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下山してから駐車場に戻る際、小さな喫茶店を見つけたので、転がり込む。マスターが言った。
「この間、川向の崖で身動き取れなくなった若者を助けるので、大騒ぎがあった。灯光器は出るわ、レスキュー隊は出るわでたいへんだったよ」
喫茶店に入る前に件のガレた斜面を見て、ここに間違って降りてきたらたいへんだなと思ったばかりだったので、実際にそういう人がいたんだと驚く。地図を見ると、2ミリの間に等高線が五本も六本も詰まっている。崖マークになる直前の地形だ。岩もひどく脆そうに見えた。
「町が見えたからと言ってたそうだ。いくら見えたって、あれは降りれたものじゃない」と。
恐るべし尾根の末端。人の通らない急斜面は、たった5、6メートルでも、かなり危険だ。私も何度かショートカットのつもりで突っ込んでいこうとして、ずいぶん手前で考え直したことがある。補助ザイルどころか、長めのスリングすら持っていないと、とても怖くてリスクは冒せない。
地図読み山行を久しぶりにやってみて、普段は標識やら整備された登山道にずいぶん頼っているなと再確認した。ルート途中では、厳密な現在地確認すらおざなりだ。
今回は、ぶなノ平(956mピーク)から幅の広い斜面を250m下降して、鞍部に達し、次のピークを目指すところがいちばん気をつかった。北北東方向に、くっきりとしたトレースと目立つ赤テープ。もちろん下降方向は、西南西方向。しかし、こっちには幅の広い尾根というか、斜面なので踏み跡がない。赤テープもない。冬枯れでないので、次のピークも見通せない。
ここで頼ったのは、200mくらい下降すれば、向かいのピークか鞍部が見えるだろうという点。この条件を満たさなければ、ルートは間違っている。
で、200m下降の体感。ここに至るまで、50m下降はこれくらい、20m下降はこれくらい、ここは10m未満のアップダウンだから地図には出ないなと、確認しながら歩いた。
ぶなノ平へ向かう途中、現在地同定が少しずれたのも一回ある。ピークと鞍部の数を数えていたが、途中で数え間違いをしてしまった。崩れやすい痩せ尾根を下るときに、予想以上に痩せているなと気がそれたためだ。
鞍部から登りかえして、ほぼ平坦な長い尾根が続くという地形で、ほぼ同じ地形が二度出てくる。平坦な長い尾根の方向も同じ。進行方向の変化もほぼ同じ方向。方向では判別できないので、次の地形「長い尾根が終わったら、20m下降ならここ。ほぼ下降せず(かくれピークがあるので少しは下降する)150mほどの登りに変わるならこっち」という変化の様子で判別。
762mピークからの最後の下りもなかなか微妙だ。トレースがうっすらあるので、これに惑わされているのかとちょっと疑心暗鬼だった。判別条件は、南西方向に向かう有力な尾根というもの。この尾根通しに下降すればいいのだが、眺望がまったくない。目の前のいくつもの枝尾根に迷い込まないか、注意深く歩いた。
どのピークも眺望がないので、ハイキングとしては面白みに欠けるかもしれないが、山歩きの原点のような山行だった。地図読み山行は低山でもドキドキしながら歩けるので、別の面白さがある。整備された登山道を歩く時も、このような緊張感を忘れないようにしよう。
こんばんわ。
普段、山に入る時には必ず地図とコンパスは持っているのですが(ヤマケイの2.5地図はコレクション化している
一度、道標は見ないようにして自力で山行してみたいです。
コメントありがとうございます。
地図読みはなかなか楽しいですよ。事前準備で、2.5万図とにらめっこしてルートを予想していると、もう登ったような気にもなります。紙上登山と実際と二度楽しめます。
追加した写真は、今回使った地図です。カラーコピーして、ルート上にチェックポイントを設定してナンバーをふってあります。6キロ程度の距離に36ポイントも設定してしまいました。ピーク、鞍部、進行方向が変化するポイントです。まるで人間カーナビですね。
そして、ポイントから次のポイントまでの水平距離、高低差の表も作りました。この表はあまり使いませんでしたが。ああでもないこうでもないと、迷いやすい地点の場合の判断条件を決めるのは、面白いです。
スマホでGPSを使えましたが、これは道迷い確定の時に使うつもりでした。頼らずに済みました。
こんなふうに歩いていると、誘惑されやすい地形というか、間違っていてもつい行ってしまいそうになる地点の特徴などが自覚できます。
歩いている最中、低山なので道路の車の音や、村の有線放送などが時々聞こえました。見えていても遠いという実感はかなり強かったですね。
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