韓国ソウル・南漢山城を歩く 北門から周回

- GPS
- --:--
- 距離
- 9.3km
- 登り
- 953m
- 下り
- 957m
コースタイム
天候 | 雨・土砂降り・霧・くもり……これらが代わる代わる。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
3番出口を出て直進すぐのバス停から、9番または52番のバスで終点・南漢山城(ナマンサンソン)へ。 8号線の次の駅は、ズバリ南漢山城入口(ナマンサンソンイプグ) 駅ですが、こちらは利用していないのでよく分かりません。多くのガイドで山城駅下車が推奨されています。 9番は本数が多いですが、街を遠回りします。 ただ、「横浜の水道道かよ!」と思うような凄まじい急坂を走ったり、韓国の大都市近郊のゴチャゴチャした街風情を楽しめますので、悪くはありません。 52番は山城駅から南漢山城まで直行しますが、本数は多くなく、全く来ない時間帯もあります。 山城駅のバス停では、今度来るバスがどの位置にあり、あと何分で来るか、系統別に表示されています。 9番・52番とも、運賃は1300ウォン (T-Moneyなどのカードは1250ウォン)の均一運賃です。 カードの場合、乗車時と下車時にそれぞれタッチします。 帰りは、多くの客がドドッと降りるところが山城駅バス停です (正式名称はシンフンジュコンフムン=新興住工後門ですが、車内放送で「地下鉄は乗換」云々の案内が流れます。韓国語が聞き取れなければいけませんが、分からなければ他の客がソワソワし出すのを見逃さないように)。 |
写真
せっかく天気は悪くないのに、終日ホテル内で缶詰となり、用務をこなしていたという・・・
しかし翌朝になると、予報通りに雨……。日本の北陸あたりに居座る秋雨前線がソウルにもひっかかってしまいました。
とはいえ、せっかく重い登山靴や登山ウェアも持参していますので (^^;)、傘を差しながらでも何とか歩けそうで、歴史的にも面白みのありそうな南漢山城を訪れることにしまして、地下鉄を乗り継いでレッツラゴ〜(棒読み)。
ちなみに、韓国の地下鉄の駅は、北朝鮮の攻撃時における避難所を兼ねていますので、無駄にデカいです。
それにしても、ここで52番のバスを待つ間、凄まじい土砂降りとなり、やっぱ止めとこうか……と弱気になりかけました (^^;
これだけ険しい山の上に陣を構えながら、結局清軍にやられてしまったのは、清の騎馬・火砲軍が圧倒的に強く、かつ朝鮮王朝がつまらない大義にこだわり、民衆から見捨てられていたからでしょうか (詳しくは、最新の韓国映画『南漢山城[邦題・天命の城]』を見れば参考になります→たまたまJALの機内でやってた w)。
山城の東側は道の険しさもあって観光客がおらず、雨で他のハイカーも不在で、静かな雰囲気を満喫できたのは幸い!
社稷とは、天命を承けた国家権力の意。清の皇帝ホンタイジに追いつめられた朝鮮国王が、こんな山の中で意地になっても権力を守る儀礼をやっていたわけですが、落ちぶれ方が何とも……。
このあとは折角ですので、南漢山城から和を請い出て来た朝鮮国王が、清皇帝ホンタイジに服従を誓うに至るまでの故事を記した三田渡碑 (サムジョンドビ) を訪ねてみます。
かつては石村駅南東の住宅街のど真ん中にありましたが、住民から「こんなの邪魔だ。要らん」という運動が起こったり、韓中関係が悪化するとペンキをかけられたりで、数年前「石村湖畔が本来の場所らしい」という理由をつけて移転……。今では監視カメラで狼藉者をシャットアウトしています。
軽々しく移転なんてどういう歴史認識やねん、と思いますが、移転したらしたで韓国人は全く面白くないらしく、この手の碑文の脇に普通ありがちな説明文は一切ありません (苦笑)。
そのロッテは、北のミサイル対策で配備したTHAADミサイルの基地のためにゴルフ場を提供し、以来中国様から「我々が日米を狙う戦略兵器を無力化する気か」と怒りの鉄槌 (中国からの締め出しや訪韓団体旅行の制限) を下されているという……w
南漢山城と三田渡碑……中国と韓国の相性の悪さをしみじみと感じ取れる場所です。
もっとも、翌日=帰国日は、しばしば超!土砂降りとなり、ハイキングに出掛けても絶対に撤退を余儀なくされたはず。というわけで、今回こんな天気で不幸中の幸いだったのかも。
感想
先日久しぶりに韓国ソウルに出張したのですが、うち1日は全く用務がないフリータイム。ヤマレコユーザーとなってからは初めての韓国出張ですので、ここは是非、ソウルの街を取り巻く山のどれかに登ってみるべく、トランクの中に登山靴や山用の服を用意して、飛行機の客となりました。
では具体的にどの山に登るか……? 岩あり、森あり、眺め良しの山々に囲まれたソウルの街は、しばしば地下鉄の駅がそのまま登山口となっており、直接駅から出発するには少々遠い登山口でも、洪水のように走るバスのおかげで交通条件は至便。まさによりどりみどりです (その余りの便利さが、往々にして韓国の山をマッコルリ片手の大宴会場に変えてしまっているわけですが……苦笑)。しかし折角韓国で初めて山に登りますので、ここはソウル界隈で最も高い山にして、風水上も極めて重要な意味を持つ北漢山に登るべく、ワクワクテカテカしておりました。計画しているあいだは……。
ところが何とも遺憾なことに、用務で終日缶詰になっている日は晴れまたは曇りとなり、登れる日には雨……。頂きに近づくほど凄まじい急斜面となり、露岩の上を手すり頼みで歩く区間もある北漢山に登るのは危険です。こりゃダメだ……。
そこで、全く登山・ハイクとは関係ない鉄ヲタ活動や名所めぐりをする手もありますが、とにかく折角重い登山靴を持ってきた以上、傘をさしてハイキング出来、しかも由緒のあるところに登ろうと思案しまして、選んだのがここ、南漢山城 (ナマンサンソン) です。
南漢山城はある意味、他のどんな名所旧跡よりも面白いです。何故なら、朝鮮王朝の失敗の歴史が凝縮された場所だから! (※1)
というわけで、雨降りで地元登山客・観光客がメチャクチャ少なく静かな雰囲気の中で、往時の悲惨な歴史を追体験し、無茶苦茶な話が多すぎる朝鮮史に他所者イルボンサラム (日本人) ながらに思いを馳せてみよう……という思惑を胸に、地下鉄8号線山城駅にて外に出てみました。すると……ホテルを出た時よりも土砂降り (滝汗)。そこで、今回のハイキングは不戦敗……という言葉が脳裏をよぎりましたが、予定通りにバスに乗って、一気に300mほど登って山上の盆地の中に向かい、ロータリーにて下車。小雨に変わったのはこれ幸いということで、掲示板の地図を念入りに確認したうえで、まずは北門(全勝門)に向かい、時計回りで歩くことにしました (※2)。
その一部始終は画像とコメントの通りですが、山城とは言いながら、実質的には登山道そのもので、しかもしばしば凄まじく急な坂や階段が折からの雨で濡れて滑りやすく、いや〜歩き甲斐がありました。ストック無し、傘差しで歩きましたが、出来ればストックあり、傘差さず、の方が良いでしょう。そして、壮大なパノラマを楽しめなかったのは残念ですが、秋雨前線に濡れた森は美しく (紅葉時期は凄まじい人出となることでしょう)、流れる霧と雲に巻かれた松と石垣が険しさを物語り、圧巻、そして故事を思えば凄絶のひとことでした。そして幸いなことに、僅かな時間でしたが江南 (カンナム) あたりの超高層ビルも望め、パノラマという点でも不幸中の幸いでした。文句なく、山好きな方がソウルを訪れて時間が出来た際のスポットとしてお薦めできます。
----------以下の注は長いので、暇な方のみどうぞ-----------
※1……朝鮮王朝の歴史を繙くにつけ、いわゆる韓流ドラマの中の華やかな見てくれとは裏腹に、その華やかな見てくれを華やかならしめている腐れ儒学(とりわけ朱子学)が邪魔をして、最も危機が深まったタイミングで最悪の選択をしてしまうことが度々ありました。近代においては、日本がペリーの黒船などを受けて積極的に開国し、その後の近代化を成功させることが出来たわけですが、朝鮮は西洋を野蛮人扱いして撃退しようとしたばっかりに、近代化のスタートアップの時点で大きく遅れをとってしまい、やがて日本に併合される憂き目に……(しかしその日本も、腐れ朱子学の日本バージョンである水戸学が国家神道に転化し、やがて1945年の大失敗に至りますので人のことは言えないですが)。だからこそ、韓国の日本への視線が複雑なのはやむを得ないことですが、ある意味でそれ以上に深刻なのは、中国様との関係です。
朝鮮王朝はかつて、モンゴル人の野蛮を撃退し、儒学の文明を分け与えてくれた存在として、明朝をこの上もなく尊んでいたわけですが、その明は国力が傾き、代わって台頭した北方の女真人あらため満洲人の国家・後金〜清に「これからは明に従うのではなく、我々と兄弟となって対明連合軍を組もう」と誘われたのでした。しかし、明への大義を捨てて、今までオランケ(野蛮人)と蔑みつつ交易をするだけだった満洲人と組むなどという選択は、現実主義者であればさておき、儒学原理主義者の国家・朝鮮には出来るはずがありません。
そこで朝鮮は後金からの兄弟・同盟の誘いを断り、明と連合軍を組んだところ、サルフの闘い(遼寧省撫順近郊)でボロ負け。以来、怒った満洲人は、朝鮮国王に対し露骨な服従を要求するようになったのでした。それでも朝鮮は、何もしてくれない明への忠誠を誓いつつ、援軍が雲集することに期待していたのですが、腐れ儒学を信じる一部の両班だけが美味しい思いをし、一般民衆を蔑んでいた朝鮮王朝のために、いざという時に立ち上がろうとする民衆は誰もなし。そこでついに1636年の冬、清朝第2代皇帝・ホンタイジは、力尽くで朝鮮国王に頭を下げさせる作戦を発動し、追い詰められた朝鮮国王は江華島に逃げようとしたものの失敗。ソウル=漢城の街の南東にある天然の要塞・南漢山城に逃げ込んだのでした。そしてなおも、明への忠誠という空しい大義名分にこだわり続け、ついに総攻撃で王朝滅亡……となる直前にホンタイジに和を請い、国王は山城を出て三田渡 (サムジョンド) にてホンタイジに三跪九叩頭するという屈辱を嘗めさせられたのでした。
以来朝鮮王朝は、1895年の日清戦争・下関条約で、朝鮮の完全な独立国化を清に認めさせるまで、毎年北京に朝貢させられ、内心で反清復明を誓いながらも果たせず、もし日清戦争で日本が負けたら恐らく中国の一部分になっていたかも知れない……という運命に陥ったのでありました。
以上のエピソードは、韓国の歴史観では「丙子胡乱(ピョンジャホラン)」と呼ばれ、この言葉を思い出しただけで韓国の人は中国への限りない恐怖を思い出し、安全保障上の危機が巡ってくるたびに丙子胡乱の教訓を云々することになります。その一端は、韓流スター・イビョンホンが主演した最新の映画『南漢山城(邦題・天命の城。坂本龍一氏が音楽を担当)』でも明らかに分かります。
※2……山城の立派な門として北門 (全勝門) と南門(至和門)の二ヶ所があり、そのどちらかから歩くのが良いと思いますが、「孤立無援の朝鮮が清軍に虚勢を張った→しかし最後は惨めな立場で和を請うた」という流れから言えば、北門からスタートするのが良いかも。もっとも、実際に朝鮮国王が降伏して清の皇帝ホンタイジに忠誠を示すために下山したルートは、西門〜地下鉄5号線馬川駅〜三田渡 (地下鉄2号線蚕室駅付近) のようです。北門から時計回りに進むと、人通りも少なく深山ムードを存分に味わえます。いっぽう、時間が限られており、ハイライトだけ歩きたいということであれば、南門から時計回りに北門まで歩くのがおすすめ。南門から西に登る際の傾斜が非常にきついのと、その後のソウル市街の展望が非常に優れているためです。もっと時間がなければ、観光客でも歩ける区間として、山城の北西側にロータリーから直接アクセスできます。
コメント
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こんばんは、晴れれば多分もっと凄いですよ〜。
機会があればどうぞ〜
前の人↑と同じ感想ですが
勉強になりました!!韓流ドラマ余り見ませんが興味出てきました。
久々の韓国なのでしょうか?
以前購入された山のガイドブックは役に立ちましたか?
雨で残念でしたが、素晴らしい韓国史の講義?聞き入ってしまいました
ところで行きたかったとおっしゃっていた「北漢山城」で検索したら
レコがありました。
1000mないけど瑞牆山のようなりっぱな山容で
市街地から手軽に登れるんですね。
ソウル市内から見えた岩山は皆こうして登れるんでしょうか?
こういう山々登ってガンガン鍛えてる韓国の人たちだから
北アルプスも軽く歩けちゃうんだと納得しました。
bobandouさんの韓国出張&韓国のヤマレコ、今後も期待してます。
私も山と食が楽しめそうなソウルに行きたくなってきました。
こんにちは、コメントどうもありがとうございます!
韓国は今回9年ぶりで、ふだんは韓流ドラマ・映画・俳優なども興味ありませんので(韓流はもっぱら女性の趣味だと思います。飛行機もビジネスマンを除けばほとんどの客が女性でした
というわけで、ある意味でサバサバとした気分で、楽しめるものは楽しもう……というノリで韓国初ハイクをしたところ、さすが標高は低いながらも岩岩した険しい山が多い国で、しかもハイキングは非常に盛んで登山道が良好に整備されていますので、何の無理もなく楽しめて良かったです
私の場合、ハングルが読めますので (20代の頃に少しかじった)、掲示や地図も全て分かるという点でもラクでした
韓国の登山者・ハイカーは、ふだんこんな感じの「大都会のすぐそばで、標高が低いけれど、そこそこ険しく、四季それぞれにキレイな山」で百戦錬磨、下手をするとマッコルリを飲んで酔っ払った状態で岩の上を歩いているという感じだそうですので、まぁ日本アルプスに来ても歩行技術そのものはあるのでしょう。足りないのは、ここが2000〜3000m級で、韓国の最高峰・太白山 (1500m台) と比べても厳しい、という自覚でしょうか。あと「登山とはワイワイ騒ぎながら楽しく」という前提が、日本とは全く違っていることでしょうか (-_-;)。
韓国人ハイカーの騒々しさについて「郷に従え」と割り切れば、日本人にとっても魅力的な山が結構多いと思いますね〜
出来れば、なるべく早いうちに台湾と香港でも日帰りハイクデビューしたいのですが、今後もフリータイムをとれる韓国出張が入ったら、ソウル周辺のいろいろな山を攻略したいと思っています。
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