大畠谷〜オバタケダン〜白尾山☆新雪の美山の縦走路
- GPS
- 05:42
- 距離
- 15.6km
- 登り
- 909m
- 下り
- 988m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
新型コロナウイルスの感染の拡大に伴う安倍首相の要請を受けたためか今週の金曜日に予定されていた愛知県への出張が直前でドタキャンとなる。そのお陰で突然、平日に山行の機会が転がりこんで来た。前日から京都・滋賀の北のあたりでは降雪が予想されるので、野坂山地の山に出かけることを考えるが、家内が車を使う予定があるので車を使うことがままならない。そこで思いついたのは美山のオバタケダンから白尾山への縦走であった。
オバタケダン、このなんとも奇妙な山名を有する山は若丹国境の知名度も低い地味な山ではあるが、このオバタケダンからはタケガダン、鉢ヶ峰、白尾山へとピークを繋ぎながら、延々と南に伸びる尾根がある。この尾根の魅力を知ったのは昨年の晩秋に、鉢ヶ峰の東の谷にある不動の滝から鉢ヶ峰を経て三ヶ谷山へと周回したの時のことだ。鉢ヶ峰から北に伸びる尾根には快適な自然林が続いており、尾根上のジャンクション・ピークp727とタケガダンとの間の未踏区間を辿ってみたいと思っていたのだった。出来れば雪の季節にと。
この尾根を縦走するためには美山の深奥部の知見まではバスでアプローチするしたいところであるが、知見にバスでアプローチ出来るのは平日に限られる。土曜日のバスは途中の?までの運行であり、旧知井小学校からのバスに乗り継ぐことが出来ない。日曜日は旧知井小学校から知見までのバスは運休である。
京都駅発6時37分発の山陰本線に乗り、日吉駅からは美山に向かう南丹市営バス乗り込んだのは私一人である。車窓に映る光景には雪の気配はなかなか感じられなかったが、バスが美山に入ると途端に周囲の山々には雪が見られるようになり、かやぶきの里では茅葺きの上にも雪が載っている。
旧知井小学校前から知見へと向かうバスは大型のワゴン車であった。運転手によると地元の小、中学生以外が乗ることはまずないらしく、乗客がいること自体が驚きの対象らしい。この時期に敢えて登山、しかも八ヶ峰ではなくオバタケダンから白尾山までの縦走というかなりマイナーなルートなので、それも尚更のようだ。しかし運転手はこの尾根はすぐにピンときたようだ。運転手によると小学生高学年の時、知見の友達を訪ねるのに数人でこの尾根を縦走して知見まで歩いたとのこと。そして帰宅後は父親にかなり叱られたとのこと。話だけ聞くと賞賛したくなるような恐るべき小学生達である。
運転手のお話をお伺いしてるうちにすぐにも知見に着き、大畠谷へと入ってゆく林道の入り口でバスを下車する。運転手さんが以前、山を越えて降りて来たのはこのあたりだと左手の尾根を指す。
林道を入ると右手の鬱蒼とした杉林の中に神社が現れる。八幡神社とある。境内にはひときわ大きな杉の大樹が聳え立ち、あたりにスピリチュアルな雰囲気を与えているのだった。
林道に沿って大畠谷の奥へと入っていく。林道の終点を過ぎるといよいよ沢沿いを進むことになり、徒渉を繰り返しながら谷を進む。岩の上は雪は融けてはいるものの濡れており、滑りやすく、慎重に足を運ぶ。沢沿いにはとこどどころに白いビニールテープがつけられている。
やがて谷は狭隘なV字谷となり、沢沿いを進むのが難しくなるが、天の助けとばかりに、左岸の斜面を登ってゆく送電線巡視路の明瞭な踏み跡が現れる。沢に降りて、少し先に進んで見るが、ここからは沢靴でなければ先に進むことは難しい。正面の小滝の奥では右手から流れ落ちる二段の滝が飛沫を上げているのがわずかに見える。この滝を高巻くのも容易ではなさそうだ。
送電線巡視路に戻り斜面を登ると、巡視路は左岸の斜面を谷沿いにトラバースしてゆく。地図でも谷が狭隘となっているが、谷からは滝音が聞こえてくるのでいくつかの滝がありそうだ。巡視路のすぐ左手には5mほどの滝が現れる。
左岸の巡視路を辿って滝を過ぎるとそれまでとは谷は一変して大きく谷が広がり、沢は植林地の中を緩やかに流れる平流となる。送電線巡視路はいよいよ谷を離れて右手の斜面を登ってゆくが、沢沿いにも微かな踏み跡が続いているようだ。
タケガダン、オバタケダンから若丹国境尾根の自然林の雰囲気からするとこの大畠谷の源頭部にも同様の自然林が続いていることを期待していたが、この植林は意外であった。谷の奥でいくつかの小さな支谷に枝分かれてしているところで正面の尾根に取り付く。
尾根を登りつめるとすぐにも下生のない山毛欅林が広がる。すぐ左側にピークが目に入ったところでそれがオバタケダンのシルエットであることに気がつく。オバタケダンに至る尾根を登っていたつもりであったのだが、実際にはオバタケダンから北側に続く若丹国境尾根のca660mに至る尾根であったことに気がつく。しかし、この勘違いは怪我の功名でもあった。というのも少しでも雪の若丹国境尾根を歩くことが出来るからである。
この若丹国境尾根の山毛欅林の雰囲気は素晴らしく、このまま八ヶ峰を目指して東進したくもなる。しかし、折角の平日の山行の機会にここまで公共交通機関を利用して来たので、それはまたの機会にとっておこう。
国境尾根はオバタケダンが近づくに積雪が深くなり、深いところではくるぶしを超えるようになる。この地方では一晩で数十センチ積もることは全く不思議ではない。しかし、昨晩は降雪した時間がそれほど長くはないと思われたが、その割には結構積もったのではないかと思われる。
オバタケダンの山頂に立った時には山頂から西側が大きく眺望が開かれていることはわかったが、霧に眺望を遮られていたので、果たしてどのような光景が広がっているのか大変、気になっていた。真っ先に視界に飛び込んできたのは着雪した杉の幼木越しに長老ヶ岳へと続く長い尾根だ。その手前にあるのは念仏、天狗杉と思われる。右手に目を向けると尾根の先に西側が植林に覆われた鉢ヶ峰が目に入る。白尾山は鉢ヶ峰に遮られて見えないようだ。雪が自然林の斜面を白く彩っているせいで植林地とそうでない斜面との間のコントラストが際立っている。
オバタケダンの西側は杉の植林が上ってきているがタケガダンへの尾根に入ると快適な自然林の尾根となる。山頂の南側からは東の方角には重畳と連なる北山の山並みの彼方に一際白く冠雪した山が目を惹く。武奈ヶ岳だ。しばらく前に北山の八丁平の周辺から眺めた時にはほとんど雪が見られなかったことを思い出す。昨夜からの降雪は一夜にして山の景色を変えるには十分であったようだ。
タケガダンの山頂から尾根を南に辿ると掘割の古道が現れる。道沿いには西畑越えと書かれた道標が架けられているが、西畑と名田庄をつなぐ古道であったものと思われる。前回、このタケガダンに登ってきたのはこの古道を辿ってきたのだが、東側の斜面をトラバース気味に降ってゆく古道と別れて尾根筋を南に辿る。アカマツの樹が多く見られる尾根上には踏み跡は見当たらず、馬酔木の小さな藪を避けながら進む。積雪はそれほど多くはないように思われるが、それでも雪は林床に生える馬酔木の低木を押さえつけているようである。
p727との間にはp637という小さなピークがあるのだが、このピークに差し掛かると東側から植林が登ってきている。タケガダンとp727との間ではそれぞれのピークで見た自然林の尾根がずっと続いているものと期待していただけに、いささか残念ではあった。鞍部を通り過ぎてp727への登りに差し掛かると期待通りの自然林となる。
p727からは鞍部から登り返すと再びなだらかな尾根が続く。尾根上の小ピークca760mで尾根は東から登ってくる尾根と合流すると右手に大きく向きを変えることになる。その手前では尾根は両側に大きく展望が開ける。東には再び武奈ヶ岳、北西の彼方には青葉山を遠望する。もう少し雪が降れば樹々にもしっかりと着雪が見られたのだろうが、贅沢をいうものではない。これだけの新雪の上を歩くことが出来るだけでも上出来と考えるべきだろう。
尾根は樹々の間隔が広いせいもあり、広々とした感じの尾根を鉢ヶ峰にかけて緩やかに登ってゆく。鉢が峰の手前では再び北側に眺望が開け、オバタケダンとタケガダンを望む。これらの山の展望はここが見納めとなる。
鉢ヶ峰は前述のように西側から植林が上がってきており、山頂も眺望のないところだ。白尾山にかけては展望のない混合林の単調な尾根が続く。山頂の手前になると西側の斜面が広く伐採されており、大きく展望が開け、再び頭巾山から長老ヶ岳への長い稜線を望むことが出来る。しかし同時に切り開かれた山肌を目にするとこの展望も一概には喜べない気がしてしまう。
根本から二本に株立ちしたアカマツの木がある白尾山の山頂からは北東や南側にも眺望が広がる。北側には鉢ヶ峰と八ヶ峰へと至る若丹国境、南側には城丹国境の山と愛宕山を展望することが出来る。しばし、この贅沢な展望台からの眺望を堪能すると、かやぶきの里に向かって下降する。
尾根を下るとかやぶきの里の手前で、ジオラマのようなかやぶきの集落が見える。かやぶきの里に降りると丁度、日吉駅行きのバスが来るところだった。バスに乗り込んだのはやはり私一人であった。
この日の心残りは「美山おもしろ農民倶楽部」に立ち寄る時間がなかったことである。また次回の楽しみにとっておこう。
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