避難小屋は雪の下! 体力と時間がない! さてどうしよう? 〜空木岳〜
- GPS
- 13:30
- 距離
- 20.4km
- 登り
- 1,877m
- 下り
- 1,856m
コースタイム
菅ノ台バスセンター6:00 - 7:30林道終点 - 8:40池山小屋 - 9:40マセナギ - 12:55空木平避難小屋13:15 - 14:00空木岳山頂14:15 - 15:15木曽殿山荘(泊)
4月28日
池山小屋6:30 - 8:30菅の台バスセンター
天候 | 27日:夜明け前に一雨。その後は雲は出たものの基本晴れました。 28日:夜明けから午前中は快晴。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
菅の台バスセンターに登山ポストがあり、届はそこに提出しました。 温泉:バスセンターのそばの「こまくさの湯」(600円) 一番に入ったので人が少なく快適でした。 足を入念にマッサージ! |
写真
感想
先日のslowlifeさんのレコで中央アルプスの写真をみて、衝動的に計画してしまった今回の山行。
2泊3日の縦走は昨年の燕〜常念以来ですが、積雪期は初めてです。
空木岳は今回初めてで、池山尾根のルートもよく見ると標高差2000mを越えています!
しかも残雪期になんてちょっと無謀すぎる気もしますが、自分の体がどのあたりで悲鳴を上げるのかも知っておきたくて行ってみることに。
菅の台バスセンターからスキー場横の空木岳登山口まで歩くのに手間取って時間をロスしてしまいましたが、夜明け前に降った雨も尾を引かずに回復しそうな様子。気を良くして山道に入りました。
駒ケ岳に向かうハイカー、登山者はかなり多くなるようですが、この空木岳へのルートは人は多いのでしょうか?
林道と交わりながらスキー場の横を過ぎ、カタクリの群生の斜面に驚きながら標高を上げていきます。
とはいえ今日歩くルートを考えるといつものように何度も立ち止まる気分にはなれずに先を急いでしまいます。
スタート時から少々焦りを感じていたことと、テン泊でもないのに詰め込みすぎた荷物の重さが少し体に負担をかけているようです。
汗のかき方に若干の違和感を感じながら、それでも気分の高揚に任せて足を運びます。
前半の池山小屋あたりまでは春を感じながら歩けましたが、少しづつ雪が残るようになって景色を逆送りしているようです。
手に持っている地形図は池山小屋の位置が違っています。
地形図に載っているのは旧の小屋で、新しい避難小屋の記載がありません。
地図読みの練習を兼ねて周辺の地形から新しい小屋の位置をチェックし、建物も確認して先に進みました。
(このことが後になって自分を救うことになりました。)
この小屋周辺までははっきりした登山道を歩いていましたが、ルートはここから斜面をトラバースしながら登っていきます。
赤テープも数は少なくトレースもない状態で、不安を感じながら歩いているのですが、等高線を頼りに尾根に上がるポイントや分岐での方向さえ間違えなければ先に進めると決めて何とか歩いていました。
尾根に出てからは道も判断しやすくなりましたが、雪が深くなってきたところで現れたのが大地獄、小地獄の難所です。
ストックをピッケルに持ち替えて、鎖も梯子も埋まってしまった氷の壁をよじ登ります。
ピッケルを氷に打ち込みながらの登坂は初めての体験で、この頼りになるツールに感謝しながら壁に張り付いていました。
アイスクライミングやザイルワークの練習も必要なのかと思わせられるシーンでしたが、ようやくのことでこの難所を抜け、固まった筋肉をほぐしながら一息つけたのはありがたいことです。
先を急ぐあまりに食事も忘れて動いていましたが、計画の時間配分と実際の通過時間に大きく差がついてきたのが気になります。
今までの雪山では夏山とそれほど所要時間に差があるようには感じていませんでした。
ところがここではその感覚では通用せず、ペースが上がらないまま荷物の重さが次第に大きな負担になってきました。
簡単に食事を済ませると、ゆっくりゆっくり足を運びながら時間を見ていました。
とうとう山頂への最後の稜線に入り、あと小ピークを3つ越えれば登頂です。
ここで先行していたペアがテントを張っていました。
翌朝登ってピストンで下りる計画だそうです。
その方と分かれて行き過ぎたものの、困ったことに登り傾斜に足が動いてくれません。
山頂を越えて1時間先の木曽殿小屋までの計画でしたが、どうやら行けそうにありません。
地図には空木岳の避難小屋が載っていて、谷に肉眼でも屋根が見えます。
ただ数週間前のレコで見ていたのは、この小屋は積雪でほとんど埋まっている状態だったこと。
上部の窓から入れるように記載があったことを思い出して行ってみることにしました。
道ではありませんが、だだっ広い雪の斜面を斜めに突っ切って真っすぐ小屋に向かって下りていきました。
雪崩には注意を払いながら小屋に着くと、上から見えていたのは屋根の一部で入り口どころか窓もありません。
そこでも出逢った別のペアと三人で窓でも掘り出せればとやってみましたが、短時間でできるものでもなさそうです。
その方たちは無理ならテントを張れるのでまだ安心ですが、自分のツェルトは同じようには行きません。
一晩命を繋ぐために使うことはできるでしょうが、この時間からもっとできることがないか焦りながらも頭を働かせます。
さっき稜線でテントを張っていたところの近くなら少しは心強いかもと、避難小屋から稜線向かいました。
動かない足を動かしながら、止まっては肩で息をしながら稜線まで登り返すと向こうから気がついて近づいてくれました。
状況を話すと、ツェルトなら風除けのためにも樹林帯まで下りて雪を掘り、雪洞のようにした方がよいとアドバイスをいただいてスコップまで貸してくれました!
道に刺しておけば翌日拾って帰るからと言ってくださり、何の余裕もないこちらはお礼を言ってその通り甘えることにしたのです。
尾根の下りはまだ歩きやすく、少しづつ足に力も戻ってきました。
樹林帯に入る頃には考えを変えて、ここから明るいうちは下りられるだけ下りようと思っていました。
お借りしたスコップをわかりやすいところに刺してそこから本気で引き返しはじめました。
稜線から下り勾配が急になる手前で後ろから追いついてきたのはさっきスコップを貸してくれたペアの男性です。
上で別れた後、心配してわざわざ様子を見に来てくれたのです!
下山の意向を伝え、スコップの場所をお教えして心からお礼を言って別れましたが、強さとやさしさをあわせ持った素晴らしい方でした。
お名前も何も聞けなかった方、おかげ様で無事に山を下りることができました。
ありがとうございました。
あとは登りで苦労した難所を明るいうちに抜けること。
その先で暗くなっても木があると対処できます。
氷の壁を下るのは正直怖かったのですが、集中力が勝って無事に抜けることができました。
続いてはトレースのない斜面のトラバースです。
自分の足跡も見失う氷の地面でルートを見つけられずに危うくパニックになりかけましたが、朝の登りで地形を詳しく見ていたことが役に立ち、山の形から小屋のあったコルを特定することができました。
予想通りに道標を見つけたときに初めて気が抜けて座り込みそうになりましたが、小屋に入ってしばらくは放心状態で靴も脱がずにボーっと立っていたんです。
中には先客が10名ほどいて、スペースを開けてくれた両隣の二人とは打ち解けて寛いだ一夜を過ごせました。
麓近くまで下りてきたような感覚ですが、まだ標高1700m近くです。
翌日は韓国の男性の方と一緒に下りましたが、前日の無謀な冒険を考えるとのどかなハイキング気分で下りてきました。
この日の天気は素晴らしく、全天快晴の空に雪の稜線が走り、よほど登り直そうかと迷ったくらいでしたが、今回の撤退の教訓を生かしてもう一度歩くことに決めました。
細かい失敗や忘れ物はいつもの通りでしたが、良くも悪くも大きな経験をしたことで成長できれば無駄にはならないつもりです。
稜線で助けていただいた方、もしこれを見られることがあれば「あのおっさん、下りられたんだ」と思ってください。
私も誰かに恩を返せるようにしますよ。
本当にありがとうございました。
たいした経験もない私達が言うのもおこがましいですが、ピークハントという意味では残念な結果だったかもしれませんが
雪の残る山の経験としては実りのある山行だったのではないでしょうか?
うちは、今シーズンほんの少し雪山をかじって、想像以上に奥が深いことに気がつきました。
もっともっといろんな経験をつまなければいけないと雪山へ行くたびに思い知らされました。
寒いし、辛いし、怖いけど、あの澄んだ濃紺の冬の空を見るとやめられなくなる怖い世界ですね。
素敵な岳人にも出会えたようでいいですね〜
お疲れ様でした。次のレコも楽しみにしてますよ〜
いやぁ、なかなかスリリングな経験をさせてもらいました
暖かいコメ、ありがとうございます
普段なら自分でもっと早く「今日はここまで」と線を引いてさっさと引き返すのですが、目の前の雪や地形と格闘するうちにタイミングを逸してしまい、ゲームセットとなるところでした。
人と出会うことはいつでもいいものですが、自分でも誰かを助けてあげられるだけの力量や余裕を持ちたいものです
このルート、今回の反省を生かしてもう一度行ってみるつもりです
おそらく感覚的にはレコだけでは伝えきれないでしょうね。めっちゃ経験値があがったんとちゃいますか?
それにしても無事下山で何よりです
経験値が上がったのかどうなのか?
今週もう一回歩くんで、それでわかるかも
今回もコッヘルを忘れたり、いつものようにドタバタしてました
写真にコーヒーの缶がストーブに乗っているの、気付きましたか?
いや〜最後まで緊張しながら拝見しました
とにかく、お疲れ様でした…
ホントにご無事でなによりです。
ノー天気に楽しい楽しいで過ごすわけにも行かないのが山の厳しさですね
雪に埋もれた避難小屋を前に、ここからどこに向かおうかと考える自分が他人のようでした。
現実感が薄れることってあるんだと、あとから思い出してぞっとしますね
あ、GW後半はもう一度歩いてきますよ
何が起こるか・・・
なんだか想像するだけで身体が震えてしまいました。
小秀山以上の大緊張感でしたね。
ご無事でなりよりです。
こうゆう所にもmonsieurさんは一人で行けちゃう方なのですね。
そ・尊敬します。
ps・やっぱりどこかドMなのかも?
それと格闘家の秋山成勲さんににていますね
こんばんは〜☆
残雪の中央アルプスに行かれていたんですね〜
暗くなってきたり小屋が埋まっていたら焦りますね
山って失敗して経験を積むと次はもって楽しめますよね
また、空木岳に行かれたレコを楽しみにしています
こんちわ
写真48番ナイフリッジですか?
かなりヤバイですね。
ピークまで確実に行くには5時スタートですかね
雪が解けたら一度、覗いてみようかと思っていたお山で
す。お疲れ様でした。
でわでわ
秋山さんに失礼ですぞ
いたって温厚な性格ゆえ格闘技の世界には無縁ですが、貧相なおっさんでいいですよ
足下数100mのトラバースもナイフリッジも怖いのは確かですが、何より心が萎縮したのは最後の尾根から下りるコルを特定しようと焦っていた時です。
目に入る山も森も全く知らない世界に見える恐ろしさは未だに慣れないですよ
bebebeさん、いらっしゃいませ〜
今回の経験が身になるものならと明日からもう一度行くつもりにしていたのですが、怪我のためあきらめることになりました・・・
(この間の悪さがmonsieurの真骨頂かも )
bebebeさんはお忙しい毎日なんでしょうね
いろんなものを見つける山歩き、また真似させてくださいね
今回のレコこそ各方面からきついお叱りをいただきそうですが、打たれ弱い私としては自分で頬を張っときます
自分の課題は荷物の軽量化が急務かと思いますが、行程では初日に池山小屋に泊まって翌日木曽殿山荘のパターンが余裕を持てそうです。
山歩きをレースにはしたくないのでのんびり 楽しめる山歩きをイメージしてます。
・・・でもこのルートは歩きたい〜
連休前半の空木岳、究極のご経験をされていたんですね〜
手に汗を握りながらレコを読ませていただきした。
氷の壁、おりるときの冷や冷や、、、
暗くなるまでに宿泊地までたどり着けるかハラハラの気持ち、よくわかります。
ギリギリセーフで小屋で泊まれて本当によかったです。
スコップの持ち主のお二人の親切な対応、
強さと優しさと、、、。
そんな風に山で助け合える人になりたいものです
写真に写っていた中央アルプス
ほとんど衝動的に「あ、行こう 」と決めてしまった空木岳でした。
こんなことを言うと負け惜しみのようですが、この標高差2000mの池山尾根のように、ルートの大変さはそれだけで大きな魅力に感じます。
たとえ今回のように引き返すにしても、すぐにまた来たいと思えることはすごく幸せなことだと思います。
来シーズンの積雪期の縦走に備えて、夏の間に一度歩いておきたいですね
助けてくれた方は、人間性の素晴らしさに加えて経験を重ねていることが余裕のある態度に表れているような、ああなりたいと思える方でした。
いつまでもバタバタするだけの初心者ではいけませんね
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