菅浦集落☆冬の隠れ里に春の気配を求めて
- GPS
- 00:40
- 距離
- 1.5km
- 登り
- 10m
- 下り
- 12m
コースタイム
- 山行
- 0:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:40
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
大部分が舗装路 |
写真
感想
先週の1/23日に未明のランニングで公園に張られた足元のチェーンに気が付かず、膝から転倒し、膝蓋骨骨折という惨事に陥る。受傷以来、まるまる一週間自宅で休養していたが、今週の水曜日にギプスから固定装具に変わり、いよいよ松葉杖で出勤。この日、松葉杖をダブル・ストックに替えてみると、平坦なところであれば少しは歩けそうだ。リハビリ歩行を目的に景観の美しい道はないかと思案したところ、まず思いついたのがこの菅浦集落であった。
西日本から関西は広範囲に晴天の予想であった。湖西道路からは冠雪した比良山系が陽光に照らされて銀嶺を見せる。しかし、湖西から湖北に北上するにつれ次第に雲が広がり、大浦に辿り着いた頃には青空はすっかり姿を消してしまうのだった。
大浦からは、小さな湾を回って半島の西側を下ることになる。この湾の奥には北から諸河、日指という二箇所の田地があるようだ。この小さな田地を巡って大浦と菅浦との間で、応仁の乱の約20年前、1445〜46年にかけて「文安の相論」と呼ばれる紛争が生じ、死者が生じる争いとなったという。地理的には圧倒的に大浦に近いのであるが、耕作地がほとんどない菅浦集落にとっては極めて重要な土地だったようだ。この紛争は最終的に京都の相国寺を頼り耕作権を証明する書類を揃えた菅浦側の勝利となる。
半島を回り込んだ途端、小さな入江の奥に菅浦の集落が見えてくる。集落は白州正子が呼んだように「かくれ里」に相応しく、ひと目を避けるかのように入江の奥にひっそりと佇む。この大浦から菅浦に至る道路が1966年(昭和41年)に自衛隊により開通するまで菅浦集落は完全に陸の孤島であり、湖上の水路がこの集落にたどり着く唯一の交通手段であった。明治の初期までは外部との交流もほとんどない極端に排他的な集落であったという。
菅浦集落の西端、トイレを備えた車数台分の駐車場がある。車を停めてあるき始める。山側にはかつて、集落に出入りする者を監視したという四足門が目に飛び込む。
集落の中に入ると早速にも幾度もの星霜を経たであろう石垣が独特の景観を生み出している。石垣の湖側にも建物が建ってはいるが、かつてはこの石垣を直接琵琶湖に面していたのであろう。琵琶湖の波浪から建物を守る目的で造られたものらしい。
琵琶湖へと目を向けると正面には竹生島、そして右手には比良山系を大きく望む。石垣の前の小さな花壇では水仙が丁度、見頃なのであろう。水仙の芳しい香りがあたりの空気に早春の気配を漂わせている。
石垣に沿って民宿の看板が目に入る。「よしや」「魚勝」「半次郎」等々。井上靖の小説「星と祭」においても主人公がこの菅浦の民宿に泊まるくだりが出てくることを思い出すが、果たしてこの民宿がどれだけ営業しているか気になるところである。井上靖の「星と祭」も今や絶版らしい。
道の突き当りに、第17作業所と掲げられた小さな小屋が現れる。かつて、ヤンマー・ディーゼルの創始者である山岡孫吉が集落内に作った農村家庭工場の一つらしい。出勤しなくても集落内で作業が出来るようにとのコンセプトに基づいて作られたものらしく、かつては集落の西から東にかけて20もの工場が作られたらしい。山岡孫吉は湖北は高月の出身であり、大阪に出て事業に成功したものの湖北には思い入れがあったようで、戦後間もなく近江永原に大きな工場「永原農村精密工場」を作る。今でこそ永原までは車で30分程の距離であるが、道のない当時としてはまさに画期的な試みであったようだ。昔の建物さながらに現在でもいくつもの工場が現役で稼働しているというのは菅浦の住民の共感のなせる業なのであろう。
工場で右折し、石垣の続く狭い道を辿り、第20工場を通り過ぎると、東の四足門に出る。集落はここで終わるが琵琶湖に沿って遊歩道が続いている。以前に整備されてから時間が経っているらしい、遊歩道に架けられた鉄の板はすっかり錆びついて傾いている。このまま遊歩道を辿ると冬期通行止めとなっている奥琵琶湖バークウェイ上の葛籠尾(つづらお)崎展望台に登ることが出来るようだが、膝の状態からすると坂道を歩くのは到底、無理のようだ。このあたりで再び引き返すことにする。
道路沿いには再び小さな工場が目に入る。建物の中には何もなく、かつての工場跡なのだろう。ミントグリーンの硝子戸に手をかけてみると、意外にもすんなりと開いた。建物の中は独特の油脂のような匂いが充満していた。それが床板から立ち上る微かなワックスの匂いであると気がつくまでに、40年以上前の小学校時代の記憶にまで遡る必要があった。工場のすぐ隣の人気のない民家の前では水仙が艶やかな芳香を放っているのであった。
駐車場に帰りつくと丁度、木ノ本からの湖国バスが到着したところであった。1日3便あるうちの最終便のようだ。菅浦を後にすると雲の合間から光が差し、一瞬、湖面を輝かせた。
湖岸に沿って高島まで戻ってくると空にはすっかり青空が広がり、琵琶湖の対岸に鈴鹿の霊仙山、御池岳が冠雪した美しい姿を見せるのだった。
コメント
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こんばんは
順調に快復されているようでなによりです
リハビリで菅浦集落を歩かれたのですね。
日本史も、さっぱりなのですが、「菅浦文書」が残されていて、中世の惣村の事例として有名なところです。
草餅が有名だったと思います。
「かぐや餅」
(3月末からの営業でした。このころには、もう、山を歩いておられるかな)
churaさん、コメント、有難うございます。2/1(金)までは固定装具をつけての松葉杖歩行だったのですが、どうしても少し歩いてみたくなり、この菅浦を訪れてみましした。
昔からこの菅浦は気に入って、幾度か訪れているのですが、この集落の歴史はとても奥深いところのようですね。
草餅・・・教えて頂いて有難うございます。食べたことはなかったので、是非、春になったらまた、訪れてみたいと思います。
少し歩くのも普段の数倍の時間がかかります。そのお陰で、普段よりもいろいろと目につくような気もしますが・・・
翌日は京都の大見湿原を歩いてみたのですが、まだまだ大変でした。明日から再び固定装具と松葉杖の日々に戻ります。
早朝は手元足元がよく見えないにしても運悪く膝蓋骨骨折とは災難でしたね。
まさか両足では無いでしょうが骨折から十日程で歩こうと思われる気概は流石です。
当面物足らないでしょうが緩いコースで無理せずにご自愛ください
nakato932さん コメント有難うございます。
骨折したのは仕事先の倉敷で、かつてのチボリ公園の広大な跡地をショートカットしようとしたところで、足元のチェーンに躓いて勢いよく膝から突っ込んでしまいました。受傷したのは左足の膝蓋骨だけでしたが、靭帯などを損傷していないというのが不幸中の幸いと考えるべきところだったかもしれません。
churabanaさんのコメントにも返信したのですが、多少の凹凸のある湿原でも歩くのはまだまだ大変でした。しばらくは固定装具と松葉杖の日々に戻り、改めて快復を目指します
私もインフルエンザでおとなしくしておりましたが、本日は菩提寺山(甲西富士)をさくさくっと歩いてきました。
全快されれば、近江の里山と 行きましょう。
hirasuzukaさんもそろそろインフルエンザから快復される頃かと思っておりました。
甲西富士もシルエットの綺麗な山ですね。またご一緒させて頂けるのを楽しみにしております。
やまねこさん 流石にじっとしてないですね
確かに動いた方がいいのでしょうけど〜
松葉杖をもうストックに換えて
お医者さんもタジタジですね。
春の足音を聴きながら
前向きに、少し用心もしながら頑張ってください。
hobbitさん コメント有難うございます。
まだわずかな距離を歩くにもとても時間がかかるのですが、少しずつ歩いてみました。
こうして歩く場所を改めて探してみると、意外にも琵琶湖の湖畔にはあちこちに遊歩道がいろいろあるのに、普段は車でさっと通りすぎてしまって見過ごしていたことに思い至りました。こうした場所に目を向けることが出来るのもまさに怪我の功名なのかもしれません。
もう春一番の便りが聞こえてきました。今年の冬は短そうですね。
膝の具合はどうですか? 聞くよりレコ見たら解りますけど?? ギブスも取れたのですね。無理して後遺症が残らない様に。
車の運転は奥様? 湖北だと結構距離もありますよね。
松葉杖をダブルストックに替えて…
松葉杖って結構安定しますよね。昔々に足首が甲の方へ曲がってしまって一度だけ腓骨骨折した時に使いました。
数年前の正月に保津峡駅からつつじ尾根を登っていると松葉杖をして登っておられる方がおられてびっくりしたことを今思い出しました。
温くなるころには杖も要らなくなるのかな? お大事に。
ののさん
ご心配有難うございます。この日はののさんは綿向山で絶好の天気に恵まれていたようですね。湖北のあたりは天気予報が外れて写真のとおり曇り空だったのですが、高島のあたりからは霊仙から雨乞のあたりまで晴天で綺麗に見えておりました。
>松葉杖って・・・
脚の怪我した部位にもよるのでしょうが、私のような膝蓋骨の骨折の場合には体重がかけられないことよりも膝を曲げることが出来ないことに問題があるようです。患側の足を踏み出す時に二本の松葉杖を使うのですが、それをダブル・ストックに持ち替えてもさほど問題がないことがわかりました。問題は階段の昇降で、昨日からはようやく登ることは出来るようになったのですが、降りるのはまだまだのようです。
>車の運転は奥様?
そうなんです。この日は長距離になりましたが、よく運転してくれました。
>数年前の正月に
それは誰がみたって驚きます。しかも、よりによってつつじ尾根!
>温くなるころには・・・
そう願いたいのですが、もしかして、もう温かいかも
果たしてあとどのくらい雪が降るのか・・・
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