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更新日:2020年11月09日 訪問者数:221
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日本の山々の地質;第5部 関東西部の山々 5−2章 伊豆山地の山々の特徴と地質
bergheil
伊豆半島付近の地形
・青色の線;プレート境界
(西から、駿河トラフー富士山付近(推定)−小田原付近ー相模トラフ)

・赤色の線;火山フロント

※ (文献11)の図1を元に筆者加筆
伊豆半島の地質図
・黄土色;熱海層群(第四紀火山の噴出物;主に安山岩質)

・黄色;湯ヶ島層群、白浜層群(中新世の海底火山噴出物、主に安山岩質)

・薄黄色;砂岩(中新世の浅海堆積物)

・グレー;第四紀最近の単成火山噴出物(玄武岩質)

※産総研 「シームレス地質図」を元に筆者加筆
 この章より、関東西部の山々の地質について、地域ごとに具体的説明を始めます。
最初は、前の5-1章で定義した「ゾーン1」の伊豆半島の山々(伊豆山地/伊豆地塊)です。
(1)伊豆半島(伊豆地塊)とはなにものか?
 伊豆半島(伊豆山地)の地質を説明する前に、まずこの第(1)節では、伊豆半島とは地球科学的にはなにものか? という、伊豆半島の地球科学的/プレートテクトニクス的な意味合いについて説明します。

 プレートテクトニクス(以下「プレート理論」と略)によると、日本列島とその周辺には4つのプレートがあります。
 
 日本列島の北東部分は、北米プレート(もしくは、オホーツク海プレート(注1))に乗っています。一方、日本列島の南西部分は、ユーラシアプレート(もしくは、アムールプレート(注2))に乗っています。この2つの大陸型プレートの境目は、だいたい中部日本の「糸魚川―静岡構造線(断層帯)」の付近であろうと推定されています。

 次に海側のプレート(海洋型プレート)ですが、日本列島の東側には太平洋プレートがあり、日本海溝の場所にて東北日本(北米プレート)の下に沈み込んでいます。また日本列島の南側にはフィリピン海プレートがあり、南海トラフの場所にて南西日本(ユーラシアプレート)の下へと沈み込んでいます。

 2011年の東日本大震災は、太平洋プレートが沈み込んでいる日本海溝付近で起きた大地震です。また近い将来に起こると予測されている南海トラフ地震は、その名のとおり、フィリピン海プレートが沈み込んでいる南海トラフ付近で起きることが予想されています。

 さて、日本列島主要部(北海道、本州、四国、九州)のほとんどは上記のとおり、北米プレートかユーラシアプレートに乗っていますが、実は伊豆半島だけが、フィリピン海プレート上に乗っています。日本列島本体から見ると伊豆半島はいわば「よそ者」です。

 そのプレート境界は、伊豆半島の西側の駿河トラフから陸地へと上陸し、冨士山の直下を通り(推定)、その先、丹沢山地の南の端にある「神縄断層」、小田原市付近の「神津―松田断層」あたりを通って相模湾へと抜け、相模湾の中央にある相模トラフへと続いています(文献1)、(文献2)。

 伊豆半島は、そこから南へと小笠原諸島まで延びる島々の列、「伊豆小笠原弧」という島弧の一部、かつその北端部にあたります。

 伊豆小笠原弧という島弧は、その東側にある太平洋プレートがフィリピン海プレートの下へと、伊豆小笠原海溝にて沈み込んでいるプレート境界付近にできた、火山島などからできた島々の列(島々の列なので「島弧」と言う)です。その島弧自体が、フィリピン海プレートの動き(現在は、日本列島に対して北西方向へと進んでいる)に乗って、日本列島主要部へと衝突しています。

 海洋プレートのうち、海洋地殻を持っている部分は、密度差によってそのまま陸側プレートの下へと沈み込んでいきますが(たとえば南海トラフの部分)、伊豆半島のような火山性の島(地塊)は、密度が軽いために(「浮揚性地塊」という)、地下へと沈み込むことができず、同じ島弧である日本列島へと衝突しているのです。
 これはスケールがだいぶ違いますが、インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突して、その圧力によりヒマラヤ山脈ができたのと類似の、プレート間衝突型境界にあたります。

 伊豆地塊の日本列島への本格的衝突は、約1Ma(=約100万年前)に始まり(文献6)、(文献7)、(文献8)、現在も衝突が続いている場所です。この衝突の影響で、その北にある丹沢山地は大きく隆起し、また日本一の高さと日本一の堆積を誇る富士山の形成も、伊豆地塊の衝突と大きく関連していると考えられています(文献1),(文献2)。

 なお、地質に残っている残留地磁気の測定によると、約11Maには、伊豆半島は日本列島から約1000kmもの南にあったと推定されています(文献9)。



   ※ “Ma“ は、百万年前を意味する単位
(2)伊豆半島(伊豆山地)の地質
 さて、伊豆半島の地質ですが、元々は火山島(その前は海底火山群)だったので、ほぼ全体が火山性の地質で出来ています。ここでは(文献9)、(文献10)をベースにして説明します。なお各地質(地層)の形成年代は基本的には、「地質図」記載の年代を採用しました。

a)湯ヶ島層群
 まず最下層は、「湯ヶ島層群」と呼ばれる地層で、新第三紀 中新世中期(文献10)に噴出した海底火山からの噴出物(火山性破砕岩)です。岩質は主に安山岩質です。この地層は、伊豆半島ではそれ以降の地層に覆われて、部分的にしか露出していません。堆積環境は(文献6)によると、深い海盆と推定されています。

 (実は、湯ヶ島層群よりさらに古い「仁科層群」という地質が存在し、部分的に分布していますが(文献10)、説明は割愛します)

b)白浜層群
 次に堆積しているのは「白浜層群」と呼ばれる地層で、新第三紀 中新世後期〜漸新世(約7.2Ma〜約2.6Ma)に噴出した海底火山からの噴出物(火山性角礫岩)です。火山岩の種類としては主に安山岩質です。海中噴出した火山岩ということは、まだこの時期には伊豆半島は火山島にはなっておらず、海底火山の集合体だったと思われます。白浜層群の堆積環境は、(文献6)によると、浅い海だったと推定されています。

 「白浜層群」は、伊豆半島の南半分(天城峠のある分水嶺より南)に広く分布していますが、伊豆半島の北半分(伊東市周辺、沼津市南方)にも基盤岩として部分的に露出しており、伊豆半島全域に広がっていると思われます。

 また、「白浜層群」の中にはサンゴ礁由来と思われる石灰岩が点在しています(文献10)。石灰岩に含まれる有孔虫というプランクトンの化石の分析から、この石灰岩が形成された時代(中新世中期;約11.5Ma)には、伊豆半島に相当する部分は熱帯の海だったことが推定されています(文献10)。
 伊豆半島に相当する部分がフィリピン海プレートの動きに伴って、熱帯地域(低緯度)から日本列島へ向かって北上してきたことの、一つの証拠といえます。

 なお、「地質図」によると、火山岩以外に、半島南部にはところどころ、砂岩層が分布しています。(文献10)によると、それ以外に凝灰岩層も分布しているようです。これらの地層の形成時期は、「湯ヶ島層群」〜「白浜層群」の形成時期とほぼ同じ中新世中期〜漸新世です。 
(文献9)、(文献10)によると、このことも含めて考えると、この時期の伊豆半島領域は、浅い海だったと考えられています。


c)熱海層群
 白浜層群の上部には、第四紀前期(カラブリアン期;180万年前〜78万年前)から第四紀中期(チバニアン期;78万年前〜13万年前)に噴火した火山による地質が乗っています。まとめて「熱海層群」と呼ばれています。

 この地質の分布域は、伊豆山地の最高峰、かつ百名山でもある天城山(1405m)とその周辺、半島の北西にある達磨山(982m)とその周辺(棚場山、猫越山)、半島の付け根である宇佐美地区、多賀地区、および南部の長九郎山(996m)、などです。火山岩の種類としては、主に安山岩質です。これらの火山岩は陸上噴出であり、この時代にはすでに火山島になっていたことが解ります。

 これらの火山は活動した時期がかなり古いため、すでに浸食、開析が進み、もとの火山体の形を保っていません。それぞれの火山の火口がどこにあったかも不明な火山がほとんどです。

 このうち、天城火山は、約73〜21万年前に活動した火山です。万三郎山(ばんざぶろうやま)、万二郎山(ばんじろうやま)の南側に火口が、また八丁池付近にも火口があったと推定されています。これらの火口から周辺部へと、厚い溶岩流と、泥流堆積物が広がっています(文献10)。


d)単成火山群(文献9)
 伊豆半島の東側、伊東市から南にかけては、比較的新しく、かつ一回だけの噴火で形成された(主に玄武岩質の)小さい火山(単成火山)が群立しています。これらの単成火山は約15万年前〜ごく最近までの間に形成されており、まだ浸食が進んでいないため、比較的明瞭な火山形状をしています。

 代表的なのは、大室山(580m)で、火山の形態としてはスコリア丘と呼ばれる独特の形をしています。大室山ができたのは、わずか5000年前頃と推定されており、そのために円錐状のきれいな形状を保っています。

 なお、これらの単成火山群ができた理由としては、火山群の並びから見て、この一帯が、ほぼ東北―南西方向を軸とする伸張応力場(逆に言うと、北西―南東方向を軸とする圧縮応力場)になっていることが原因で、北西―南西方向に地下の割れ目が生じやすく、その割れ目に沿ってマグマが上昇するため、と推定されています。


  ※ “Ma“ は、百万年前を意味する単位
(注釈、補足説明の項)
 注1)「オホーツクプレート」について
 日本列島の北東部分は、もともと、「北米プレート」の一部と考えられてきましたが、その後、オホーツク海、千島列島、日本列島北東部は、北米プレートとは別の動きをしている別のプレートである、という仮説がでてきました(文献3)。これを「オホーツクプレート」と呼びます。ただしオホーツクプレートはまだ定説とはなっておらず、文献、書物によって、北米プレートと記載されていたり、オホーツクプレートと記載していたりします。

 注2)「アムールプレート」について
 日本列島の西南部分は、もともと「ユーラシアプレート」の一部と考えられてきましたが、中国(国)の東部、東北部、モンゴル、ロシア極東部、朝鮮半島、東シナ海の一部、および日本列島西南部分は、ユーラシアプレートとは別の動きをしている別のプレートである、という仮説が出てきました(文献3)(文献4)。それを「アムールプレート」と呼びます。ただしアムールプレートはまだ定説とはなっておらず、文献、書物によって、ユーラシアプレートと記載されていたり、アムールプレートと記載していたりします。
(参考文献)
文献1)町田、松田、海津、小泉 編
    「日本の地形 第5巻 中部」 東京大学出版会 刊 (2006)
    のうち、第2部 「南部フォッサマグナ地域」の項


文献2)日本地質学会 編
    「日本地方地質誌 第4巻 中部地方」朝倉書店 刊 (2006)
     のうち、第16章「南部フォッサマグナ」の項

文献3)瀬野
    「日本付近のプレートとその運動」
      サイスモ(原稿) (2003)

   http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/people/seno/Papers/seismo2003.plate.pdf  

文献4)K.Heki, S.Miyazaki, H.Takahashi, M.Kasahara, F. Kimura, S.Miura, etal.

   “The Amurian Plate motion and current plate kinematics in seatan Asia”
    Jour. of Geophysical Reserch. Vol. 104 , p29147-29155 (1999)

  https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1029/1999JB900295


文献5)貝塚、小池、遠藤、山崎、鈴木 編
   「日本の地形 第4巻 関東・伊豆小笠原」 東京大学出版会 刊 (2000)
    のうち、第6部「伊豆諸島と小笠原列島」の項

文献6)高木、青池、小山
    「15〜10Ma前後の伊豆・小笠原弧北端部で何が起こったか」
    地学雑誌、第102号 p252-263 (1993)

  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/102/3/102_3_252/_pdf

文献7)天野、松原、田切
   「富士山の基盤:丹沢山地の地質 −衝突付加した古海洋性島弧―」
    富士火山 誌 p59-68 (2007)-

  http://www.mfri.pref.yamanashi.jp/yies/fujikazan/original/P59-68.pdf

文献8)ウイキペディア 「フィリピン海プレート」の項
         2020-11月 閲覧

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%94%E3%83%B3%E6%B5%B7%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88

文献9)町田、松田、海津、小泉 編
    「日本の地形 第5巻 中部」 東京大学出版会 刊 (2006)
    のうち2−4章「伊豆半島の山地・火山と海岸」の項

文献10)日本地質学会 編
    「日本地方地質誌 第4巻 中部地方」朝倉書店 刊 (2006)
     のうち、第17章 「伊豆半島」の項
        
文献11)平田、山下、川手
    「伊豆・小笠原弧北端部、箱根火山周辺の地形・地質テクトニクス」
     神奈川博調査研報(自然) 第13巻 p1-12 (2008
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