四半世紀以上前。
山岳部に入って2か月。
新人歓迎山行も終わり、翌月の予定に「ボッカ山行」と記載されていた。
それを見た他の1年生が
「せんぱーい！ボッカってなんですか？」
先輩達が不敵な笑みを浮かべながら、
「それはな〜、おまえら新人たちが山男の称号を与えられる山行だ！」
僕ら新人には何のことかよくわからなかった。
山岳部に入って2か月。
「山男」
そんな称号をもらえる期待とかすかに浮かぶ不安とが入り混じっていた。
山行を翌日に控えた部員たちは丹沢の大倉でテントを張って一泊した。
そして、翌朝。
キスリング（黄土色した帆布のザック）に鍋やテントをいれ準備を済ませた一年生が一列に並んで塔ノ岳を目指していた。
その姿は変な色のカッターシャツにニッカボッカに長靴下、赤いバンダナ。
バンダナ。当時のトシちゃんやマッチのつもりか？
それにしてもイケテない・・・。
一人の三年生部員が、ひっかけ式の量りを持っていた。
21世紀現代に存在するかどうかわからないが、焼き芋やが持っていたような、銀色でU字にひっかけて重さを量るものだ。
ひっかけ式の量りに、キスリングをぶら下げながら先輩が・・・
「１５ｋｇかぁ〜」
「ぜんぜん足りねえな〜」
「じゃ、それいれるか！」
先輩たちは、にやにやしながら大倉の沢にあったでかい岩をキスリングにどんどん詰め込んでいった。
それでようやく一年生たちは事態が呑み込めていた。
「３５ｋｇ」「よし！」
1年生のキスリングは不恰好にゆがんで膨らみ不気味な形をなしていた。
「さあ、背負うぞ！」
先輩の掛け声があってもぜんぜん持ち上がらない。
「おらおら」「たった３５ｋｇだぞ！」
先輩たちに背負うのを助けてもらいようやく背負うことができた。
キスリングは容赦なく肩に食い込み、
塔ノ岳のバカ尾根の階段を上を見あげると気が滅入ってくるので目線は常に下を向いていた。
今では考えられないが、25年以上前の部活はなかなか水も飲ませてくれない。
そして次から次へと1年生が倒れていった。
休憩中もザックを降ろすことを許されない。
そしてその後、二度と部室に戻って来なくなるもののいた。
ただ、人間なぜかきついことでも慣れは生じる。
あのバカ尾根の階段もずんずん登れるようになってくる。
そしてようやく・・・着いた。
頂上のようなところに着く。
「いや、まだまだ！」
先輩が怒鳴った。
金冷シまで着いたのだが上を向けなかったせいか体力を消耗しすぎたのか、さらに本当の頂上があることに気づかなかったようだ。
さらに登り・・・。
ようやく上がなさそうなピークに着いたようだ。
頂上に着くとザックを降ろすのを許可してくれた。
まるで肩から羽がはいたように体が軽くなる。
先輩たちが、
「よくやった！」
「これでおまえらも立派な山男だ！」（なんのこっちゃ）
そして塔ノ岳の頂上には岩が重なったケルンがたくさんあった。
とにかくこれだけ体力的にきついことをやったのは初めてだったので、それから解放されただけでも気持ちがよかった。
このボッカにより変な自信がついた。
大荷物を背負って夏合宿でいった槍穂縦走もぜんぜん大丈夫だった。
気圧が低いところで炊くごはんの固さにも慣れていった。
・・・・・・・・・。
そして、それから25年以上たっても子供が２０ｋｇ超えても背負うことにまったく動じなくなっているのは、当時のバカ尾根ボッカが生きているのかもしれない。
※今考えると、きつかった・・・。ただその体力は社会人になってもほんの少しだけ役に立っているような気がする。
tonakaiさん何処もやる事は同じですね
＞ひっかけ式の量りを持っていた 35�舛噺世┐仍笋了崖找颪呂任録型佑僚�性の重量でしたよ、
男性は50�前幣紊任靴燭�らキスリングを地面に置き、まず肩に通しそれから四つん這いに何とかして立つまでが大変でしたよ、
最初は腹の中ではブツブツ「もう二度と来るか」と思いながら塔ケ岳まで登り「やれこれで終わり」と思いきや
烏尾根から下りですよ、大倉に着いた時はバテバテでしたし肩が赤く腫れていましたよ、
でも脱落者は居ずその後の山行にチャンと皆んな出てきましたよ、次回のボッカは要領が解り体力も付いていましたよ、
だがこれも合宿で耐えて楽しく過ごす為です、お陰で合宿は誰も重量には負けませでしたよ、
そう言えば昔は余り水分をとるとバテるからと制限されていましたね、
トナカイさんこんにちは
甲野善紀さんという古武術家の研究する昔の人の体術に興味があります。その人は50キロ以上体重差のある人を軽くひっくり返してしまいます。やってみなくてはできない体の使い方が確かにあって、ボッカ訓練はそれを見つけるための機会だったのかもしれないと思いました。苛めや事故になる事もあったでしょうが、術はことばで教わってもわからないから、まずはやらせてみるというのは、結構近道ではないかと思います。凄く重いものを運ぶという体術は古来ひとが身につけて来たもので、現代だけ特別にできない時代ですもんね。根性や筋力を超えた術があるはずと思います。
訓練で付けたのは体力ではなく体術だったのではと思います。
naidenさん。
コメントありがとうございます。
５０ｋｇですか！！
３５ｋｇでよかったです。
５０ｋｇならもうここにいませんし、たぶん二度と山を登ってなかったでしょうね。
さすがに山二回目なので３５ｋｇのバカ尾根はきつかったです・・・。
yoneyamaさん。
コメントありがとうございます。
コツがわかると持ち上げられるのですが、なかなか山初心者には精神的にも肉体的のもきつかったです。
＞根性や筋力を超えた術
なるほどです。
今は３０ｋｇでも４０ｋｇでも鍋割山で軽ボッカ？でもやってやろうか。なんて淡い目標を描いてます。
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