小谷村・残雪の大渚山/折れたピッケルで厳しい雪壁下降
- GPS
- --:--
- 距離
- 8.3km
- 登り
- 750m
- 下り
- 750m
コースタイム
天候 | 無風快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
小谷温泉から鎌池の脇、湯峠を経て、大渚山を往復した。標高950m付近から残雪を踏むようになり、1050mを越えると全面雪上歩行となる。 頂上稜線の1510m圏肩に出る手前が一番の悪場。雪庇が崩れた跡を抜け、平均30度程、部分的に40度を越える雪壁を登降する。 東峰の手前は部分的に溝状の夏道が現れるが、雪面との段差が高いので切り抜けるのに苦労する。 |
写真
感想
大渚山は長野県最北部の小谷村にあり、小谷温泉の裏山で雨飾山の展望台である。
今シーズンは、まだピッケルやアイゼンを使うような雪山には登っていないので、シーズン最後の雪山登山を狙って大渚山に出かけた。
無雪期ならば大渚山には簡単に登れる。小谷温泉から湯峠まで舗装された林道が通じていて、峠から1時間で頂上に着けるらしい。しかし、豪雪地帯のここは4月も末なのにまだまだ雪がたっぷり残っている。林道は雨飾荘の直ぐ先で通行止になっていた。この林道を湯峠まで歩いて行ったら長い上に退屈だ。そこで、小谷温泉からトレッキングコースを辿って鎌池の脇で林道に出ることにした。
標高950m付近から残雪を踏むようになり、1050mを越えると全面雪となった。この辺りまで上ると、最初は頻繁に付いていた赤リボンもほとんど見かけることがなくなった。上りは良い、高みを目指して登って行けば良いのだから。しかし、帰路を考えると、何の特徴も無い急な山腹をひたすら突き上げているので、下りのルート探索が思いやられる。このため、下りで迷いそうな所に赤テープを付けながら登って行った。
鎌池がある1170m圏の台地に出ると、この迷路はさらにひどくなった。なだらかな小さなコブがあちこちにある。鎌池には寄らずに、その南の支尾根を上って直接林道に出るショートカットルートを採る積りである。支尾根は直ぐに見つかったが、やはり帰路が憂鬱。帰りに林道からこの支尾根を降りてきても、コブだらけの迷路を抜けて温泉へ降りるルートに的確に入れるかどうか不安だ。このため、ここでも赤テープを追加しながら進んだ。
比較的雪は締まっていたので、往きに付けた自分の足跡は微かで、この陽気では下山の頃には消えてしまうだろう。だから、往復の場合は、帰路で迷い易い個所に、往きの段階で赤テープを付けてながら進む。なお、自分が付けたテープは帰路で回収することを心掛けている。
下山時、この赤テープが役立った。どこも同じに見えるコブだらけの平坦地を進み、特徴がない急な山腹を下りて行くので、ルート詮索に緊張する。この際に、自分が付けた赤テープを見つけるとホッとする。お陰で迷うことなく無事に下山できた。
湯峠から大渚山頂上までは予想以上に厳しかった。特に、1510m圏で頂上稜線の肩に出る少し手前が緊張した。この辺りは平均傾斜が30度ほどだが、部分的には40度を越える雪壁が連続している。
鎌池の手前は林の中で締まっていた雪も、この辺りでは強い日差しにさらされて雪は柔らかくなっていた。アイゼンを履いてはいるが、キックステップすれば、大きな足場を刻めるので安定して登れることができた。このため、雪壁と言える程の急斜面でも、上りでは登攀を楽しむ余裕があった。
肩に出て一息つき、後はなだらかな尾根を辿れば頂上に簡単に着ける、と踏んだ。でも、これが甘かった。
標高1530mから再び急登。しかし雪面ではなく、溝状の夏道が所々に露出していて、その前後は雪堤と言った状態。一度夏道に降り、再び雪堤に乗ろうとするが、段差が1m以上もある。周りは藪。仕方ない、一度枝に乗ってから雪堤に移ろうとした。アイゼンを履いての枝乗りは不安定極まりない。さらにそこから雪堤に乗り移るため、雪にピッケルを差し込み、これをホールドにして体をずり上げようとしたら、ポキッと言う音とともにピッケルが抜けた。危うく転げ落ちるところだった。
見ると、石突きの直ぐ上でウッドシャフトが折れている。さあ困った。どうしよう。ピッケル無しでこのルートを登降することは危険だ。あと頂上まで標高差で30m程だが、登頂は諦めるか。
でも、折れたピッケルで厳しいのは、先ほど登って来た肩直下の雪壁だ。頂上まで行っても、ここで退却しても、あの悪場を折れたピッケルで下らなければならないのは同じ。
と言うことで、気を取り直して前進、一応、東峰の頂は踏んだ。しかし、三角点がある展望台までは行かなかった。春霞で北アルプスはぼんやりしか見えないから、行っても眺望は楽しめない。また、東峰の方が高いので、わざわざ低い展望台まで往復することもないだろう。なお、折れたピッケルであの悪場を無事に降りられるかしら、と言う不安が働いて、展望台まで行く気が起きなかったのかもしれない。
しかし、下山は案ずるより産むが易し。結果は思った程の厳しさも無く無事に悪場を下りられた。
雪が柔らかいので、石突きが無くてもピッケルのシャフトは十分刺さった。これを片手に持ち、もう一方にはリングを抜いたストックを使って後ろ向きで降りれば、40度を越えた雪壁でも安定して下降でき、何の不安も無かった。
悪場を過ぎ、少し緩やかになった雪稜を前向きに下れるようになった時には、さすがにホッとした。
今回は、往きには残雪の山を楽しむ余裕があった。しかし、下山時には、シャフトが折れたピッケルで40度を越える雪壁を下ったり、迷路のような台地や何の特徴も無い急斜面の下降でルート探索に緊張したり、とスリリングな場面に遭遇した。
でも、それだけ充実した山行でした。
折れたピッケルは、写真で分かるようにウッドシャフトである。50数年来愛用してきた骨董品級で、携行していると珍しがられた。今は100%メタルシャフトだろうから、折れることは考えられないだろう。
さて、来シーズンはどうしよう。今更メタルシャフトのピッケルを新たに購入するのも業腹だ。もう後期高齢者なのだからピッケルを使うような山には登るな!という御神託なのかしら。でもこれもまた寂しい限りである。
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