日本国には、様々な制度によって自然環境を保護区に指定している。
Protected Planet[1]よれば、日本国領土の約30%が保護地域(Protected Area)に指定されていることから、山に向き合い続ける皆様が山行をする度に何らかの保護地域へ足を踏み入れていることは想像に難くない。
しかし、大半の山行者にとって保護地域の認知度は低いと思われる。
(偏見。少なくとも私はわからなかった)
そこで、Protected Planetの日本に関するデータベースにおいて、我が国が自然環境をどのような保護区の名称・目的で指定しているかを確認する。
データは以下のURL先から入手した。
尚、入手したデータは「Nov. 2022」のものである。
最新情報は各自で参照されたい。
https://www.protectedplanet.net/country/JPN
保護区の制度は以下の21のカテゴリに分けられていた。
・世界遺産(自然遺産 or 複合遺産)
・ラムサール条約登録地
・ユネスコ・エコパーク
・原生自然環境保全地域
・自然環境保全地域
・沖合海底自然環境保全地域
・都道府県自然環境保全地域
・国立公園
・国定公園
・都道府県立自然公園
・森林生態系保護地域
・生物群集保護林
・希少個体群保護林
・緑の回廊
・国指定鳥獣保護区
・都道府県指定鳥獣保護区
・生息地等保護区
・保護水面
・共同漁業権区域
・指定海域
・沿岸水産資源開発区域
上記の制度を根拠法等に基づいて分類する。
<1. 国際関係によるもの>
世界遺産等に登録されるためには、国内法で保護区として自然環境を保全すると示すことが大切な要素となってくる。そのため、以下の保護区と重複する場合が多いため、ここでの説明は省略する。
・世界遺産 世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)
・ラムサール条約登録地 ラムサール条約
・ユネスコ・エコパーク MAB計画：ユネスコ人間と生物圏計画
<2. 根拠法：自然環境保全法, 所管：上部３地域＝環境省・他＝都道府県>
自然環境保全地域(4つの地域の総称)は自然環境保全法及び都道府県条例に基づき、原生の状態を維持している地域や優れた自然環境を維持している地域を指定し、今後も「極力人為を加えず」に後世に伝えることを目的として指定される地域。[2]
尚、自然環境保全地域と利用を前提とする自然公園は相容れないため、重複した指定は不可能。[3]
・原生自然環境保全地域
・自然環境保全地域
・沖合海底自然環境保全地域
・都道府県自然環境保全地域
<3. 根拠法：自然公園法, 所管：国立公園=環境省・他=都道府県>
アメリカやオーストラリアなどのように国立公園の土地すべてを公園専用とすることが難しいため、日本の自然公園は、土地の所有に関わらず指定を行う地域制自然公園制度を採用しており、公園内にも多くの私有地が含まれる。[4]
自然公園は、自然風景地の保護とともに「自然とのふれあいを図る」ことを目的として指定される地域であり、歩道やビジターセンターなどが計画的に整備され、快適で適正な利用が推進されている。[2]
・国立公園
・国定公園
・都道府県立自然公園
<4. (保護林制度), 所管：林野庁>
保護林は、原生的な天然林などを保護・管理することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、野生生物の保護、遺伝資源の保護、森林施業・管理技術の発展、学術の研究等に資することを目的としている国有林野のこと。[5]
・森林生態系保護地域
・生物群集保護林
・希少個体群保護林
・緑の回廊
<5. 根拠法：鳥獣保護管理法, 所管：上＝環境省・下＝都道府県>
鳥獣保護区は、鳥獣の保護の見地から「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に基づき指定される。鳥獣保護区の区域内で鳥獣の保護又はその生息地の保護を図るため特に必要があると認める区域を特別保護地区に指定することが可能。鳥獣保護区内においては、狩猟が認められないほか、特別保護地区内においては、一定の開発行為が規制される。[6]
・国指定鳥獣保護区
・都道府県指定鳥獣保護区
<6. 根拠法：種の保存法, 所管：環境省・農林水産省・ 経済産業省>
国内希少野生動植物種に指定されている種のうち、捕獲や採取等の規制を行うだけでは個体群の存続が困難であり、その生息・生育環境を保全する必要がある場合は、生息地等保護区を指定。生息地等保護区は、管理地区と監視地区に分けられ、それぞれの地区内では、開発行為などが規制される。[7]
ワシントン条約を発展して制定された法律になる。
・生息地等保護区
<7. 海洋に関する保護区>
・保護水面
・共同漁業権区域
・指定海域
・沿岸水産資源開発区域
次に、国際自然保護連合(IUCN: International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)によって保護地域を分類する「IUCN保護地域カテゴリ(IUCN protected area categories)」によって分類する。
IUCN保護地域カテゴリは７つに分類されている。
��a: 厳正保護地域 strict nature reserve
��b: 原生保護地域 wilderness area
��: 国立公園 national park
��: 天然記念物 natural monument or feature
��: 種と生息地管理地域 habitat or species management area
��: 景観保護地域 protected landscape or seascape
��: 資源保護地域 protected area with sustainable use of natural resources
(但し、世界遺産、ラムサール条約登録地、ユネスコ・エコパークはIUCN保護地域カテゴリに分類されない。指定が重複する保護区の制度で評価される。)
上位のカテゴリほど自然環境の保全が厳しく、人を原則受け入れない(調査等を除く)。厳格なガイドラインを維持できずに人間による永続的な介入が必要な場合、カテゴリーIVまたはVに分類される。[8]
��a: 原生自然環境保全地域
��b: 自然環境保全地域, 沖合海底自然環境保全地域, 森林生態系保護地域
��: 国立公園と国定公園の一部
��: (該当なし)
��: 生物群集保護林, 希少個体群保護林, 国指定鳥獣保護区, 都道府県指定鳥獣保護区, 生息地等保護区, 保護水面
��: 都道府県自然環境保全地域, 国立公園と国定公園の一部, 都道府県立自然公園, 緑の回廊
��: 共同漁業権区域, 指定海域, 沿岸水産資源開発区域
(Wikipediaの情報としばしば異なる[9])
上記より、IUCN保護地域カテゴリへの振り分けは、国内の保護区の枠組みによってある程度決まっていることがわかる。
しかし、国立公園と国定公園においてはカテゴリ�兇鉢垢吠�かれている。
以下に、カテゴリ毎に指定されている国立公園と国定公園を書き記す。
<category ��>
<保護区名：国立公園> 制定年順
阿寒摩周 大雪山
中部山岳 十和田八幡平
上信越高原 支笏洞爺
磐梯朝日 白山
知床 南アルプス
小笠原 西表石垣
利尻礼文サロベツ 釧路湿原
尾瀬 屋久島
霧島錦江湾 慶良間諸島
妙高戸隠連山 やんばる
奄美群島
<保護区名：国定公園> 制定年順
ニセコ積丹小樽海岸 栗駒
越後三山只見 日高山脈襟裳
早池峰
<category ��>
<保護区名：国立公園> 制定年順
瀬戸内海 阿蘇くじゅう
雲仙天草 日光
吉野熊野 大山隠岐
富士箱根伊豆 伊勢志摩
秩父多摩甲斐 西海
山陰海岸 足摺宇和海
三陸復興
<保護区名：国定公園> 制定年順
耶馬日田英彦山 琵琶湖
佐渡弥彦米山 若狭湾
日南海岸 石鎚
秋吉台 北長門海岸
玄海 金剛生駒紀泉
三河湾 南房総
大沼 網走
水郷筑波 鳥海
比婆道後帝釈 蔵王
飛騨木曽川 八ヶ岳中信高原
剣山 室戸阿南海岸
祖母傾 丹沢大山
高野龍神 明治の森箕面
明治の森高尾 越前加賀海岸
鈴鹿 能登半島
下北半島 壱岐対馬
妙義荒船佐久高原 氷ノ山後山那岐山
天竜奥三河 西中国山地
揖斐関ヶ原養老 室生赤目青山
愛知高原 大和青垣
沖縄海岸 沖縄戦跡
北九州 男鹿
日豊海岸 津軽
九州中央山地 暑寒別天売焼尻
丹後天橋立大江山 甑島
京都丹波高原 中央アルプス
厚岸霧多布昆布森
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随時、加筆します。
蛇足：天然記念物は..?
「天然記念物」及び「特別天然記念物」は文化財保護法（旧 史蹟名勝天然紀念物保存法）に基づいて指定されています。所管は文化庁。
少なくとも国としては保護区に該当すると考えているらしい[10]のですが、Protected Planetのデータベースには登録されていませんでした。
Protected Planetでは、環境省、林野庁、都道府県が管轄のものしかなかったので、文化庁の問題なのでしょうか？
「IUCN保護地域カテゴリ ��: 天然記念物」に該当するとは思うのですが、文化財としての扱いかつ、「現状の変更、またはその保存に影響を及ぼす行為」について規制であり、動植物の保存等にとって重要な周囲の環境変化を規制する内容ではないからなのでしょうか。
何れにせよ、天然記念物は史跡名勝天然記念物として地図記号で表示され、ある種特別な立ち位置を持ち、国内の知名度もあるので、何らかの対策をしてほしいなと思いました。(国立公園などの内部にあるものが多いので、そこまで大きい影響もないのかな？)
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[1] Protected Planet
保護地域に関する世界データベース(WDPA: World Database on Protected Areas)、その他の効果的な地域をベースとする手段(OECMs: Other effective area-based conservation measures)に関する世界データベース、保護地域管理効果に関する世界データベース(GD-PAME: Global Database on Protected Area Management Effectiveness)等の情報を閲覧できるサービス
https://www.protectedplanet.net/country/JPN
[2] 環境省, 「自然環境保全地域」
https://www.env.go.jp/nature/hozen/about.html
[3] 環境省, 「自然公園法と関連法制度(環境省所管)との関係性」
https://www.env.go.jp/nature/ari_kata/shiryou/040309-1-5a.pdf
[4] 環境省, 「国立公園」
https://www.env.go.jp/park/
[5] 林野庁, 「保護林」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/sizen_kankyo/hogorin.html
[6] 林野庁, 「鳥獣保護区制度の概要」
https://www.env.go.jp/nature/choju/area/area1.html
[7] 環境省, 「生息地等保護区による保護」
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogoku/index.html
[8] Wikipedia, 「IUCN protected area categories」
https://en.wikipedia.org/wiki/IUCN_protected_area_categories
[9] Wikipedia, 「Category:Protected areas by World Conservation Union category」
https://en.wikipedia.org/wiki/Category:Protected_areas_by_World_Conservation_Union_category
[10] 環境省, 「我が国の既存の海洋の保護区について」
https://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/pdf/about03_03_ref.pdf
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