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Yamareco

記録ID: 1263039
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山滑走
磐梯・吾妻・安達太良

札幌を発ち、春の滑川で山スキー

1980年03月27日(木) [日帰り]
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GPS
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距離
11.7km
登り
515m
下り
503m
天候 雪。
アクセス
利用交通機関:
電車

感想

 福島へ帰る日(198 0年3月24日)、札幌駅にはF君(工学部)とO君(医 学部)の2人が見送りにきて、重いダンボール箱一個を「お土産」に手渡 してくれた。
 中を見て、笑ってしまった。サッポロ・リカー、男山、国士 無双、サッポロ・ビールの大瓶など、北海道産のアルコール類がぎっしり 詰まっている。酒に強かったF君の発案か。「北海道の酒の味を忘れな いで」という気持ちをこめたものらしい。

 急行列車が走り出すと、まだところどころ雪が残る街並みが車窓を流れ て行く。札幌の街、北大の校舎もしばらく見納めである。
 私は、秀岳荘の アタック・ザックに、手には山スキーをかかえるという帰りじたくだった。 北大入学のときも、キスリング姿だったが、津軽海峡を渡り返す この日も、似たような格好になってしまった。
 4月からは社会人になるが、私は、山は登り続けたい。

  ◇    ◇    ◇

 福島に帰ると、さっそく、スキーをもって吾妻山に入った。4月半ばに 上京して仕事がスタートするまでの間、休みはもうわずかしか残っていな い。行き先は、通い慣れた峠駅(奥羽本線)から滑川温泉へのコースを選 んだ。林道の滑降がけっこう楽しめるコースだし、いつも通りすぎるだけ だったので、一度はあの温泉の湯にもつかってみたい。

 この冬は雪が多く、峠駅からの車道は最初から、スキーが深く沈んだ。 風が強く、雪面から粉雪が舞い上がる。崖の切り通しになっている場所で は、雪崩れた雪が厚くたまって道が完全に消えていて、滑落と崩落に注意 して通過する。
冬期に何度か通った道だけれど、これほど積雪が多いのは 初めてだった。
 滑川温泉への道を分けて、姥湯方面への道に入ると、1.5〜2メートルほど の積雪になり、ラッセル気味の登りになった。シール登高のピッチが落ち る。「下りは楽だろうなぁ」「気持ちいいだろうな」。そんな誘惑とたたか いつつ、高倉新道の分岐点まできた。ぐっときびしくなる登りに挑んで、 霧ノ平までいくか、冬の姥湯温泉と三階滝の断崖を眺めにいくか、それと もここから引き返して滑川の湯にゆっくりつかるか、と思案すれば、答え はきまっている。シールをはずし、スキーの先端を下に向けると、体は一 気に加速していった。

 ボーゲンしかできないから、スキーをやや開き加減にして減速をかけ、 ビューッと滑降する。雪質がすばらしく、春山でないみたいだ。あっとい う間に、滑川温泉に着く。

 温泉の宿は、一人の客もなく(峠駅から人がきた足跡は他にはなかった)、 ひっそりしていた。沢沿いの見晴らしのいい湯に入りたかったけれど、こ の時期は宿の内部に古くからある内湯にしか入れないとのこと。湯船は4 メートル×2メートルほどで小さくはなかったけれど、薄暗い場所で、眺めも何もなく、 がっかりした。裸になって飛び込んだら、湯は「ええっ?」と声を上げる ほどぬるい。おまけに、頭の上からは、湯気抜きの天窓から粉雪が舞い落 ちてくる。いつまで入っていても体は温まりそうもないが、こういう湯も た一興と、体の力を抜いて目を閉じた。湯から上がってみると、まったく 寒くなくて、けっこう温まっていたのにも驚かされた。

 滑川から萱峠にゆるく登ると、峠駅までの2キロメートル余の滑降になる。こん どは、いつ来れるかと考えると、大事に大事に滑りたい、峠駅への下りだ った。


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コメント

滑川の湯(往時の滑川温泉)
1999・7・6記す。

 昨日(5日)夜、NHK総合テレビが、吾妻連峰の滑川(なめかわ)温泉を 15分ほど紹介していました。

 私の故郷の温泉の一つなので、懐かしく見ました。

 冒頭は、奥羽本線・峠駅から4キロの道のりを滑川温泉へと向かうマイク ロ・バスからの展望。烏帽子山、ニセ烏帽子、兵子、家形山とつづく県境尾根 が夏の緑色に染まって映し出されていました。撮影地点は、途中で稜線を乗っ 越す萱峠あたりでようか。以前(70年代)は、この区間には、山形交通の赤 い小さなマイクロ・バスが走っていましたが、今は温泉の送迎バスに変わった 様子でした。峠駅で名物の力餅を売っていたお店は、今も健在なのでしょう か。

 滑川温泉の建て物は、本体は昔のままで、斜面に立てた太く古い土台の柱は 時代を感じさせました。お風呂は3つあり、40度の温泉と53度だかの温泉 をブレンドして43度の適温にしているとかで、これは初めて聞きました。お 風呂は、明るい窓のある内風呂と、新しい露天風呂を映し出していました。以 前、家形山からのツアー・スキーの帰りに、客が誰もいない滑川温泉のお風呂 に入れていただいたのですが、そのときの、天井の湯気抜きから粉雪が吹きこ んできた窓のない暗い浴室は、今は改装されたのか、画面には現れませんでし た。雪が吹きこむだけでなく、湯はとてもぬるかったことを思いだして、53 度っていつからの話だろうと思いました。

 湯治客が、まな板できざんでいたミズ(山菜)の茎が、あんまり太いので びっくりしました。今も周囲は、まるで変わっていないのですね。

 ビール会社を退職して、滑川温泉に住みこみで働きながら、周囲を歩いて写 真を撮っている幸せそうな男性が出てきて、うろこ雲の空を美しい写真を示し ていました。

 またお湯につかりに行きたい、滑川の湯でした。
        
2017/9/21 20:39
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