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Yamareco

記録ID: 2070
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沢登り
尾瀬・奥利根

奥利根/利根川水系 水長沢

2006年08月12日(土) 〜 2006年08月13日(日)
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kamog syosi その他3人

コースタイム

8/11 東神奈川21:00=(首都高・圏央道・関越)=小出IC=
   2:45奥只見/鷹ノ巣(平ケ岳登山口)(車中泊)
8/12 7:15起床 鷹ノ巣7:45(原田車1台デポ。後藤車1台で奥利根へ移動)=
   小出IC=(関越)=水上IC=10:50矢木沢ダム駐車場
   11:15奥利根湖を奥利根マリーン高柳さんボートで第1回目渡船−
   11:55同第2回目渡船−12:10小穂口沢出合バックウォーター12:15−
   利根川本谷右岸巻道−12:45水長沢出合13:00−水長沢−15:20ハヤ止の滝
   (スノーブリッヂを左岸から高巻)15:45撤退決定−17:00水長沢出合(幕営)
8/13 7:00起床9:00−利根川本谷−9:40小穂口沢出合9:50=(渡船)=
   10:10矢木沢ダム11:00=11:45奥利根マリーン高柳さん宅(慰労会)14:10=
   水上IC=小出IC=17:00鷹ノ巣平ケ岳登山口(デポ車回収)17:20=
   小出(入浴)=スーパー買い出し=道の駅(慰労会・車中泊)
8/14 道の駅7:50=小出IC=関越=練馬IC=環八=第三京浜=12:30東神奈川
天候 8/12 曇一時暴風雷雨のち薄晴 夜−晴一時小雨
8/13 晴時々曇
8/14 晴時々曇
過去天気図(気象庁) 2006年08月の天気図
ファイル
非公開 2070.xls
計画書
(更新時刻:2010/07/28 08:54)
矢木沢ダムサイトから奥利根源流へはボートによる渡船しか入渓手段はないと言ってよい
2006年08月14日 13:33撮影 by  DMC-FX01, Panasonic
8/14 13:33
矢木沢ダムサイトから奥利根源流へはボートによる渡船しか入渓手段はないと言ってよい
奥利根の主、奥利根マーリンの高柳さん。渡船は手数料で3万円かかります。それだけ経費がかかるのだから仕方ないのです。
2006年08月14日 13:34撮影 by  DMC-FX01, Panasonic
8/14 13:34
奥利根の主、奥利根マーリンの高柳さん。渡船は手数料で3万円かかります。それだけ経費がかかるのだから仕方ないのです。
水長沢出合
2006年08月12日 12:47撮影 by  DMC-FX01, Panasonic
8/12 12:47
水長沢出合
まだ1kmも進まないうちに雪渓が・・・
2006年08月12日 13:40撮影 by  DMC-FX01, Panasonic
8/12 13:40
まだ1kmも進まないうちに雪渓が・・・
ハヤ止ノ滝にかかるスノーブリッジ
崩壊寸前のため潜ることは叶わず、左岸高巻きを試みるが・・・
2006年08月12日 15:43撮影 by  DMC-FX01, Panasonic
8/12 15:43
ハヤ止ノ滝にかかるスノーブリッジ
崩壊寸前のため潜ることは叶わず、左岸高巻きを試みるが・・・
スノーブリッジから出る靄が天然林を包む
御伽の森にいるみたい
2006年08月12日 15:44撮影 by  DMC-FX01, Panasonic
8/12 15:44
スノーブリッジから出る靄が天然林を包む
御伽の森にいるみたい
下流でこれ程雪渓が多いのであれば抜けるのに相当な時間がかかると判断し撤退。
水長沢出合で焚き火宴会となる。
2006年08月12日 20:32撮影 by  DMC-FX01, Panasonic
8/12 20:32
下流でこれ程雪渓が多いのであれば抜けるのに相当な時間がかかると判断し撤退。
水長沢出合で焚き火宴会となる。

感想

沢屋なら一度は憧れる奥利根源流域。
一昨年は無数に広がる広大な奥利根源流の中でも主人である
利根川本谷を好条件と運に助けられて完全遡行に成功した。
今年はその源流域でも「優しい」と表現される名渓「水長沢(みながさわ」を目指した。

13日・・・本来なら水長沢核心を遡行しているはずの我々は
みなかみ町外れにある奥利根マーリンT柳さんのご自宅でビールをご馳走になっていた。
何だか「夏休み〜」を実感できるような暑い日差しと風と蝉の声の中
奥利根の主ともいえるT柳さんの軽快で屈託のない話に身を乗り出して聞いていた。

「俺の親父が言ってたさぁ。80年生きてきてこんな大雪は初めてだとよぉ!」

そうなんだ、やはりそうだよなぁ。
敢えなく敗退せざるを得なかった今年の奥利根。
予想はしていたが、まさかあんな下流部から通過の決断を迫られる
スノーブリッヂ(SB)が谷を埋めているとは考えが甘かった。
それに釣り氏を除けば、奥利根遡行の沢屋第1号がどうも我々らしい。

8月11日。残雪の多さも懸念材料であったが、それよりも12〜13日は
上空の寒気流入と太平洋側からの湿風吹き込みにより、全国的に大気状態が
不安定になるという予報の方が気になった。
14日になればこの寒気も抜けるという。
どうするか?
現地判断で、12日は下界で待機し、一日遅れで入渓し、13日は比較的安定している
午前中に幕営適地まで急ぎ、安定する14〜15日で一気に平ケ岳を越えるのが
一番成功しやすいだろうな、とメンバーにも相談してみたい。
夜の関越自動車道では群馬県に入った頃から、時々落雷の鮮明と雷雨が断続する。
(あ〜やはりそうするしかないなぁ)
未明3時前に奥只見の鷹ノ巣(平ケ岳下山口)で、3名と合流。
日本海側は意外と星が見えていたりする。

8月12日。半分「今日は停滞日」という気持ちを抱きながら、
H田さんの車を下山用にデポし、KAMOG車で山の反対側の奥利根を目指し出発。
と・・・小出に降りる先には、地獄の入口と思わせるような真っ黒い雲が
こちらに迫ってきた。
寸断の余地もなく、もの凄い暴風雨圏内に。まるでこれは大型台風のまっただ中!
小出ICから関越に乗ってからは、ただの雨に治まったが
もう心の中では「今日の入渓はなし」という腹づもりになっていた。
奥利根マーリンT柳さんの携帯に電話してみる。
通じない代わりに留守電が入っていた。

「KAMOGさ〜ん、約束通りダムサイトで11時に待ってまーす」・・・だって。

行かない訳にもいかず、とりあえず矢木沢ダムへ向かう。
曇天だが雲は高く薄い。雨はほとんど止んでいるし、大気も意外に安定している。

「今日は水長沢出合まで行ってみましょう」
当初は出合を越えて、魚止めの滝付近に幕営するつもりであったが。

「モリさーん(T柳さんの愛称)、もし撤退する時は船お願いしますよ」
「あー、バックウォーター辺りにいる釣り氏さんに伝言すりゃぁ大丈夫だぁ」

T柳さんに記念写真を撮ってもらい、小穂口沢と利根川本谷の間にある巻き道を使い
本谷右岸を歩く。
この巻き道は初めて使ったが登山道並にしっかりした踏み跡だ。
20分ほど歩き登りに入る手前の低くなった所で本谷の河原に戻った。
水長沢出合まではきれいな砂利河原を膝くらいの渡渉を繰り返しながら一投速で着く。

天候は予報が嘘のように荒れる気配が感じられない。
「午後のこの時間でこうなら今日は安定しているから、予定通り魚止め行きましょう」
ということになる。
本谷ほど広くはないが、平凡な河原とゴーロ帯の水長沢も開放的。
今年の降雪の多さだろうか、倒木の残骸で谷は少々荒れている印象がする。

「へっ?」
まだいくらも来ていない広い河原に早くも崩壊した数mの白いモノが現れた。
同じくらいの高度でも、利根川本谷のシッケイガマワシには大きな雪渓が残ることが
多いけれども、水長沢でこの位置に出てくるとは・・・。嫌な予感。

そして谷が少し狭まった所で2個目の雪渓。
これは谷をほとんど塞いでおり、天井がだいぶ低くなったブリッヂ状になっていた。
潜ったら死ぬな。さて弱点は・・・自然と左脇を小さく巻くことにする。
ブッシュを掴みながら雪渓と同じ高さの約10mを登りトラバースして越える。

みんなが越えたその時!
まるで雷が落ちた時のような「ドカン!」という音響。
「えっ、何?」
振り返るとSBの末端1mがブロック状に崩壊した音であった。
「コワ〜〜〜」

まだACYのO野ちゃんも休憩中に竿を出す余裕はあったのだが
それもしばらく歩いた谷が狭く左に曲がろうとする手前あたりで
かなり嫌〜な気配で吹っ飛ぶ。
曲がった向こう側から、まるで冷凍庫から流れ出すような白い冷気が
ゆっくりと漂い出したのだ。

「来たよぉ〜来た来たぁ」
曲がってみれば先ほどのものより数倍はあるSBが大きな倒木をと共に
行く手を塞いでいたのだった。
遠くからでは冷気で中も見えないので近づいてみる。
出口は見える。長さは10m程度であろうか。
ブリッヂの形状はどうであろうか?
きれいなアーチ型ではない。真ん中天井がだいぶ落ちてきた台形状。
橋桁は?・・・左側は出口まで窓はないが、右側の橋桁は真ん中に窓ができており
手前のやつはかなり不安定。
そして厄介なことにちょうど真ん中天井に亀裂が入り始めているではないか。

「1/5だね」誰彼ともなくそんな言葉が飛び出す。
そう、5人潜れば1人は落ちる可能性がある。そんな感じなのだ。
また、仮に潜れたとしても、どうも出口先にナメ滝があるようだ。
しかもSBの通過時刻としては最悪の午後だ。
O野ちゃん先頭に左岸側(右側)の高巻きを試みる。

「行けるかもしれなーい」
上部からO野ちゃんの声。慎重派の彼が言うのだから結構高い確率で抜けられるだろう。
20mほど登った辺りから急なザレ場をトラバースし
先の樹林帯に行けるかもしれない。
何となく(釣り氏のものか?獣道か?)踏み跡もその先上部に登っているが
これは大高巻きだ。
SBを見下ろすと、中央部分はメルトダウンするようにかなりへこんでいて
もういつ落ちてもおかしくない状態だった。
その先は3mくらいのナメ滝と釜、さらにすぐ先に3m滝が待ちかまえている。
遡行図で確認するとここがどうやら「ハヤ止めの滝」らしい。
魚止めの滝はまだまだ先。

(こんな下流部でこのような状態じゃ、この先は・・・)
みんなの意見を一人一人確認してみる。
大同小異であった。
たしかにワンポイントは抜けることはこのメンバーなら可能であろう。
ただ1週間くらい掛ければね。
元神田山の会リーダー部長のH田さんも言う。
「抜けられると思うけど、1つのSBに半日かかることもあるだろうね」

撤退。
灌木支点で懸垂下降を開始。
少しは後ろ髪を引かれながらも何となくホッと安堵が支配する。
撤退を決めた開放感からであろうか
西に傾き始めた淡い午後の陽光が
谷を漂う冷気と幽玄深山の緑を溜め息が出るほど美しく描き出していた。

午後5時、どこよりも快適な水長沢出合まで一気に下る。
初日食担のためメニューをずっしり詰め込んだザックがとても重かった。
(20kgはあっただろう。沢屋に軽量化はあまり関係ない文化があるのは
ちょっと通常の登山者と違うところかもしれない。
ま、時と場合によるけどね)

薪には事欠かないし、樹林帯の中の幕営地は平で10人は寝られそうだ。
タープを張り、syosiさんが火付けになる。
今晩のメニューはシャブシャブなのだ。
豚肉、ササミ、スープ餃子、白菜、青梗菜、カボチャ、冬瓜、キノコに麩、
そしてα米にシャブタレ2種。
渓は食を惜しまない、とは個人的に信仰している浪漫工房の高桑信一さんの信念。
本当は渓の中で自己調達するものだけどね。

焚き火を囲んでの宴も終わり、hiraさんと僕は焚き火の傍らで寝ていた。
22時頃だろうか、hiraさんが「KAMOGさん、雨だよ!」の声に起こされ
一旦タープへ逃げ込んだが、それも一時的なものだった。
トイレに一度起きると夜空を月が煌々と輝いている。
くすぶり掛けた焚き火を再度起こしていたり
再燃した火をボーッと眺めていたら
空はそろそろ白み始める。
再び火の傍らでシュラフでうたた寝をしていたら
下流から早くも単独の釣り氏が上がってくる。
あとでT柳さんに聞いたら、この辺では屈強の釣り氏の一人だと言う。
水長沢の雪渓情報を伝えたらすぐたいそうな足取りで谷に消えていった。
朝の二度寝ほど心地よいものはなかった。

今日は下るだけなので皆ゆったりモードの2日目。
しかし、奥利根湖のバックウォーターへ戻っても
果たして釣り氏を介してT柳さんに迎えの連絡が行くのは夕方ではないだろうか?
ま、そうなれば小穂口出合でもう1泊すればよいことだ。

出発して本谷の河原を下降していたら
尺上は悠にある大岩魚が悠々と泳いでいる。
O野ちゃんの食指が動く。
「じゃ先に行っているよぉ」

小穂口沢出合に着いてT柳さんへ迎えの伝言を頼もうと
ボートで来る人たちに岸から呼びかける。
2艇目に「いいよー」と言われヤレヤレとザックを投げ出すと
そのボートのお二人が何やら話し合いすぐ戻ってこられた。
何と乗せていってくれる、という!
大型艇なので5人にザックも十分乗せられた。
ありがたやありがたや。
渡船できても今日の夕方だと腹をくくっていたのに
こんなに早く下山できるとは。
聞けばモリさん(T柳さん)のご友人だそうで
何回もお辞儀をして別れました。

矢木沢ダムは一部ダムを見下ろす地点だけドコモは携帯通話が可能。
早速T柳さんに電話したら「よかった!内に寄ってけや」
そんな訳で午後はT柳さんのマタギ話やら熊捕りの話やら
いろんな話を聞けておもしろかった。

午後2時過ぎ名残惜しみながらもT柳さん宅を後にして
平ケ岳登山口にH田さんのデポ車を回収へ向かった。
小出IC近くの温泉でサッパリし
大型スーパーで買い出しをして
道の駅で残った食材を調理する。
今晩はO野ちゃんのチャーシュー丼。
玉葱と鰹節を一緒に添えるのが斬新でなかなか旨い。
夜の宴ではsyosiさんの大学時代ワンゲルの話を聞く。
自分の大学時代とほとんど同じ慣習。
「ああいう学生時代の部経験があるのとないのとでは違うねぇ」
などとシンパシー。
今晩も月は煌々と空を染め上げていた。

3日目、まだまだ混雑渋滞している関越下りを横目で見ながら
ほとんど渋滞もなく帰路に着いた。

敗退はしたけれども、そのこと自体は正解だ。
それにこのような多雪年の状態を経験できたことは
今後も大きいな渓と付き合うためにはとても良い経験であった。

悠久の奥利根よ、また行くね。

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