小島烏水著［鎗ヶ嶽探険記］

〔上赤淵に至りて一橋を渡り、川を左に視（み）る、初めて東岸に移れるなり、これより山漸く深く、崖の水を挺（ぬ）くこと次第に高く、漲痕（ちょうこん）緑を帯びて雑木茂叢（もそう）、その下、寒流急なること梭（ひ）より疾くして、河畔に連なれる戸々、晴嵐窓に入りて翠光いずくんか飛び去んぬる。
偶ま老鶯の声、帽檐（ぼうえん）に落ちかかるに、幾度となく振り仰がれ、双耳頓（とみ）に涼を生ず〕
［鎗ヶ嶽探険記／梓川を溯る記より］

ふ〜🙍。

大雨でレールが壊れ、乗っていた汽車が動かなくなり、歩く事になります。


〔烏水によれば、紀行文は、その情景を見ない人に向かって興趣をひきおこさせねばならない、自然の美しさ、色彩と変化を、味わうごとくに感じさせなければならないという印象派的技法が必要であった〕
［近藤信行　解説より］

【写真】は内容とは関係ありません