記録ID: 2556314
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無雪期ピークハント/縦走
大雪山
十勝岳
1997年09月15日(月) [日帰り]


- GPS
- --:--
- 距離
- 10.5km
- 登り
- 1,165m
- 下り
- 1,153m
コースタイム
●北海道の山に登る
頻繁に山を歩き始めてからずいぶんたちますが、北海道の山は長年の憧れの山でした。本州のアルプスや、関東周辺にも素晴らしいて山が沢山ありますが、TVの特集などで「雄大な景観」や「見渡す限りの高山植物」等を見るにつけ、「何時の日にかは」と思っていました。そんな憧れの山に初めて足を踏み入れたのは、97年夏の事です。夏の休暇を利用して、いつも山でお世話になっているY氏達と供に、「利尻岳」「羅臼岳」「斜里岳」「阿寒岳」等、道東の山を中心とした、百名山巡礼の旅でした。この山旅では、予約した航空券の日付が搭乗日の1ヶ月前の日付で、(当日羽田のカウンターで指摘されるまで、誰も気づかなかったのです。)盆休み前後の一番混む時期に、往復とも空席待ちで行くという、何ともスリリングな山行を経験しましたが、これ以降、山行に抵抗なく飛行機を利用するきっかけとなりました。そしてこの年の9月、余勢をかって「旭岳」「後方羊蹄山」「十勝岳」の三山に、単独で登ることにしたのです。
初日、羽田から旭川へ飛び、レンタカーを借りて紅葉の大雪山旭岳に登頂。翌日は、白金温泉から十勝岳を目指すはずでしたが、上川地方の天気予報が良くありません。道央以南は晴れとの予報だったので、計画を変更して2日目は「後方羊蹄山」に登る事にしました。下山後は高速で小樽に移動、名物の寿司をつまんでから、後方羊蹄山登山口の半月湖駐車場へ車を停めて幕営。翌日登った「後方羊蹄山」の山頂からは、洞爺湖が綺麗でした。下山してから天気予報を聞いてみると、上川地方の天気は小康状態を保っていて、曇り時々晴の予報になっています。せっかく北海道まで来たのだからと、再び高速で旭川へ逆戻り。「十勝岳」登山口の「望岳台」駐車場まで移動して幕営、3日目の十勝岳に備える事にしました。
望岳台の駐車場は、標高約900mの地点にあり、十勝岳の森林限界が切れた処にあります。ここからの展望は素晴らしく、夜は美瑛の夜景が楽しめます。防寒具をまとってホットウイスキを飲んでいると、白金温泉から夜景見物のバスが数台上がって来ました。
●鉛色の雲に向かって
3日目、朝起きると予報どおりの曇空。十勝岳はと見上げてみると、7合目付近から上は鉛色の雲に覆われています。往復6時間弱の行程ですが、軽装でとにかく山頂を踏んでくる事にしました。望岳台からの登山道は、スキーリフトの間を縫って始まります。歩き始めて約40分で避難小屋に到着。ここからは、いよいよ登山道らしい道になります。ガレた尾根筋を登っていく道は、正月に登った九州の阿蘇山と同じ様な感じです。そういえば阿蘇山でも吹雪かれました。
前十勝を捲く頃になると、一面の霧の中を進む様になります。踏跡と石積みのケルンを辿って、一旦ゆるくなった砂礫の原を登っていくと、白い粉雪が舞い始めました。背負っていたセータを、防寒着の下に着込みます。再び傾斜がきつくなり、道がジグをきって進む様になると、次第に風が強くなり始めてきました。足場も、何時しか雪が凍りついたザクザクの道に。山頂への最後の直線アプローチの手前にある斜面は、踏み跡が錯綜し正しい道が判別しかねます。視界がないだけに、道を一旦外してしまうと危険です。進もうかどうしようか迷っていると、上のほうから5〜6人のパーティーが降りて来ました。聞くと稜線はすぐ上で、山頂まで15分程度との事。彼等が降りてきた踏み跡を辿って、稜線部に出ることが出来ました。
●吹雪に遭遇。
山頂への最後のアプローチは、猛烈な風で吹き飛ばされそうな中を、一歩一歩前進です。よく山で吹く風は、「呼吸している様に吹く。」といいますが、時折やってくる強風時には、じっとしていないと、体が持ち上げられそうです。風の呼吸に遭わせての登りは、時間にしては15分程度だったのですが、とても長く感じられました。
山頂に到着すると、2人組が岩影で休んでいました。「十勝岳山頂」の標識をバックにして、登頂の証拠写真を撮ろうと思ったのですが、「十勝岳」のプレートに向かって、正面から吹雪がたたきつけています。標識の風上側には、筍状の樹氷が出来始めていました。風上に顔を向けると、雪が目の中に飛び込んで目を開けていられません。「ゴーグルが欲しい。」と思ったものです。斜めを向いて、何とか写真を撮り終えました。
●下山路が違う!
何時もの山では山頂に立つと「先ずビール」。寒い時にはコッフェルを使って、スープ等の暖かいものを作るのですが、何しろこの強風です。ガスバーナーに火が付きそうに有りません。それに、防寒着を着ているといっても、本格的な雪など想定していませんでしたから、秋山の装備です。とにかく風の弱い地点まで、降りることにしました。荷物を纏めて写真を撮ってもらった2人組と挨拶を交わし、足早に下山を始めました。所々に立っている金属のポールに捉まりながら、滑らないように降りはじめたのですが...金属のホール?登って来たときにあったっけ。と思って立ち止まると、山頂で挨拶した2人組が「オーイ」と叫んでいます。風の音が強くて良く聞き取れないのですが、両手を頭の上で大きく振っていました。「道が違う」と言っている様でもあります。とにかく山頂に戻ることにしました。登り返しながら改めて登山路を見ると、確かに望岳台から登って来た道とは違う様です。山頂に戻って地図を確かめると、「上ホロカメトック」への縦走路を降りはじめていたのです。
山頂で2人組に「御礼」を言うと、彼等も一旦間違えて「上ホロ」への道を降り始め、途中で気が付いて戻って来たとの事でした。ガスと雪の中では、方向が判り難い十勝岳山頂です。地形の確認しにくい、登りで5〜6人のパーティーとすれ違った付近までは、山頂で出会った2人と道を確認しながら下降しました。風の弱まった地点で一服する2人と別れ、再び単独行となりました。稜線に取り付く斜面から下では、さっきまでの強風がウソの様に静かで、音が雪に吸い込まれて、立ち止ると気味が悪いほどの静寂が辺りを支配します。ケルンの脇で暖かいものを作ろうと思っていたのですが、この日は結局、休まずに望岳台まで降りてしまいました。
白金温泉で温まり美瑛の町に出ると、雲間から日が射していました。9月の北海道は、秋が足早に駆け抜けていく様です。下界と高山の天気が違う事は認識していたつもりですが、まさか9月の連休に吹雪に遭遇するとは思っていませんでした。さすがは北海道の山です。「何時かまた展望の良い時に、美瑛岳〜十勝岳〜上ホロカメトックを歩いてみたい。」と思いながら後にした十勝岳です。
頻繁に山を歩き始めてからずいぶんたちますが、北海道の山は長年の憧れの山でした。本州のアルプスや、関東周辺にも素晴らしいて山が沢山ありますが、TVの特集などで「雄大な景観」や「見渡す限りの高山植物」等を見るにつけ、「何時の日にかは」と思っていました。そんな憧れの山に初めて足を踏み入れたのは、97年夏の事です。夏の休暇を利用して、いつも山でお世話になっているY氏達と供に、「利尻岳」「羅臼岳」「斜里岳」「阿寒岳」等、道東の山を中心とした、百名山巡礼の旅でした。この山旅では、予約した航空券の日付が搭乗日の1ヶ月前の日付で、(当日羽田のカウンターで指摘されるまで、誰も気づかなかったのです。)盆休み前後の一番混む時期に、往復とも空席待ちで行くという、何ともスリリングな山行を経験しましたが、これ以降、山行に抵抗なく飛行機を利用するきっかけとなりました。そしてこの年の9月、余勢をかって「旭岳」「後方羊蹄山」「十勝岳」の三山に、単独で登ることにしたのです。
初日、羽田から旭川へ飛び、レンタカーを借りて紅葉の大雪山旭岳に登頂。翌日は、白金温泉から十勝岳を目指すはずでしたが、上川地方の天気予報が良くありません。道央以南は晴れとの予報だったので、計画を変更して2日目は「後方羊蹄山」に登る事にしました。下山後は高速で小樽に移動、名物の寿司をつまんでから、後方羊蹄山登山口の半月湖駐車場へ車を停めて幕営。翌日登った「後方羊蹄山」の山頂からは、洞爺湖が綺麗でした。下山してから天気予報を聞いてみると、上川地方の天気は小康状態を保っていて、曇り時々晴の予報になっています。せっかく北海道まで来たのだからと、再び高速で旭川へ逆戻り。「十勝岳」登山口の「望岳台」駐車場まで移動して幕営、3日目の十勝岳に備える事にしました。
望岳台の駐車場は、標高約900mの地点にあり、十勝岳の森林限界が切れた処にあります。ここからの展望は素晴らしく、夜は美瑛の夜景が楽しめます。防寒具をまとってホットウイスキを飲んでいると、白金温泉から夜景見物のバスが数台上がって来ました。
●鉛色の雲に向かって
3日目、朝起きると予報どおりの曇空。十勝岳はと見上げてみると、7合目付近から上は鉛色の雲に覆われています。往復6時間弱の行程ですが、軽装でとにかく山頂を踏んでくる事にしました。望岳台からの登山道は、スキーリフトの間を縫って始まります。歩き始めて約40分で避難小屋に到着。ここからは、いよいよ登山道らしい道になります。ガレた尾根筋を登っていく道は、正月に登った九州の阿蘇山と同じ様な感じです。そういえば阿蘇山でも吹雪かれました。
前十勝を捲く頃になると、一面の霧の中を進む様になります。踏跡と石積みのケルンを辿って、一旦ゆるくなった砂礫の原を登っていくと、白い粉雪が舞い始めました。背負っていたセータを、防寒着の下に着込みます。再び傾斜がきつくなり、道がジグをきって進む様になると、次第に風が強くなり始めてきました。足場も、何時しか雪が凍りついたザクザクの道に。山頂への最後の直線アプローチの手前にある斜面は、踏み跡が錯綜し正しい道が判別しかねます。視界がないだけに、道を一旦外してしまうと危険です。進もうかどうしようか迷っていると、上のほうから5〜6人のパーティーが降りて来ました。聞くと稜線はすぐ上で、山頂まで15分程度との事。彼等が降りてきた踏み跡を辿って、稜線部に出ることが出来ました。
●吹雪に遭遇。
山頂への最後のアプローチは、猛烈な風で吹き飛ばされそうな中を、一歩一歩前進です。よく山で吹く風は、「呼吸している様に吹く。」といいますが、時折やってくる強風時には、じっとしていないと、体が持ち上げられそうです。風の呼吸に遭わせての登りは、時間にしては15分程度だったのですが、とても長く感じられました。
山頂に到着すると、2人組が岩影で休んでいました。「十勝岳山頂」の標識をバックにして、登頂の証拠写真を撮ろうと思ったのですが、「十勝岳」のプレートに向かって、正面から吹雪がたたきつけています。標識の風上側には、筍状の樹氷が出来始めていました。風上に顔を向けると、雪が目の中に飛び込んで目を開けていられません。「ゴーグルが欲しい。」と思ったものです。斜めを向いて、何とか写真を撮り終えました。
●下山路が違う!
何時もの山では山頂に立つと「先ずビール」。寒い時にはコッフェルを使って、スープ等の暖かいものを作るのですが、何しろこの強風です。ガスバーナーに火が付きそうに有りません。それに、防寒着を着ているといっても、本格的な雪など想定していませんでしたから、秋山の装備です。とにかく風の弱い地点まで、降りることにしました。荷物を纏めて写真を撮ってもらった2人組と挨拶を交わし、足早に下山を始めました。所々に立っている金属のポールに捉まりながら、滑らないように降りはじめたのですが...金属のホール?登って来たときにあったっけ。と思って立ち止まると、山頂で挨拶した2人組が「オーイ」と叫んでいます。風の音が強くて良く聞き取れないのですが、両手を頭の上で大きく振っていました。「道が違う」と言っている様でもあります。とにかく山頂に戻ることにしました。登り返しながら改めて登山路を見ると、確かに望岳台から登って来た道とは違う様です。山頂に戻って地図を確かめると、「上ホロカメトック」への縦走路を降りはじめていたのです。
山頂で2人組に「御礼」を言うと、彼等も一旦間違えて「上ホロ」への道を降り始め、途中で気が付いて戻って来たとの事でした。ガスと雪の中では、方向が判り難い十勝岳山頂です。地形の確認しにくい、登りで5〜6人のパーティーとすれ違った付近までは、山頂で出会った2人と道を確認しながら下降しました。風の弱まった地点で一服する2人と別れ、再び単独行となりました。稜線に取り付く斜面から下では、さっきまでの強風がウソの様に静かで、音が雪に吸い込まれて、立ち止ると気味が悪いほどの静寂が辺りを支配します。ケルンの脇で暖かいものを作ろうと思っていたのですが、この日は結局、休まずに望岳台まで降りてしまいました。
白金温泉で温まり美瑛の町に出ると、雲間から日が射していました。9月の北海道は、秋が足早に駆け抜けていく様です。下界と高山の天気が違う事は認識していたつもりですが、まさか9月の連休に吹雪に遭遇するとは思っていませんでした。さすがは北海道の山です。「何時かまた展望の良い時に、美瑛岳〜十勝岳〜上ホロカメトックを歩いてみたい。」と思いながら後にした十勝岳です。
天候 | 曇り、山頂は小雪 |
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アクセス |
利用交通機関:
自家用車
飛行機
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