイルの改修工事をやっていた。 しかしAnderson shelterを過ぎた後の徒渉部分は橋が落ちており、倒木を伝って渡った。 雨が降るとフィヨルドの底は雨が降ると状況が一変し、川があふれて水浸しになる。 雨天時は停滞するのが無難。 |
その他周辺情報 | トレイルゴール地点から船で渡るMilford Soundは、観光地となっているところから少し離れている。 シーカヤックの体験会場になっており、船の運転士はそこのスタッフ。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
雨具
ゲイター
ネックウォーマー
毛帽子
着替え
靴
ザック
ザックカバー
サブザック
アイゼン
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ナイフ
カメラ
ポール
|
---|---|
備考 | 雨の翌日にも迂回できない水たまりが残ることがあるので 踵が固定できるサンダルは必須。 オフシーズンは明かりは点かないので 蝋燭があるといい雰囲気がでる。 |
感想
日本ではGWに当たる時期は、NZでは晩秋の時期にあたります。
クイーンズタウンやアロータウンでは紅葉が見ごろでした。
シーズン中は完全予約制(ガイド/個人ともに)となるMilford Trackだけれど、4月末(2016年は4/29)からはオフシーズンとなり、予約不要で歩くことができます。
しかし、テン泊は禁止で、指定の山小屋(hut)でのみ宿泊OK。
hutはシーズン中はガスコンロやベッドが完備されているんですが、オフシーズンにはコンロは取り除かれ、ベッドもマットが取り除かれてしまいます。
そのため、調理セットや寝袋を持参する必要があります。
避難小屋泊をするイメージかな。
オフシーズンということでどれくらい人が入っているかわからず、日本語での情報も少なく、かなりハードな条件を想定して臨むことになってしまいました。
また、街に荷物を残していかない方針だったため、トレッキングには不要なものも担ぐことになり、ザックの重量は20キロを超えてしまった。。(小屋泊なのに)
もともとは以下の日程で行動する予定だったけれど、5/2の大雨によりRouteburn Trackは見送り、街の散策に切り替え。
【原案】
4/29(金) 成田からシドニーへ
4/30(土) シドニーからクイーンズタウンへ
5/1(日) 街を散策後、テ・アナウへ移動(バス)
5/2(月) Milford Track
5/3(火) Milford Track
5/4(水) Milford Track
下山後、テ・アナウの街へ戻る
5/5(木) Routeburn Track
5/6(金) Routeburn Track
5/7(土) Routeburn Track
下山後、クイーンズタウンを経由してシドニーへ
5/8(日) シドニーから成田へ
【実際】
4/29(金) 成田からシドニーへ
4/30(土) シドニーからクイーンズタウンへ
5/1(日) 街を散策後、テ・アナウへ移動(バス)
5/2(月) 大雨のためテ・アナウで停滞
(ツチボタルツアー)
5/3(火) Milford Track
5/4(水) Milford Track
5/5(木) Milford Track
下山後、クイーンズタウンへ
5/6(金) Queenstown hills time walk
5/7(土) アロータウン散策、シドニーへ
5/8(日) シドニーから成田へ
氷河が創った谷を進むMilford Trackと、NZのアルパインチックな景色が楽しめるRouteburn Trackの両方を欲張るつもりだったけれど、結局は片方を諦めることになってしまいました。
シーズン中は超人気のMilford Trackと比べ、比較的予約が取りやすい(テントもOK!)なRouteburn Trackはまだこの先も行く機会はあるかも、、と自分を慰めつつ、代わりにツチボタルツアーやクイーンズタウンの丘歩き、紅葉の街・アロータウンの散策に切り替えました。
いい景色やツチボタルの神秘的な光景を見ることができて、これはこれでいい旅になりました。
また、今回のNZ旅行を通していろんな人にお世話になりました。
行きのシドニー行きの飛行機で隣に座ったのは、なんと同じ京都の方。
思わぬところから話が弾み、退屈な時間が楽しいひと時になりました。
Te AnauのDOCでhutの宿代を支払ったときにお話しした日本人の方(Mさん)。
初・海外トレッキングということで心配されて、その後同宿のドイツ人に言付けのメモを託され、無事ドイツ人から受け取ることができました。
心強かったです。ありがとうございました。
ダンプリング・ハットでお世話になったNZ人の方々。
ずぶ濡れボロボロで現れた自分を介抱してくださり、ほんとに感謝です。
下山後に一緒に撮った写真はプリントして飾っています。
前置きが長くなりましたが、山行の記録はここから。
【1日目】
NZでは主にYHA(NZのユースホステル)に宿泊。
ドミトリーで1泊約3000円。
Te AnauでもYHAに泊まり、チェックアウト後にスーパー(Fresh Choice)で食料や蝋燭を購入。
ここのスーパーは7amから営業していて、ありがたかった。
<8:20>
Tracknetの事務所に到着。手続きをして、バスに乗り込む。
同乗者は中国人3+白人1人のグループ、白人カップル、イギリス女性2人組、中国人1人(便宜上、張さんとします)。
ザックはバスに付随したカートに積みこんだ。
<9:00>
Te Anau Downsに到着。湖上のボートに乗り換える。
ボートへの桟橋から正面には大きな虹が出ていた。(写真あり)
イギリス女性が"Nice!"
ボートは屋根付きの客室が10人分くらいと、後部は乗り場兼ベンチになっていて、そのベンチに座った。
この場所、景色を楽しむには最適でした。
ときどき水は飛んでくるし、急加速したときは振り落とされそうになったけれど。。
辺りは初めのうちは平地が目立ったけれど、だんだん山に囲まれ始める。
氷河がつくったカールがたくさんあり、山は大概尖って急峻。
切り立った崖に囲まれていて、しばらく進んで振り返ると同じ山とは思えないくらい形が違ってしまう山も多い。
森林限界のラインがくっきりしていて、稜線歩きは気持ちよさそう。
北方向意外は晴れ。
...つまりこれから向かう方向は雲に覆われている。。
<10:00>
トレイルの入り口にあたる、Glade Wharfに到着。トイレあり。
ここからMilford Trackが始まる。
今日はどこまで行くのか?と尋ねると、中国人3+白人1グループ以外は自分と同じミンタロ・ハットまで行くとのこと。
到着早々からサンドフライの襲撃が始まる。
街には全然いなかったのに、トレイルでは終始悩まされた。
動きは早くないので歩いているうちは寄ってこないものの、立ち止まるとすぐに襲来。。
虫よけ持ってこればよかった!
歩き始めると、張さんとなんとなく一緒に歩くことに。
自分としては一人で歩きたいんだけど、お互いソロということで仲間が欲しかったらしく(?)なんとなく一緒に。
一緒に歩こうとは言われてないけど、写真撮っていたりしてゆっくりしていると、わざわざ待っていてくれる。
んー、、別にいいんだけど。。
でもはっきり結構ですと言えない日本人。。笑
お互い英語が得意ではなく、あんまり話も通じず。。
結局話した内容で覚えているのは瀋陽出身、ってことぐらいかな笑
<11:30>
クリントン・ハットに到着。
シーズン中なら、ここまでで1日目の行程は終了。
オフシーズンのメリット・宿泊地自由 を活かして、次のミンタロ・ハット目指して先へ進む。
ここで先行していたイギリス女性2人組に追い付き、以降抜きつ抜かれつで進む。
トレイル上で飛べない鳥であるウェカに遭遇。
<13:30>
Hirete shelterで大休止。
小さな避難小屋があるものの、ガイド山行専用になっていて施錠されていた。
なので隣のあずまやで休憩。
すぐ隣にはClinton riverが静かに流れる。
川のそばで佇んでいた張さんが突然驚いた声をあげて、"こっちへ来てみろ!"みたいなことを言ってくる。
なんだなんだ??と行ってみると、透き通った川を悠然と泳ぐ一匹の巨大ウナギ。
こんなに大きくなるとは。。
てかウナギって世界中にいるんだね。知らなかった。
"おいしそうだね"
"だろ? 何人分だろうな笑" と二人して笑いあい、shelterを後にした。
<14:15>
Mackinnon pass first view と書かれた看板。
峠どれ??と訝ったけれど、正解は谷のどん詰まりの平らになっているところらしい。
そんなに遠そうには見えなかったけど、峠直下でかなり迂回するので、翌日峠を越えるまで結構時間がかかった。
このあたりから背の高い木々が少なくなっていき、平らで広い谷底、切り立った崖と山が目立ち始める。氷河地形のU字谷だ。
前日は雨だったため、そこここに細長い滝が流れ落ちている。
時折"○○ fall"と書いた立て札があったけれど、どれのこと??と思ってしまうくらい滝が多かった。
でも翌日には、もういいや、って思えるくらい滝をたくさん見る事になったのだけど。
トレイルのある谷底は平らで、大雨が降ると渡れなくなる沢があるとDOCで言われていた。
この日の行程中にはそれが2か所あり、一つは"bus stop"というshelterの直後。(もう片方は忘れた)
大きな規模の岩ゴロな沢で、たしかに大雨が降ると渡れなさそうだった。
大雨で渡れないときはshelterで雨が止むのを待ってから渡るべし、と言われていた。
("bus stop"は文字通り屋根付きのバス停程度の設備で5人くらいしか雨がしのげなさそうだった。)
そういった場所の手前には"Swimming pool avalanche path. No stopping next ○○m."という立て札が立っていた。
途中、Wetland walkやHidden Lakeにも立ち寄る。
特別キレイなわけではなかったので、スルーしても良かったかも。
<17:20>
ダンプリング・ハットに到着。
12マイルの標柱を越えたあたりからハットまでは思い出したように登りが始まる。
あと少しなのにこの日のゴールになかなかたどり着かなくて焦った。。
少し暗くなってもきていた。
ハットに着くと、既に20人くらい先客がいた。
聞くと前日からトレイルに入り、クリントン・ハットに泊まった人たちとのこと。
小学校低学年くらいの女の子もいた。
ハットでは靴は外で脱ぐスタイル。
1階の奥と2階にベッドが並び、1階は主に炊事場と談話スペース。
水は外のタンクから取れるようになっていた。
暖炉(薪ストーブというのか?)もあって、既に火が焚かれていた。
ベッドを確保して夕食。
外は雨が降ってきた。
夕食を摂っていると、ドイツ人がMさんからの言付けのメモを持ってきてくれた。
"無理はするな、下山したら一報を"とあり、板チョコが付いていた。
まさかこんなところで、、
思っていた以上に心配されていたことを知り、ほんとにありがたい思いでした。
無事下山した後、御礼のメールをしました。
<19:00>
DOCのレンジャーが翌日の天気説明。
シーズン終わってしばらくの間はレンジャーがハット横の詰め所にいるらしい。
翌日の天気は雨。やはりそのまま崩れるのか。。
雨は特に午後が強くなるらしい。
明日は早発だな。
周りに聞くと、皆行こうか行かないか迷っているそうだった。
周りは20時には就寝。
少し談話スペースでゆっくりして、21時には床に就いた。
雨なのか風なのか、終夜屋根がうるさかった。
【2日目】
<6:00>
起床。まだ誰も起きていない。
朝食を摂り、出発の準備を整える。
しかし引き続き屋根の音はうるさいままで、風雨は強そう。
早発するつもりだったけれど、風雨が弱まるのを待つ。
結局8:00くらいになり、風雨が弱まってきたので出発することに。
今のところ、誰も出発していない。
というか、ほとんどの人が停滞を決めたようだ。
張さんが起きてきて、"行くのか? 僕は後から行くよ"とのことだった。
<8:30>
ミンタロ・ハット出発。
ハットの扉をあけると、すぐそこにウェカがいた。見送り?
ハットの屋根の音はかなり誇張された音だったようで、雨はかなり弱い。風もない。
しばらくは樹林帯を進むので、あまり雨も受けない。
想像以上に快調に進む。
増水したClinton riverを渡る。
静かに不気味に流れる川は、"まだ本気じゃない、良かったな、お前"と言っているように聞こえた。
Mackinnon passへの登りが始まる。
つづら折りで高度を上げていく。
時折トレイルに小さな滝ができていて、飛び石伝いに突破していく。
滝は上に上がるにつれて増えていき、そして森林限界を越える。
そこで、U字谷の終わりを見た。
三方を崖で囲まれたどん詰まりの谷。
崖すべてから無数の滝が流れ落ち、大迫力なのに、なにかもの寂しく、でも息をのむ光景だった。
雨のときにしか見られない景色だろうな。
<10:00>
稜線へ向けてジグザグに登り、Mackinnon passへ到着。
峠には高層湿原と大きなケルンが。
反対側のU字谷は深いガスに包まれ、底が全く見えない。不気味だ。
強い風も吹き上げてくる。
峠から20分ほど進むと、shelterに到着。
このshelterはトレイル上で一番しっかりしたshelterだった。
ここもガイド用と個人ハイク用で分けられているけれど、個人ハイク用も中に入ることが出来た。大休止。
シェルター前には鋭く尖ったピーク(ニセニセ奥穂と勝手によんでいた)が聳える。
光景としては、穂高山荘と奥穂のニセピークをさらに大きいスケールにした感じ?
登らないけど。
ここまでは体力的にも気持ち的にもかなり余裕があった。
風雨も、これまでの山で経験したものよりは大したことないものだった。
トレイル上で難所とされる峠もあっさり越えるし、この日の行程も順調に消化できると感じていた。
でも、そうはいかなかった。。
20分くらい休憩した後、出発。
トレイルはニセニセ奥穂の左を巻きながら下っていく。
shelterを出てしばらくは、よろめくくらいの強風の中を進む。
登りのときと同様、トレイル上の小さな滝を越えていく。
快調に下りつつも、トレイルに流れる沢や滝がだんだん大きくなっていく。
ニセニセ奥穂からほぼ垂直に落ちる滝が行く手を阻み、滝壺がすぐ横にあるところもあった。
上方では、強風に飛ばされて霧散する滝も。
滝だらけの光景で、雨ならではの景色を堪能した。
ここまでは靴を水没させていなかったけれど、滝を飛び石で越え続けているうちに徐々に浸水。。
<12:00>
U字谷の底に降り立つ。
ここから、トレイルが川状態になっているのが常態化してくる。
下りなのに、スピードが上がらない。。
しばらくすると樹林帯に入る。
時折かなり状態のいい階段があり、川トレイルから解放されて少しほっとする。
U字谷を流れる川は一気に大きくなり、暴れるように滝を流れ落ちていく。
時々トレイルが本流の滝の近くを通っており、爆音をたてて流れ落ちる濁流を見て、身が竦むほどの恐怖を感じた。
ここまでの川の本気を始めてみたと思う。そこまでの大雨でもないのに。
<12:30>
Andersons Cascade sheltereで休憩。
ここはただのあずまやがあるだけ。
でも雨がしのげるのはありがたい。
shelterからすぐにRolling Burnを吊り橋渡る。
その後、大きな沢に当たる。
二又になっていて、手前は橋があったが、二つめは橋が無い。
飛び石出来そうな場所はなく、ザブザブと流れに入れば突破はできそう。
でも、、靴のまま水に入る勇気は出ず(すでに浸水しているけど)、渡れる場所を探す。
すこし上流側に行くと、倒木(というか太めの枝という程度)があり、そこに乗りつつ空中にはしる枝を掴んでいけば渡れそう。。
試しにザック無しで途中まで行ってみて、どうやらいけそうだと判断、ザックを背負い、渡っていく。無事対岸に着いた。
沢登りのときの巻きみたく、崩れかけた岸を伝ってトレイルに復帰。
生死やケガにかかわるような場面ではなかったけれど、すごく緊張した時間だった。
その後も無数の滝や沢を越える。
後になって思えば、無理して倒木を渡らずに靴のまま沢を突破しても良かったかな、と思う。。
<13:45>
クインティン・ロッジのshelter到着。
ロッジはガイド山行用の宿泊施設で、そこに個人山行用のshelterが併設されていた。
NZで落差最大の滝であるSutherland Fallsはここから片道40分程とのことだけれど、時間的に余裕が無くパスすることに。
滝はもういくつも見たしね笑
shelterは雨風はしのげるものの簡素な板間とベンチのみで、ほこり臭い。
shelterから10分ほど進むと、飛び石では進めないくらいくらい水浸しになっているところが出現。
ここから泊地のダンプリング・ハットへはCT1時間くらいなので、サンダルに替えて進むことに。
膝小僧くらいまで水に浸かりつつ、突破。
サンダルに替えたことで飛び石で進む必要が無くなり、さらにまっすぐ進むことができるようになり、スピードが上がった。
このあたりから傾斜が緩み、前日に見たような平らな谷底のエリアに入ってきた。
川縁ギリギリのところをトレイルが通るところがあり、またもや完全に水浸しの状態。
踝くらいまでしか深さは無かったのでよかったものの。。
<14:50>
22マイル地点を通過。
地図によれば、ダンプリング・ハットはもうすぐ近くのはず。
トレイル脇に不自然な空き地が。ヘリの緊急着陸地??
そして、この先で今回の山行で一番の難所を迎えた。
完全水浸し、というか、池ゾーン。
平らすぎて、溢れた川の水で周囲が完全水没。。
迂回しようにも、崖と滝に阻まれて進めない。
進むには無理やり突破するのみ、らしい。
ハットへはもうわずかだから、撤退(=クインティン・ロッジのshelterに戻る)は最後の選択にしておいた。
よく水没するエリアらしく、トレイルは周囲より盛り土して嵩上げされている。
トレイル脇には腰くらいのポールが立っていて、それを頼りにそろそろと進んでいく。
少し進むと、トレイルが水上に現れた。
見ていたほど水没地帯は短かったなと思ったのも束の間、、再びトレイルは水中に没した。。
同じようにポールを頼りに進むも、次の水没地帯は明らかに手前のよりも水没区間が長い。
それにトレイルが蛇行しているようで、藪に遮られて見通しがつかない。
さらに、ポールすら途中から水没している。。深いのか。。
危険な雰囲気がありありと漂う状態だったけれど、あと少し、ここを越えれば、という思いが先走り、ついつい撤退をいう選択を先延ばしにしてしまった。
進みたいけれど、、どう進んだものか。
ポールが水没するくらい深い部分へ無理に突入すれば、嵩上げされたトレイルを踏み外して足が着かないくらいの深みに嵌り、溺れる危険が出てくる。
それなら歩くのではなく、泳ぐのはどうだろう。
沢登りの時にザックを浮き輪代わりにして泳ぐ方法があることを、どこかで読んだことがある。(某 沢ヤは著作中で"プカリ"と呼んだ)
試しにザックを浮かべてみる、、浮いた。
体重をかけてみても、ちゃんと浮かぶ。
、、、これはいけるぞ。想像以上に安定感がある。
というわけで、ザックを抱え、入水。
ザックだけ流されないように、スリングとカラビナで留める。
バタ足で推進力をつけ、藪の間を縫うように進む。
見た目以上に流れがあり、流されないように枝につかまりつつ進む。
順調だ。
しかし、ザックのポケットに差していたテルモスの水筒が流出。。
流れに乗ってぷかぷかと流れていってしまった。
水筒のアクシデントはあったものの、快調にスイミングを楽しみ、無事水上へ復活したトレイルに上陸した。
藪で隠れてわからなかったけれど、2番目の水没地帯は50mほどだった。
この上陸時、まさかまさか、水筒が打ち上げられていた。
無理して流れに逆らわずにしておいても、ここへ着いたのか。笑
<15:30>
上陸地点からわずか100mほどで、ダンプリング・ハットに到着。
水没地帯前からはたった数百mだったけれど、こんなに長く感じる山行は今まで無かった。
安心感でへたりこむ。
緊張が解け、一気に疲れが出てきた。
泳いだためにずぶ濡れで、急に寒さにも襲われた。
ハットを目の前にしてしばらく動けないでいると、突然、ぽっちゃり白人のおじさんが出現。
上はちゃんとレインを着ているのに、下はなぜかパンイチとビーサン。
明らかにトレイルを歩いてきた出で立ちではなく、疲れ過ぎて幻覚でも見たか、、と最初は本気でそう思った。
"よく来たな。名前は?"みたいなことを言われた。
よかった、幻覚ではなかった。
安心感でさらに寒さに反応したのか、全身でガタガタ震えだしてしまった。
おじさんも驚いたようで、急いでハットへ連れて行ってもらう。
ハットには年配の先行者が10人ほどいた。
パンイチのおじさんと同じNZ人グループで、後で聞いたら前日から停滞していたそうだった。
皆から心配され、暖かい飲み物をたくさん振舞ってもらった。
最高においしいココアだった。。
着替えても震えが止まらず、焚かれていた暖炉で温まらせてもらう。
しばらくそこから動けないでいると、"濡れた衣服やザックを乾かしておくよ"と申し出てくださり、ご厚意に甘える事にした。
ずぶ濡れボロボロ、頭もボンヤリしてしまっていたけど、ほんとにありがたかった。
しばらくして回復してきて動けるようになると、一人ひとりに御礼を言ってまわった。
この雨の中を峠を越えてやって来た、水没地帯は泳いで渡ったと言うと驚かれ、"クレイジーだ"と言う人もいた。
雨の中の峠越え自体は日本でも経験済みだったけど、さすがに泳ぐのは無理しすぎたな、と反省。
ハットが至近だとわかっているからこそできた無茶だったけど、親切なNZ人グループがいなかったらどうなっていたことか。。
ダンプリング・ハットはミンタロ・ハットと違い、炊事場&談話室がある棟と、ベッドが並ぶ棟とは別々になっていた。
衣類や大事なものは防水袋に入れていたけど、少しだけ浸水していた。
今まで大雨に降られても大丈夫だったけど、さすがに水に沈めたら浸水するか。。
沢登りのときは気を付けよう。
日が暮れるまでNZ人たちと談笑したり、ハットの周囲を散策してみる。
この頃には雨も上がっていた。
このhutにはレンジャーの人はいなかった。
日が暮れ、蝋燭の明かりで夕食を摂り、旅日記を書いて就寝。
【3日目】
5:40起床。
星が出ていた。南十字星どれ??
前日から干しておいた衣類やギアを回収し、朝食。
NZ人グループは6:50出発。
自分は15分程遅れて出発。
少しだけトレイルを逆走して、前日泳いだ場所を見に行ってみる。
...あれ? ここ同じ場所?? と思うくらい、全く水がない。
一晩で跡形もなく水が引いてしまっていた。
前日全く気付かなかった小さな橋もあった。
気付かずにぶつかっていたら危なかったな。。
進むべき向きへトレイルを歩き直し、Avalanche passをいくつか越えていく。
1時間ほどでNZ人グループに追い付く。
<8:30>
Boat shed shelterに到着。
ここのトイレは水洗らしく、NZ人たちが喜んでいた。
この日初めて日の光を浴びた。
shelterのすぐ先で、橋でArthur Riverを渡る。
前日の暴れ川が完全に鳴りを潜め、静かに流れる。
対岸へ渡ってすぐ、この日唯一の水浸しポイント。
迂回できないほど広い水たまりで、仕方なくサンダルに履き替える。
NZ人たちは靴のまま濡れるのを気にせずにザブザブと進んで行ってしまった。
先に歩いたNZ人たちにより泥が巻き上げられ、深さがわからずそろそろと進む。
最大で膝くらいまで深さがあった。
少し行くと大きな滝を眺める展望台と、Bell rockという巨岩。
それ以降は平らで比較的単調なトレイルが続く。
歩きやすく、木々の間からの木漏れ日が美しい。
まさに世界一美しい散歩道といったところ。
前日の苦行のような滝ラッシュとは同じトレイルとは思えない笑
しかし、川のそばを通るところでは足場が崩壊しかかっており、少し藪の中を歩いた。
<10:45>
Giants Gate shelter到着。
トレイル終点であるSandfly Pointからの船は13:30発。
ここから終点まではCT1時間45分とのことなので、かなり余裕だ。
shelterで休憩し、出発後すぐにエメラルドグリーンに透き通った川を渡り、橋からGiant Gateと呼ばれる滝を望む。
DOCのMilford Trackの紹介ページで真っ先に表示されるのがこの滝。
岩にぽっかりと空いた穴から川が滝となって流れ落ちていた。
だんだんモルタルで固められた足場が目につくようになり、トレイルの終わりが近いと感じ始める。
マイルポストも終点までのカウントダウンをしていく。
ふと後ろから足音を聞くと、後ろから英国人カップルが追い付いてきた。
前々日は自分と同じミンタロ・ハットに泊まり、昨夜はクインティン・ロッジのshelterに泊まったらしい。
彼らも前日の池ゾーンを見ていて、"あの中を良く越えたな!"と肩をたたかれた。
トレイルからアダ湖畔に下りられる地点に空き地(ヘリポート?)があり、そこで最後の休憩。
NZ人グループや英国人らも同じく休憩。
お菓子を頂きつつ、談笑。
最後のマイルポストを過ぎると、軽トラが走れるくらいの道幅に広がる。
<12:30>
Sandfly Pointに到着。
予期しない出来事もあったけれど、無事にMilford Trackを歩ききった。
みんなでハイタッチ。
船着き場で迎えの船を待つ。
海の先にMilford Soundのフィヨルドの山が聳えているのが見える。
時折、遊覧飛行のセスナが飛んでいく。
船着き場に荷物を置き、少しだけ続くトレイルを歩いてみる。
岸に沿って海上に桟橋が続き、どこまで行くのかわからないまま行ってみたけれど、5分程歩くと別の小さな船着き場で終わっていた。
水位が低いときはこちらの船着き場を使うらしい。
<13:30>
パワーボートとゴムボートが来る。
ゴムボートに荷物を載せ、人はパワーボートに乗りこむ。
初日に乗ったボートより一回り小さく、短いながらも海を行くので救命胴衣を付ける。
全員乗ることが出来ないため、2往復するとのこと。
自分は前半組。
ボートが走り始め、5分ほどでMilford Soundに到着。
港に直接付けるのではなく、車で引く台車に乗せられてボートごと岸に上がる。
Te Anauへのバスは14:30とのことなので、しばらく待つ。
日射しが強く、前日の雨で濡れたザックや靴がどんどん乾いた。
NZ人たちはここに車を停めており(レンタカーだが)、ここでお別れ。
最後に一緒に記念撮影。
途中で追いついた英国人は14:00の別のバスに乗って先にTe Anauに向かって出発していった。
14:30、時間通り迎えのバスがやってきて、自分一人の乗客を乗せてMilford Soundを後にした。
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