飯豊連峰の白き峰々(梶川尾根〜門内小屋〈泊〉〜北股岳〜飯豊山〜ダイグラ尾根)
- GPS
- 35:10
- 距離
- 37.5km
- 登り
- 2,723m
- 下り
- 2,706m
コースタイム
8:30 梅花皮荘手前駐車地出発
9:30 梶川尾根登山口
11:15 湯沢峰1021m
12:10 P1145
休憩
12:30 P1145出発
14:10 梶川峰1692.3m
休憩
14:30 梶川峰出発
15:15 扇ノ地紙(稜線)1889m
15:40 門内小屋〈泊〉
5/20(sun)
5:30 門内小屋前でK氏と会う
(30分ほど山談義)
6:05 門内小屋出発
7:00 北股岳2024.9m
7:20 梅花皮小屋
7:45 梅花皮岳
8:05 烏帽子岳2017.8m
9:30 天狗の庭
10:20 御西小屋でLuskeさんに会う
休憩
10:35 御西小屋出発
11:45 飯豊山2105.1m
休憩
12:30 飯豊山出発(ダイグラ尾根へ)
14:30 宝珠山
17:40 桧山沢渡渉点
18:40 飯豊山荘
18:47 日の入り時刻
19:40 梅花皮荘手前駐車地
天候 | 5/19(sat) 曇りのち晴れ 5/20(sun) 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【梶川尾根】 前半からかなりの急登を強いられる。左手には石転び沢の絶景と美しいクサイグラ尾根が広がる。1200m位までは所々夏道が出ていた。湯沢峰から鞍部に向けてシリセードで下る。核心部は梶川峰手前の1400〜1500m付近の急斜面。直登は厳しい斜面でジグザグにルートをとった。梶川峰以降は緩やかな斜面が稜線まで続く。1500m付近まで終始、虫の大群に付きまとわれるので注意。 【小屋について】 宿泊した門内小屋は貸し切りだった。中に何枚かブランケットがあったので、使わせて頂いた。トイレは鍵がかかっていて使えなかった。16:00の時点で室温8℃ほど。明け方は2℃まで下がる。翌日立ち寄った梅花皮小屋は門内小屋より広め。トイレは鍵が開いていて使えるようだった。御西小屋のトイレは使用できなかった。 【稜線上:扇ノ地紙〜飯豊山】 稜線上はほとんど笹薮の夏道が出ていたが、脇の雪上を歩くことも出来る。得意な路面の選択が可能。比較的広く、とりわけ危険な箇所もなかったので、自由な稜線闊歩を満喫できる。 【ダイグラ尾根】 下り始めてすぐのP1969を過ぎるとかなりの急斜面。1850m地点でいつの間にか北西の沢に誘導されそうになり、慌てず戻った。案内標識は一切無い。ここから先はナイフリッジな尾根伝いに数えきれないほどの小ピークを幾つも越えて行く。夏道はあったり無かったりする。尾根西側は薮なので、ほぼ東側の雪上を通過する。 しかし今にも崩壊しそうな雪庇の淵、または雪庇の下を通らざるを得ない場面に何度か遭遇する。それを嫌うとすれば、岩稜の薮を漕いで行くしか無い。危険を冒して雪庇を通過するか、または時間と体力を消耗する藪漕ぎを選択するか、生と死が紙一重の心の葛藤の連続。最大の難所は宝珠山手前の急峻な岩稜と巨大雪庇地帯を通過するところ。東側は500mほど切れ落ちた広大な急斜面。滑落すれば確実な死が待っている。尾根側には今にも崩れ落ちそうな巨大な雪庇がある。雪庇を遠く巻きながらトラバースして無事に通過できたとしても先はほぼ垂直に見える崖になっていて、登攀するしか無い。 とにかくありったけの体力と的確な判断力、そして少しばかりの"運"を必要とするのが、5月のダイグラ尾根なのだと思った。最後には吊り橋の無い広大な桧山沢の渡渉が待ち構えている。今年は運良く上流部にスノーブリッジが架かっていたが、積雪が少ない年は早く消えてしまうようだ。 なお、ダイグラ尾根については以下のサイトの記録を参考にした。 飯豊朝日連峰の登山者情報 http://www.ic-net.or.jp/home/iide/ |
写真
感想
天国と地獄。今回、僕が取った飯豊連峰をなぞるルートはこの一言に集約される。何が天国で何が地獄だったのか。
当初の予定では石転び沢を辿って御西小屋に泊まるはずだった。飯豊山荘まで車で行けると思っていたのだ。それが現地に着いて通行止めに遇い、4kmの舗装路歩きで1時間のタイムロスが確定した。この時点で僕は石転び沢のコースを諦めることにした。飯豊山荘から登山口までさらに歩かなければならないし、何といっても上級コースなのだ。時間に制約が出来てしまった状態では荷が重すぎた。それよりもなるべく早く稜線に出たほうが気持ちいいはずだ。だから地図を眺めて一つ隣の梶川尾根を行くことにした。
梶川尾根はいい意味でリズムがあり、退屈しなかった。最初の急登を我慢すると、左手に深く切れ込んだ石転び沢とクサイグラ尾根の絶景を楽しめる。梶川峰までの急登を上り詰めれば緩やかで広大な尾根が稜線まで続く。稜線上は360°の大パノラマ。西側には日本海。振り向くと朝日連峰も望める。門内小屋に着いた時点で、時間にまだ余裕があったので、梅花皮小屋までとも考えたが、先行者たちはトレースからどうやら石転び沢のルートをとったようだったので、このまま誰も来ないだろうと門内小屋に留まることにした。明日以降の行程が長くはなるが、その分早く体を休ませる事にする。何れにしても持参した3Lの水が尽きて雪を溶かして飲料水を製造しなければならなかった。水あっての命なのだ。
翌朝支度を整えて門内小屋を出発しようかという時、鈴の音が聞こえた。見上げると北股岳方面から歩いてきた来た登山者だった。柔らかい語り口にも力強さのある方だった。話を聞くと昨日はクサイグラ尾根を登って、梅花皮小屋に泊まったとの事。バリエーションのクサイグラ尾根を歩くとは相当の達人である。「それじゃ、長い林道歩きされましたよね」と僕が訊くと、「バイクがあっただろう、あれは私のだ。バイクでちょっとズルしたんだ」とK氏は言った。昨日、確かに登山口にはミニバイクが1台と自転車が2台デポしてあった。あのミニバイクの持ち主だったのだ。さらに話を聞くと、今日これから梶川尾根を下れば飯豊連峰のすべてのコースを踏破することになるのだと彼は言った。踏破したルートにマジックで線が引いてある『山と高原地図』を見て僕は驚いた。さらにK氏は続ける。「日本列島山岳往復横断した記録の本を出しているから、下山したら図書館で借りてみてくれ」と。僕は驚きを通り越して、半分呆れ返り、それから尊敬のまなざしでK氏を見つめた。僕がダイグラを下ると言うと、最後の渡渉を心配して「ザイルをやるよ」とまで言ってくれた。この場を借りて感謝申し上げる。K氏の著書はおそらく以下だと思われる。
http://www.palge.com/news/h21/1/20090205kido.htm
飯豊山までの稜線歩きは快適そのものだった。危険な箇所も無く、広い雪原を闊歩する。太陽は衰えを知らないし、青い空には雨を降らす事なんて忘れたようなそぶりで雲がプカプカ浮いている。天気も良いし時間に余裕があれば大日岳まで足を伸ばす事も考えていた。御西小屋まで来たところで若い男の方(Luskeさんでした)と会う。お互いどのルートを辿ったのかを訊いて、僕は大日岳まで行こうかと考えている事を伝えた。彼はこれから飯豊山に向かうという。簡単な挨拶を交わして別れた。その後帰りのダイグラの事を思い、なんだか急に気が重くなった。桧山沢にスノーブリッジはあるのだろうか。なければ、何とかして渡渉しなければならない。大日岳のピークハントを考えていたことを後悔。主峰縦走するにはやっぱり3日は必要だったか。後ろ髪引かれる気持ちをリセットして彼の後を追った。御西小屋から東側、飯豊山方面は雪が少ない。登ってきた梶川尾根や北股岳周辺に比べると格段に雪が少なく、薮や地肌が見えている部分が多い。小高い丘を駆け上がるように上り詰めた飯豊山の山頂では、しばらく絶景を眺めては至福の時を過ごした。
下山に取った5月のダイグラ尾根。僕の山行経験の中ではナンバーワンに踊り出た。何度か死がアタマをよぎる凄まじい体験だった。詳しくはコース状況の欄に詳しく記載したので読んでほしい。おすすめしたいけれど、やめておこう。そんなダイグラ尾根。信じるも信じないもあなた次第。持ちうるすべての体力、知力、技能をかけてこのダイグラと向き合ったから、残念ながら写真を撮る余裕は僕にはなかった。
何が天国で何が地獄だったのか。心の奥にそっとしまっておこうと思う。
よく歩き通しましたね。
tooleさんの強い意思だと思う。ダイグラを降りるだろうと思っていました。難しいと思いました。でもやりとげましたね。桧山沢をわたり終えたあとの気持を思うと、胸が一杯です・・・
無事に戻ってきてよかった!ゆっくり休んでくださいね
お早うございます。
飯豊山まで縦走してしまうと、その先は引き返すか、もう一泊するか、ダイグラ下るかになりますからね。
今思い返すともう一泊すれば良かったと思いますよ
桧山沢を無事に渡り終えた後は一気に緊張感が抜けましたよ〜
それから2時間の林道と舗装路歩き、こちらもプチ地獄なのでした
ここ最近、山歩きをしても筋肉痛がなかったのですが、火曜日から(一日おくれで ) 続いていますよ
今週末はお休みかもです
天気は良さげではありますが
すさまじい・・の一言。
声もありません・・・
tooleさんを直接知る者としては、無事帰ってこれて良かった、その思いです
ゆっくり休んで、落ち着いたら地獄のお話、詳しく聞かせてください・・
いや、tooleさんにとって、これからの登山人生を支える金字塔、軽々しく人に話するものではなく、ご自分の胸に大事にとっておくものかもしれませんね
本当にお疲れ様でした。超強力な山行に大きな拍手をさせてください
コメントありがとうございます。
桧山沢を渡り終えた後は安堵とともにもうしばらく登山はこりごりだとさえ思ったのですが、週末が近づくと次の山行を考えている僕がいます
昔、新潟に居たことがあって、新潟と山形の飯豊山登山口周辺はなじみの場所なんですよ
その頃はまだ山にはのめり込んでは居なくて、飯豊という山があるのを知っていただけでしたけれど
だから今回はアウェイというよりは、古巣に戻ってやりたかったコトをやってきたと言う感じです
こんな素晴らしい山を知る事無く、僕は下界で暮らしていたんだなぁと
一度足を踏み入れたら飯豊は奥が深くて、また違うルートを歩きたくなりましたよ〜
tooleさん、こんばんは
前半のお得意の超広角レンズの威力をまざまざと見せつける輝く太陽も霞んでしまいそうなくらいの生還劇
あぁ〜おそろしや・・・
timothyさん、こんばんは
ダイグラ尾根を下り始めたら、あれだけ元気だった太陽も雲に霞んでしまいました
僕の気持ちに合わせてくれたんでしょうね
どどどっーー♪という地鳴りとともに目の前の雪庇が何度か崩壊した場面に出くわしました
そんな光景を目の前にして、妙に落ち着いている自分が不思議でした
ダイグラに関してはただただ運が良かっただけです
コメントさせて頂くのは初めてですが、
「はじめまして」
と言うのは語弊があるかもしれませんね(笑)
御西小屋でお会いした者です
これまでに、幾度かtooleさんのレコを拝見させて頂いた事があったのですが、
まさかその御本人だったとは・・・嬉しい驚きであります。
ダイグラ尾根の濃密な山行、
読んでいるだけでも、如何に厳しい道のりだったのか、まざまざと伝わってきます。
自分の場合は、ダイグラよりも易しい川入コースを歩いた訳ですが、
同じ日、同じ山域に居た者としては、実に興味深く拝見させて頂きました。
積雪期のダイグラ尾根、しかも単独での通過は、ある種の偉業だと思います。
素晴らしい記録です。
くれぐれもお気を付けて、これからも充実した山行をなさるよう、お祈りします
またどこかの山でお会いしましょう!
ところで、文中にて私の事を、「若い」と嬉しい事を書いて下さってますが・・・
そんなに若くないです(笑)
webの世界でははじめましてですね
御西小屋でLuskeさんとお会いした時、ヤマレコの話をしようかとも考えたのですが、正直なところ僕も時間があまりありませんでした
あの時、ヤマレコの話していたら、きっと長い立ち話になったでしょうね 。
Luskeさんの下山をもう少し遅らせて日没まで引きずり込めたかも〜
いや、Luskeさんと知った時点で僕の代わりに安心してダイグラをお任せましたよ
車のキーを交換しませんかって(笑)
僕の山行は偉業でも何でもありません。
僕にとって飯豊と言えば飯豊温泉の梅花皮荘であり、あそこからの入山以外は考えられませんでした。
若い時代の思い出の地なのです。
あの時、まるで神隠しにでも遭ったのかと思うほど颯爽とした足どりで消えて行ったLuskeさん。
その幻影を追って飯豊の山頂にたどり着いた僕は「今日はおかしな日だ、山の達人に立て続けに二回も会ってしまった!」なんて考えていました
実際お会いしたLuskeさんはレコから想像する通り、かなりの熟練者とお見受けしました。
僕の山歩きはまだまだですので、いろいろ教えてください
どこかの山でまたお会いできれば、嬉しいです。
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