![]() |
朝、玄関を出ると弱ったセミが驚いて壁やら床やらにぶち当たりながら飛び回る。
リュックにコツッと当たった感触はあったものの、夏の終わりにはよくあることだし、気にも留めていなかった。
コンビニに寄って、駅のパン屋で朝食を買い、特急電車に乗って出発。
紅茶メロンパンを食べた後、山行記録でも見ようかとタブレット端末を取り出すためにリュックに手を伸ばすと・・・
セミがいる!
朝の静かな特急電車。ここで飛び回れば大惨事。
もしかして家を出た時からずっとくっついていたの?
ということは、コンビニとか、ましてやパン屋で飛び回っていたら・・・と思うとぞっとする。
でも、ここまでじっとしていたということは、もう飛ぶ力は残っていないのだろう。
念のため、上から布を被せておいて、そっとしておく。
乗り換えのために電車を降りる。
さすがに次の電車にも連れて行くわけにはいかないので、リュックから引き離し、ホームの端の土の上に置いてきた。
あのまま土に返るのか、鳥のエサになるのか。
どちらにしてもあの場所で命が尽きることになるだろう。
生まれた場所から遠く離れた地で死ぬ不幸。
はたまた、死期を悟って意を決してヒトに飛び付き、死出の旅路。
その旅が、他のセミにはなし得ない大冒険になった。
そんな風に考えると少しは幸せに思えるかも。
と、車窓を流れる景色を眺めつつ、そんなことを考えていたのでした。
おしまい。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する