大阪の高校バスケ部の生徒が体罰を苦にして、自らの命を絶ったことが大きな問題になっています。彼はどんなに苦しかったでしょう。他人事とは思えません。私も一歩間違えれば、彼と同じことをしていました。
学生時代、箱根駅伝の強豪校で優勝を争う黄金時代だったので、それを受けていたと言ってもいいのかな。いや、間違いなくそれを受けてました。特にチームをまとめる立場になってからは、つらかったです。拳で顔面を殴られたり、膝蹴りを食らったり、キックをされたり、傘で本気で殴られたり、ノコギリで殴られたり…。２４時間、緊張していたことを覚えています。殴られる夢をよくみたものでした。夜中に目を覚めると、体をガッチガチに強張らせて、汗をかいている自分にびっくりした時もありました。 ひどいときは一切、何も食べることができませんでした。拒食症と言うのでしょうか。拒食症が治ったと思ったら、食べたくて食べたくて仕方ない過食症がきました。あと、性欲も一切なくなって、あそこがかたくなることもありませんでした。ぼろぼろの精神状態だったことは、今でもはっきり覚えています。
あの時、苦しい現実から逃げ出そうと少しでも思っていたら。思考がそっちの方に向かっていたら、間違いなく逃げていたでしょう。だけど私の場合、逃げたくても逃げることすらできませんでした。ほんとに追い込まれると、逃げるという思考そのものも欠落してしまうものかなと思います。殴られることに麻痺するんですよね。なぜ殴られるのか、自分が何か悪いことをしたのだろうか。そんなことはどうでもいいんです。そんな判断がつく精神状態じゃないから。だから殴るならさっさと殴って下さい的な投げやりな思いでいました。もし、自分があの時、何かのきっかけがあったとしたら何をしていたか正直わかりません。
スポーツで勝とうと思うのなら、尋常のことをしていては人には勝てないでしょう。教える側、教わる側が一緒になって勝つための方策を考え、実践し、何度も繰り返し、試行錯誤していることでしょう。勝ちたいからみんながんばっています。ちょっとやそっと苦しくても、勝って、感動して、極上の満足感に満たされたいから、がんばって、がんばって、がんばり抜いているいる人がたくさんいるでしょう。
だけど生身の人間ですから疲れるときもある、教える方は感情的になることもあるでしょう。感情は感情として押し殺さず、ぶつければいいと私は思います。ただし感情だけなら。
感情に加えて、殴られる、蹴られるという行為は言葉で怒られる以上に１００倍、心が壊されます。人によっては違うかもしれませんが私は、心がボロボロに壊れました。
大学を卒業して、それから解放された時、箱根駅伝をテレビでみることができませんでした。フラッシュバックと言うのでしょうか。あの時のことが思い出されて、全く見る気にはなれませんでした。
今は大丈夫ですけどね。むしろ、がんばれ！がんばれ！と選手を心から応援しています。テレビを見ながら気付くと泣いていたりして。
大学卒業してからも走ることはやっぱり好きで、ずっと続けていますけど、山を走ることを覚えるようになってから救われました。
トレイルランニングの第一人者、石川弘樹さんの講演を聞いたことがあります。一番印象的だったのはこんな言葉です。
日本の山はどの山に行っても登山道は山頂を目指すルートばかりです。山頂を目指せ、目指せと。でも、ヨーロッパ、アメリカの大きくて広い山は、山頂を目指す登山道ばかりではありません。山頂へ行くことを敢えて避けて、急登を避けて迂回するような登山道、ピークは通らず巻いて通過するだけのようなトレイルがたくさんあります。だから山は苦しくてものじゃない。ゆっくりでいい、楽しめるところなんです。
日本の教育界や体育界では未だに戦争中の軍隊の様な体罰が横行しているのですね。毎年４００人の教師が体罰で処分されています。しかも、それが一向に減らない。恐らくこれは氷山の一角で、実際はもっと沢山の体罰が横行していると考えられます。これが減らないと言ふ事は、学校も教育委員会も父母もそれを認めていると言ふことでしょう。実際生徒が自殺した高校の父母は、その殆どが体罰教師の指導を認めていると言ふ事です。だから、自殺した生徒の親も、自分の子供が毎日のように体罰を受け顔を腫らし、口から血を流して帰って来ても学校や顧問の教師に抗議をしていない。通夜の席で死んだ子供の顔を顧問教師に見せて抗議をしたらしいですが、私はそれでは遅いと思います。死ぬ前に手を打たないと、これでは手遅れです。わたしは自殺した子が可哀想で仕方がない。
体育界では勝つためとか強くなるためとか言ふ理屈を付けて、体罰が罷り通っているのでしょうが、体罰でしか強くならない様なチームは決して一流にはなれないし、成ったとしても将来必ず恥を掻く様な選手しか育たないと思います。一流のスポーツマンには知的なセンスと人格が必要です。
体罰では権威に逆らわない、従順な選手は育つかも知れませんが、自分で考える、創造力のある選手は育つ訳がありません。
これだけ科学的なトレーニング理論やメンタルトレーニングが発達した世界で、未だに戦争中の日本の軍隊の悪しき伝統の様なものに基づいて教育をしている学校があるとは、驚くと同時にそれを許容している地盤が厳然と存在する日本の社会に幻滅を感じざるを得ません。
日本の教育界は本当に遅れていますね。自分達が体罰を受けて育ち、体罰を許容する長老達が死んでしまう迄なくならないのでしょうか。も少し科学的に改善出来ないものかと思いますが、人が変わると言ふのは大変難しい事ですから、急には変わらないのでしょうね。
やはり、教育界には外部の血を入れて、自分達だけの狭い世界の非常識を正してゆく必要がありますね。橋下市長が言ふ様に校長は民間から募集するのがよいと思います。
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