谷川岳
- GPS
- 16:27
- 距離
- 39.5km
- 登り
- 2,660m
- 下り
- 2,265m
コースタイム
7日・9:00天神峠ー12:00谷川岳トマの耳ー13:00一ノ倉岳ー16:00武能岳ー17:00蓬峠。
8日・6:00蓬峠ー7:30白樺避難小屋ー9:20芝倉沢出合ー10:40一ノ倉沢出合駐車場。
天候 | 6日・晴れ夕立あり。7日・晴れ。8日・晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
7日・車で谷川岳ロープウェイ駐車場まで。500円/日。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
天神平から尾根を縦走するルートは、足場こそ悪いが人通りが多く、慎重に歩けば問題なし。ただし夏場のみ。 蓬峠から湯檜曽川へ降りる旧道ルートは、岩盤剥き出しの沢出合をいくつか越える危険ルート。初心者は絶対に単独で行かないこと。 帰りにひとっ風呂浴びるなら、大穴の「上越館」がおすすめ。国道291号を谷川岳から水上に向かう途中、左側に看板を見つけたら即左折! |
写真
感想
8月6日。朝5時に自宅(茨城)を出発し、群馬県沼田市みなかみ町へ向かう。谷川岳を散策するのだ。理由はひとつ。今年1月に消息を絶ち、6月になって発見された末弟を供養するためだ。水上で、捜索に当たってくれた谷川岳警備隊の隊長に会い、発見現場まで案内してもらう。夏休みで観光客・登山客が多く、大変忙しい中で時間を作ってくれたことに感謝。それでなくても、この半年間の捜索にどれだけの労力を払ってもらったか分からない。隊長のみならず、山岳救助のエキスパートが揃った警備隊の皆様には、いくらお礼を言っても足りない。本当にありがとうございました。本当に。
発見現場の湯檜曽川上流の河原に到着。四方を急峻な山に囲まれ、上流でいくつかの沢が合流して蛇行するゴロタ石の河原。夏の一瞬しか露呈しない河原は、カラカラに乾いているが、春先の雪解け水が流れる頃はここまで増水するらしい。地形から見れば、とても分かりやすい発見現場。弟は春先に、上流から流されてきたのだろう。隊長が持ってきてくれた線香と花を添え、全員で合掌。
雲行きが怪しくなってきたので、早々に帰途へ。隊長の警察無線からは絶えずなにやら聞こえてくる。山奥の通信手段について聞いてみると、無線と携帯とのこと。つまり山奥では機能しないわけだ。山仕事をしているぼくの仕事場と大して変らない。山岳救助についての言葉が重い。
「私たちも、なんでもできるわけではないですから」
つい最近も山岳事故のニュースが立て続き、救助隊を非難する言葉こそないものの、忸怩たる思いはあると思われ、間接的にも迷惑をかけた身としては言葉がない。携帯がつながると、隊長になにやら連絡があったらしく、「ちょっと寄るところがありますので、これで失礼します」とあわただしく帰っていった。ご苦労様です。
8月7日。一夜明け、谷川岳登山、というか縦走です。気になるのは3人全員が登山初心者、というか、縦走なんて初体験!なので、ちょっとでもモンダイが起きたら即撤退!という原則のもと、ロープウェイ乗り場まで向かいます。
谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳、武能岳、蓬峠、清水峠、朝日岳、笠ヶ岳、白毛門、をぐる〜り一周するコースは、地元の登山コースでもあまり紹介されない上級者向けコース。あえてこれを選んだのは、ぼくではなくぼくの次弟。末弟が辿りたかったろうコースを歩いてみようよ!と、忙しい中提案してくれたのはいいが、地図やらネットやらで調べると、一泊二日ではギリッギリ周れるかどーかの難しさ。次弟はスポーツマンでトライアスロンに挑戦するぐらいだから、体力には自身があるのだろうとは思ったが、その嫁も同行しているし、ていうか、ぼくに自信がない。いくら毎日山仕事をしてるから、とはいえ、歩く距離で言えば、一日せいぜい数キロで、縦走みたいに長い距離は歩かない。ま、行けるところまで行ってみよう。ケ・セラ・セラだ。
さーて。行きますか!と先頭きってズンズン歩いたのは最初だけで、すぐにとんでもない急斜面にぶつかり、ずりずりと遅れていく。言い訳するわけじゃあないけど、もうぼく四十路です。そんなに体力はないんです。
ようやく谷川岳山頂。山頂に上がってしまえば、あとは平らなコースかと思いきや、当たり前だけどアップダウンがあるわけですな。じゃないと全部一個の山、ですから。で、次の山頂まで、さんざん下って、そして登るわけです。
谷川岳から一ノ倉岳へ続く稜線は、鋭角すぎて、雲も越えられない。これ見たときに、あー、えらいとこきちゃったなー、と思いましたね。んでも、こんなとこを、幼稚園児と祖母コンビが歩いていたりしますから、観光地ってなあスゲエもんです。
一ノ倉岳山頂で昼食。ここでしっかり食べるアスリートの弟夫妻に比べ、ぼくは水と命水(酒ともいう)でどうにか人心地。物が食えないのは結構末期症状なんだけど、先はまだまだ長く、それを思うと食欲が湧かないというか、ま、酒があればね、一瞬元気にはなるんだなこれが。
茂倉岳山頂で出会ったおっちゃんは、谷川岳慣れしているようで、クーラーボックスにビールとおつまみだけ持って、ジョギングスタイルでここまで来ちゃいました。こんな人もいます。今日はこのそばの山小屋に泊まるそうです。夏場なら、雪さえなければ、なかなか楽しめる山、ではあるんですね。
どうにか武能岳まで行きました。もうヘトヘトです。空も暮れてきました。この先に山小屋があるので、とにかくそこまで!行けば!休めるノダ!
蓬峠の蓬ヒュッテが見えた途端、それまで散々遅れを取っていたぼくが、ひとりでズンズン進んで行きますよ!だってもう、足が痛いんですよ限界なんですよもう!座りたいんですよ寝たいんですよもう!そんなわけで、管理人さんに挨拶したら、山小屋はいっぱいなんで、テント場の管理人さんのテントを使ってくれ、とのこと。開けたらシュラフが10個も敷いてある。なるほど、最高で10人オーバーまで見込んでいるわけか。そこに我々3人で、のびのび〜♪寝ることとなった。
8月8日。山の朝は早く、5時前にもう「お先に」「いってらっしゃい」と挨拶交わして出発する山男がいる。我々も6時に出発。管理人さんにご挨拶がてら、残った酒をプレゼントすると、いかつい顔がぐんにゃり崩れて「安全を祈願して」と山小屋の前にある鐘を打ち鳴らしてくれる。ありがとー。行ってくるぜい。
行ってくる、とはいえ、昨夜のテント内会議から「もう下山しよう」との決議に達したので、縦走の予定を変更し、下山コースを進む。予定より進めなかったのもあるが、ぼくも含め、というかこの縦走の発案者たる次弟が弱音を吐きまくるのが主な原因だ。「こんな道だとは思わなかった」「足をひねったらトライアスロンに出られない」「登山てなにが面白いんだ」などなど、まるで誰かのプランに乗っただけ、のような無責任な発言は、兄としてはたしなめないといけないところだろうが、面白いのでしばらく泳がせてみることにした。
下山するのは大賛成だったが、最短コースは沢を渡らなければならず、これは次弟から却下。昨日通ったコースなのだが、ゴロタ石は苦手らしい。長い付き合いで、言い出すと聞かないのは分かっていたので、じゃーしょーがない。ちょっと大回りで行くか。そして、これがこの旅最大の危機を呼ぶことになる。
このコースには湯檜曽川に合流する各沢の上流の、急斜面の岩場がいくつもあり、当然これを越えなければ進めず、登山とは歩くものだと思っていた我々に大変な衝撃を与えた。四足歩行と尻もちでずるずると岩場をすべり降り、たよりないロープをつたって這い登る。助けたくても足場が無く、各人とにかく頑張れ!と祈るしかない。いやほんとに怖かった。
谷川連峰は全体に岩山で足場が悪く、なだらかなところなどほぼ皆無。夏はまだいいが、ここに雪が積もってしまえば、わずかばかりの登山道などないのと同じ。冬の谷川岳で遭難者が続出するのは理由がちゃんとあるのだ。ここで命を亡くしたぼくの末弟は、谷川岳縦走は未経験のまま、冬の縦走に挑戦した。実際に歩いてみた感想から言えば、末弟のやったことは、無謀を越えて、言いたくはないが、死にに行ったようなものだ。馬鹿なヤツだ。まったく。馬鹿だよお前は。馬鹿なんだよ!お前は!悔しかったらなんか言ってみろ。
早めに下山できたので、地元の温泉につかって汗を流し、飯とビール。いつもはぼくが運転手なので飲まないが、今日は弟夫妻が運転してくれるというので、思いっきり飲ませてもらいました。いや、まあ、このうまさは言葉では伝えられません。またここの飯がうまくてねえ。「上越館」そばの軽食屋です。多分フレンチです。女性店長の細やかな心配りに感服でした。また行きますね!
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
yoz4444さん、こんばんは。
記録公開、有難う御座います。
山へ向かう姿勢を考える、警鐘としての記録も必要だと思います。
yoz4444さん こんにちは。
私も単独行なので いろいろ考えさせられます。
ありがとうございます。でも残念なことに
北海道で また遭難のニュースが・・・
>kukenさん
あなたの励ましがあったから、記事が書けました。今回のことでは、kukenさんはじめ、管理人さんにも大変なご迷惑をかけたので、せめてもの罪滅ぼしです。深刻になりすぎず、気軽に読んでいただけたら幸いです。登山に関しては超初心者なので、データなど参考にはならないと思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。
>miccyanさん
はじめまして!単独行は気楽で孤独で素敵ですが、少なくとも冬の谷川岳では無理、ていうか、冬に行くこと自体が・・。ま、日高の事件にしても、山川では何が起こるかわからないので、チームで行けば大丈夫!ということはないんですが。
ワタシも単独行(カヌー)が好きなんですが、今年はやる気になれませんです。皆さんの山行記録を読んで精進させてもらいますので、よろしくお願いします。
初めまして、岳友のkukenさんの日記を読み、
山行き読ませて頂きました。
実は、電話でkukenさんから弟さんの事で、
お兄さんから連絡が有ったとの一報を、最初に
受け取った者です。
予想される登山ルートを、悩んで考えていた
様です。
私は高所恐怖症で、急傾斜を見ると逃げ出したく
なる気の弱い山好きです。
文章を読んでいて、弟さんにも私の様な恐がり
であって欲しかったと言う気持ちが、良く読み
取れます。
無理しなければ、山はいいものです。そう思って
いただける様に願っています。
>nomad8さま
コメントありがとうございます!
末弟失踪当時には、kukenさんからルートについてアドバイスいただき、捜査に役立ちました。きっとnomad8さんのご意見も入っていたことと思います。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
末弟は登山者としてはまだまだ未熟で、それ故無謀な挑戦をしてしまったのでは・・、というのが大方の見解です。結果が失敗、なので、ぼくもそれは認めざるを得ないのですが、でも、もしぼくが谷川岳の怖さを知っていたら、末弟を止めたか、というと、それは分かりません。
やりたいことは、やってしまわないと納得がいかないものでしょう。
ぼくは山ではありませんが、単独行で旅行をするので、末弟の「行きたい!」という気持ちはよく分かります。本人はきっと、満足しているはずです。
山は好きです。でも登山はキツイ!この辺、ぼくもまだまだ修行が必要ですね。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する