最近一緒に山に登る同世代の人と話をしていると、やっぱり話題になるのは百名山登山。
登山を始めた最初のほうは深田久弥の名前すら知らなかったけれど、実際に『日本百名山』を読んでみると、その山々について歴史や伝承、地質や動植物についてなどかなり詳しく書いていて入門書としては面白い一冊だと感じた。
この『日本百名山』を読んで思ったのは、意外にも深田久弥は登頂の際に沢登りルートで登頂していることが多いということ。
ならば、沢登りだけでこの日本百名山を沢登りで登頂できるルートはないか。
これがいろいろ調べてみると非常に面白い。
「山頂直下まで直接詰めあがることのできる沢」
該当する沢がない場合、
「山頂まで登山道を2時間以内に到達できる沢」
という基準で調べてみると、これまで知らなかった面白そうな沢や、知る人ぞ知るような沢など、楽しい発見がたくさんあって面白い。
丹沢山 (たんざわさん) - 1567m
沢登りのルートは豊富で、ほとんどの沢が登られている。関東の沢ヤなら、丹沢はメジャーで練習には最適の山域だ。
丹沢山自体は奥深い場所にあるので、直接詰めあがる沢は限られているが、他に広義の丹沢山とすれば、塔ノ岳や大倉尾根に詰めあがる沢はバリエーションが豊富だろう。
大倉尾根から丹沢主稜線を分水嶺として、東側が相模川水系、西側が酒匂川水系に分けられる。
本谷川キュウハ沢
丹沢山南東面に詰めあがる沢。丹沢山に直接詰めあがれる沢の中ならこれが一番無難か。
水無川本谷
塔ノ岳に直接詰めあげる水無川本谷はメジャールートで面白い。塔ノ岳から丹沢山へは1時間。1級上。他に勘七ノ沢、モミソ沢など大倉尾根に詰め上げる沢から山頂を目指すことも可能。
雲取山 (くもとりやま) - 2017.09m
東側は日原川水系、南は丹波川水系、どちらも多摩川水系になる。北西側は荒川水系となる。やはりアプローチの容易さ、渓の面白さや山頂直下まで遡行できるのは日原水系の沢になる。
大雲取谷
雲取山の東面から流れ日原川になる本流。詰めた大タワから雲取山荘経由で山頂へ1時間。2級下
小雲取谷
大雲取谷の支流で小雲取山が源流。詰めた小雲取山から山頂へ30分。こちらのほうが近い。1級
甲武信ヶ岳 (こぶしがたけ) - 2475m
甲斐側は笛吹川水系、武蔵側は荒川水系、信州側は信濃川水系になるが、面白い渓が集まるのは南側の断然笛吹川水系だろう。
釜ノ沢東俣
奥秩父の名ルート。甲武信小屋に詰め上げる。山頂まで20分。1級上。西俣経由でも登頂可能。
鶏冠谷
右俣も左俣もつめ上げると甲武信小屋東の木賊山へ。山頂まで40分。右左ともに2級。
両神山 (りょうかみさん) - 1723m
奥秩父の山でもちょっと北に離れた独立した山域。両神山に詰めあがる沢はどれも荒川水系になる。
金山沢右俣
両神山西面から流れる中津川水系。詰めると両神山から南、白井差峠へ向かう登山道の鞍部に出る。
尾ノ内川キギノ沢
非常に難しい沢で、岩肌が脆く、高度な技術を要する険谷。詰めあがると両神山から北に伸びる八丁尾根ルートの東岳と前東岳の鞍部に。
大菩薩嶺 (だいぼさつれい) - 2057m
大菩薩峠〜柳沢峠のラインを分水嶺に東側は多摩川水系、西側は笛吹川水系。多摩川水系のほうが登れる沢が多い印象。
小室川谷
大菩薩嶺南東が水源で水量の多い沢。釣り師の入渓も多い。2級
大黒茂谷
小室川の支流。登山家の田部重治が大菩薩からの下山で遭難した沢。沢自体は簡単でコケとナメが続く。詰めあがると山頂の北側の鞍部に出る。1級。
金峰山 (きんぷさん) - 2599m
直接詰め上げる沢に沢登りの対象になるような沢は少ない。奥秩父の主稜線を境に北が信濃川水系、山頂から南西に伸びる八幡尾根を境に東が笛吹川水系、西が釜無川水系に分けられる（どちらも甲府盆地で合流して富士川となるが）。
伝丈沢
金峰山から南西に伸びる八幡尾根の八幡山に詰め上げる。八幡尾根に登山道はないが、標高差300mを登りあげると山頂にたどり着く。
瑞牆山 (みずがきやま) - 2230m
独特の山容だからか、直接詰めあがる沢がない。直接詰めあがる沢筋は考えられるが、沢登りというよりは、クライミングの範囲に含まれるだろう。主稜線から外れており、周辺の沢はすべて釜無川水系になる。
不動沢
瑞牆山の北側を流れる沢。途中まで黒森コース登山道が平行している。支沢の大双里沢に不動滝がかかる。途中から登山道は南に折れて山頂に向かうが沢はそのまま東に進み、小川山と八丁平の登山道に詰めあがる。山頂を目指すなら不動滝をすぎたところで、遡行終了か。
万三郎岳 (ばんざぶろうだけ) - 1406m
天城山系にはそもそも沢登りの対象になるような沢が少ない。標高も低く、山もどちらかというと高原や丘陵地のようで、深い渓谷が形成されにくいのだろうか。天城縦走路を境に北側が狩野川水系で駿河湾に流れ込み、南側は河津川水系で太平洋への流れ出る。
地蔵堂川
狩野川水系、万三郎岳北面に詰め上げる。640mの二俣で右俣は主稜線へ、左俣は万三郎岳から北に伸びる登山道につめ上がる。ワサビ田が多いそう。
富士山 (ふじさん) - 3776m
さすがに3776mの頂の近くまで沢登りできるルートは見当たらなかった。山麓ではもしかしたら調べたらあるのかもしれない。
wadachiさん こんにちわ
こんなそそる内容のテーマをありがとうございます。ぜひ全国版でお願いします。
まだ、先の内容になると思いますが九州開聞岳はどうしようという話に先日レコ友となりました。よろしくお願いします
metaさん
開門岳は螺旋状に登山道が伸びていますが、廃道なった沢筋ルートがあったと記憶しています。いずれにせよ水は流れていなかったと思うので、沢登りで開門岳はちょっと厳しいのかもですね。調べてみます。
さすが・・・・（笑）
面白い事考えますね。富士山は表大沢がほぼ剣ヶ峰まで詰めますよ
yasuo12 さん
表大沢って山スキーのルートになっているところでしたっけ？ 夏だとどのあたりまで水流があるんでしょうかねぇ。
わだちさん
深田が書いた百名山の時代は、まだ沢ルートの道が多かったということですね。沢に付ける道は作り易く壊れ易い。尾根に付ける道は作るのが苦労だけど補修は楽で、時代が下ると尾根登山道が増え初源的な沢ルートが廃れたという事でしょう。
百名山を蒐集する意図はなくとも、広く登れば気になる山は百名山である事が多いです。一度きりの初登山なら、いちばん初源的なルートから攻めたいものですね。どうしても良い沢が無ければ、冬の尾根ルートを。それも無ければ、せめて麓の鉄道駅から歩くとか、海から歩くとか、昔の人みたいに登りたいものです。人工的な道を登っておいて、「楽な山だ」などとその山を片付けてしまうのは恥ずかしい事だと思います。
南関東では、蛭ヶ岳、甲武信はもちろん沢から登りました。雲取山は、南西面の丹波川水系青岩谷から、大菩薩嶺はやはり丹波川支流の小室川谷から登りました。どちらも清々しいルートでした。
金峰山は、甲府の町を流れる荒川を、深田が学生時代に登ったルートの最終部落、黒平から、本流を遡行しました。最後は旧道に乗りましたが、ほぼ往年の修験道表参道ルートではないかな。でも、深田は甲府駅から延々（今の僕の家の前を通って）歩いて行ったのですから、うらやましい時代です。
天城の最高峰へは、登るならやはり海から登って海に降りたいなあ、と思います。
富士山の大沢はあるけど、落石がどんなものでしょうね。冬季ルートで思いは果たせそうです。
yoneyamaさん
金峰へは荒川本流を詰めて、途中から三薙沢に入ると山頂近くまで完全に詰めあがれそうですね。
一般登山道を使えば楽々登れる山でも、沢登りにしたり、あるいは積雪期にしたりすると、打って変わって面白くて味わい深い山に変わったりすると思います。
奥多摩や丹沢の良さは沢や積雪期に登って、全然違う印象の山になりましたし。雲取南西面の後立川水系は面白そうな沢がありますが、林道通行止めでアプローチが遠いのが難点ですね。でもいずれ行ってみたいです。
今は北関東の山について調べていますが、さすが利根川源流や上越国境付近の山は沢が豊富で調べていて面白いですね。また、北アルプスは高難易度の沢が多そうです。
引き続き、調べてみたいと思っています。
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