ナイフリッジ・蟻の塔渡り、剣の刃渡りで有名、下手なアルプスよりスリリングな超有名所。
僕にとっては聖地とも言える山です。
さて、まずは、聖地とはなんだろう?
自分なりの解釈で言うなら、困難や苦しみを乗り越えて辿り着いた場所、だと思っています。
熊野古道や各種修験者の山などなど、聖地と呼ばれる場所はいくつか行ったことあるけれど、どれもなかなか険しい道のりなんですよね。
容易に辿り着けない場所だからこそ、何か人智を超えたものが宿っている、と信仰が生まれた、というのがざっくりとした一般論だけど、僕はもっと単純な側面もあると思っています。
単に、これだけ苦労して辿り着いたのだから素晴らしい場所に決まってる!って思いたかったんだろうなって。
もっと言えば、きっちり苦労と困難を味わって貰う事こそが聖地としてのありがたみを増す、それは信仰を分かり易い形で集めるのに都合がよかったんだろうな、と。
そういう意味で、戸隠山ほど僕にとって聖地と呼べる場所はないのです。
なにせ、死にかけました。
学生時代登山部でそこからひたすらブランクがあり、3年ほど前から頻繁に山に登るようになったけど、
戸隠山に行った時は今思えばすごく調子に乗っていた時期。
色々登ってる。なんなら、走り込みや筋トレ等トレーニングもしまくってる。上級コースだろうと一般ルートだしいけるっしょ!みたいな。
で、核心部のナイフリッジとは全く関係ない所で、斜度6.70度くらいの雪崩道をルートと間違えて登り、とっかかりが無さすぎて降りるどころかスマホでルートをGPS確認とる事すら手が離せずできず。
もはや進むことしかできず薮やら草を掴んで体を斜面、というかほぼ壁に押しつけて無理やり登り、一息つけて現在位置確認したら見事にルート外れてる。
ロープは持ってたけど結びつける所もないし、こんな道というか崖戻れるか!もう無理やり突っ切って正規ルートに戻るしかない!で突き進んだものの、藪を越えた先は断崖絶壁の壁。斜度がキツすぎて、薮でこんな断崖絶壁が見えてなかったとは。。。
どうしようもなくなり、仕方無しに体を地面こと壁に押し付けて無理やり抵抗を作りながら草とか薮とか掴みつつ半分くらい降りたものの。
平地まで残り4.50mはある場所で、いよいよ掴むとこもまばらになり、岩肌もツルツルに。こんなとこよく登ったな、バカじゃないの。
全身疲れきってるけど、ここをクリアしないと帰れない。残ってるもの全部使う。行け!
で、落ちました。
だって、ろくに掴むとこないんだもん。
そりゃ無理よ。無理無理。
そこからの数瞬は意識して動いてないから
記憶は曖昧。
気づいたら10mくらい下で、
登ってたとこから少し逸れた崖に生えてた木にしがみついてました。
落っこちながら、崖蹴って飛びついたんだろうなぁ…。
マンガかよ、と。
やるじゃん、俺の身体。
ザックにさしてたペットボトルがはるか下まで落ちてく音が聞こえる。あ、生きてる。
もう大混乱なので、とりあえず落ち着こうと慌てて木によじ登って足場確保した直後、友人にLINEしてみたり。もうその行動すら大混乱です。まだあなた崖にいるんだよ?別にまだ助かってないよ?ってか、LINEの返事こないし。
そこからは木にロープ結びつけて、ラペリングみたいにして降りました。
幸い、というか、信じがたい事に骨折とかは何も無し。打ち身だらけ、擦り傷だらけ、なんなら太ももとかちょっと抉れて跡が残ったけど、かすり傷。
生きる事にそんなに意欲的な方ではないと自分では思ってたけど、いざ命が手から離れようとした瞬間、身体が勝手に生き残る為に動いた事実が嬉しくて。
ちゃんと自分は生き汚かったってのが嬉しくて。
地べたに座り込んで、泣きながらチョコ食べました。人生であれを超える味はありません。
チョコまみれさんの休日、神w
まぁ、色んな判断が間違っていた、反省だらけの山行でした。
こんな事を書くと、ちゃんと学ばないと、とか、もっとこうすべきだった、とか、多分、色々言われるんですが、
その瞬間とそこに至る過程は真剣で必死なんですよね。本人は油断してないつもり。
ニュースとかで遭難とか滑落とか聞くと、こんなとこで何やってんだ、と僕も思うけど、多分その人らも遭難前後は間違いな事をしたにしても必死で真剣なんだろうな、とも思います。
間違いがあるとするなら、必死にならなければいけない状況を作ってしまった。つまりは前段階でそもそも間違ってるというか。
ただまぁ、何はともあれ、あれをキッカケに登山にハマっていったんです。
その後も岩場、鎖場、色々行きまくってますが、いまだに危険度高めの場所にいくと落ちた瞬間がフラッシュバックします。
どれだけしっかり3点支持で確保してても、
力一杯握りしめてた草とか足元の抵抗がふっと消える瞬間の感覚が何度でも。
二度とあんな馬鹿な判断はしない、と気を引き締めつつ下調べや準備は入念にやるようになったけども、逆?に、もしまた同じような命をかけるような状況になってしまったら、今度はもっとうまく生き残ってみせる!とも思ってるような。
この感覚は上手く表現できないなぁ。
多分、別に貧困に喘いでる訳でもないのに何度も戦場にいく傭兵さんとかこういう感覚なんじゃなかろうか。
アドレナリンの閾値を振り切っちゃて、もう焼き切れちゃってるというか。
スマホの写真を整理してたら、戸隠山の写真が出てきたので、思い出して長々と書いてみました。
あの時よりは少しは成長したかなぁ。まだ生きてます。あの時は生かして帰してくれてありがとうございました。
そんなお礼を言いに。
そして、スリリングな鎖場とナイフリッジを楽しみに。
また登りに、というか、もう巡礼に行きたいな、と思う山、戸隠山でした。
あ、誤解のないよう一応書くと、正規ルート通ればちゃんと鎖ありますwやたら多くて、やたら長いけどw
2つあるナイフリッジのやばい方、剣の刃渡りも無理に歩かず跨って進めば意外といけますw
これは馬鹿と失敗の記録であり、戸隠山の風評被害ではありませんw
てか、崖から落ちた後に、傷だらけの身体でそのままナイフリッジ攻略してるとか、この時の僕、バカ過ぎるだろ…orz
勇気ある撤退。大事。マジで。
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