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更新日:2020年06月13日 訪問者数:220
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日本の山々の地質;第2部 北アルプス、2−9章 北の又岳 〜恐竜時代の手取層群に覆われた山〜
bergheil
2−9章 北の又岳 〜恐竜時代の手取層群に覆われた山〜
2−9章 北の又岳 〜恐竜時代の手取層群に覆われた山〜

 黒部五郎岳(2840m)から稜線をさらに先に進むと、なだらかな尾根が続き、北の又岳(2662m)に至ります。
 「北の又岳(きたのまただけ)」という山は、稜線にあるちょっとした高みという程度で大した特徴もなく、とても有名とは言えない山ですが、ここでわざわざ取り上げた理由は、山頂部一帯が、「手取層群(てどりそうぐん)」という中生代の堆積層で覆われており、その手取層群の説明をしたいがためです。


・手取層群について 
  化石や、恐竜に関して興味のある人にとって、北陸地方一帯に分布する「手取層群」という地層群は割と有名です。
 というのは、日本列島では珍しく、中生代(ジュラ紀、白亜紀)の化石を多産する地層であるからです。特に、恐竜類の化石が見つかることで恐竜マニアの方には有名だと思います。

 手取層群は北陸一帯の山間部に分布していますが、大きくは西部と東部の2地区に分けられます。西部は「白山区」とも言われ、石川県南部(白山付近、手取川流域)、福井県東部(勝山市の山間部)、岐阜県飛騨地方北西部に分布しています。東部地域は「神通区」(じんつうく)とも呼ばれ、富山県の有峰湖付近を中心とし、富山県の南東部、岐阜県飛騨地方北東部に分布しています。北の又岳の手取層群は、東部地域の東端にあたります。

 日本の古い堆積層は、その多くが、海洋プレート沈み込みに伴う「付加体」で出来ていますが、この手取層群は、付加体型の堆積層ではなく、主に淡水性の環境(湖、沼地、扇状地など)で堆積した地層です(一部、アンモナイトの化石を含む海成層もあり)。そのために、湖、池へと周辺の川から流れてきた土砂とともに、当時住んでいた恐竜や植物などの化石が混じっているわけです。

 手取層群の堆積時期は、ジュラ紀後期(約1.7億年前)から白亜紀前期(約1億年前)と、かなりの期間に及んでいます。そのころの日本列島に相当する地域は、まだユーラシア大陸(中国大陸)と陸続きであり、北陸地方はおそらく、現在の北朝鮮北東部、ロシア沿海州と陸続きだったと思われます。そのため、中国大陸で繁栄していた恐竜や各種動物(陸生、海生)さらに森林の木の葉などが、化石となっているわけです。

 特に福井県の山間部(勝山市付近)の手取層群からは、恐竜の化石が多く見つかっており、福井県 勝山市には、「福井県 恐竜博物館」(文献2)があって、(私はまだ行ったことがありませんが)、ホームページによると、恐竜時代(中生代)の化石を多数展示されているようです。
 また、石川県 白山の麓あたりの手取層群も化石が多産することで有名で、「桑島化石壁」と称する、化石が多産する場所もあります(ただし一般の人は採取禁止)。また「白山恐竜パーク白峰」(文献4)という施設もあります(有料ですが、化石発掘体験ができます)。

手取層群に関して、詳しくは以下の文献や、ネット情報をご覧ください。
(文献1、2,3、4)

 さて、北の又岳に話が戻りますが、「地質図」によると、北の又岳の頂上部および西側山腹は、手取層群の泥岩、砂岩、礫岩で覆われています(堆積時代は、白亜紀前の、約1億年前〜1.2憶年前))。またこの地層群は、北へと延び、太郎平小屋のある、太郎平あたりまで続いています。また登山口でもある折立までの登山道も手取層群に覆われています。この一帯は目立った岩場、崖などなく、緩やかな稜線が続きますが、おそらくは、浸食されやすい堆積岩でできているためだと思います。

 なお、手取層群は前述のとおり、中生代の化石を多産する地層群ですが、この北アルプスの稜線で化石が見つかったという話は聞きません。北アルプス全体が国立公園で、岩石も含めて自然物の採取が禁止されているために、北の又岳付近での化石採掘は行われてないのでしょうが、ひょっとしたら、この山のどこかに、恐竜の化石がひそかに眠っているかも知れませんね。


文献1)ウイキペディア 「手取層群」 (2020年6月閲覧)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%8B%E5%8F%96%E5%B1%A4%E7%BE%A4

文献2)「福井県 恐竜博物館」のホームページ(2020年6月 閲覧)
https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/

文献3)松川正樹, 小荒井千人, 塩野谷奨 ほか, 「手取層群の主要分布域全域の層序と堆積盆地の変遷」『地質学雑誌』 2003年 109巻 7号 p.383-398, doi:10.5575/geosoc.109.383

文献4)「白山恐竜パーク白峰」のホームページ(2020年6月 閲覧)
https://hakusan-geo.jp/area/420/
地質図;北アルプスでの手取層群の分布
・中央部の湖は有峰湖

・ミントグリーン;手取層群(礫岩層)

・薄茶色;手取層群(砂岩、泥岩層)

・(周辺の)赤色;深成岩(花崗岩類)
北の又岳付近の縦走路
なだらかな稜線、ごろごろ転がっている岩屑は砂岩、泥岩などの手取層群の石
北の又岳付近の稜線
手取層群の堆積層でできているためか、山稜の両側も緩やかな斜面、夏にはお花畑が広がる
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この記録へのコメント

登録日: 2015/8/1
投稿数: 341
2020/6/15 20:09
 地学のご専門家ですね
bergheilさん、こんにちわ。
以前、bergheilさんは「ご自分は地学の素人で独学をしています」とおっしゃっていましたが地学のご専門家ですね。
「日本の山々の地質」を教材として使用させていただきます。

自分もどうして福井県で恐竜化石が多く見つかるのか調べました。
日本海形成前、大陸東縁に位置していた日本の中では、bergheilさんがご説明されていますように、手取層群が覆う飛騨帯は他の日本の位置に比しやや内陸にあり、恐竜にとっては良い生活環境(推測ですが)で、かつその地域はその後に火成活動や変性作用を免れたためと考えました。

40年程前に北の又岳に行きましたが残念ですがどのような山だったか覚えていません
登録日: 2011/5/3
投稿数: 381
2020/6/15 20:25
 Re: 地学のご専門家ですね(いやいや、素人です)
fujikitaさん、コメントありがとうございました。"読者" からコメントを頂くと、投稿しているかいがあって、ありがたいです。

私は地学(地質学、地形学)を、あくまで独学でやっているので、本当の専門家の方から見られると恥ずかしいレベルですが、山歩きを長くやっていると、山の地形や地質に自然と興味がでてきました。

全国各地の地質図もデジタル化されて、パソコンで容易に見れる時代になったので、素人レベルでも山の地質を確認できることはありがたいです。
登録日: 2015/8/1
投稿数: 341
2020/6/16 18:18
 Re[2]: 地学のご専門家ですね(いやいや、素人です)
bergheilさん、たった今帰宅してご返事を拝見いたしました。
今後、bergheilのご報告を勉強させていただきます。

それから、はじめの私のコメントに訂正があります。飛騨帯は間違えです。飛騨地域(富山、石川、福井)です。お詫び申し上げます。

話は変わるのですが、吉野川は四国山地を横切っていますが不思議に感じます。大歩危、小歩危付近では南北に流れています。先行河川だったのでしょうか。
やはり、四国に行って観察が必要ですね。
登録日: 2011/5/3
投稿数: 381
2020/6/16 21:34
 Re:四国の先行河川について
fujikitaさん、いつもコメントありがとうございます。こういうやり取りは楽しいですね🎵

さて、四国第一の河川である吉野川は、ご指摘の通り、「先行河川」と考えられています。その他にも、四国の南西部にうねうねと流れている四万十川も、先行河川とされてます。

山より川の方が先輩と言うのは、ちょっと不思議な気もしますが、吉野川もおそらく、数百万才なんでしょうね。

なお、その辺りのことは、地質学ではなく、地形学の領域です。学問の世界は思う以上に細分化されてます。私は両方とも興味がありますので、地質学の教科書以外に、地形学の教科書(※)も参考にしてます。

※「日本の地形」シリーズ、東京大学出版会 編、
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