支笏湖にほど近い山麓の一画にある雑木林の中を落葉を踏みしめながら歩き始めると、すでに紅葉は終わりかけていた。
カラマツ林では風が吹くたびに、樹高の高い木々の枝から、無数の金色の落ち葉がクルクルと回りながら風に乗って流れ落ちてゆく。
林を貫くこの小道が、金色の絨毯で敷き詰められて黄金色に輝く日が来るのも、きっともう間近。
カラマツ林を抜けて広葉樹林に入ると、つい先日まで木の葉に遮られて見ることのできなかった遠方の山々の稜線が、葉が落ちてすっかり見通しの良くなってしまった木々の間から垣間見えた。
林道脇の枯れ木に点々と生えているムキタケを発見。
ここではムキタケが発生し始めると、そろそろ秋も終わり。
「ユキノシタ」と呼ばれる晩秋から初冬にかけて発生する晩生型のキノコ群を除けば、キノコの季節ももう終わりだ。
ほんの少し前まで姿を見せていたナラタケやラクヨウなどのキノコもいつのまにか、みんなどこかへきれいさっぱりと消えてしまった。
空が俄かに曇ったかと思うとパラパラと音を立てて雨が降ってきた。
しばらくの間、木の下で様子をみるが雨はすぐには止みそうになく、諦めて雨具を着込む。
この移ろいやすい天気は果たして山の天気のせいなのか、それとも変わりやすいとされる秋の天気のせいなのか。
30分もすると雨は止んでしまい、木々の向こうに晴れ間が見えた。
上空では青い空をバックに数羽の鳶が空高く円を描いて舞っている。
長かったようで短かった一年がもうすぐ終わる。
振り返れば、今年も遣り残したことの多かった年だったような気が…。
折り重なった様々な後悔が背後から忍び寄ってくる。
なんとか来年も北アルプスに行きたいものだが果たしてどうだろう。
せめて、雪の積もる前にもう少しだけ山登りを続けようか。
暮れ始めた晩秋の山麓で、終わりかけた紅葉の中、過ぎ行く秋をじっと見送る。