表妙義・相馬岳北稜(撤退)

- GPS
- 06:47
- 距離
- 6.1km
- 登り
- 969m
- 下り
- 971m
コースタイム
- 山行
- 6:48
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 6:48
00:00 0:00 0633 北稜取付地点(入山)
00:39 0:39 0712 P1
01:34 0:55 0807 P5(懸垂下降)
01:54 0:20 0827 P5〜P6コル(〜0834)
02:02 0:08 0842 P6
02:12 0:10 0852 P6〜P7コル(懸垂下降)
02:23 0:11 0903 下降点(〜0930)
(事故発生しエスケープ、途中随時休憩、懸垂下降2回)
05:41 3:18 1248 北稜取付地点(下山)
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
松井田妙義IC ↓ 出口料金所先交差点を直進 ↓すぐ T字路を右折 ↓2kmくらい T字路を右折 ↓3kmくらい T字路を左折 ↓1kmちょっと 中木川にかかる橋の約700m手前、左カーブの先あたり (写真参照) |
コース状況/ 危険箇所等 |
※ルートはGPSロガーでトレースしていますが、 撤退時は山腹の樹林帯を歩いているため、所々で飛んでいます。 1.取付 路肩にスペースあり、ピンクテープがあり。 ピンクテープは沢筋なので、すぐ左の尾根に取り付く。 踏み跡は薄いがある。 2.P1まで 非常に急な登りだが、2本足で立てる程度。 体力の消耗に注意。 踏み跡は何通りかあり、テープもあるが、 あまり頼りにせずに歩きやすいところを選択。 3.P1〜P5 一部切り立った部分を歩くが、このエリアでは並。 4.P5下降点 P5を過ぎてすぐに絶壁になる。 右手の支尾根から降りられるらしいが、 太い灌木に支点を作り、正面から懸垂下降した。 コルまで降り切る前に大きなスタンスがあるので、 そこで懸垂を解き、西側(取付地点から見て右)にトラバースすると 普通に降りられる。 右手の岩からP6へ登る。ホールドは十分だが傾斜がきつい。 5.P6下降点 P6を過ぎ、P7とのコルまで下ると絶壁となり、 直接P7へは登れない。灌木にテープシュリンゲによるあまり頼りない懸垂支点あり、 そこから20mほど西側の沢筋に下ると、P7に向かって泥が詰まったルンゼがあるので、 ここからP7へ登る。 このルンゼで事故が発生したので、情報はここまで。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ズボン
靴下
グローブ
雨具
日よけ帽子
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
行動食
非常食
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ヘルメット
ロープ
クライミングシューズ
ハーネス
確保機
ロックカラビナ
カラビナ
クイックドロー
スリング
ロープスリング
セルフビレイランヤード
|
---|
感想
本山行は途中で事故が発生し、受傷したため途中撤退しました。
その経緯は以下の通りです。
4月27日、朝6時半過ぎに表妙義・相馬岳の北側にある
相馬岳北稜の末端に車を停め、 そこから入山しました。
北稜の12のピークを経て相馬岳の最高標高点から茨尾根、
鷹戻しなどの地図に記載されているルートを経て、
中之嶽神社に下山するという行程です。
中之嶽神社の前の駐車場にはあらかじめ自転車をデポしてあり、
駐車場から車まで自転車で戻る、という予定でした。
P5まではさほど危険な個所もなく、 順調に行程を消化しました。
P5から次のP6までのコルに向かって、 15mほど懸垂下降します。
ここからが本番です。
P5〜P6コルには問題なく降り立ち、
そこから右側の岩に取り付いてP6を過ぎると、
次はP6〜P7へのコルに向かって降ります。
降りたところは絶壁で、灌木に懸垂支点があり、
右側に下っている急な沢を20mほど懸垂下降します。
懸垂後、確保を解いてルンゼを登りにかかった時、
足を滑らせて3mほど滑落し、尾骨を強打しました。
この瞬間、下肢全体に痺れが走ったので、
ただごとではないと即座に悟りましたが、
1分ほどで痺れが治まったのち、
今度は腰部に猛烈な痛みが走り始めました。
下肢に力が入らず、立つのがやっと、というような有様です。
この時、午前9時15分ごろでした。
腰に明らかな異常が発生したことを理解したので、
すぐさまエスケープを決断しましたが、
ここにやってくるまでに2度懸垂下降をしており、
ルートを遡行するには登り返しが必要ですが、
身体状況を考えると非常に困難と思われます。
そこで、地形図を熟読し、
尾根の北側の中腹をトラバースすることとしました。
このとき、9時30分頃。
こうした場所を歩く時、
人間は歩きやすい、とか、早く標高を下げたい、という心理が働き、
知らず知らずのうちに沢筋に入り込みます。
そして急峻な滝に突き当たって袋小路となり、
無理に降りようとして滑落、
というのが非常によくある遭難のパターンです。
その上、今回はもし沢筋を下りきることができたところで、
突き当たるのは道路もない湖の脇なので、
湖岸沿いをまともに歩けるとも思えませんでした。
幸いにも、ぼくは妙義はよく歩いているので、
その地理的特性は知っていたし、
似た地形である埼玉の両神山でも同様の経験をしてきたので、
たとえ歩きやすいと思っても、
沢筋に近寄らないように意識することができました。
しかし、腰の痛みは長時間の連続歩行を許さない状態だったので、
元から装着していた腰椎バンドをきつく締め直し、
少しでも痛みが強くなったら休む、ということを繰り返したため、
なかなか進みません。
10分に一度、5分休憩するような有様です。
それに、いくら沢筋に近寄らないようにしていても、
ただでさえ急峻な地形で知られる妙義連峰、
途中で別の沢筋に突き当たれば、
ザイルを使って懸垂下降することを余儀なくされると想定していました。
1時間半ほど歩いたところで、予想した通り中腹が沢筋の断崖で途切れました。
その下は30m程の落差があり、
持参してきたザイルでは長さが足りず、下降できません。
ピッチを切って下降ができるかもしれませんが、
籔に覆われて下部の状況よく見えないので、あまりにリスクが高すぎます。
少し戻ると、断崖の沢筋と合流すると思しき沢の支流があり、
そこが枯れた滝になっていました。落差は15mくらいだったので、
ここで懸垂下降のセットを行い、下降を始めました。
ところがオーバーハングしていたために
途中の岩角にザイルが引っ掛かって絡まっていたことに気づかず、
下降器にその絡まった部分を引っ掛けるという、
初歩的かつ重大なミスを犯してしまいました。
簡単に言うと、地上7〜8mのところで宙吊りになった状態です。
この絡まった部分をほどかないと、これ以上降りられません。
現在の身体状況では登り返すことは不可能。
おまけに枯れ滝からわずかに流れ落ちていた水で、
つるつるの一枚岩が濡れて滑り、踏ん張りが利きません。
そこで、振り子トラバースで懸垂でぶら下がった状態で岩を蹴飛ばし、
横移動する方法で足のスタンスを探すことにしました。
ザイルはテンションがかかった状態なので、
今より少しでも高い位置に身体を上げないと、
絡まった部分を外すことができません。
何回か振り子をして、どうにか少し高い位置にスタンスを見つけ、
そこでテンションを緩めることができました。
しかし、セルフビレイは取れるようなナチュラルプロテクションはありません。
絡まった部分をほどくため、下降器をハーネスから外すわけですが、
外れた状態で足を滑らしたら、確実にアウトなので、
ザイルとハーネスの間に施したバックアップである
マッシャー・ノットの利き具合を確認し、
万一足を滑らしても落ちないように確保をしてから、
ザイルを下降器から外して絡まった部分をほどき、
再度下降器にセットして懸垂を再開、ピンチを脱出しました。
この後ももう1回懸垂下降を強いられる場面がありましたが、
もう1度同じ失敗はすまいと慎重に乗り切り、
13時前に車を停めた入山地点に戻ることができました。
緊張が緩んだせいか、痛みは一層強くなりましたが、 どうにか生還です。
そこから車で中之嶽神社まで移動して自転車を回収後、
休憩を挟みながら高速道路を走って実家まで戻り、
すぐに休日診療を行っている病院へ行って
レントゲンとCTを撮ってもらったところ、
第1腰椎(胸椎のすぐ下で、腰の反りの上あたり)と
第5腰椎(尾底骨=仙骨のすぐ上)が圧迫骨折しており、
特に第1腰椎は背中側に少し圧し出されている状態でした。
一瞬感じた下肢の痺れは、どうやら圧し出された第1腰椎が
わずかに脊髄に触れたことによるようです。
医師には、あわや下半身不随だ、と脅されました。
もちろん即時入院、1ヶ月と言われましたが、
安静にしているだけだったので、GWを挟んで11日間入院し、
その後は実家で静養して仕事復帰したものの、
1ヶ月ほどは痛み止めを服用しながらの生活、
3ヶ月間は前屈禁止、コルセットの装着を強いられました。
-----
今回の事故は、小さなミスがいくつか重なったことが原因ですが、
ソロ山行で取るべき安全確保を十分に取らなかったこと、
ルートの安全性を十分に検討しなかったなどの、
初歩的なミスによってスリップしたと考えています。
今回の山行のミスを猛省し、
安全第一を念頭に置いた行動計画を立てるよう、
一層取り組んでいきたいと思います。
また、骨折部が安定するには、最低でも2か月ほどかかるとのことです。
ひしゃげた第1腰椎はもう元に戻らないとのことですが、
それとは別に、第5腰椎と第4腰椎の間に
小さいヘルニアがあることが判明しました。
1年半くらい前から違和感があった腰の問題も判明したというわけです。
ともあれ、2か月ほどはおとなしく過ごしつつ、
かつて膝を診てくれた整形外科に通ってリハビリをし、
また理学療法士とともに腰に負担がかからない歩き方を
研究していきたいと思います。
それとともに11月から12月ごろまでには身体をしっかりと作り上げ、
今回のルートに再度トライしたいと思います。
リトライ(2014年12月6日)
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-557570.html
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
motchさん こんばんは
GWにレコアップがなかったので、どうしたのかと思っていたのですが
大変なことになっていたのですね
大きなケガを負われた方には不適切な言葉かもしれませんが、
無事に生還なされて何よりです。
そのケガ、その状況で冷静に自力で生還を果たしたmotchさんの力量に感服します
ゆっくり治してください。
不屈のmotchさんですから、より強くなって復活することを信じております
doppoさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
GW2日目にしてこのザマでしたので、
外出どころかベッドの上での生活でした。
仕事には明後日から復帰しますが、
向こう2ヶ月ほどはコルセットでがっちり固定します。
7月くらいからポツポツリハビリ登山、
と言ったところでしょうか。
5年前にもGW2日目に富士山で滑落し、
GWの間はずっと自宅で静養でした。
どうもGWは鬼門なのかもしれません。
もちろん、今回は自身のミスが最大の要因なのですけれど。
こんにちは、motchさん
怪我をされたのは非常に残念ですが、ソロで生還されたのは何よりです。
救助呼んだとしても場所が場所ですから。
ご家族とお仕事も大事にして下さいネ
1955さん こんにちは。
おっしゃる通りで、
場所はとてもヘリが近づけるところではなかったし、
救助を呼んでも3時間くらいはかかると分かっていたので、
かねてから想定していた自己搬出について、
想定通りにできたかな、とは思います。
緊急時ほど、これまでに身につけてきたものが
モノをいうものだと痛感するとともに、
改めて自身のスタイルについて見直すいい機会だとも思います。
日記から来ました^^
リアルな事故の描写に思わず読んでるこちらまで痛くなる感じがしました
自力下山し、自宅に自分の車で帰宅するという強靭な精神力に脱帽です。
ケガの際の自己搬出の技術があっての生還ですね。自分なら滑落遭難です^^;
尾てい骨の痛みは自分も大昔ですが経験があります。
中学入学前の春休みに小学校の校庭の鉄棒で遊んでいて、鉄棒の上を綱渡りの様に歩いていたときに、足がズルッと滑り、次の瞬間、股間を鉄棒に強打(自分の体重でガツンと)をして、本能的に手で鉄棒をもち、クルッと回転(顔が上向き)してぶら下がり、着地しました。(お猿のかごや状態です)
次の瞬間、目がチカチカ、目の前が白黒画像のようになり、5分位気持ちが悪くなり、座り込んでいました。(呼吸も一瞬できないほどでした。)
自転車で帰宅後、近くの接骨院へ。「あと少しずれて尾てい骨直撃だったら危なかったね」と言われました。その後も、数年間はちょっと長い時間座るとへんな痛みが残り、気になりました。また、尾てい骨周辺の変な痛みがやはり数年続きました。
骨折ではない自分でもこんなだったので、個人差はあると思いますが、motchさんもしっかりとリハビリ治療を
こちらにもコメントをくださり、ありがとうございます。
まあ、そもそも事故を起こした時点で問題があるわけですが、
それでも帰ってこられたというのは、
あいにく運の要素の方が強かったかもしれません。
運に頼る山行は山行とは言えないと思っているので、
とにかく反省ですね。
パニックにならなかったことが唯一の評価点でしょうか。
それにしても、尾てい骨ってのは、尾というだけに尾を引きますね。
結局ダメージは尾てい骨より上の腰椎に直撃しましたが、
より損傷の激しい第一腰椎よりも、
今でも打った第五腰椎のほうが痛いし、前屈もままなりません。
doritosさんのご体験を拝読するに、
暫くは違和感やら鈍痛やらとお付き合いしなきゃならないのかなあと思います。
しかし、この痛みや違和感が取れても、
この事故の教訓は一生刻み込んでおきたいものです。
motch さん、ご無沙汰しております。天武将尾根でお会いしたkihaです。
お怪我の事最近まで知りませんでした。
大変でしたねぇ。
厳しい状況の中でのmotchさんの冷静な考察と生還への強い意志が帰還に結びついたのだと思います。
しっかりと療養して、また歩荷訓練してください
おはようございます。
ご無沙汰しております。
kihaさんのレコは拝見いたしております。
こんな古いレコヘコメント下さり、
ありがとうございます。
運に頼った登山なんて登山とは言えないのですが、
今回に関してはまずは打ち所が悪くなくて済んだ、
という幸運は間違いなくあったと思います。
せっかく享受した幸運ですから、
それをきちんと活かさないといけないな、
と考えながら歩きました。
お蔭様で体力と患部にかかる箇所以外の筋力は、
元に戻ったと思われます。
歩荷トレをできる状態にはまだ遠いですが、
日々コツコツとトレーニングを続けていきます。
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