股間が濡れてしまった・・
だから雨は嫌なんだ。
ブツブツ独り言を言いながらスクーターから降り、着ていた雨具を脱ぐ。
どんなに立派な雨具を着ていても乗る時間が長いと水は雨具内へ侵入してくる。
一番濡れるのは(濡れた)シートと密着するお尻部分だ。
濡れた衣服と素肌が触れるのを避けるため、無意識にガニ股歩きとなり建屋(会社)へ向かう。
鍵を開けて事務所内に入り左斜め前にある時計を見る。
朝7時、いつもの時間だ。
毎日、8時40分頃まで事務所内は僕一人だけとなる。
自分のデスクに鞄を降ろし、気待ちを落ち着かせる。
この感じだと下着まで濡れていること間違いない。
替えの下着・ズボンは持ち合わせてないが僕は慌てない。
まず、事務所内のカーテンを全部閉めて外部をシャットアウト。
空調を全開にして、履いているもの全てをデスクと椅子に掛ける。
一年通して事務所内は常に乾燥しているため、1時間程度で濡れた下着・ズボンは乾く。
その間、僕は椅子に厚手タオルを引いて、まさしく直に座る。
股間をスースー感じるが山ヤはそんな小さな事は気にしない。
トントン
ドアをノックする音だ。
気配を消して居留守を決め込む。
ドアは鍵を掛けたので入ってくることはない。
安心だ。
しかし、開かない筈のドアが少しずつ開きだした。
(鍵を閉め忘れた⁈)
見ると宅配便のドライバーさんが箱を抱えていた。
『印鑑お願いします』
お願いされても、とても入口まで歩いて行ける状況ではない。
暫く二人の間に沈黙が続く・・
恐らく事情を察してくれたのであろうドライバーさんが自分で受領書へサインして事務所を出ていった。
大きな借りを作ってしまった。
たから僕は雨が嫌いなんだ。