《台湾》南湖大山・南湖渓
- GPS
- 80:00
- 距離
- 21.5km
- 登り
- 2,328m
- 下り
- 1,779m
コースタイム
5/6台北自由行動、周文先生に会う 5/7帰国
天候 | 概ね曇、時々雨、たまに晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2005年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
1985年に太魯閣峡谷から陶塞渓を溯行し、南湖大山から思源へ下った時に尾根から南湖渓に大きな滝が見えた。いい谷のようだが短い。たぶん渓中2泊3日の谷だろう。元気一杯の30代だった当時、わざわざ台湾へ来るには「もったいない」谷だった。「老後の谷に残して置こう」と笑ったものだ。
それから20年、私もついに老域に達したようだ。60歳目前の私にとって2泊3日の谷が精一杯、南湖渓は実に手頃な谷になっていた。この年は私としてはとても燃えた年で、3月に大安渓を大雨で追い返されて転進して阿里山の特富野渓を2泊3日で登った。3月で自信をつけて、その勢いを駆っての挑戦だった。
4月30日 空港に台北溯渓倶楽部の出迎えをいただき、夜は歓迎会を開いていただいた。
5月1日 曇 台北を車で思源へ行き、思源から林道を約1時間半歩いて林道終点に至り、泊とした。
この林道脇には蕨がたくさん生えているので、それを採って重曹で灰汁抜きしてマヨネーズで和えてみんなに食べてと勧めるが、毒じゃないかという不信感があったようで誰も相手にしてくれなかった。結局1人で食べた。
2日 曇 いよいよ南湖渓を目指して山道を登り始める。南湖渓へはここから尾根に登って多加屯山(2795m)を越えて行かねばならない。多加屯山の頂上付近は箭竹(ヤタケ)が密生していて、ちょうどこの時期は筍の旬だ。筍を採りながら行く。木杆鞍部より中央尖山登山道を南湖渓へ下る。
南湖渓は標高2200mで明るい河原だった。先行していた千々岩等が声を上げた。茶色の蛇が岩の間に逃げ込んだそうだ。このような標高に蛇がいるのに驚いた。左岸台地の樹林に小屋があった。南湖山屋である。ソーラー発電機を備えた立派な小屋である。沢田は以前に中央尖山に登った時に泊まったことがあるとのこと。
昼食後いよいよ溯行を開始した。滑滝の断続する谷を1時間も行くと両岸が迫ってきて廊下になった。2m滝の渕に行き詰るが、千々岩が左岸の壁を10m登ってロープを投げてくれた。反対側へ懸垂で下って渕の上に出た。ここから谷は完全なゴルジュで悪そうだ。私は沢田、呉牡丹を連れて左岸より巻く。他の元気者達はゴルジュへ突っ込んで行った。ゴルジュは5m滝、10m滑、1mで終了し、そこで合流した。広い河原で左岸より大きな支流が出合った。左の本流へ入った所で泊とした。多加屯山で採った筍でスープを作り、台湾腸詰を焚火で焙って舌鼓を打った。
3日 晴 しばらく河原で快調に飛ばす。右岸の樹林には猟小屋が見える。左岸にボロボロの高さ200mの垂壁が聳えている。これは登山道から見える壁だ。ここを過ぎると谷は岩が多くなり、ついに巨岩帯となった。谷が右に屈曲すると、大滝があった。100m近い立派な滝である。滝の下まで見に行く。
さてこの滝の巻きであるが、左岸からも巻けそうだが、取り付きはいいがどうも上部が悪そうだ。右岸はさっきの屈曲部から逆層の壁を上がれば上部は簡単そうである。意を決して右岸ルートに取り付く。逆層の壁を2ピッチ50m登ると樹林に達した。滝近くにルートがないか千々岩に偵察してもらう。滝に食い込めるルートはなかったが、お土産に20センチもある大きな岩茸を採ってきた。凹面の樹林を登るが、滝との間にリッジがあり、その下に沿って400mも登るとようやく壁を登れる凹角があり、そこからリッジの上に出た。リッジから滝の上を覗くと、巨岩が累積した連瀑の明るい谷で、真下に10m、少し上に20m滝が掛っている。斜面をトラバースして谷芯を目指す。谷が狭まった中に垂直に落ちる25m滝があり、うまい具合にこの滝の釜に降り立つことができた。滝を巻いて上に出た所で遅い昼食とした。
すぐにまた悪場となった。斜滝8mの上で太い流木を渡って滑6mを越え、垂直の3mを攀じ登る。大岩が引っ掛かっていてその下に小さい穴が通じている。淑女の方々はそこから登って行ったがお尻が詰まって四苦八苦の一場面もあって大笑い。谷が少し開けたので廊下の手前で泊とした。
4日 晴 すぐにゴルジュになる。水に腰まで入ると足が痺れるように冷たい。それはそうだろう、標高2800mもあるのだ。しばらく傾斜の緩い廊下状の谷が続く。周りはいつのまにか針葉樹林となり、石楠花が美しい。石楠花はピンクと白の2種類が咲いている。雰囲気は紀伊半島の大峰の谷のようで気に入った。右岸に3、4人は泊まれる岩小屋があった。人が使った痕跡もあり、猟に利用されるのであろう。地図に「石洞」とあるものでないか。10m前後の滝が数個現れるが難しいことはない。
見上げるような左岸の大崩壊が見えて来た。谷はその下に溝となって食い込んでいる。その中にもろい滝が数個続き、奥の屈曲点に壁に囲まれた50m位の滝が見える。ぼろぼろで直登は不可能だ。太陽に照らされて異様にぎらついている。この凄まじい雰囲気、迫力はまるで白山の谷だ。大峰に続いて白山、実にバラエティに富んだ谷である。手前の10m滝を右岸より巻き気味に登り、左岸を20mほど登ってから、草付をトラバースして50m滝の釜に落込むルンゼの中途に入り込んだ。ルンゼを登り、鞍部で尾根を越え、小さい流れを渡ってその先から側壁を懸垂で滝の上に下りることができた。滝頭の遙か彼方に雪山山脈が見える。景色を満喫しながら昼食を摂った。まだ南湖山荘まで標高差200m残っている。ここからは明るい谷で巨岩と斜滝が続いている。この明るさと急峻さは中央アルプスの谷だな。大峰、白山、中アと本当にいろいろと楽しませてくれる谷である。息が苦しい。谷が急峻になったこともあるが、標高3000mを越えて酸素不足もありうることなのだ。一旦平坦になるが、さらに滝が続いている。女性陣を連れて左岸から巻くことにした。左岸の樹林に入ると、自然調査の最中なのであろう、ロープで区割りしてあって人臭い。踏跡もある。踏跡を辿ると樹林限界を越えて荒涼とした瓦礫の世界になった。振り返ると谷に固執していた男性陣も涸れてしまった谷から離れて左岸の斜面に登って来るのが見えた。そして広い圏谷の底にある南湖山荘が見えた。昼食から苦しい登り2時間半でようやく南湖山荘のある広い圏谷に着いた。今日は一日登りがきつかった。南湖大山に登ろうとはだれも言い出さない。ともかく疲れた。
5日 雨 今日は下山である。長い下りなので、朝5時半に小屋を発った。天気が悪く景色は全く見えないのが残念。いや、この時期ならばこれが当たり前であろう。ぼちぼち梅雨に入る時期にもかかわらず一昨日、昨日と谷の核心部を登っていた時に晴れていたのが僥倖というべきか。
雲稜山荘まで下るととうとう雷まで鳴り出した。そのため雷が去るまで1時間も小屋で停滞した。こうして思源に午後4時前に到着し、待ってくれていた運転手さんの心づくしの甘いぜんざいにほっと息をついたものだった。
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