(はじめに)
2−1章で説明したように、(文献1―1)では、古い起源を持つ「アルトクリスタリン」岩体に加え、古生代の各種地質体も、「ヨーロッパアルプス」における「基盤岩類」(basements)として、含めています。
この2−2章では、「アルプス地域」に分布している、古生代の各種地質体(火成岩類(深成岩、火山岩)、堆積物層、変成岩)について説明します。
ただし、文章のボリュームが多くなりすぎ、一回の連載で全てをまとめると読みずらいと思われましたので、今回の連載は、「2−2章(その1)」として、堆積物層までの説明とし、変成岩、ヴァリスカン変成作用については、「2−2章(その2)」として、次の連載に回すこととしました。
なお、古生代のヨーロッパ地域にとって非常に重要な地質学的イベントで、上記の各地質体の形成にも大きく影響している、「ヴァリスカン造山運動」(the Variscan orogeny)に関しても、この章の最初の節(第1節)に、「アルプス地域」との関連としてまとめました。
この2−2章では、「アルプス地域」に分布している、古生代の各種地質体(火成岩類(深成岩、火山岩)、堆積物層、変成岩)について説明します。
ただし、文章のボリュームが多くなりすぎ、一回の連載で全てをまとめると読みずらいと思われましたので、今回の連載は、「2−2章(その1)」として、堆積物層までの説明とし、変成岩、ヴァリスカン変成作用については、「2−2章(その2)」として、次の連載に回すこととしました。
なお、古生代のヨーロッパ地域にとって非常に重要な地質学的イベントで、上記の各地質体の形成にも大きく影響している、「ヴァリスカン造山運動」(the Variscan orogeny)に関しても、この章の最初の節(第1節)に、「アルプス地域」との関連としてまとめました。
2−2章―第(1)節 「ヴァリスカン造山運動」について
現世の「アルプス地域」に分布する古生代の地質体は、古生代の中〜後期にかけて起こった、「ヴァリスカン造山運動」(the Variscan orogeny)と大きく関連しています。
そこで、個々の地質体について説明する前に「ヴァリスカン造山運動」について、(文献1)、(文献2)、(文献3)を元に説明します。
「ヴァリスカン造山運動」は、研究者や文献によっては「ヘルシニア(ン)造山運動」(Hercinian orogeny)とも呼ばれます。いずれにしろ、この用語の示す時代的な範囲、地理的な範囲については、色々な解釈があります(文献2)、(文献3)。
この連載では、「ヨーロッパ大陸ブロック」と、「巨大大陸ゴンドワナ」の一部であった「アフリカ大陸ブロック」との衝突イベントを、狭義の「ヴァリスカン造山運動」とします。
なお、それ以前に起こったと推定されている、「アヴァロニア」(Avalonia)地塊群(文献5)や「アルモリカ」(Armorica )地塊群(文献6)の「ヨーロッパ大陸ブロック」への衝突イベントなどは、まだ研究途上で位置付けがはっきりしていないようなので、この連載では説明を省きます。
さて、(文献1−1)、(文献1−5)、(文献1−6)では、「アルプス地域」における「ヴァリスカン造山運動」を、狭義の「ヴァリスカン造山運動」と、「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Variscan)に分けています。
この連載では、大陸ブロックどうしの衝突イベントが起きた時代を「ヴァリスカン造山運動・主期」と呼ぶことにしますが、これはだいたい「デボン紀」後期から「石炭紀」前期(約380〜320Ma)にあたります(文献1−1)、(文献1−5)、(文献2)。
その後の、「石炭紀」後期から「ペルム紀」前期にかけての時代(約320〜280Ma)を、(文献1―1)、(文献1−6)では「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Varisican)と呼んでいます。
また本連載では、両方をまとめて「ヴァリスカン造山運動の時代」と呼ぶことします。
「ヴァリスカン造山運動・主期」の時代は、「ヨーロッパ大陸ブロック」と「巨大大陸ゴンドワナ」の一部であった「アフリカ大陸ブロック」との衝突イベントが生じた時代です。
図1には、(文献3)より引用した、ヨーロッパ地域における、「ヴァリスカン造山運動」の影響が及んだ地域を示しますが、西はイベリア半島から東は東欧までヨーロッパの広範囲に及び、おそらくは現世の「ヨーロッパアルプス」をしのぐような大山脈が形成された、と思われる時代です。
ここではその推定される大山脈を、(文献4)に従い「ヴァリスカン山脈」(the Variscan chain)と呼ぶことにします(文献2では、“ the European Variscan belt”や、” the Variscan chain mountain" と称している)。
なお(文献3)では、(根拠は不明確ですが)「ヴァリスカン山脈」を、総延長 約5000km、標高は最大で6000m級の山脈だった、と推定しています。
「ヴァリスカン山脈」は、いわば現世の「ヨーロッパアルプス」の、ご先祖様とも言えましょう。その為、「ヨーロッパアルプス」の地史を探る為の参照材料として、色々と研究がされています。
次に、(文献1−1)、(文献1−6)でいう「ポスト・ヴァリスカン期」とは、「ヴァリスカン造山運動・主期」に生じた大陸ブロックどうしの衝突イベントの後の時期で、「主期」が衝突により広域的な圧縮場となったことに対し、一転して、広域的な伸張場となったと推定されていることから、「主期」と分けられています。
この時代の「アルプス地域」では、伸張場の存在を示唆する多数の地溝帯(graben)が形成されたと考えられています。また火山活動も活発でした(文献1−5)、(文献1−6)。
テクトニクス的には、「ポスト・ヴァリスカン期」には、「ヨーロッパ大陸ブロック」に対し、「アフリカ大陸ブロック」が相対的に東方向へと動き、その境界部には横ずれ断層群(右横ずれ)が形成された、と推定されています。その影響で広域的な伸張場が生じた、とも推定しています(文献1−6)。
この「ヴァリスカン山脈」は、その後の浸食や、後の「アルプス造山運動」の影響によって、その多くが失われていますが、この連載や次の連載で述べる火成岩類、堆積物層の変化や、変成岩類の形成が、それへのヒントを与えてくれる材料となっています。
「ヴァリスカン造山運動の時代」にはまた、全体的に火成活動が活発で、深成岩体(主に花崗岩類)の形成や、火山活動が生じました。詳細は、第(2)節で説明します。
堆積物層についても、「ヴァリスカン造山運動の時代」における堆積環境の変化を反映した、堆積物の変化が確認されています。詳細は、第(3)節で説明します。
また、「ヴァリスカン造山運動の時代」では、大陸ブロックどうしの衝突に伴い、造山運動特有の、地質体の変成作用も起きました。これについては、次の連載(2−2章(その2))にて説明します。
そこで、個々の地質体について説明する前に「ヴァリスカン造山運動」について、(文献1)、(文献2)、(文献3)を元に説明します。
「ヴァリスカン造山運動」は、研究者や文献によっては「ヘルシニア(ン)造山運動」(Hercinian orogeny)とも呼ばれます。いずれにしろ、この用語の示す時代的な範囲、地理的な範囲については、色々な解釈があります(文献2)、(文献3)。
この連載では、「ヨーロッパ大陸ブロック」と、「巨大大陸ゴンドワナ」の一部であった「アフリカ大陸ブロック」との衝突イベントを、狭義の「ヴァリスカン造山運動」とします。
なお、それ以前に起こったと推定されている、「アヴァロニア」(Avalonia)地塊群(文献5)や「アルモリカ」(Armorica )地塊群(文献6)の「ヨーロッパ大陸ブロック」への衝突イベントなどは、まだ研究途上で位置付けがはっきりしていないようなので、この連載では説明を省きます。
さて、(文献1−1)、(文献1−5)、(文献1−6)では、「アルプス地域」における「ヴァリスカン造山運動」を、狭義の「ヴァリスカン造山運動」と、「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Variscan)に分けています。
この連載では、大陸ブロックどうしの衝突イベントが起きた時代を「ヴァリスカン造山運動・主期」と呼ぶことにしますが、これはだいたい「デボン紀」後期から「石炭紀」前期(約380〜320Ma)にあたります(文献1−1)、(文献1−5)、(文献2)。
その後の、「石炭紀」後期から「ペルム紀」前期にかけての時代(約320〜280Ma)を、(文献1―1)、(文献1−6)では「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Varisican)と呼んでいます。
また本連載では、両方をまとめて「ヴァリスカン造山運動の時代」と呼ぶことします。
「ヴァリスカン造山運動・主期」の時代は、「ヨーロッパ大陸ブロック」と「巨大大陸ゴンドワナ」の一部であった「アフリカ大陸ブロック」との衝突イベントが生じた時代です。
図1には、(文献3)より引用した、ヨーロッパ地域における、「ヴァリスカン造山運動」の影響が及んだ地域を示しますが、西はイベリア半島から東は東欧までヨーロッパの広範囲に及び、おそらくは現世の「ヨーロッパアルプス」をしのぐような大山脈が形成された、と思われる時代です。
ここではその推定される大山脈を、(文献4)に従い「ヴァリスカン山脈」(the Variscan chain)と呼ぶことにします(文献2では、“ the European Variscan belt”や、” the Variscan chain mountain" と称している)。
なお(文献3)では、(根拠は不明確ですが)「ヴァリスカン山脈」を、総延長 約5000km、標高は最大で6000m級の山脈だった、と推定しています。
「ヴァリスカン山脈」は、いわば現世の「ヨーロッパアルプス」の、ご先祖様とも言えましょう。その為、「ヨーロッパアルプス」の地史を探る為の参照材料として、色々と研究がされています。
次に、(文献1−1)、(文献1−6)でいう「ポスト・ヴァリスカン期」とは、「ヴァリスカン造山運動・主期」に生じた大陸ブロックどうしの衝突イベントの後の時期で、「主期」が衝突により広域的な圧縮場となったことに対し、一転して、広域的な伸張場となったと推定されていることから、「主期」と分けられています。
この時代の「アルプス地域」では、伸張場の存在を示唆する多数の地溝帯(graben)が形成されたと考えられています。また火山活動も活発でした(文献1−5)、(文献1−6)。
テクトニクス的には、「ポスト・ヴァリスカン期」には、「ヨーロッパ大陸ブロック」に対し、「アフリカ大陸ブロック」が相対的に東方向へと動き、その境界部には横ずれ断層群(右横ずれ)が形成された、と推定されています。その影響で広域的な伸張場が生じた、とも推定しています(文献1−6)。
この「ヴァリスカン山脈」は、その後の浸食や、後の「アルプス造山運動」の影響によって、その多くが失われていますが、この連載や次の連載で述べる火成岩類、堆積物層の変化や、変成岩類の形成が、それへのヒントを与えてくれる材料となっています。
「ヴァリスカン造山運動の時代」にはまた、全体的に火成活動が活発で、深成岩体(主に花崗岩類)の形成や、火山活動が生じました。詳細は、第(2)節で説明します。
堆積物層についても、「ヴァリスカン造山運動の時代」における堆積環境の変化を反映した、堆積物の変化が確認されています。詳細は、第(3)節で説明します。
また、「ヴァリスカン造山運動の時代」では、大陸ブロックどうしの衝突に伴い、造山運動特有の、地質体の変成作用も起きました。これについては、次の連載(2−2章(その2))にて説明します。
2−2章−第(2)節 古生代の火成岩類
火成岩とは、マグマ由来の岩石全般を指しますが、地下のマグマ溜りがそのまま固化した「深成岩」類と、マグマが地表に噴出した「火山岩」類に大別されます。
現世の「ヨーロッパアルプス」では、古生代の、花崗岩類を中心とした深成岩類が比較的多く残っています。一方、古生代の火山岩類は、わずかですが存在しています。
以下、それぞれについて説明します。
現世の「ヨーロッパアルプス」では、古生代の、花崗岩類を中心とした深成岩類が比較的多く残っています。一方、古生代の火山岩類は、わずかですが存在しています。
以下、それぞれについて説明します。
2−A)項;「ヴァリスカン造山運動」に伴う深成岩類
2−1章でも説明したように、現世の「ヨーロッパアルプス」に島のように点在する、古い地塊(「外側地塊」; ” external massifs” )の内側には、古生代に形成された深成岩体(多くが花崗岩類)が分布しています(文献1−2)。
代表的なものは、「モンブラン」地塊(山塊)の大部分を占める花崗岩類です。モンブラン(Mont Blanc)、グランドジョラス(Grandes Jorasses)などの、モンブラン山群を代表する山々は、「石炭紀」後期(約320〜300Ma)に形成された、花崗岩類からなります(文献1−2)。
添付の図2に、モンブラン地塊の地質概要図を、図3には花崗岩類からなるモンブラン山群の写真を載せていますので、ご参照ください。
なおここでは「花崗岩類」として一括していますが、一部は後の時代の変成作用を受けて「変成・花崗岩類」(meta-granites)や正片麻岩(ortho-gneiss)になっています。
古生代のうち、「ヴァリスカン造山運動の時代」に対応する、「石炭紀」(約360〜300Ma)から「ペルム紀」(約300〜250Ma)初頭の年代を示す花崗岩類は、「ベルドンヌ」地塊(Belledonne)、「アルゲンチーラ」地塊(Argentera)、「エギーユ・ルージュ」地塊(Aiguilles Rouges )、「アール」地塊(Aar)、「ゴッタルト地塊」(Gotthard)など、「西部アルプス」、「中部アルプス」にある、多くの「外側地塊」(external massifs)に分布しています(文献1−2)。
また「東部アルプス」では、タウエルン地塊(Tauern)(タウエルン・フェンスター)のみに分布しています。ただしタウエルン地塊での花崗岩類は、後に変成作用を受けて、現在は「変成・花崗岩類」や「正・片麻岩」に変化しています(文献1−2)。
これらはいずれも、「ヴァリスカン造山運動」に関連して形成された深成岩体と考えられますが(文献1−2)、花崗岩質マグマが形成されたメカニズムは、あまり明確ではないようです。
なお、この時代の花崗岩質の深成岩体は、現世の「アルプス地域」以外にも、ドイツ南西部の「シュバルツヴァルト」(Schwarzwald)地域などにも見られることから(文献1−1)、かなり広域的なテクトニクス的現象だと思われます。
代表的なものは、「モンブラン」地塊(山塊)の大部分を占める花崗岩類です。モンブラン(Mont Blanc)、グランドジョラス(Grandes Jorasses)などの、モンブラン山群を代表する山々は、「石炭紀」後期(約320〜300Ma)に形成された、花崗岩類からなります(文献1−2)。
添付の図2に、モンブラン地塊の地質概要図を、図3には花崗岩類からなるモンブラン山群の写真を載せていますので、ご参照ください。
なおここでは「花崗岩類」として一括していますが、一部は後の時代の変成作用を受けて「変成・花崗岩類」(meta-granites)や正片麻岩(ortho-gneiss)になっています。
古生代のうち、「ヴァリスカン造山運動の時代」に対応する、「石炭紀」(約360〜300Ma)から「ペルム紀」(約300〜250Ma)初頭の年代を示す花崗岩類は、「ベルドンヌ」地塊(Belledonne)、「アルゲンチーラ」地塊(Argentera)、「エギーユ・ルージュ」地塊(Aiguilles Rouges )、「アール」地塊(Aar)、「ゴッタルト地塊」(Gotthard)など、「西部アルプス」、「中部アルプス」にある、多くの「外側地塊」(external massifs)に分布しています(文献1−2)。
また「東部アルプス」では、タウエルン地塊(Tauern)(タウエルン・フェンスター)のみに分布しています。ただしタウエルン地塊での花崗岩類は、後に変成作用を受けて、現在は「変成・花崗岩類」や「正・片麻岩」に変化しています(文献1−2)。
これらはいずれも、「ヴァリスカン造山運動」に関連して形成された深成岩体と考えられますが(文献1−2)、花崗岩質マグマが形成されたメカニズムは、あまり明確ではないようです。
なお、この時代の花崗岩質の深成岩体は、現世の「アルプス地域」以外にも、ドイツ南西部の「シュバルツヴァルト」(Schwarzwald)地域などにも見られることから(文献1−1)、かなり広域的なテクトニクス的現象だと思われます。
2−B項);それ以外の時代の深成岩体
現世の「ヨーロッパアルプス」には、前項の「ヴァリスカン造山運動の時代」とは別の時代に形成された深成岩体も、多少、分布しています。この項では、それらについて簡単に説明します。
古生代の前期にあたる「オルドビス紀」(約490〜440Ma)の年代を示す花崗岩類や火山岩が、「中部アルプス」の「ゴッタルト」地塊(Gotthard)や、「東部アルプス」のあちこちに確認されています(文献1−2)、(文献1−3)。
このうち、「東部アルプス」の花崗岩類、火山岩の形成(火成活動)は、(文献1−3)によると、古生代前期のヨーロッパ地域で生じた「カレドニアン造山運動」(Caledonian orogeny)とは関係なく、別の場所での大陸(おそらく「巨大大陸ゴンドワナ」)でのリフト活動の影響、と推定しています。
なお、この「オルドビス紀」の花崗岩類は、後の「ヴァリスカン造山運動」の影響で変成作用を受け、現在では「変成花崗岩類」(meta-granites, meta-granodiorites)や「正・片麻岩」(ortho-gneisses)となっています。
古生代最後の「ペルム紀」(300〜250Ma)にも、当時の「アルプス地域」では、深成岩体の形成や火山活動が生じました。これは、「ポスト・ヴァリスカン期」の伸張場形成に関連するとも解釈できますが、「超大陸・パンゲア」(super continent Pangea)の分裂の兆しに対応している、とも解釈されています(文献1−2)、(文献1−5)。
古生代の前期にあたる「オルドビス紀」(約490〜440Ma)の年代を示す花崗岩類や火山岩が、「中部アルプス」の「ゴッタルト」地塊(Gotthard)や、「東部アルプス」のあちこちに確認されています(文献1−2)、(文献1−3)。
このうち、「東部アルプス」の花崗岩類、火山岩の形成(火成活動)は、(文献1−3)によると、古生代前期のヨーロッパ地域で生じた「カレドニアン造山運動」(Caledonian orogeny)とは関係なく、別の場所での大陸(おそらく「巨大大陸ゴンドワナ」)でのリフト活動の影響、と推定しています。
なお、この「オルドビス紀」の花崗岩類は、後の「ヴァリスカン造山運動」の影響で変成作用を受け、現在では「変成花崗岩類」(meta-granites, meta-granodiorites)や「正・片麻岩」(ortho-gneisses)となっています。
古生代最後の「ペルム紀」(300〜250Ma)にも、当時の「アルプス地域」では、深成岩体の形成や火山活動が生じました。これは、「ポスト・ヴァリスカン期」の伸張場形成に関連するとも解釈できますが、「超大陸・パンゲア」(super continent Pangea)の分裂の兆しに対応している、とも解釈されています(文献1−2)、(文献1−5)。
2−C)項;火山岩類
現世の「ヨーロッパアルプス」には、古生代の火山岩類は、多少ですが、分布しています。
まず、「ヴァリスカン造山運動の時代」(「デボン紀」後期〜「ペルム紀」前期;約380〜280Ma)に関連した火山岩類について述べます。
前記の、「西部アルプス」、「中部アルプス」の「外側地塊」群には、マグマ溜りの化石ともいえる深成岩体だけでなく、そのマグマ溜りから地表に噴出した火山岩類も、付随しています。
一例として「モンブラン」地塊では、「石炭紀」に、地下にマグマ溜り(のちに花崗岩体となったもの)が形成された後、「石炭紀」末あたり(約300Ma)に、マグマの一部が火山として噴出しました。現在では、流紋岩質の火山岩が山麓部に残存しています。
当時は、前述の「石炭紀」の花崗岩体を覆うように広範囲に噴出したと考えられていますが、その後の浸食により大部分が失われています。
添付の図2もご参照ください(文献1−2)。
また「アール」地塊でも、「石炭紀」末の年代を示す(約300Ma)、流紋岩質の火山性砕屑物が認められています。これらの火山関係もまた、花崗岩体の形成と同様に、「ヴァリスカン造山運動」に関連した活動と考えられています(文献1−2)。
一方、「東部アルプス」(「オーストロアルパイン系地質グループ」分布域)では、「ポスト・ヴァリスカン期」に、伸張場のテクトニクス的環境で生じた、大規模火砕流噴出物(ignimbrite)と考えられる流紋岩質の火山岩や、それを元とした火山性砕屑物が確認されており、この地域でも火山活動があったことが解ります(文献1−3)。
これらのことから見ると、「ヴァリスカン造山運動の時代」には、「ヴァリスカン山脈」(the Variscan chain)(文献3)のあちこちで、大規模火砕流を伴う活発な火山活動が起きていたことが推定されます。
新生代の「アルプス造山運動」では、火山活動はほとんどなく、現世の「ヨーロッパアルプス」にも火山が全く存在しないこと比べると、大きな違いがあり興味深い点ですが、その理由はいまだ不明です。
現世の「ヨーロッパアルプス」では、「ヴァリスカン造山運動」に関連したもの以外の火山岩類は、ほとんど見られません。
数少ない事例としては、「東部アルプス」に「オルドビス紀」(約490〜450Ma)の年代を示す火山岩類が、深成岩体と共に点在しています(文献1−3)。この火山活動の要因としては、(文献1−3)では、大陸(おそらく「巨大大陸ゴンドワナ」)でのリフト活動の影響、と推定されています。
まず、「ヴァリスカン造山運動の時代」(「デボン紀」後期〜「ペルム紀」前期;約380〜280Ma)に関連した火山岩類について述べます。
前記の、「西部アルプス」、「中部アルプス」の「外側地塊」群には、マグマ溜りの化石ともいえる深成岩体だけでなく、そのマグマ溜りから地表に噴出した火山岩類も、付随しています。
一例として「モンブラン」地塊では、「石炭紀」に、地下にマグマ溜り(のちに花崗岩体となったもの)が形成された後、「石炭紀」末あたり(約300Ma)に、マグマの一部が火山として噴出しました。現在では、流紋岩質の火山岩が山麓部に残存しています。
当時は、前述の「石炭紀」の花崗岩体を覆うように広範囲に噴出したと考えられていますが、その後の浸食により大部分が失われています。
添付の図2もご参照ください(文献1−2)。
また「アール」地塊でも、「石炭紀」末の年代を示す(約300Ma)、流紋岩質の火山性砕屑物が認められています。これらの火山関係もまた、花崗岩体の形成と同様に、「ヴァリスカン造山運動」に関連した活動と考えられています(文献1−2)。
一方、「東部アルプス」(「オーストロアルパイン系地質グループ」分布域)では、「ポスト・ヴァリスカン期」に、伸張場のテクトニクス的環境で生じた、大規模火砕流噴出物(ignimbrite)と考えられる流紋岩質の火山岩や、それを元とした火山性砕屑物が確認されており、この地域でも火山活動があったことが解ります(文献1−3)。
これらのことから見ると、「ヴァリスカン造山運動の時代」には、「ヴァリスカン山脈」(the Variscan chain)(文献3)のあちこちで、大規模火砕流を伴う活発な火山活動が起きていたことが推定されます。
新生代の「アルプス造山運動」では、火山活動はほとんどなく、現世の「ヨーロッパアルプス」にも火山が全く存在しないこと比べると、大きな違いがあり興味深い点ですが、その理由はいまだ不明です。
現世の「ヨーロッパアルプス」では、「ヴァリスカン造山運動」に関連したもの以外の火山岩類は、ほとんど見られません。
数少ない事例としては、「東部アルプス」に「オルドビス紀」(約490〜450Ma)の年代を示す火山岩類が、深成岩体と共に点在しています(文献1−3)。この火山活動の要因としては、(文献1−3)では、大陸(おそらく「巨大大陸ゴンドワナ」)でのリフト活動の影響、と推定されています。
2−2章―第(3)節 古生代の堆積物層
1−3章の「ヨーロッパアルプスの地質構成概要」でも説明したように、「ヨーロッパアルプス」における堆積物層は、その大部分が中生代のものです。古生代の堆積物層は「東部アルプス」には広範囲に分布していますが、「中央アルプス」、「西部アルプス」ではわずかです。
この第(3)項では主に、「東部アルプス」の古生代堆積物層について説明します。
なお「中部アルプス」、「西部アルプス」については、(文献1)に、まとまった説明がないのですが、古生代後期の「石炭紀」〜「ペルム紀」に形成された地溝性堆積物を、その代表例として説明します。
この第(3)項では主に、「東部アルプス」の古生代堆積物層について説明します。
なお「中部アルプス」、「西部アルプス」については、(文献1)に、まとまった説明がないのですが、古生代後期の「石炭紀」〜「ペルム紀」に形成された地溝性堆積物を、その代表例として説明します。
3−A)項;「東部アルプス」の古生代堆積物層
まず、「東部アルプス」に分布している古生代堆積物層ですが、図4、図5に示すように、かなり広域的に分布しています。ここでは(文献1−4)をベースに説明します。
まず「東部アルプス」における地質グループの配置ですが、大部分の地域では「オーストロアルパイン系」(Austro-alpine)地質グループが、構造的最上位に位置していて、「東部アルプス」の地表で見られる地質体の大部分が、「オーストロアルパイン系」です。
なお、「ペリ・アドリアティック断層系」(the peri-Adriatic fault system)と呼ばれる地質境界線を境にして、それより南側のオーストリア南部やイタリアの北西部は、「サウスアルパイン系」(South-alpine)地質グループの分布域です。
添付の図4もご参照ください。
「オーストロアルパイン系」地質グループは、中生代には「アドリア大陸ブロック」のマージン部(continental marginal zone)にあり、さらに古生代に遡ると、「アドリア大陸ブロック」の生みの親である、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部に位置していた、と推定されています。
また「サウスアルパイン系」地質グループも、新生代より前は、「オーストロアルパイン系」地質グループとほぼ同様の経歴を持つと推定されています。
従って、「東部アルプス」に見られる古生代の堆積物層はほぼすべて、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部で形成されたものと推定されます。
「東部アルプス」における古生代堆積物層の主な分布域は、(文献1−4)によると、「サウスアルパイン系」地質グループに属する「南部石灰岩アルプス」(Southern Calcareous Alps/ Carnic Alps)地域、「オーストロアルパイン系」地質グループに属する「グレイワッケ・ゾーン」(Greywacke zone)(注1)と呼ばれる地域、また同じく「オーストロアルパイン系」地質グループに属する、「クオーツ・フィライト」(quart phyllite)ゾーン(注1)、以上、3つの地域の地質体について説明があります。
以下、この3つに分けて「東部アルプス」の古生代堆積物層について説明します。
まず「東部アルプス」における地質グループの配置ですが、大部分の地域では「オーストロアルパイン系」(Austro-alpine)地質グループが、構造的最上位に位置していて、「東部アルプス」の地表で見られる地質体の大部分が、「オーストロアルパイン系」です。
なお、「ペリ・アドリアティック断層系」(the peri-Adriatic fault system)と呼ばれる地質境界線を境にして、それより南側のオーストリア南部やイタリアの北西部は、「サウスアルパイン系」(South-alpine)地質グループの分布域です。
添付の図4もご参照ください。
「オーストロアルパイン系」地質グループは、中生代には「アドリア大陸ブロック」のマージン部(continental marginal zone)にあり、さらに古生代に遡ると、「アドリア大陸ブロック」の生みの親である、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部に位置していた、と推定されています。
また「サウスアルパイン系」地質グループも、新生代より前は、「オーストロアルパイン系」地質グループとほぼ同様の経歴を持つと推定されています。
従って、「東部アルプス」に見られる古生代の堆積物層はほぼすべて、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部で形成されたものと推定されます。
「東部アルプス」における古生代堆積物層の主な分布域は、(文献1−4)によると、「サウスアルパイン系」地質グループに属する「南部石灰岩アルプス」(Southern Calcareous Alps/ Carnic Alps)地域、「オーストロアルパイン系」地質グループに属する「グレイワッケ・ゾーン」(Greywacke zone)(注1)と呼ばれる地域、また同じく「オーストロアルパイン系」地質グループに属する、「クオーツ・フィライト」(quart phyllite)ゾーン(注1)、以上、3つの地域の地質体について説明があります。
以下、この3つに分けて「東部アルプス」の古生代堆積物層について説明します。
3−B項);「南部石灰岩アルプス」(Southern Calcareous Alps)の古生代堆積物層
「東部アルプス」のうち、オーストリアとイタリアの国境稜線をなす、「南部石灰岩アルプス」(Southern Calcareous Alps/ Carnic Alps)は、地質グループでいうと、「サウスアルパイン系」地質グループに属するゾーンです。
オーストリアのオンライン地質図(文献8)で確認すると、オーストリアの南部、イタリアとの国境付近に、東西に細長く分布しています。図5もご参照ください。
以下(文献1−4)に従い、説明します。
このゾーンには、「オルドビス紀」(約490〜440Ma)から「ペルム紀」(約300〜250Ma)にかけての古生代堆積物層があります。
このうち、「オルドビス紀」、「シルル紀」(約440〜420Ma)、「デボン紀」(約420〜360Ma)にかけては、恐らくは、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部(受動的大陸縁;passive continental margin)として穏やかな海洋環境であり、泥質岩(シェール、粘土質堆積物など)、砂岩(グレイワッケ類)、石灰岩類などが堆積しています。
次の「石炭紀」(約360〜300Ma)になると、「ヴァリスカン造山運動」の影響を受けるようになります。この造山運動で形成された「ヴァリスカン山脈」が浸食されることによって供給された、破砕性堆積物(礫岩、砂岩など)が堆積しました。
古生代最後の「ペルム紀」(約300〜250Ma)のこの地域は、広域的に陸化したようで、その中に形成された山地間盆地(intra-montane basin)に、礫岩などの破砕性堆積物(clastics)が堆積しました。
オーストリアのオンライン地質図(文献8)で確認すると、オーストリアの南部、イタリアとの国境付近に、東西に細長く分布しています。図5もご参照ください。
以下(文献1−4)に従い、説明します。
このゾーンには、「オルドビス紀」(約490〜440Ma)から「ペルム紀」(約300〜250Ma)にかけての古生代堆積物層があります。
このうち、「オルドビス紀」、「シルル紀」(約440〜420Ma)、「デボン紀」(約420〜360Ma)にかけては、恐らくは、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部(受動的大陸縁;passive continental margin)として穏やかな海洋環境であり、泥質岩(シェール、粘土質堆積物など)、砂岩(グレイワッケ類)、石灰岩類などが堆積しています。
次の「石炭紀」(約360〜300Ma)になると、「ヴァリスカン造山運動」の影響を受けるようになります。この造山運動で形成された「ヴァリスカン山脈」が浸食されることによって供給された、破砕性堆積物(礫岩、砂岩など)が堆積しました。
古生代最後の「ペルム紀」(約300〜250Ma)のこの地域は、広域的に陸化したようで、その中に形成された山地間盆地(intra-montane basin)に、礫岩などの破砕性堆積物(clastics)が堆積しました。
3−C項);「グレイワッケ・ゾーン」(Greywacke zone)の古生代堆積物層
「グレイワッケ・ゾーン」(Greywacke zone)とは、「東部アルプス」のうち、「オーストロアルパイン系」地質グループの分布域に含まれます。
(文献1−4)によると「グレイワッケ・ゾーン」と呼ばれる地域は、オーストリア東部の「シュタイアーマルク州」(Steiermark)と、オーストリア西部の「ザルツブルク州」(Salzburg)〜「チロル州」(Tyrol)の、2つの地域に分布域が別れると記載されています。
なお、オーストリアのオンライン地質図(文献8)で詳しく見ると、大小 5〜6カ所の分布域に分かれているようです。 図4、図5もご参照ください。
以下(文献1−4)に従って説明します。
まず基底部は「オルドビス紀」の古生代堆積物層で、その後、「シルル紀」、「デボン紀」と、ほぼ継続して堆積物が認められます。その岩石の種類は、海洋での堆積を示す泥質岩(シェール、千枚岩)、石灰岩が主ですが、「オルドビス紀」後期〜「シルル紀」前期の時代には、一部で、火山岩や、火山性砕屑物、凝灰岩が含まれており、火山活動があったことを示しています。
この火山活動が、どのようなテクトニクス的状況で起きたかははっきりしませんが、(文献1)の各項の記載を参考にすると、古生代の「オーストロアルパイン系」地質グループ分布域は、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部だった考えられるので、リフティング活動など、活動的大陸縁(active continental margin)としての性格を持っていたのかも知れません(この段落は私見を含みます)。
その後の「デボン紀」末から「石炭紀」にはこの地域は陸化したようで、堆積物層が欠如しています(「不整合」)。この時代に起きた「ヴァリスカン造山運動」の影響と考えられます。
(文献1−4)によると「グレイワッケ・ゾーン」と呼ばれる地域は、オーストリア東部の「シュタイアーマルク州」(Steiermark)と、オーストリア西部の「ザルツブルク州」(Salzburg)〜「チロル州」(Tyrol)の、2つの地域に分布域が別れると記載されています。
なお、オーストリアのオンライン地質図(文献8)で詳しく見ると、大小 5〜6カ所の分布域に分かれているようです。 図4、図5もご参照ください。
以下(文献1−4)に従って説明します。
まず基底部は「オルドビス紀」の古生代堆積物層で、その後、「シルル紀」、「デボン紀」と、ほぼ継続して堆積物が認められます。その岩石の種類は、海洋での堆積を示す泥質岩(シェール、千枚岩)、石灰岩が主ですが、「オルドビス紀」後期〜「シルル紀」前期の時代には、一部で、火山岩や、火山性砕屑物、凝灰岩が含まれており、火山活動があったことを示しています。
この火山活動が、どのようなテクトニクス的状況で起きたかははっきりしませんが、(文献1)の各項の記載を参考にすると、古生代の「オーストロアルパイン系」地質グループ分布域は、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部だった考えられるので、リフティング活動など、活動的大陸縁(active continental margin)としての性格を持っていたのかも知れません(この段落は私見を含みます)。
その後の「デボン紀」末から「石炭紀」にはこの地域は陸化したようで、堆積物層が欠如しています(「不整合」)。この時代に起きた「ヴァリスカン造山運動」の影響と考えられます。
3−D項);「クオーツ・フィライト」(Quarts phyllite)ゾーンの古生代堆積物層
(文献1−4)では「クオーツ・フィライト」(Quarts phyllite)ゾーンは、分布域が明確に書かれていません。
そこでオーストリアのオンライン地質図(文献8)で調べると、「東部アルプス」の前述の「グレイワッケ・ゾーン」(“Greywacke - Zone”)のうち、「チロル地方」の古生代堆積物層分布域の中に、所々、(“Quartz phyllite - Zones”)と書かれている場所があります。
つまり(文献1−4)では単に、主な堆積物の種類(「グレイワッケ」か、「クオーツ・フィライト」か)で分けらているようです。地質グループとしては「グレイワッケ・ゾーン」と同じく、「オーストロアルパイン系」地質グループに属します。添付の図4、図5もご参照ください。
以下、(文献1−4)に従い説明します。
「クオーツ・フィライト」ゾーンの堆積物の構成は、「グレイワッケ・ゾーン」と類似しています。具体的には「オルドビス紀」から「デボン紀」までの海洋性堆積物があります。
岩石の種類としては、泥質岩が変成作用を受けた、「石英質千枚岩」(クオーツ・フィライト;quart-phyllite)が多く、それ以外には、「グレイワッケ・ゾーン」と同様に、火山性の破砕性堆積物、石灰岩類などが堆積しています。火山活動が起きた際の堆積環境は、リフティング活動による地溝帯が推定されています。いずれにしろ、この堆積物層も、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部で形成されたと思われます。
なお「石炭紀」以降は堆積物層がなく、「ヴァリスカン造山運動」の影響で陸化したものと思われます。
(文献1−5)によると、このゾーンの泥質岩が、石英質千枚岩(quartz phyllite)への変成作用を受けたのも、「ヴァリスカン造山運動」の影響と推定しています。
そこでオーストリアのオンライン地質図(文献8)で調べると、「東部アルプス」の前述の「グレイワッケ・ゾーン」(“Greywacke - Zone”)のうち、「チロル地方」の古生代堆積物層分布域の中に、所々、(“Quartz phyllite - Zones”)と書かれている場所があります。
つまり(文献1−4)では単に、主な堆積物の種類(「グレイワッケ」か、「クオーツ・フィライト」か)で分けらているようです。地質グループとしては「グレイワッケ・ゾーン」と同じく、「オーストロアルパイン系」地質グループに属します。添付の図4、図5もご参照ください。
以下、(文献1−4)に従い説明します。
「クオーツ・フィライト」ゾーンの堆積物の構成は、「グレイワッケ・ゾーン」と類似しています。具体的には「オルドビス紀」から「デボン紀」までの海洋性堆積物があります。
岩石の種類としては、泥質岩が変成作用を受けた、「石英質千枚岩」(クオーツ・フィライト;quart-phyllite)が多く、それ以外には、「グレイワッケ・ゾーン」と同様に、火山性の破砕性堆積物、石灰岩類などが堆積しています。火山活動が起きた際の堆積環境は、リフティング活動による地溝帯が推定されています。いずれにしろ、この堆積物層も、「巨大大陸ゴンドワナ」のマージン部で形成されたと思われます。
なお「石炭紀」以降は堆積物層がなく、「ヴァリスカン造山運動」の影響で陸化したものと思われます。
(文献1−5)によると、このゾーンの泥質岩が、石英質千枚岩(quartz phyllite)への変成作用を受けたのも、「ヴァリスカン造山運動」の影響と推定しています。
3−E項);「中部アルプス」、「西部アルプス」、「モラッセ盆地」における古生代堆積物層
「中部アルプス」と「西部アルプス」は、「東部アルプス」(「オーストロアルパイン系」地質グループ、「サウスアルパイン系」地質グループ分布域)とは、古生代のテクトニクス的な状態が全く異なっていたようで、古生代堆積物層が断片的で、(文献1−2)にもまとまった説明がありません。
一方でこれらの地域では、あちこちに、「石炭紀」〜「ペルム紀」の地溝性堆積物層が断片的に分布しています。
この時代は、「ヴァリスカン造山運動の時代」のうち、「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Variscan)にあたり、当時の「アルプス地域」の一部は、広域的な伸張場(extentional tectonics)となり、地溝(graben)が数多く形成されたと推定されています。
地溝が沢山分布している場所としては、現世の「モラッセ盆地」、「ペニン系」地質グループ分布域の一部(ゾーン・ホイーレ地域)、「サウスアルパイン系」地質グループ分布域の一部の、3か所が挙げられています 。
またこの時代は、当時の「アルプス地域」全域で火山活動も活発だったようで、火山活動による火山岩や、火山性砕屑物が、それらの地溝帯に堆積しました。
その代表例として、スイス北部の「モラッセ盆地」(the Molasse Basin)の地下にあるものを取り上げます。添付の図6もご参照ください。
このうずもれた地溝は、ボーリング調査やサイスミック法によって明らかになったもので、表層の新生代、中生代の堆積物層の下に、地下5kmの深さをもつ深い地溝があり、「石炭紀」〜「ペルム紀」の堆積物で埋め立てられていることが解ります。
この地溝帯を埋め立てている堆積物としては、湖沼性の堆積物層(砂岩、泥質岩、円礫)や、火山性砕屑物が確認されています。
なお(文献1)によると、「西部アルプス」、「中部アルプス」にも、同様の地溝、地溝性堆積物があり、それらについての説明もありますが、上記のものと類似しているので、説明は略します。
一方でこれらの地域では、あちこちに、「石炭紀」〜「ペルム紀」の地溝性堆積物層が断片的に分布しています。
この時代は、「ヴァリスカン造山運動の時代」のうち、「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Variscan)にあたり、当時の「アルプス地域」の一部は、広域的な伸張場(extentional tectonics)となり、地溝(graben)が数多く形成されたと推定されています。
地溝が沢山分布している場所としては、現世の「モラッセ盆地」、「ペニン系」地質グループ分布域の一部(ゾーン・ホイーレ地域)、「サウスアルパイン系」地質グループ分布域の一部の、3か所が挙げられています 。
またこの時代は、当時の「アルプス地域」全域で火山活動も活発だったようで、火山活動による火山岩や、火山性砕屑物が、それらの地溝帯に堆積しました。
その代表例として、スイス北部の「モラッセ盆地」(the Molasse Basin)の地下にあるものを取り上げます。添付の図6もご参照ください。
このうずもれた地溝は、ボーリング調査やサイスミック法によって明らかになったもので、表層の新生代、中生代の堆積物層の下に、地下5kmの深さをもつ深い地溝があり、「石炭紀」〜「ペルム紀」の堆積物で埋め立てられていることが解ります。
この地溝帯を埋め立てている堆積物としては、湖沼性の堆積物層(砂岩、泥質岩、円礫)や、火山性砕屑物が確認されています。
なお(文献1)によると、「西部アルプス」、「中部アルプス」にも、同様の地溝、地溝性堆積物があり、それらについての説明もありますが、上記のものと類似しているので、説明は略します。
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【注釈の項】
注1) ここでは、この2−2章ででてくる岩石の種類のうち、あまり良く知られていない岩石について、(文献7)、(文献9)をもとに説明します。
注1−1) 「グレイワッケ」(greywacke);堅い砂岩の一種で、泥質成分を15%以上含むもの。
色あいは名前の通りダークグレー。「グレーワッケ」とも書く。
元々は、ドイツ中部の「ハルツ山地」に産する砂岩に付けられたローカルな岩石名称。その後、この用語の使用方法に混乱が生じたので、最近はあまり使用は推奨されていない、というが、(文献1)では良く使用されている。
なお添付の図7に、ウイキペディア英語版から引用した「グレイワッケ」の写真を載せていますので、ご参照ください。
注1−2) 「クオーツ・フィライト」(quart phyllite);(文献9)には、「クオーツ・フィライト」(quart phyllite)に関する項はない。
「フィライト」(phyllite)は泥質岩起源の変成岩である「千枚岩」の意味で、「クオーツ」(quart)は石英のことなので、石英の多い千枚岩という意味と解釈し、本文では「石英質千枚岩」と訳した。
注2) ”Ma” は百万年前を意味する単位
注1−1) 「グレイワッケ」(greywacke);堅い砂岩の一種で、泥質成分を15%以上含むもの。
色あいは名前の通りダークグレー。「グレーワッケ」とも書く。
元々は、ドイツ中部の「ハルツ山地」に産する砂岩に付けられたローカルな岩石名称。その後、この用語の使用方法に混乱が生じたので、最近はあまり使用は推奨されていない、というが、(文献1)では良く使用されている。
なお添付の図7に、ウイキペディア英語版から引用した「グレイワッケ」の写真を載せていますので、ご参照ください。
注1−2) 「クオーツ・フィライト」(quart phyllite);(文献9)には、「クオーツ・フィライト」(quart phyllite)に関する項はない。
「フィライト」(phyllite)は泥質岩起源の変成岩である「千枚岩」の意味で、「クオーツ」(quart)は石英のことなので、石英の多い千枚岩という意味と解釈し、本文では「石英質千枚岩」と訳した。
注2) ”Ma” は百万年前を意味する単位
【参考文献】
(文献1) O. A. Pfiffer 著 “Geology of the Alps” second edition (2014)
(文献1−1) (文献1)のうち、第2部
“the pre-Triassic Basements of the Alps”の項
(文献1−2) (文献1)のうち、2−2章、
“the pre-Triassic basements of the external massifs” の項
(※ 図2は、この章より引用)
(文献1−3) (文献1)のうち、2−4章
“the pre-Triassic basements of the Austro-alpine nappes” の項
(文献1−4) (文献1)のうち、2−6章
“Paleozoic sediments in the Eastern and Southern Alps“ の項
(文献1−5) (文献1)のうち、2−7章
“the Variscan orogen at the close of the Palaoezoic” の項
(文献1−6) (文献1)のうち、2−8章
“Post-Variscan sediments and volcanics of the Pangea” の項
(※ 図6は、この章より引用)
(文献1−7) (文献1)のうち、第5部 “Tectonic structure of the Alps”の項、
及び、図5−3−1 「東部アルプス」の地質概略図
(※ 図4は、この章より引用)
(文献2) ウイキペディア英語版の、“Variscan orogeny” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Variscan_orogeny
(2025年7月 閲覧)
(文献3) ウイキペディアフランス語版の、”Orogenèse varisque“ の項
https://fr.wikipedia.org/wiki/Orogen%C3%A8se_varisque
(2025年7月 閲覧)
(※ 図1は、この文献より引用)
(文献4) ウイキペディア英語版の、“Variscan chain” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Variscan_chain
(2025年7月 閲覧)
(文献5) ウイキペディア英語版の、“Avalonia” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Avalonia
(2025年7月 閲覧)
(文献6) ウイキペディア英語版の、“Armorican terrene” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Armorican_terrane
(2025年7月 閲覧)
(文献7) ウイキペディア英語版の、“Greywacke” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Greywacke
(2025年7月 閲覧)
(※ 図7は、この文献より引用)
(文献8) オーストリアのオンライン地質図のサイト
https://maps.geosphere.at/en?basemap
(2025年7月 閲覧)
(※ 図5は、このサイトの地質図を引用)
(文献9) 地質団体研究会 編 「新編・地学事典」 平凡社 刊 (1996)
のうち、「グレーワッケ」、「千枚岩」の項
(文献1−1) (文献1)のうち、第2部
“the pre-Triassic Basements of the Alps”の項
(文献1−2) (文献1)のうち、2−2章、
“the pre-Triassic basements of the external massifs” の項
(※ 図2は、この章より引用)
(文献1−3) (文献1)のうち、2−4章
“the pre-Triassic basements of the Austro-alpine nappes” の項
(文献1−4) (文献1)のうち、2−6章
“Paleozoic sediments in the Eastern and Southern Alps“ の項
(文献1−5) (文献1)のうち、2−7章
“the Variscan orogen at the close of the Palaoezoic” の項
(文献1−6) (文献1)のうち、2−8章
“Post-Variscan sediments and volcanics of the Pangea” の項
(※ 図6は、この章より引用)
(文献1−7) (文献1)のうち、第5部 “Tectonic structure of the Alps”の項、
及び、図5−3−1 「東部アルプス」の地質概略図
(※ 図4は、この章より引用)
(文献2) ウイキペディア英語版の、“Variscan orogeny” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Variscan_orogeny
(2025年7月 閲覧)
(文献3) ウイキペディアフランス語版の、”Orogenèse varisque“ の項
https://fr.wikipedia.org/wiki/Orogen%C3%A8se_varisque
(2025年7月 閲覧)
(※ 図1は、この文献より引用)
(文献4) ウイキペディア英語版の、“Variscan chain” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Variscan_chain
(2025年7月 閲覧)
(文献5) ウイキペディア英語版の、“Avalonia” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Avalonia
(2025年7月 閲覧)
(文献6) ウイキペディア英語版の、“Armorican terrene” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Armorican_terrane
(2025年7月 閲覧)
(文献7) ウイキペディア英語版の、“Greywacke” の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Greywacke
(2025年7月 閲覧)
(※ 図7は、この文献より引用)
(文献8) オーストリアのオンライン地質図のサイト
https://maps.geosphere.at/en?basemap
(2025年7月 閲覧)
(※ 図5は、このサイトの地質図を引用)
(文献9) 地質団体研究会 編 「新編・地学事典」 平凡社 刊 (1996)
のうち、「グレーワッケ」、「千枚岩」の項
【書記事項】
初版リリース;2025年7月3日
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「ヨーロッパアルプスの地質学」;2−2章「ヨーロッパアルプス」における、古生代の地質体(その1);火成岩類、堆積物層 5 更新日:2025年07月04日
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