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井上進氏は甲斐駒ヶ岳の赤蜘蛛ルートの開拓者として知られており、この本も同ルート開拓時の苦労話を期待して買ったものです。ところが実際に読んでみると、確かに赤蜘蛛ルート開拓の話は本書の白眉ではあるものの、ページ数でいうと全270ページほどのうちの60ページに過ぎず、残りは赤蜘蛛同人が行ったヨーロッパ遠征の話と著者のいろいろな時代の逸話やエッセイで構成されていて、ちょっと拍子抜けでした。
ところで、赤蜘蛛ルートはヤマレコユーザーを含む多くの岳人に登られていますが、よくある間違いが二つあります。本書を読んだことを契機に、ここにそれらを記してみます。
その1)「Aフランケ赤蜘蛛ルートは赤蜘蛛同人が開拓した」
時系列で言うと、赤蜘蛛同人の結成は井上進・木下義雄(五郎)ペアによるAフランケ新ルート開拓の後です。しかしAフランケ開拓前から両氏はAフランケ〜Bフランケ〜奥壁と継続する長大なルート構想を持っていて、同人結成後に手分けをして残る二つの岩壁に取り組み、これらの開拓終了をもってルートの完成としています。
その2)「赤石沢奥壁Aフランケ」
上記の通り、奥壁とA・Bフランケはそれぞれ独立した岩壁です。具体的には、甲斐駒ヶ岳東面の八丈バンドより上が奥壁で、A・Bフランケは八丈バンドより下の赤石沢左岸の壁です。登山体系の概念図を見てもこれらの壁は区別されていますし、そもそも「フランケ」とは側壁のことですので「奥壁Aフランケ」というのは誤りのはずですが、このように書いている記録が少なくありません。
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