瑞牆 地獄エリア(バケモノ屋敷・オリジナル)
- GPS
- 11:02
- 距離
- 3.1km
- 登り
- 462m
- 下り
- 444m
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2018年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
その他周辺情報 | すき家 |
写真
感想
初めての瑞牆 地獄エリアへ。
〈アプローチまで〉
前日は廻り目平のキャンプ場泊。6時半に起床しダラダラ支度。前日の疲労が残っており特に肩周りがバキバキ。
8時頃には出発し、瑞牆自然公園に移動。駐車場でギア整理をしたら出発。駐車場から地獄エリアへは瑞牆本の詳細なアプローチガイドのお陰であまり迷わず30分強くらいで到着出来た。詳しくは写真参照。最後のガレ沢を詰めて行くと立派な岩壁が見えてくるが、最初にまず目に入るのが今回トライ予定のバケモノ屋敷だった。
〈登攀〉
トライしたバケモノ屋敷について、トポでは3pで各ピッチに名前が付いている。
・バケモノ屋敷5.6
・煙突チムニー5.7
・天井の花子さん5.9
・1pリードくどー バケモノ屋敷5.6
おどろおどろしい湿った暗がりに、巨大なワイドクラック。どのピッチをやりたいかと話した時に、グレードは関係無く下部をやりたいと申し出た。ほぼノープロテクションでチムニーを進むというトポコメントに惹かれた。ノープロテクションのメンタルへの影響を余裕の持てるグレードで測りたいという目的があった。結果、1、2pくどー。3pもりで行こうという作戦。
どこから登るか話した時に、ここしかないという結論になったワイドクラックは奥に細いクラックが走っていてやってみるとほとんど問題無くランナーが取れてあれ〜?となった。しかしここしか無いと思うのだが??何故か星付きルートなのにトポでのバケモノ屋敷の扱いが悪く、「東面から左回り込んだところにある」くらいしか情報が無いのも微妙。グレード感的には5.6で妥当なのかよく分からないが3Dなムーブがとても面白かった。このサイズいいな〜(簡単なグレードだからと思われる)。上部の木で終了。
・2pリードくどー 煙突チムニー5.7〜天井の花子さん5.9?
1pに続き継続。またしてもチムニー。前日からチムニーチムニー、チムニー天国だよ。いや地獄エリアだったか。
取り付き右手にクラックが続いており、奥に向こうから陽が差し込んでいる。対面のオリジナルルートが同クラックの表裏で繋がっているのだ。これもトポに記載があるので、ここまでは2pで間違いが無い。トポ記載は10mだが恐らく抜け口までは15m程度。下部はチムニー、中盤の左トラバース、最後の抜け口、いずれも面白い。こちらの方が1pよりランナーは取り辛かった印象。
最後は抜け口から這い上がり、木に支点を作る。もりさんがスイスイ上がって来たので3pはどこかと周囲を見渡すもどうにもトポにあるようなルーフというのは見つからない。
トポでは3p目はルーフチムニーのある20m、そんな目立ちそうなルートが見つからないなんて事があるだろうか?これはもう分からん、という事で2pにて懸垂。懸垂支点がしっかりしていて有り難かった。ルートが正しいかはともかく、2Pとも今まで体験した事の無い系統で非常に面白かった。何というか冒険的。
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同日継続登攀
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オリジナル 10b 4p
登攀順はジャンケンで決める。
オリジナルの構成上、つるべで登ればリードが5.9→10bまたは、10a→5.9のどちらかになるので分散されて都合が良い。結果、自分の担当は5.9→10bに。トラッド10bのオンサイト経験は無い。トポにはここの10bはフレアしたオフウィズスとの記載。とてもオンサイトは出来る気がしない。やる前からやや気持ちが逃げていた気がする。
〈登攀〉
1p リードくどー 5.9
凹角をチムニーで進む。
チムニー内にクラックが走っており下部は安定して支点を取れるが途中からフレアしており、カムが決め辛かった。場所とサイズを選べばそれでも確実に決められる箇所を探せるが、余裕が無いせいで、カムの選択、設置場所をしっかりと選ぶという基本作業の負担が非常に辛く感じた。結果、自分のカムが信じられず進むのにも躊躇し、その間にヨレるの悪循環。登りながらの試行錯誤。
中盤からのチムニーでは、どちら側を背にするかで悩み、ホールドがありそうな右面を前にする事にした。そうする事で足で、手で拾える分楽だろうという判断。しかし実際にはそれは上手く機能せず、どうにもレスト体制を作る事が出来なかった。粘りに粘るも満足な支点を取れない事に心が折れ屈辱のテンション。本当にテンションしか無かったのか、気持ちで負けただけじゃないのか、今でも悔やまれる。
長いレストの後、落ちた箇所をもう一度オブザベーション。…背中側の角度か?背中を今度は逆面に変更する。先に見つけたホールドは背中面にあってもヒール&トゥーで拾える。ホールドを読めていればそんなに前後ろは関係無いのかも知れない。それよりも背中が安定する角度の問題か?後は使いやすいサイズを出しやすい位置にギア整理。
息を整え、落ち着いてリトライ。比較的あっさりとトップアウト出来た。さっきの状況で気付いて、左右の体制を入れ替えるのはどっちにしろ難しかっただろう。そのまま行くしかなかった。そもそも結局はルーファイミスという事になる。登る前の戦略立ての重要性を痛感する。悔しい。
もりさんは比較的スムーズにノーテンで上がって来た。流石だ。もりさんは基本的に出来る範囲の事はブレずにきっちりやって来るのがすごい。本人は当たり前だくらいの事を言っていたが、これがなかなか出来る事では無いのだ。
2pリードもり 10a
その日初リードのもりさん、気持ちが乗っているのを感じる。これは何となく行くかもなという予感。
ここもまたしてもチムニー。そして並んで走るハンドクラックを使って登る。ゆっくりと時間を掛け、しかし確実に高度を稼いで行く。登って行く姿が視界から消え、終了点まで着いたかと思う頃、「あと10mだけどもうタマが無い!」との声。終わりが近いと思ってカムを出し尽くしたらもう一段あったらしい。登ればオンサイトグレード更新、周りには止める権利は無いだろう。「任せる、行くなら気を付けて!」とだけ返す。不穏だが、もりさんはきっと無謀なら止めるだろう。一応覚悟はしながらビレイ。
しばらくの沈黙の後「ビレイ解除!」の声。やったなもりさん。ああ、さっき落ちなければな。色々な思考が巡るが関係無い。フォローで落ちるわけには行かない。
フォロー登攀。これも本格的なチムニーで、長いしキツイのだが、不思議とムーブはスムーズに出て来た。これはもう確実にこの2日間の成果でしかない。最初のチムニーを登り切ると上部にもさらに凹角のチムニーが待っている2段構え。なるほど、残ったカムだけでなんとか苦慮してランナーを取った気配がある。それでもなんとか許容範囲に収めてトップアウトしていた。流石。最後にもう1ポイントこなして終了。自信を取り戻すと共にやはり1p目のテンションが悔やまれた。
3p リードくどー 10b
2〜3pへは歩いて移動出来る。そこにあったのはまたも美しい一本。出だしからフィストでそれがしばらく同サイズで続く。苦手なサイズ。小休止の後、しっかりと作戦を立てて行く。ほぼ経験の無いこのサイズでどう登るか、上部に見えるオフウィズスセクションで体はどちら向きか、それに対する使いそうなギアは?出しやすい位置は?1p目の同じ轍は踏まない。もりさんの気合いの登攀に当てられ、ここではじめて絶対に登り切る為の気持ちが作れた。後は登るだけ。
取り付き、完全に離陸する前に何度かムーブを確認。やはりフィスト。もりさんからもアドバイスを貰い、両手フィスト(順手&逆手)のポンピングで行く事に決める。
離陸。
序盤はフィストが抜けないか怖かったが、案外問題無く高度を上げる。
中盤からフレアしているクラックをオフウィズスで進むパートに突入する。体は右向き、事前に決めていたから移行はスムーズだ。なるほど、気を抜くと吐き出されそうになる。進むには体をクラックからやや出さなければ行けないが、出すと休めない。
高度を上げる時はグイグイ上げるが、限界を迎える前に良いポイントを見付けて、体をクラックに突っ込みレスト体制を取る。1mも上がれずに息も絶え絶えになるが、落ち着いて息が整うまでレストする事を繰り返す。
少ないクラック経験の中で、このどうやって息を整える体勢を作るかというのが結構大切なんじゃないかと感じている。案の定フレアでカムは決め辛い、が、決められないわけではない。落ち着いて、焦らず高度を稼ぐ。
中盤、またフィストをねじ込んで進む。痛い、が関係ない。痛いっていう事は効いているって事だ、むしろいい事だ!と念じて登る。
いよいよ後半というところまで進むとさらにクラック奥のサイズが変わり、フィスト+αのサイズになった。これに戸惑い、停滞する。何をして良いか分からない。
足は横向きにスタックさせれば、かなりしっかり決まっている。問題は手掛かり。足とは別にもう一点支持出来る箇所が無ければ進みようが無い。
レストしながら考える、自分の引き出しにはこのサイズは無い?いや…リービテーション?
どこかで読んだ知識を即席で実践する。フィスト&ハンド、フィスト&フィストのリービを使ってみる。これだ。
後は上へ進むだけ。ジリジリと時間を掛けて登り、レスト、登りを繰り返す。レストに入る時は息も絶え絶えで、クラックに最大限体をねじ込んで休む。ねじ込み過ぎてヘルメットがナッツみたいに決まってるんじゃないかという気がして来る。接地してる顎とかも重要なフリクションになってしまっている。これはありなのか?もう全てがどうでもよくなって気持ち良くなって来た。レストしている間は静かな時間が流れる。自分の心臓の音が大きく聞こえて、目線を横に向けると十一面の岸壁が綺麗に見えていた。酷い状態だがこういうのがやりたかったんだよなぁと何か急に幸せな気持ちになる。とにかくこれは登り切るぞ、と改めて心を決めて、登攀継続。こねくり回して登って行くといよいよ終わりが見えた。たかが10数mのはずだが、何か1日旅をしたような、そんな気持ちになる時間だった。これを取れば終わりというホールドが少しずつ近づいて来る。落ち着いて、絶対に取れる高さまで体を上げてから、取った!終わった!
ヘロヘロになりながらなんとか這い出ると、出し尽くして本当にもう何も出ないという状態。木で支点を取って、続いてフォローのもりさんを待つ。
中〜後半くらいでテンションがあり、後半は時間も時間だったのでとりあえず抜ける系でトップアウト。この時点で18:00近くになり時間いっぱい、撤退を決めた。
それにしてもマルチ、トラッドは面白い。
今回のオリジナルなら担当ピッチが違えば確実に結果は違っていた気がする。気持ちやらタイミングやら余力やら、影響する要因が非常に多いなと。
今回私は5.9、もりさんは10bでテンションがあり、最後1Pは宿題となった。いつかリトライか?さらに面白そうな何かでもいいが。
これにて2日間4本のマルチルートは無事トライ完了。
とにかく出し尽くした2日間だった。
これはもうお互い、この山行前後では確実にレベルアップがあったと思う(実際最終便で2人ともオンサイトグレード更新なんて出来過ぎだが)。それくらい濃い時間だった。しかし誘った時点で想像していた絵なので自分は悔い無く予定通りなんだけど、これを面白がってくれる人種って限りなく少ないだろう。本当に有り難い。
実際自分がいつでも山に行ける身分だったならば山への行き方、向き合い方も変わって来るはずだけど、今の自分には今回みたいに詰め込んだ山行とそれに付き合ってくれるパートナーは非常に、非常に、貴重だ。
ジャンルが違っても良いのでまたなにか攻めた内容でやれたらいいね!
ありがとう!お疲れさまでした!
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