月山筍（がっさんだけ）採りで遭難

　月山の麓の根曲竹にはえる筍を庄内地方では月山筍（がっさんだけ）と呼んでいる。この歴史的な呼称については「出羽三山信仰と月山筍」渡辺幸任（ゆきと）著　杏林堂漢方薬局発行に詳述されていますがこの月山筍を採るためだけの道が月山八合目からあり地形図にも載っている。また地元の羽黒町手向山菜組合の方々がこの道を毎年整備している。数年前までは各人が採る場所も決まっており，採るシーズンが終わると採り残した筍を採って日当たりを良くして整備していたのである。１ケ月ほど筍小屋に住んで採った筍を雪に埋めておき，その家族が１週間に１回ほど取りに来て一人40〜50ｋｇを背負って手向地区の宿坊に卸していた。今はその小屋は無いが良品な筍が採れる場所を知っているのが連綿とその家族に伝わっている。
　ただ一般の方々も一回で10〜20ｋｇを採ってくるが，ときおり遭難事故を起こすことがある。いちばん新しい遭難が今月３日から行方不明になった７１歳の方がいる。私も４日に遭難救助隊として参加し竹林の中に入って捜索した。昨日６日午前１０時ころ県消防防災ヘリが笹川にいるのを発見して救助された。
　報道によると「筍があまり見つからないので奥へ奥へと入って帰りがわからなくなった」という。笹川を上流に向かって別の捜索隊が捜索したのだが見つからなかったのはまだ竹林の中を彷徨っていたことになる。「毎年採りに来ている方がこの時期にあんな低い所に行くはずがない」という話が出たが遭難の事例をみると常識では考えられないのがほとんどのようだ。
　自戒を込めて登山の基本を再確認したい。
左；捜索隊　　中；遭難した場所　　右：防災ヘリ