EK度数を使った登山計画-ヤマレコ

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更新日：2021年12月01日　訪問者数：2154

EK度数を使った登山計画

EK度数は、かつてのYamarecoユーザーが日帰り登山の体力的なきつさを数値化したもので、
行動距離、累積上り(↑)、累積下り(↓)がわかれば、下式で算出できます。
EK度数＝行動距離[km]＋（累積↑[km]×10）＋（累積↓[km]×5）
https://www.yamareco.com/modules/yamanote/detail.php?nid=142

使う要素が距離と標高差だけですので、人によらずコース自体に依存する数値となり、
一般的なコースの体力的なきつさの目安に使っている方もいるかと思います。
ここではEK度数をもう少し積極的に使い、行動時間に関する計画を立てようといことで、
ノートを作成しました。

全行程が5～6時間以上になる歩きやすい夏山および雪山を対象とし、
鎖場や岩稜歩きのように慎重さが求められる技術的難易度の高いコースは想定しておりません。

自身の脚力の把握

山行計画にあたり、どのくらいの時間を要するか計算するには、自身の脚力の把握が必要になります。
脚力を確認するには、自身の過去の山行からEK度数を算出し、それを行動時間で割ることで、
1時間あたりに換算するのが簡単です。
できれば長時間の山行で安定して歩けたものを選ぶことをお勧めします。
例えば、EK度数＝30のコースで大休憩を除いた行動時間が6時間程度であれば、
1時間あたりのEK度数(脚力)が5（=30/6）になります。
自身の脚力を把握しておけば、歩きたいコースのEK度数を算出した時点で
おおよその所要時間（行動時間）がわかることになります。

予定ルートのEK度数算出と所要時間

（1）無雪期一般ルート

参考にするコースの情報が十分にあれば、そこからEK度数は簡単に算出できます。
ヤマレコの山行記録を利用する場合、標高グラフを拡大すると
行動距離、累積上り、累積下りを確認することができます。
自身でルートを設定する場合、国土地理院地図のウエブサイトで平面距離を測り、
標高差を等高線読みにより確認することで、おおよそのEK度数を算出することができます。
https://maps.gsi.go.jp/

山行例1はヤマレコの山行記録、山行例2は国土地理院のウエブサイトを利用したものです。
いずれも、算出したEK度数を自身の脚力で割ると、大休憩を除いたおおよその所要時間を見立てることができます。
脚力5程度の人が歩こうとした場合、
山行例1は全行程で9時間ほど、山行例2は山頂まで4時間＋下山まで2時間少々が目安となります。

山行例1：ヤマレコ山行記録を使った計画

標高グラフ下の”グラフを拡大”をクリックすると、次の画像が表示されます。
自身の山行の中から適当なものを選びました。

山行例1：標高グラフ（拡大）

EK度数算出に用いる”合計距離”、”累積標高(上り)”、”累積標高(下り)”を確認することができます。
標高に関するデータはSRTM標高、GPS標高で少々変わります。よく使われているSRTM標高による、このコースのEK度数は46程度となります。
総距離22km、累積↑1.6km、累積↓1.55km

GPS標高、等高線読みで算出した場合でもEK度数は
45前後で大きな差はありません。

山行例2：地理院地図を使った計画

地理院地図で計測したルートを印刷し、スタート～山頂、山頂～行動終了地点のEK度数を追記したものです。
山行例1でもそうですが、舗装路歩きも特に気にせず算出しています。
区間の標高差は等高線読みによるおおよその値で、等高線に現れない10m未満の起伏は無視されることになりますが、大勢に影響はないと考えています。
EK度数は山頂までで20.5、そこから下山までで11程度です。

（2）積雪期への応用

ここからは雪山ハイキングに慣れた人向けです。
冬期は夏道と同じコースのほか、夏道から外れてコースタイム情報のない場所を歩くことが多くなります。
山行日の積雪状況により体力的なきつさが大きく変わり、
想像以上の厳しいラッセルで時間切れになり引き返すこともありますが、
「もう少し早く出ていれば」、「雪の状態を考慮できていれば」など考えられるところはあると思います。
そこで、ラッセルの状況をEK度数に補正することを考えました。
以下、感覚的なところなので当てはまらない人もいるかと思いますが、
自分ではおおよそ下記のような補正をしています。

ラッセル：上り補正, 下り補正
なし(圧雪)：+10%, +10%
　足　首　：+20%, +10%
　　脛　　：+50%, +25%
　膝　下　：+75%, +40%
　　膝　　：+100%, +50%
　膝　上　：+150%, +75%
　股　下　：+200%～, +100%～　行動不能相当

標高によって雪の状態が変わるはずですが、そこはざっくり考えます。
麓の雪はうっすらだけど、山頂近くは膝くらいありそうと想定した場合、
その平均で補正しておきます。上りではおおよそ+50～60％くらいになりますね。
もちろん、区間ごとで細かく考えても構いません。

山行例3の画像は、冬に何回か行く山のルートと区間ごとのEK度数（基本値）を算出したものです。
基本値を雪の状態で割増した上で、自身の脚力で割ればおおよその想定所要時間になります。
想定した雪の状態で脚力5程度の人であれば、山頂まで5時間程度かかりそうと見立てることができ、
そこから逆算してスタート時間を設定することもできます。

山行例3：雪山での計画

雪山でも無雪期と同様に距離および標高差を計測し、EK度数を算出します。途中の山小屋がある沼で2区間に分けました。画像内に記載したEK度数は基本値です。
区間ごとのEK度数に積雪状況を想定した割増を行います。
麓～沼までは足首平均、沼～山頂は膝下程度としたとき、
補正後のEK度数は、沼まで13(≒11+20%)、
沼～山頂で11(≒6.5+75%)程度となります。

おわりに

自身の山行は公共交通機関に頼るスタイルなので、帰りの乗り遅れがないよう、今回紹介したような方法で時間の計画を立てるようにしております。
少し手間はかかりますがいい予習になり、山行中でも随時予定の調整や進退の判断がしやすくなるかなと思います。

参考データ　自身のデータより

コメントいただきました、平坦地および傾斜地のEK度数につきまして、自身の歩行データを添付します。
測位データから得られる標高、距離、所要時間をもとに作成した散布図です。
測位データは10m程度の水平移動を秒単位で取得しており、休憩中に新たな測位データは取得されない仕様となっていました。
平地（勾配0％）より若干勾配のあるところのほうがEK度数が高めに出ている傾向があるようです。
山行日：2019.8.3　0:00～16:34
個々で差があると思われるので、あくまでも参考程度に。期間限定でじきに削除予定。

平均勾配と時間あたりEK度数のプロット

横軸を平均勾配、縦軸を時間あたりEK度数としたもの。
前後4点を含む計9点分のデータ（水平距離100m程度相当）を平均しています。

平均勾配と平均水平速度のプロット

横軸を平均勾配、縦軸を平均水平速度としたもの。
破線は1時間当たりのEK度数が6となるための水平速度
破線より上であれば1時間当たりのEK度数が6以上となります。

平均勾配と平均鉛直速度のプロット

横軸を平均勾配、縦軸を平均鉛直速度としたもの。
破線は1時間当たりのEK度数が6となるための鉛直速度
破線より上りでは上、下りでは下であれば1時間当たりのEK度数が6以上となります。

時間ごとのEK度数の履歴

横軸を経過時間、縦軸を時間あたりEK度数としたもの。
縦2軸に標高の破線を入れております。
長時間の歩きで終盤は若干落ちているような感じでした。

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chrome_takaさんの記事一覧

EK度数を使った登山計画 43 更新日：2021年12月01日

※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
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shokunpapa

脚力（時間あたりのEK度数）
chrome_takaさま　はじめまして

murrenさん考案のEK度数の活用を工夫されて、脚力（時間あたりのEK度数）の指標を作られましたが、かなり使えそうですね。

脚力のイメージとしては、次のようになるかと思います。
（以下では、距離と標高差の関係を、1km進む間に300m登る（30%、約17°の勾配）と仮定していますが、富士山の5合目より上のつづら坂の傾斜角度がだいたいこれぐらいです。また、マイペース登高能力というのは鹿屋体育大学の山本先生（運動生理学がご専門）が考案された脚力の指標です。）

２０：一流のマラソン選手やトレイルランナー
　1時間に平坦地を20km、又は距離5kmと登り標高差1500m。

８以上：トレイルランの練習　
　1時間に平坦地を8km、又は距離2kmと登り標高差600m、以上。

6.67以上：マイペース登高能力　ランクⅠ
　1時間に平坦地を6.67km、又は距離1.67kmと登り標高差500m、以上。

６：健脚
　1時間に平坦地を6km、又は距離1.5kmと登り標高差450m。

5.47以上：マイペース登高能力　ランクⅡ
　1時間に平坦地を5.47km、又は距離1.37kmと登り標高差410m、以上。

５：ちょい早
1時間に平坦地を5km、又は距離1.25kmと登り標高差375m。

4.4以上：マイペース登高能力　ランクⅢ
　1時間に平坦地を4.4km、又は距離1.1kmと登り標高差330m、以上。

４：標準
　1時間に平坦地を4km、又は距離1kmと登り標高差300m。

また、EK度数を脚力で割って所要時間を算出する際の精度を高めるために、積雪時期のEK度数の増補正（膝以下の積雪の場合）を考案されていますが、今後も、標高による補正（高山では一般にきつくなる）や、道の荒れ具合による補正など、様々な展開がされていくことを期待いたします。

2020/12/12 13:45

chrome_taka

Re: 脚力（時間あたりのEK度数）
shokunpapa　さん、コメントありがとうございます。
書かれました脚力の目安を含めて各々がどれくらいかわかれば、
そこから行動時間のあたりを付けられるのではと思い、まとめてみました。

おおよそ一定のペースで行動できるのが基本になりますので、
脚力は厳しめに見ておくといいと思います。
個人的には平坦地の移動ペースが一番厳しく出るかなと思います。

活動エリアが雪のある場所なので、経験から何となく積雪状態の補正を提示しましたが、
藪も断続的に続くものであれば、ある程度はイメージできるのかなと思います。

2020/12/12 18:56

shokunpapa

Re[2]: 脚力（時間あたりのEK度数）
chrome_takaさま

>おおよそ一定のペースで行動できるのが基本になりますので、
脚力は厳しめに見ておくといいと思います。

おっしゃるとおりです。マイペース登高能力も1~2時間程度の登高テストで測定されることが多く、多少無理をして登っている人もいるでしょう。1日を通じて同じペースを持続できるかどうかは疑問で、脚力は厳しめに見ておいた方が良いでしょう。

>個人的には平坦地の移動ペースが一番厳しく出るかなと思います。

これまでの私の経験でもそう思います。平均時速6km以上で平坦地を長時間歩くとなるとかなりきついです。
これとは反対に移動ペースが速く出るのは、関東では丹沢の大倉尾根や奥多摩の鴨沢~雲取山、関西では京都北山の二ノ瀬ユリが代表例になりますが、山腹を巻きながら緩く登っていく道で、登りだけでなく下りも速くなります。これらの道は昔の人が歩きやすいように造った高速登山道です。
奥多摩の雲取山は、北海道の羊蹄山と同じぐらいの標高差1600mの登り下りがあって、距離は雲取山の方が長くなりますが、直登の多い羊蹄山と違って雲取山の方が早く楽に登り下りできます。

2020/12/12 19:34

chrome_taka

Re[3]: 脚力（時間あたりのEK度数）
大変遅くなりました。
参考データとなりますが、平坦地と傾斜地でEK度数の稼ぎやすさにどの程度差が出るのか、
自身のデータから散布図を作成してみました。
平坦地よりも傾斜地、特に緩めであればEK度数の割に楽に（速く）歩けるような傾向がありました。
地面の状態や慣れの問題もあるかと思うので、必ずこうなるわけではないと思いますが、
コメントのような感覚はありますね。

2021/1/22 8:11

koebi

参考にさせていただきます
chrome_takaさまこんばんは。
EK度数は今回初めて知りました。過去の登山履歴からEK度数、体感的な疲労の記憶と登山時間、山と高原地図のコースタイムで比較してみたいと思います。
どういう傾向が出るか楽しみです。

2021/1/20 22:08

chrome_taka

Re: 参考にさせていただきます
koebi さん、コメントありがとうございます。
EK度数自体はかなり前から謳われていたもので、この記事もそれを参考にしたものです。
自身の傾向をつかめれば、未歩行のところでもおおよそのアタリは付けられるようになるかと思いますので、試していただければ幸いです。

2021/1/22 8:14

shokunpapa

データ整理ご苦労様です。
chrome_takaさん　こんばんは

またまた、ご自身のデータについて、すごいデータ処理をされました。
気が付いたことをコメントさせていただきます。

【平均勾配と時間あたりEK度数のプロット】
〇平坦地では、稼げるEK度数が少ない。
　⇒おっしゃっていたことと同じになりました。　
〇登りでは、10%（10分の１）の勾配の時に、稼げるEK度数のピークが来る。
　⇒緩い登り道は登りやすいという経験則と一致します。　
〇登りに対し、下りでは、ピークが不明。
〇急傾斜の下りになるほど、道の条件によって値のばらつきが大きい。
〇急傾斜の下りでも、EK度数を稼いで下っておられるケースが多い。
　⇒chrome_takaさんの太腿の筋肉は相当強そうです。

【平均勾配と平均水平速度のプロット】
〇登りも下りも、勾配が急になるほど、水平方向の速度は低下。
　⇒一般的な法則です。
　　それにしても、EK度数６の破線よりも上にほとんどの点が分布して
　　いるので、chrome_takaさんはものすごい健脚な方です。

【平均勾配と平均鉛直速度のプロット】
〇登りの鉛直速度に比べて、下りの鉛直速度が1.6倍ぐらい大きい。
（鹿屋体育大学の山本先生が、山と渓谷2月号で、登山地図のコースタイムを使って分析したら、平均30%の傾斜では、鉛直速度が登り：下りで1:1.5になったと書かれています。）
〇下りの方が値が分散している。急な下りでもEK度数を稼いでおられるケースが多い。
　⇒ここからも、chrome_takaさんの太腿の筋肉が相当強そうなのがわ
　　かります。
　　また、chrome_takaさんの点の分布からすれば、EK度数７ぐらい
　　の鉛直速度破線の上に乗っかってきそうです。1時間に標高差500m以上
　　は軽く登られる脚力です。

【時間ごとのEK度数の履歴】
〇午前と午後でEK度数はあまり変わっていない。
　⇒ご本人は、終盤に若干落ちているような感じとおっしゃっていますが、一日を通じて長時間コンスタントに歩かれています。

【類推できそうなこと】
〇登りだけでなく下りに強い人、長時間の持久力のある人、下りの条件が良いコースの場合は、脚力（時間当たりのEK度数）が大きくなる傾向。
〇EK度数では、同じ脚力で登り下りする場合、30%の傾斜で、登りと下りの鉛直速度比が1:1.6になる。これは、同じ傾斜での登山地図のコースタイムでの平均の1:1.5に比べて、下りに強い、脚力のある人向けの設定になっている。

これからも、いろいろご検討いただいて、おもしろいデータをお示しください。

2021/1/22 23:36