左門岳 迷走のヤブ山



- GPS
- 05:21
- 距離
- 6.6km
- 登り
- 574m
- 下り
- 776m
コースタイム
- 山行
- 5:12
- 休憩
- 0:09
- 合計
- 5:21
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ヤブです。かつての踏み跡をよくよくたどれば行けますが、初めて行く場合はルートファインディング力が要求されます。 |
装備
個人装備 |
ヒル除けスプレー
|
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感想
この記録は個人的なものとしてアップするつもりはありませんでしたが、今後もしこの山を目指す人があれば、少しでもお役に立てればと思い、あえて軌跡だけでもと載せました。左門岳に登って行方不明となったご夫婦を探しに参加した時の記録です。たまたま地元でこの山に過去何度か(9回)登ったことがあるということで警察、消防、地元の山岳救助隊と一緒に民間人という立場で参加しました。今後また同じような道迷いが起こることのないように少しでも参考になれば幸いです。日曜日に登られ、月曜日になっても帰宅されない、そして火曜日に自動車が普通停められるアスファルトの終点でなく、荒れた作業道の終点で発見。そして、水曜日の捜索に参加という流れです。参加が決まった火曜日の夜ヤマレコで最近の左門岳で検索するとbさんKさんが「モノレール尾根(仮称)」の手前の右俣へ入り込み、間違いに気づいて本谷に戻る、というケースが分かりました。bさんもKさんもヤブ山のベテランです。初見の山でないにも関わらず、思わず誘い込まれるように入り込んでみえます。それらの情報を得て、この右俣を詰めることにしました。現地では多くの捜索班に分かれて、可能性のある沢を中心に詰めていきました。高山署の山岳警備隊は「ヘルメット」の奥で本谷を詰める班と旧道と本谷の間の沢を詰める班に分かれて頂上で合流します。さて、私がいた班は右俣を詰め、さらに途中で枝道を尾根に上がる班と分かれて、5人で最後まで沢を詰めることになりました。実はこの右俣は昔『山旅徹底ガイド』という本に残雪期として紹介されていました。私も残雪期に詰めて、途中から右手の尾根に上がり1156に出て頂上に向かい、下山時にモノレール尾根(当時はモノレールはありません)を下りました。無積雪期にこの右俣を詰めるのは私にとっても初めてだったので捜索の記録を残すためにも途中でヤマレコを起動させたというわけです。二俣へ来てみて皆さんが記されている通り、確かに右俣には木に赤いテープが巻かれ、沢沿いには確かな踏み跡もあります。本谷より明瞭なぐらいです。入り込みたくなるのも無理ありません。この右俣は最後まで滝など悪い所はなく、足を濡らすことなく、しかも適度に赤テープなどが残置され、なんとか行けます。もちろん簡単ではありません。そして郡界尾根に出た、1156地点の西に出た、と思い込んでいたのですが、昼食休憩後、左門岳へ行くためには左折して北上すればよいと考え、出発しましたが、どうも下っていくのです。念のため、ヤマレコで確認すると目指す方向は南を向いています。え?と思い、さらに腕時計で確認するとやっぱり真反対。かすかに樹間越しに確認すると前方左に見えるはドウノ天井方面。そこで、少し戻って、本当の「郡界尾根」に出たという次第です。ログを見ていただくと、右俣を詰め上がっていき、郡界尾根に出る直前で西に向かって、モノレール尾根の頭の辺りに出て、少し迷走しているのがお分かりかと思います。右俣を詰め上がって行く時に少しでもヤブが薄い所を探しているうちに西側に詰め上がってしまったということです。ネマガリもわずかに漕いだだけです。稜線に出る時に念のために赤布をつけました。こうしないと下山時にどこから下るか分からなくなるからです。ところが出たところが郡界尾根にモノレール尾根がぶつかる少し手前だったというわけです。モノレール尾根にも古い切り開きがあります。実は後にある方の投稿があり、右俣でなく、このモノレール尾根そのものに残された赤テープに誘いこまれ、登り詰め、その日は引き返したということでした。そして遭難されたご夫婦もどうやらこのモノレール尾根を登られたようです。(まだ確かではありませんが)
そして本来の郡界尾根を少し行くと一度下り、再び小さなコブをいくつか越えて進みます。根上檜などがあります。この尾根は昔の植林作業のための刈払い跡が残り、ひどいヤブ漕ぎはしなくても歩けてしまいます。おそらくこのことが下山時の迷い込の一因になってしまったかもしれません。
そして山頂手前に左側から「ヘルメット」から登られてくる南西尾根からの道(植林作業のための作業道)と合流します。この南西尾根こそ、今でももっとも多く登られるコースなのです。古いガイドブックにも紹介されてきたコースです。(それとて夏草が茂り、けっして簡単に行けるような山道ではありません。倒木もあります。)そこから頂上まではいきなり背を越すネマガリダケのトンネルになりますが、足元は踏み跡が残っています。身をかがめて進めばじきに古いブルーシートが残された広場に出て、さらにほんの少し進めばまったく視界の効かない山頂というわけです。山頂で山岳警備隊と合流しましたがいずれも手掛かりはありませんでした。そこで教えてもらったのは新たな情報。遭難された夫婦とたまたま山頂まで一緒だった人がいて、山頂で別れた後、下山後に不明になったというニュースを知って警察に連絡されたとのことです。道迷いで遭難するのはたいてい沢に下りていき、滝などに出くわして行き詰る、あるいは無理して滑落して動けなくなる、ということがほとんど。2001年にも同じような遭難があり、その人は単独でしたが、銚子洞側に下っていて翌年、銚子滝から沢登りに来たパーティーによって二俣の少し下流で発見されたというケースがありました。今回もまた同じようなケースで、さらに下流の銚子滝付近までも下って無事生還されたとのこと。本当によく無事にそこまで下られたものです。ご存知の方も多いと思いますがヤマップの「見守り機能」によって銚子洞側にそのログが記録されていたことが発見の手がかりになったということです。バッテリーが切れて途中までにしろ、主に捜索していた根尾側でないことが分かっただけでも捜索の範囲が絞られます。もちろん迷う前にヤマップの機能を使えば、そもそも迷い込むことはなかったかもしれませんし、迷ってからも自力で戻れたかもしれません。しかし、迷う時というのは、そんなものかもしれません。ましてや十分にはGPS機能のアプリに使い慣れていなかったという段階では無理もありません。登山経験のある人の中には、「実力にあった山でなかった。山を甘く見ていたのでは?」と指摘されるかもしれませんが、迷うときというのは本当にそんなものと思います。下山のコースははっきりわかっていませんが、おそらく忠実に登ってきたコースを戻ろうと思い、モノレール尾根への分岐を見つけれず東に曲がり1156につながる郡界尾根に迷い込んでそのまま下れば銚子洞(大平)へ行ってしまうことになります。遭難につながらなくても、とんでもない方向に迷い込んでいたという経験は多少長く登山をしている人ならあると思います。私もいくつも自慢できる?ぐらいあります。たまたま途中で気がついただけです。一昨年には温見峠から登られた高齢の単独の方が、なんと下山時に能郷谷に下りてしまい、そのまま能郷の集落に出て、巡査に温見峠まで送ってもらったという遭難寸前の事案が起こりました。無事だったため笑い話になりましたが、その後、奥の院と山頂の間の分岐点には念のための道標が立つことになりました。登山は自己責任なのだから余計な人工物は必要ない、という声もあると思いますが、一度起きたことは繰り返されるかもしれません。左門岳の遭難と生還。この一週間後、今度は西台山・タンポで同じく遭難、そしてこちらも運よく無事三日後生還(こちらもヘリによる発見とピックアップ)根尾の北東と南西で起きた冷や冷やする事案でした。このレポがこれから登ろうとする方に少しでもお役に立てればと思いアップしました。もっともこのようなレポを見られる環境にある人はヤマレコもヤマップも使い慣れている?のでそもそも迷い込む前に防げると思いますが、電源が切れてしまうのがこのような器械です。ヤブ山では紙ベースとコンパスはやはり必携だと思います。ちなみに遭難された方は本当にその後は冷静に、我慢強く救助まで幾夜も耐えられたと思います。私自身も教訓としたいと思い、あえてメモとした軌跡とコメント紹介しました。迷走という副題は、自分自身もですが、今回遭難された方が、必死の”迷走”の末、無事生還されたことの意味を含めています。道迷いは誰にでも起こるということです。
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