三つ峠(マルチピッチリード講習)

天候 | 晴れたりガスったり(特に初日は陽が差すと暑くて汗だく、陽が翳りガスに包まれ風が吹くと寒くてたいへんだった。夜はダウンが必要になるほど寒く、寒暖の差が激しくてビックリ。) |
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過去天気図(気象庁) | 2013年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
三つ峠でマルチピッチリード講習を受講してきました。 三つ峠で実践している人は皆無に近いが、我々はトポなし、コールなし、残置無視。 ナチュラルプロテクションと手持ちのハーケンだけで中間支点も確保支点も構築し、登れそうなライン、登りたいラインをオブザベーションして山頂を目指すというリード講習。 まだまだ時間がかかり過ぎるし、多少危なっかしいところもあるけれど、致命的なミスはしないでしょうということで、何とか卒業免状をいただきました! 今シーズンは残置無視のスタイルで登れる無雪期初心者向けルートとして、二子山中央稜、小同心クラック、錫杖岳左方カンテにチャレンジしたい。 [登ったルート] トポなしで登ったので、ルート名はあとから照合した結果(間違っているかも?)。 ▼初日 ・1P 草溝 4級 geraniumリード ガバの多いスラブの穴にカムセットして直上するか左端のクラック沿いに登るか相談した結果、プロテクションを優先することにし、クラック沿いに登ってトラバースした。 ・2P ルート名不明(ワイドクラック) 体感4級 mfさんリード mfさんは出だしのワイドがどうしても嫌いだったらしく、右側のフェイスに寄って登っていった。フォローで登ったら、ワイドの方が面白かったですよ(笑)。 ・3P〜天狗の踊り場〜山頂 天狗の踊り場まで、ほとんどどのラインを選んでも大した違いはないので省略(以降同じ)。 ▼2日目の1回目 中央カンテ近辺の未登ルートを登る予定だったが、あまりにも込んでいたので、自分は登ったことがあるが、mfさんは未登ということで観音ルートへ。 ・1P 観音ルート 5級− geraniumリード フォローで登ったことのあるルートで、そのときは特に難しいとは思わなかったが、やはりリードだと全然違う。朝一からいきなり緊張感を味わった。 出だしのクラックからフェイスに体を出す箇所が核心だと思っていたが、それよりも最後の抜け口の小ハングの方が核心だった。 やばい、落ちるかも!と一瞬思うような不安定なクライミングになってしまい反省。 抜け口の奥にガバを期待したが、甘いホールドしか見つけられず、無理やり膝で乗り込んでしまった。 登っているときからどうも記憶と違っておかしいなと感じていたが、前回登ったときは途中でトラバースして、易しいラインに移っていたのだった。 フォローでなぞった記憶だけを頼りに、岩をよく見ずに登ることがいかに危険であるかを痛感させられた。 一応きちんとカムはセットしたつもりだったが、塾長からちょっと危ないセットだったと言われてますます反省。 突っ込む前に、少なくとも固め取りすべきだった。 岩をよく見ずに間違った記憶を頼りにし、ここはそんなに難しくなかったはずだ、抜け口にガバがあったような…というダメなクライミングだった。 ・2P オープンサンド? 5級− mfさんリード 前回も2P目に登ったルートなので、自分としては別のラインを登りたかったが、初見のmfさんがたまたま同じルートを選択した。 前回と同じくフォローだったが、今回の方がなぜか難しく感じた。 ハンドジャムが決まる位置が低く、フットジャムを決めて立ち込むにはシンハンド部分まで手を上げなければならず、その一手にちょっと苦労した。 立ち込んでしまえばガバに手が届くということは覚えていたが、覚えていなくても岩をよく見ていれば、明らかなガバが目の前に見える。 リードするなら、そこまで見極めてから登りはじめなければと思った。 ルート名はよく分からないが、近くにいた三つ峠の主のような人がオープンサンドと言っていたので、多分そうなのでしょう。 オープンサンドでもジャムトーストでも、どっちでもいいのですが(笑)。 ・3P〜天狗の踊り場〜山頂 省略 ▼2日目の2回目 今度こそ中央カンテ付近の未登のルートに取りつこうと思ったが、またしても込んでいて断念。 mfさんは登ったことがあるけれど自分は未登ということで、前日のオブザベーションで目をつけていた別ルートへ。後から調べたらリーダーピッチというルートらしい。 ・1P リーダーピッチ 4級+ geraniumリード クライミングとしては簡単だったが、オブザベーション通りプロテクションが取りにくかった。 ベストとは言えないものの、可能な限り最善のセットをしたつもりだったが、結果的に開いてしまっていたカムもあったらしい。 実質的にはほとんどフリーソロで登っていたのと同じだったと指摘され、ちょっとショック。 登りながら苦心してプロテクションを取っているとき、こんなことで消耗してしまうぐらいなら、それこそフリーソロでさっさと登ってしまった方がよいのでは?という考えが一瞬頭に浮かんだ。気をつけなければ。 危険は、危険として認識できているうちは、もっと言えばそれをコントロールできているうちはそれほど危険ではないのだと思う。 認識できていない危険や、認識の範囲から追いやってしまった危険が最も危険なのだと思った。 ・2P コーリア・ルート? 5級+ mfさんリード 始めにmfさんが選択したルートは右端のクラック(十字クラックというルートらしい)。 ところが、すぐに驚くべき事実が発覚。 塾長によると、何と数週間前にmfさんはすでにここをリードしたとのこと。本人は全く覚えていないそうですが(笑)。 毎回オンサイト気分を味わえるとも言えるが、まあせっかくなので未登のルートにしましょうということで違うルートへ。 ルンゼの中央は、カムでプロテクションが取れそうもないということで断念(残置支点を使えば登れますが)。 その右のクラックからスタートし、ルーフの手前を左にトラバースして小ハングを乗越すラインを選択。 左トラバースが難しそうだったら、右に進路をかえて既登の十字クラックへ逃げようという戦略。 …痺れました。確保していて。 トラバースには成功したが、問題はその後の小ハング乗越し。 微妙な高さにプロテクションをセットし、ステミングで登ってゆくものの一旦クライムダウンするmfさん。 かなり厳しそうだったので、トラバースして戻ることを提案したものの、もはやそれは不可能という返事。 となれば左に逃げハーケンを残置して敗退するか、頑張って小ハングをクリアーするしかない。 そして、mfさんの選択は小ハングの乗越し。 落ちるかもしれない、そして落ちたら少なくとも怪我は避けられないほどランナウトした、ぎりぎりのクライミング。 再びステミングで登ってゆき、もはやクライムダウン不可能な高さまで到達。 凹角から右側に体を露出させて小ハングを越えようとする。 完全に乗越す前にしばらく体が静止し、緊張が走る。 そして止まった時計が再び動き出すかのように、じわじわと乗り込んでゆき見事に完登。心底ほっとした。 自分はアタックザックを背負っていたとは言え、フォローでも怖かった。 体感5.9〜5.10a。自分のクライミング力では落ちてもおかしくないと思った(冷静になってみると、さすがに10aってことはないか)。 フォローで登って行くと、我々のレベルからするといかに厳しいクライミングであったかがよく分かり、リードした本人より興奮してしまった。 よくこんなところをオンサイトしたもんだねー(笑)。 もちろん自分と行くときはここまで突っ込むのはやめてくださいね、とお願いしました(笑)。 ・3P〜天狗の踊り場〜山頂 省略 |
写真
感想
あまりにも濃密な二日間であり、かつ疲れ果ててボロ雑巾のような状態で、講習内容や考えをうまく整理することができないが、思い出すままにとりあえずメモ。
特に新しいロープワークをたくさん習ったとか、難しい技術を教えてもらったとかいうわけではない。
オブザベーションし、ラインを考え、プロテクションの戦略を立て、クライミングし、確保する。そうした中で塾長のアドバイスを受ける。
自分たちの思考、行動、そして塾長との会話一つ一つが密度の高い講習そのものだった。
三つ峠でやっている人は皆無に近いが、我々はトポなし、コールなし、残置無視。
ナチュラルプロテクションと手持ちのハーケンだけで中間支点も確保支点も構築し、登れそうなライン、登りたいラインを見極めて山頂を目指す。
残置支点だらけのゲレンデにあってそれらを無視すると、我々レベルで登れるラインは限られてくるし、オブザベーションに時間もかかる。
ボルトにクリップすれば簡単に登れるようなところも、プロテクションをとれずに登れなかったり、ランナウトしたり、ラインをかえなければならなかったりする。
表面的には何だかすごく不自由に思えるが、よくよく考えてみると全く逆の考えに思い至る。
ボルトに囚われることもなく、トポに記されたルートをなぞる必要もなく、自分の好きなところを登ればいい! まさに自由そのもの。
そして、それを阻むのは自分の能力しかないということ。
自分のような素人であっても、クライミングはスタイル抜きには語れないと思う。
極端な話、1m置きにボルトが打たれていて人工登攀すれば、クライミング能力とは関係なく難しいルートでも登れてしまうだろう。
ナチュラルプロテクションを使い、できる限り自然のままの岩をフリー(自分自身のクライミング能力)で登るというスタイル。
自分レベルであっても能力に見合ったラインであれば、それを実践できるということを教えられた。
むしろ初心者こそそういったスタイルで登ることが、スキルアップにつながり、安全管理、危機管理能力が身につくということ。
岩を見ず、ボルトを追いかけていては得られるものが少ないだけでなく、様々な意味で危険であるということ。
塾長の教えを身もって知ることのできた二日間だった。
偉そうなことを言えるレベルでないことは重々承知しているが、初心者は初心者なりの矜持をもって、徐々にステップアップしていこうと思う。
※この記録は元々不特定多数の方が読むことを想定して書いていましたが、よく考えてみたら、感想については参加者以外非公開という設定ができるのでした(笑)。
塾長の講習を受けるようになったのはたまたまですが、よき師匠に巡り合えてラッキーだったと思います。
本当にありがとうございました。そして、今後ともよろしくお願いします!
[講習メモ]
・メインロープをピナクルに直接巻きつけて確保支点にする方法
岩に巻きつけたロープの両側途中をそれぞれ結んでループを作り、両方のループに環付カラビナをかける(ソウンスリングの両端にカラビナをかけるのと同じ原理)。
・伸ばしたスリング両端にカラビナをかけた状態から片手でアルパインクイックドローを作る方法
ギアループを左手に見立てて一方のカラビナをかけ、もう片方のカラビナを持ってそのカラビナの輪に通し、4本状態になったスリングのうち2本にかけて引っ張る。
・片手でスリングをタイオフ(片側タイオフ)状態にする方法
スリングの端に小さい輪を作って1回捻る。輪になっていない下の部分のうち1本を指で摘んで輪に通す。そうしてできた新しい輪を対象物にかけて、輪になっていない下の部分のうち片方を引けば輪が締まる。
例えば浅打ちハーケンに直接カラビナをかけると、墜落時カラビナが岩に当たって割れるリスクがあるとき、カラビナが梃子になってハーケンが抜けやすくなるときなどに、ハーケンにスリングをタイオフする場合がある。
・ロープの残りの長さの確認
リード中、ロープの残りはビレイヤーの姿が見えなくなる前に確認する。見えなくなると声も届かなくなり、残りの長さを確認できなくなる。
・ピッチを切るポイントの見極め
ビレイヤーが見えなくなるまで登ったときに核心を越えるのはリスクがある。
クライマーが見えなくなったら、登りを邪魔しないようにビレイを緩めにする必要があり、その状態で墜落すると墜落距離が長くなる。
従って、核心を越える前にピッチを切った方がよい。核心はきちんとしたプロテクションをとらないと登れないのだから、プロテクションを取れるのであれば確保支点も作れるということ。
・0ピンクリップの位置
0ピンクリップ(ビレイヤーより下に墜落しないために確保支点を使うクリップ)するときの支点はビレイヤーより上でないと意味がない。確保器より下だと、墜落したときにロープが流れてしまう。
ロープの流れを考えて支点にヌンチャクをかけて伸ばすときなど要注意。
・セルフビレイをとる手順
確保支点でセルフビレイをとる際は、バチ効きの支点を1つとり、一旦メインロープをクリップする。
2つ目、3つ目の支点をとって均等荷重されるよう連結したら、改めてセルフビレイをとって、メインロープのクリップを外す。
・セルフビレイ空白時間の禁止
セルフビレイを取り直す必要があるときなどに、一瞬だからと言って無確保の時間があってはならない。
面倒でもヌンチャクでセルフビレイをとるなどしてから外す癖をつける。
三つ峠のような安定したテラスがあるところでも横着しないこと。
実感の篭った感想で、良いですね。
この感想は、公開しても大丈夫だと思いますよ。
残置を使っている人にも、講習生仲間にも、この楽しさを伝えましょう。
きっと、geraさんの気持ちを分かる人がいるはずですよ。
あら? さっそく読んでいただけたのですね。
そうですね。この充実感や達成感が少しでも伝わるのであれば公開します。
塾長のブログも楽しみにしています!
こんにちは。
講習本当にお疲れ様でした&ありがとうございました。
今まで受けたマルチ講習の中でも一番充実して、楽しかったです。
考えてみると、ラインを自分たちで決めて、すべての支点を自分たちで
作ったっていうのはすごいことですよね〜。
IV〜V級で苦労しているレベルでも、その点は胸を張れると思いますよ。
お互い不安の残る卒業生で危ないこともありそうですが、経験を積んで
いろんな所に行きたいですね。
錫杖岳左方カンテは、近々の目標にできないかな?
コーリア・ルート?ではご心配をおかけしました(^_^;)。
いろいろ指摘を受けたとおり安全面では問題があったと思うので、もし
行くとしても核心手前でピッチを切るべきでしたね。
それにしても、感想も講習メモもよく憶えていらっしゃいますね〜。
私は早くも一部のルートが記憶から薄れてます(笑)。
いやー、ホントに充実した2日間でしたねー。
こちらこそありがとうございました!
レベルは低いけれど、確かに胸を張ってもいいですね。
コーリア・ルートはナイスクライミングでしたよ。
後から塾長に指摘された通り、左上のクラックにカムを決めていれば何の問題もなかったのですけれどねー。
左方カンテは今年の夏にチャレンジしましょう!
と言っても5.8でピッチ数も多いので、まずは二子山中央稜ですね。
ちなみに私の記憶は、脳内完登と同じぐらい当てになりませんのでご注意を。
どーも、クライミングしろーとのkanosukeです。
遅ればせながらのコメントで恐縮です
geraさんが感想で語っていることは、とても魅かれますね。
自分の能力を駆使してルートを探して自力で登る。
クライミングだけでなく、登山もしかり。
まさにフリークライミングの思想そのものですね
私が最近読んだ服部文祥さんも似たようなことを言ってます。
しかしそれにはまだまだスキルや知識や経験を身につけなくては
ということで、私は今日バリルート(といっても人がよく入ってるところですが)に行ってきて少しだけそんなことを体感してきました
クライミングも登山も同じだと思いますよ。
自然のまま、自力で登るとより大きな達成感を得られるのだと思います。
バリエーションで残置を追いかけるということは、一般登山道でペンキマークを頼りに歩くようなもので、何のために一般登山道から飛び出したの?自分で道を切り開きたかったんじゃないの?ってな感じでしょうか。
以上、塾長の受け売りですが。
とはいえ始めのうちは、フォローでも楽しいと思いますので、ぜひマルチピッチを体験してみてください!
バリエーションルートに行かれたのですねー。
藪漕ぎとかしたのですかね?
レコ楽しみにしております。
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