苗場山の奇跡(祓川ピストン)


- GPS
- 07:10
- 距離
- 14.8km
- 登り
- 1,307m
- 下り
- 1,306m
コースタイム
ー12:30神楽ヶ峰12:35ー12:55上の芝13:00ー13:15中の芝13:20ー13:40下の芝13:45ー14:40駐車場
天候 | 曇りのち晴れのち曇り(下山後に小雨) |
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過去天気図(気象庁) | 2011年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
国道17号から分岐のあとは道幅狭く悪路、いくつかの分岐も案内標示がないためわかりにくいです。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
樹林帯の登山道は水が流れやすくなっており、雨の後は沢状態です。スパッツがあるといいです。 全体には木道がよく整備されています。 危険箇所はありません。最後の登り返しがやや急登なので少し手も使います。 アイゼンは不要でしたが、一週間後には必要になっても不思議ではありません。 |
写真
感想
まるで奇跡のような山行。
11月3日の上州武尊で今年の2000m峰は最後かなと思ったけど、当初雨だった土曜日の予報がよくなっている。しかも気温がありえないほど高い。これならまだ雪の心配がいらない。翌週には気温が低下するようなので、この日が今年最後のチャンス、と思って夜から都内で飲む予定があったけど、その前の苗場行きを決意。苗場には夏頃から登りたかったけど、なかなか天候のタイミングがあわず、今年の登り残しのひとつだなあと思っていた(もうひとつは日光白根)。
関越トンネルに入るまでは晴れていたが、トンネルを抜けると小雨。だけど不思議とテンションが落ちなかった。事前の情報ではあまりアクセス道路について書かれているものはないので、あまり心配せずに行ったら、17号から分かれたあとの道がひどくわかりにくい。分岐になんの標示もないので不安な気持ちでいると同じような気持ちがみてとれる練馬ナンバーの車が前方に1台。先に行ってくれとハザードをつけているので追い越すときに聞いたらやっぱり苗場の登山者で、道に自信がないという。「とりあえずいってみますか」と、よろよろ走っていくとどうにか目的の駐車場にでたのでホッとした。けっこう細道が長いので、自分一人だったら不安でしょうがなかっただろうと思う。この日の登山者数を思うとこれもちょっとした幸運だった。
天気は曇りだがかすかに晴れ間がみえるので今後よくなるはず。駐車場までいっしょにきた練馬の人とそのままいっしょに登って行く。悪路ときいていたので今日はスパッツを装着。登山道は前日に降ったであろう雨でほとんど沢状態になっている。でも岩がごろごろしているのでそれほど苦にはならない。練馬の人に往復6時間を想定していると言ったら「はやいですねえ」といっていたのに、同じペースで歩く。下の芝で一服してたら「先にいきますけど、抜いてください」といっていたのに、全然追いつかない。あなたも十分早いじゃないか、と思いつつガスの中を登って行く。下山してきた単独の人が一人。駐車場に1台止まっていた人だ。練馬の人は後ろ姿が見えるけど追いつかないまま神楽が峰に到着。別に追いつくのが目的ではないし、とここで一服。寒くなく暑くない、すばらしいコンディション。神楽が峰のすぐ先の股すり岩を越えて(私は足が長いので余裕だった)少し下ったあたりで先行していた練馬の人が戻って来る。ガスの中で思ったより下るので不安になったのだという。ということでここからまたくっついて歩く。このあたりからは苗場本峰の姿とそこへ続く稜線がきれいに見えるはずだが、ガスにつつまれている。と、思ったそのとき、ガスが少しずつ少しずつ、取れていく。そして見る間に眼前に苗場の本峰が青空とともにその姿を現した。まるで待っていたかのように。いまここに山の神様がいる、とはっきり思った。ガスの中から現れた光景に息を呑む。そしてその後から異様な高揚感が湧いてきた。雷清水を一杯飲んで、練馬の人を後ろにおいて最後の上り返しをガツガツ登る。あそこまで、と思えた時のこの力はどこから来るんだろう。青空が出ている。前方から光が差し込む。いままるで、ユージン・スミスの「楽園への歩み」みたいになってる、と思った。最後は北面にはさすがに少し部分的に積雪があったけど、アイゼンをつけるほどではない。興奮状態で最後の急登を終えた。
青空。それも雲の切れ間のあつらえたような青空。どこまでも広がる平らな山頂。そして、誰もいない。しかも無風。少し遅れて登ってきた練馬の人と、「最高ですね」といいながらとりあえず山頂標識へ。それは小屋の裏手の樹林の中にひっそりとある。百名山の山頂標識でこんなに不遇なのも珍しいのではないかと思う。練馬の人はしばらく姿が見えていたけど早めに下りて行ってしまったようだ。ということは山頂に一人でいるということ。カップラーメンをつくりながら、たぶんこれは世界一おいしいカップラーメンだし、人生で食べる最良のカップラーメンかもしれない、と大げさでなく思う。自分が動きを止めると、なにひとつ音がしない。光にあふれた景色があるだけ。これはちょっとやばいなあ、と思った。「ふるえるようなよろこび」、というのはこういうものかと。秋山郷の方から一人登ってきたのでちょっと話す。その人も先に下りて行った。いままででいちばん立ち去りがたい山頂。苗場神社まで足を伸ばしていつものお願いごとをする。引き返すと後続が一人到着したようだ。離れていたので話はしないけど、このとき既にガスが再びかかってきて先ほどの光はもうなかった。これは下り時だな、と山頂を後にする。結局1時間半も山頂にいた。単独でこれだけ長く山頂に滞在するのははじめてだった。
神楽が峰への登り返しはさほど急でもないし、ふたたび濃いガスの中なのでタンタンと下る。山頂近くで後続が二人登ってきた。今日の苗場の登山者はおそらくこれですべて。自分を入れて6人。すべて単独行。すべて男性。こういうのも珍しい気がする。でもあの奇跡のような山頂に立ち会ったのは自分と練馬の人と、反対側から登ってきた人の3人だけだ。
ガスの中を静かに充足した気持ちで下った。急ぐ必要もないので、神楽が峰、上の芝、中の芝、下の芝、と少しずつ休みながら。途中でなんだか抱きつきたくなる木があったので抱きついてみたりした。優しい感触だった。一人だとこんなこともできるからいい。
駐車場へつくと小雨が降ってきた。この日の山頂を一生忘れないだろうと思う。
いっしょに登った練馬ナンバーの者です。
一人じゃ登れなかったので私も運がよかったです。
帰りどうしても貝掛温泉に行きたかったので早めに下山してしまいました。14:00過ぎてましたが入れてくれました。国道からすぐなので行く価値ありです。
帰り駐車場には13:30に到着しました。
帰りは問題なく国道に出れました。
土曜日は本当にありがとうございました。
コメントありがとうございます。
土曜の苗場は大当たりでしたね。
駐車場までの道のりがいちばん不安だったので同行者を得てとても助かりました。ありがとうございました。
13:30下山だとちょうど6時間ですね。
登りも素晴らしいペースでしたよ。
温泉、次回は寄ってみます。
ぜひまたどこかの山でお会いできるといいですね。
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