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更新日:2020年08月12日 訪問者数:274
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日本の山々の地質;第2部 北アルプス、2−20章 「蓮華帯」概説
bergheil
(1)始めに
 前章(2-19)まで、「後立山山脈」(後立山連峰)の山々を、南から順に五竜岳まで説明してきました。
 本来は次に、唐松岳、白馬岳へと順に説明していくべきところですが、唐松岳以北は、「蓮華帯(れんげたい)」と呼ばれる、ちょっと特別な地質帯なので、まずはその「蓮華帯」について、この章で概要を説明し、その後、それぞれの山について説明します。
(2)「蓮華帯」の範囲
ここで言う「蓮華帯」とは、白馬岳付近を中心とした三角形をしたゾーンです。
  (添付している図も、ご参照ください)

 南端は、鹿島槍ヶ岳の東方、仁科山地です。そこから北へと末広がり的に広がり、北西端は親不知あたり、北東端は姫川が日本海に注ぐあたりで日本海に面しています。南北で約40km、東西で最大幅が約20km程度の、比較的小さいゾーンです。

 なお、ここで説明範囲を定義した「蓮華帯」の西側にある宇奈月変成岩帯(「宇奈月帯」とも言う)を、蓮華帯に含める学説もありますが、ここでは宇奈月変成岩帯は、「蓮華帯」としては扱わず、のちの章で説明する予定です。

 「蓮華帯」という地質ゾーンの名称の由来は、古くは越後(新潟側)で、白馬岳とその周辺の山々を大蓮華山と呼んでいたこと(注1)にちなむと思われます。
 今では、「蓮華温泉」や「小蓮華山」(白馬岳から北東へ続く稜線上のピーク)という地名、山名に、“蓮華“ という言葉が使われています。
 なお、大町市、扇沢の南側に蓮華岳という山がありますが、これは蓮華帯には属しておらず、名称の由来とは関係ないと思われます。
  (注1; ウイキペディア 「白馬岳」の項による。2020/8 閲覧)
(3) 本ゾーンの名称について
 ここでは、このゾーンのことを、とりあえず「蓮華帯(れんげたい)」と呼ぶことにしますが、実は学説(書物、文献)によってこのゾーンの呼び方はまちまちで、地質学、地球物理学の分野での学者間のコンセンサスが取れていない状態です。

 本ゾーンの名称をパターン別に述べると、
 ・パターンa)「蓮華・長門帯」など、「蓮華+〇〇帯」という呼び方
 ・パターンb)「飛騨外縁帯(蓮華地区)」など、
         飛騨外縁帯の延長部と位置付ける呼び方
 ・パターンc)このゾーン自体を、さらに2〜4個くらいに細分する考え方
 
 といった具合です。
   (詳しく知りたい方は、参考文献の項にある、各文献をご覧ください)

  
(4)「蓮華帯」を構成する地層、岩石類
 このゾーンには、いろいろな地層、岩石が複雑に分布しており、そのために研究対象としていろいろ研究されていますが、それらの地層どうしの関係についての関係は良く分かっていない状況です。

 この節では、この「蓮華帯」ゾーンに分布する主な地質、岩石類を例示します。


1) 超苦鉄質(ちょうくてつしつ)岩類
   1−1)蛇紋岩;マントルにある「かんらん岩」が水と反応して
           変化したもの。
   1−2)かんらん岩;上部マントルを構成する岩石で、蛇紋岩化していないもの。

2) 堆積岩類(非 付加体型)
   2−1)白馬岳層群;ぺルム紀 堆積層
   2−2)来間(くるま)層群;ジュラ紀 堆積層
   2−3)手取層群;白亜紀 堆積層

3) 堆積岩類(付加体型)
   3−1)虫川コンプレックス(このゾーンの北東部) ※
   3−2)姫川コンプレックス(このゾーンの東部)  ※
   3−3)小滝コンプレックス(このゾーンの南側)  ※
   3−4)石灰岩 岩体群;青海地区の青海黒姫山、明星山など、

    注)※印の3つのゾーンの名称については、オーソライズされているかは不明

4) 変成岩類
   4−1)結晶片岩類;高圧型変成岩。「蓮華変成岩類」とも言う。
   4−2)角閃岩類;結晶片岩よりも、より高温高圧で変成した変成岩。
   4−3)(変)ハンレイ岩;海洋プレート下部を構成するハンレイ岩、
              および、それが変成作用を受けたもの。

5) 火山岩類
   5−1)白馬乗鞍岳火山岩類;第四紀火山である白馬乗鞍岳からの噴出物
   5−2)古第三紀〜新第三紀の火山岩類

6) その他;ヒスイ含有岩体;
    青海地区に、蛇紋岩体の中に含まれるようにして点在。
    日本の歴史において、縄文から弥生時代にかけ、
    ここに産出するヒスイが日本列島各地の遺跡で見つかっており、
    古代から重要なヒスイ産地です。
    
   ※ 現在は、採取厳禁になってますので、ご注意ください。
(参考文献)
文献1)平、斎藤、橋本
    「日本列島形成の基本的プロセス
      ―プレートのななめ沈み込みと横ずれ運動―」
    (論文集)「日本列島の形成」岩波書店 刊 p376-383 (1986)
      (なお原文献は、) 科学、第51巻、(1981)

文献2)茅原、小松
    「飛騨外縁帯(特に青海―蓮華帯)及び上越帯に関する諸問題」
     地質学論集 第21号、p101-116 (1982)

  (以下のリンク先は、「国会図書館 デジタルアーカイブス」です。
    うまくつながるかどうかは保証いたしかねます)
  https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10809463

文献3)小澤、平、小林 
    「西南日本の帯状地質構造はどのようにしてできたか
     ―変動帯日本列島の基盤--沈み込み・衝突・造山運動―」 
    (論文集)「日本列島の形成」岩波書店 刊 p366-375 (1986)
      (なお原文献は、) 科学、第55巻、(1985)

文献4)(論文集)「日本列島の形成」扉図、 岩波書店 刊 (1986)
    (※ この論文集は、“Amazon”にて、中古本として購入可能のもよう)

文献5)平 「日本列島の誕生」 岩波書店 刊(岩波新書) (1990)
    (※ “Amazon”にて、購入可能のもよう)

文献6)磯崎、丸山 「日本におけるプレート造山論の歴史と、
      日本列島の新しい地体構造区分」
       地質雑誌、第100巻 p697-761 (1991)
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/100/5/100_5_697/_pdf

文献7)束田、竹内、小嶋「飛騨外縁帯の再定義」
      地質学雑誌、第110巻、p640-658 (2004) 
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/110/10/110_10_640/_article/-char/ja/
        (論文データベース;J-stage サイト)

文献8)「日本地方地質誌」第4巻 「中部地方」、第2章 「飛騨外縁帯・秋吉帯」の項、
      日本地質学会編、岩波書店刊 (2006)

文献9)磯崎、丸山、青木、中間、宮下、大藤
    「日本列島の地体構造区分再訪
     ―太平洋型(都城型)造山帯構成単元および境界の分類・定義―」
     地学雑誌、第119巻、p999-1053(2010)
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/119/6/119_6_999/_pdf

文献10)椚座(くぬぎざ)、丸山 「飛騨外縁帯の地質構造発達史」
     地学雑誌、第120巻、p960-980 (2011)
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/120/6/120_6_960/_pdf

文献11)磯崎、丸山、中間、山本、柳井
     「活動的大陸縁の肥大と縮小の歴史」
      地質雑誌、第120巻、p65-99(2011)
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/120/1/120_1_65/_pdf
「蓮華帯」の場所
・紫色で色付けした場所が、この章で説明する「蓮華帯」

参考用に記載したライン(だいたいで書いてます)
・赤でかこった帯状部分;いわゆる「飛騨外縁帯」主部
・緑色の線:糸静線
・青色の線;中央構造線
北アルプス地域における「蓮華帯」の位置
・赤で囲った範囲が、この章で説明する「蓮華帯」ゾーン

・緑色で囲った範囲は、北アルプスのだいたいの範囲
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