【過去レコ】韓国自転車旅行 1999年 江原道・雪岳山編
Pontaro
- GPS
- 1920:00
- 距離
- 532km
- 登り
- 7,517m
- 下り
- 7,522m
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標高グラフを拡大| 天候 | 前半は台風影響があったものの、後半は好天続きだった。 |
|---|---|
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス タクシー
船 自転車
8月1日 秩父＝東京＝ 夜行バス泊 8月2日 ＝下関＝ フェリー泊 8月3日 ＝釜山＝慶州（キョンジュ） テミョン荘旅館 8月4日 慶州（キョンジュ）＝盈徳（ヨンドク） ムリム荘旅館 80.3キロ 8月5日 盈徳（ヨンドク）＝蔚珍（ウルチン） テグ荘旅館 76.0キロ（慶州から156.3キロ） 8月6日 蔚珍（ウルチン）＝東海（トンヘ） ソウル荘旅館 89.0キロ（慶州から245.3キロ） 8月7日 東海（トンヘ）＝束草（ソクチョ） ベッエル荘旅館 109.4キロ（慶州から354.7キロ） 8月8日 束草（ソクチョ） バスで統一展望台へ ベッエル荘旅館 8月9日 束草（ソクチョ） ソラク山登山 ベッエル荘旅館 8月10日 束草（ソクチョ）＝洪川（ホンチョン） カンピョン荘旅館 109.5キロ（慶州から464.2キロ） 8月11日 洪川（ホンチョン）＝ソウル クリム旅館 108.8キロ（慶州から573.0キロ） 8月12日 ソウル クリム旅館 8月13日 ソウル＝釜山＝ フェリー泊 8月14日 ＝下関＝東京＝秩父 ※距離を書いている日は自転車旅行の日で、自転車はトータル6日間、573キロでした。 ◆自転車旅行 今回ルートは東海を北上する国道7号線が途中アップダウンきつく、また鉄道が並走していないため、何かあった際のエスケープは鉄道でなくバスになります。 ※韓国自転車旅行は今回で3回目となりました。 1回目は1998年夏の釜山→ソウルで記録は以下にまとめてあります。 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3059911.html 2回目は1998年冬の木浦→釜山で記録は以下にまとめてあります。 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3120625.html ◆雪岳山（ソラク山）登山 このヤマレコ記録にも写真など載せていますが、登山ルートが表記できないため、もうひとつヤマレコ記録を作成しており、山の記録は以下参照ください。このヤマレコのルート図は手書き入力したもので、雪岳山のログは入っていません。標高の跳ね上がりは、雪岳山の峠越えの時のものです。 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3118294.html |
| コース状況／ 危険箇所等 |
雪岳山は雪岳洞→雪岳山→五色温泉のコース。このコースは長いので、山中1泊するか、束草起点で日帰りする場合には束草発の早朝のバスに乗る必要あります。 コース自体は問題無いかと思いますが、前半は飛仙台を過ぎるあたりから深いV字谷になり、岩に取り付けた階段を登っていきます。雨の日の下りは転倒注意。その他道標などは問題なし。途中営業小屋に、水場もあります。 国道7号線、雪岳山入口にある観光案内所で、登山地図や、登山のアドバイスをもらえました。日本語を話すスタッフさんもいました。登山前に寄ると良いかと思います。 |
| その他周辺情報 | 束草市内の旅館に３泊しました。ここを起点に観光とソラク山登山をしました。観光は統一展望台に行ってみました。 |
写真
今回の自転車旅行のコースです。太線が今回ルートで慶州→雪岳山→ソウルになります。釜山→ソウルは前回の1998年のコースで、木浦→釜山は1999年と書いてありますが、1998年冬です。
拍手
江稜市まであと10キロほどのところで、北朝鮮の潜水艦が置かれているところがありました。何年か前、北朝鮮の潜水艦が座礁する事件があり、大きなニュースになっていましたが、その潜水艦のようです。
統一展望台から臨む、北朝鮮の金剛山（クムガンサン）方面です。霞んで見えないと思ったが、統一展望台からのこのアングルの写真で、中央の岩山を金剛山と説明するサイトがあった。ほんとかな？もっと内陸側では？
権金城（コォングムソン）へのロープウエイ（雪岳ケーブルカー）はまだ動いていません。
幅の広い道を進みます。今回自転車旅行中はずっとサンダルでしたが、さすがに雪岳山はサンダルだとダメなので、スニーカに履き替えました。ハイカットの登山靴を持ってきたかったが、とてもパッキングできませんでした。
朴さんはソウル郊外の白石駅の駅員さんで、焼き肉に連れていって頂きました。同僚の金さんと3人。眞露に焼き肉。美味しかったし、お喋りも楽しかった。朴さん、この日夜勤でお酒飲めず、すみません。
雪岳山のハイキング地図。コースは雪岳洞起点で、雪岳山、五色温泉と縦走した。この地図を持ち歩いていましたが、国道7号線、雪岳山入口の観光案内所でもらった登山地図の方が便利でした。
雪岳山は別のヤマレコ記録にまとめました。https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3118294.html
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3118294.html
装備
| 個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ズボン
靴下
雨具
日よけ帽子
靴
サブザック
昼ご飯
行動食
飲料
地図（地形図）
コンパス
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
ガイド地図（ブック）
携帯
時計
カメラ
|
|---|---|
| 備考 | 靴はせめてハイカットの軽登山靴の方が良いですが、自転車旅行のため、スニーカでした。 |
感想
8月1日 秩父＝東京＝
ジリジリと照り付ける暑い陽ざしの中、輪行袋を担いで駅に向かった。東京八重洲のバス乗り場は夏休みの帰省シーズンとあって、家族ずれで混雑していた。夜行バスは19時30分に出発、下関には翌朝8時過ぎには着く。ボルボの大型バスに客は10名程度。快適な車内、翌日からの旅を夢見て、買いだめしたビールでほろ酔いになった。
8月2日 ＝下関＝
下関は雨だった。パラパラだったり、本降りになったりしている。風は強い。
夕方5時、出国手続きを済ませ乗船。「はまゆう」は定員500名、全長162メートル、かなり大きなフェリーに感じた。早速風呂場へ直行。国内移動の長旅もあって、気持ちがいい。割りと大きなお風呂であったが、接岸中にもかかわらず浴室は混雑してきた。
甲板に出てみる。幸い波は収まってきたようだった。離れていく日本を見ながら、潮風に当たっていると気持ち良かった。韓国国旗を付けた漁船が並走していた。韓国に帰るという岡山の牧師さんと漁船に向けて手を振ったら、漁船の乗組員数人も甲板で手を振り返してくれていた。
8月3日 ＝釜山港＝釜山駅＝慶州（キョンジュ）
フェリーのエントランスホールでつけられていたTVは、韓国KBSニュースをやっていた。映像は台風7号の被害の様子を伝えていた。泥水に浸かった街の様子や、なぎ倒された街路樹の映像だった。昨年の大災害と同じ様な映像が次々と出ていた。前途多難な旅の幕開けを予告するかの様で、いやな感じだった。
釜山港に接岸していても下船開始まで間があり、時間を持て余していた。同じ部屋の人と情報交換。一人旅の若者が多いようだった。下船できたのは8時半。入国手続きと、銀行での換金を済ませてターミナルの外に出たが、丁度雨が降ってきていた。中央洞の地下鉄駅までに結構濡れてしまった。更に釜山駅に着くころには本降りとなってきた。今回の自転車旅行の出発点である慶州（キョンジュ）まで、東部南部線の旅でセマウル号も走っていないローカル路線である。台風7号が朝鮮半島に上陸したのか、釜山駅でトンイル号を待っている間に、暴風雨になってきた。トンイル号は日本で見られるようなボックス席のある各駅列車であり、ローカルな雰囲気が漂っていた。釜山を発車したトンイル号は、途中学生やら、買い物客らが乗ってきて混雑してきた。隣り合わせた女学生二人からスルメをもらってしまい、三人並んでムシャムシャ食べながらお喋りした。
慶州には3時半到着。自転車の組み立てと、旅館探しでこの日は終わりそうだ。駅前で輪行袋を広げ、自転車の組み立てから始める。幸い雨が止んでいた。組み立てが終われば、やっと大荷物から解放された事になる。雨の上がった街を自転車で走り出すと気持ち良かった。駅から数キロ行ったところにあったバスターミナル裏の旅館街に、今日の宿（テミョン荘旅館）を取った、3万ウォンであった。
8月4日 慶州(キョンジュ)＝盈徳（ヨンドク）
台風は過ぎたが、南から湿った空気が入り、大気が不安定らしい。雨具を着て旅館を後にした。予備日がほとんど無いため、雨でも進むしかない。空は暗く、雨に打たれて自転車を漕いでいるととても寒く感じた。浦項（ポハン）を過ぎると国道7号線はトラックが減り助かる。天気が良ければ、浦項で鬱陵島（ウルルンド）へのフェリーターミナルを見てみようと思っていたが、天気が悪いので前に進む事にした。もともと初日は浦項泊まりを考えていたが、浦項と蔚珍（ウルチン）間が少し長いので、盈徳（ヨンドク）まで足を延ばす案に変更した。盈徳と蔚珍の間には大きな街は無い。
長沙（チャンサ）ビーチで、この旅初めて東海（日本海）の海岸線に出た。空と海は灰色、波は不気味なほど高かった。青い海、青い空を見ながら自転車を走らせたいと思っていたが、だいぶ違う旅の出だしになった。雨の日、自転車に乗っていると楽しみは何も無い。目的地までの距離が減っていく事だけだ。国道7号線ではドライブインが所々にあった。熱いコーヒーで暖まりたくなるほど、体は冷えきっていた。
盈徳（ヨンドク）着。小さな街で、メインストリートは自転車があれば10分もあれば全部見れてしまうくらいだ。それでも旅館か5軒ほどあった。よれよれで、ムリム荘旅館にチャックイン。シャワーをあびて街に出るころには雨も上がってくれた。近くの食堂でチゲを頼んだ。海に近いので、チゲにはカニがたくさん入っていて美味しかった。旅館に戻り、昨日の韓国焼酎C1の残りを飲む。
走行距離80.3キロ
8月5日 盈徳（ヨンドク）＝蔚珍（ウルチン）
今日も雨。目を覚まし、外を見てがっかりする。盈徳を出発しようと、大通りに出たところで、自転車のギヤ部分からきしむような嫌な音がした。ギヤは錆びつき、チェーンには砂利が詰まっていた。自転車も可哀そうな状況になっていた。
この日の国道7号線は山側を走る時間が長かった。蔚珍の手前の望洋（マンヤン）まで来ると嬉しい事に青空が出てきた。久しぶりに見る綺麗な海だった。海の透明度は高く、海水浴場には多数のパラソルやテントが見られた。小さな浜にも車が横付けされ、パラソルがセットされていて、さながらプライベートビーチのようだった。海岸線の道路にはスルメ売りの屋台が並んでいた。
韓国人の若者が、随分自転車で南に向け走っていた。彼らも大きな荷物を自転車に括り付け、雨合羽を着ていたので、釜山に向けての自転車旅行なのかもしれない。道路の両側から手を振り合う。蔚珍着。比較的大きな街で、国道から市道に入り、橋を渡ったところにあったテグ荘旅館を今日の宿とした。
走行距離76.0キロ（慶州から156.3キロ）
8月6日 蔚珍（ウルチン）＝東海（トンへ）
蔚珍を出るときは降っていなかった。北に進むに従い、天気は少しずつ良くなっている。しかし、昼には晴れたが、その後また暗い雲に覆われ霧雨となった。再びカッパを着て走った。今日は江稜（カンヌン）まで走ってしまいたかった。その次の日、束草まで楽をしたかったのと、江稜には鏡浦台（キョンポデ）という美しい海があると聞いていた。しかし、蔚珍を出発し、国道7号線はアップダウンを繰り返し、なかなか思うように進まなかった。蔚珍を出発してから、山越えと海岸線に出る事を繰り返し、体力と時間を消耗した。雨具を付けての走行もきつかった、途中越えた峠で、ついに江原道（カンウォンド）に入った事を知る。
海岸線を走っている時、美味しそうな匂いがしたので、トウモロコシ売りの屋台で自転車を降りた。茹でたトウモロコシを買ったが、なんとビニール袋に4本も入れてくれるではないか。食べきれないと話しても通じなかった。脇のパラソルで雨をしのぎながら、トウモロコシを食べた。日本の品種改良されたトウモロコシは本当に甘くて、茹でても焼いても美味しい。しかし、ここで食べたトウモロコシは甘さも、つぶも小さくイマイチだった。
結局、江稜までは行けず、東海（トンヘ）泊まりとした。東海の街中で、自分と同じ方向に自転車で旅している人に抜かれた。疲れていたので、陸橋越えも押していたころ、走り去った彼は、振り向き様に手をあげてくれた。この人、実は100キロ先でももう一度会う事になる。
東海は前の街と比べるとかなり大きかった。ソウル荘旅館という所に泊まる。料金は3万ウォンであった。観光地なので少し高い。シャワーをあび、TVを見ながら部屋でくつろいでいたら、旅館の叔父さんがスイカを切ってもって来てくれた。
夜、今日はカルビにしようと思い、旅館のある路地にあった店に入ってみた。ここの骨付きカルビは美味しかった。ごはんも頼んだけど、鉄板の上で麺を炒めてくれた。カルビの肉汁が麺に絡み、これは最高だった。10皿近い、キムチの小鉢もあって食べきれなかった。でも肉は残すまいと、やっとの思いで鉄板を空にする。ビール2本も付けて1万8千ウォンと贅沢をしてしまった。
走行距離89.0キロ（慶州から245.3キロ）
8月7日 東海（トンヘ）＝束草（ソクチョ）
江原道は苦しい峠越えが多かったが、この日は気持ちよく走れた。何と言ってもアップダウンが少なかったので、楽だった。美しい海を見ながら自転車をひたすら漕いでいると、楽しくて仕方ない。天気は曇り時々雨といった感じ。
江稜（カンヌン）の街の手前10キロくらいだったか、海岸線の海水浴場でもないところに屋台が10軒ほど並んでいた。何だろうと海を見たら理由が分かった。数年前、北朝鮮の潜水艦が韓国領海で見つかったショッキングな事件があった。その潜水艦がそのまま海岸線に置かれていた。どうやら観光地化しているらしい。車が多数駐車してあり、見物客が大勢いた。写真だけ撮って先を急ぐ事にした。昨日、到着したかった江稜の街も、時間なく素通りした。
襄陽（ヤンヤン）の手前15キロのところで、100キロ南の東海で自分を抜いていった彼がパンク修理していた。自転車を降り、少し話をした。後輪のチューブを水たまりにつけ、パンク修理の作業中だった。歳も同じくらいの韓国人だった。パンク修理のキットも、予備チューブもあるようなので問題無さそうだった。少し話をした後、先に行かせてもらった。彼もまたソウルまで走るとの事だった。今回、幸いにも自分にはパンクのトラブルは無かった。襄陽まで来ると青空が広がってきた。束草（ソクチョ）は近い。時間の余裕もあったので、雪岳（ソラク）ビーチに自転車ごと乗り入れてみた。白い砂浜に青い海と空。たくさんの海水浴客が波と遊んでいる。やっと夏らしくなってきた。束草では9月11日からインターナショナル・トラベル・エクスポ‘99が予定されており、青草湖沿いの会場には様々なテーマパークが建設ラッシュのようであった。
束草着。市外バスターミナルの近くのベッエル荘旅館に入った。3万5千ウォンと高めで、3泊なのでと話したら、二日分は3万ウォンにまけてもらった。言ってみるもんだと思った。この自転車旅行は束草までは絶対に行きたいと思っていたので、まずは最初のミッションクリアであった。夜、塔公園では民族衣装を着た若者のグループが、太鼓や金を叩きながら踊っていた。人垣ができていたので、自分も腰を下して暫く見ていた。
走行距離109.4キロ（慶州から354.7キロ）
8月8日 束草（ソクチョ）
昨日は、予定通り束草に着いた。この日は、雪岳山（ソラク山）の国立公園内でトレッキングでもしようと計画していた。しかし、疲労がたまってきたこと、右足首も捻挫（どこかで足を捻った模様）で痛みもあって、休養日とした。それで束草の北50キロにある高城（コソン）統一展望台までバスで行ってみる事にした。いつかは板門店に行ってみたいと思っている。束草にも統一展望台がある事は知っていた。
高城統一展望台へは比較的簡単にいくことができた。�“屬了堝皀丱垢望茲辰峠�点のテジンまで行けば、展望台への事務手続きをする統一保安公園に着く。束草の北にも杆城（カンソン）という大きな街があって、�“屬離丱垢蓮�杆城経由で更に北に向かっていた。海水浴客、海産物の入った桶を持ったおばちゃん、地元の学生たちを乗せて、生活の路線バスそのものであった。統一展望台という特別な場所に向かうという雰囲気では無かった。丁度1時間バスに揺られていると、終点のテジンに到着した。ここも美しい海岸線で、近くには海水浴場があり、大きな観光ホテルも建っている。ここから歩いて10分ほどいくとガソリンスタンドがあり、その前が統一保安公園になっていた。大きな駐車場があり、中の売店には北朝鮮の土産（民芸品、焼酎など）、金剛山（クムガンサン）の写真などが売られていた。混雑しており、束草の観光地と変わりなかった。ここで統一展望台へのシャトルバスのチケットを購入すると、手続きは終わった。手続きの後、建物奥の小さな映写室で10分ほどの保安教育映画を見せられた。韓国語で詳細は理解できなかったが、概ね政治的経緯、東西ドイツの映像、北側の映像、離散家族などの話であった。
シャトルバスは一日4本。統一保安公園から統一展望台へはバスで10分。バスの帰りの時間から展望台では1時間弱しか居られなかった。統一保安公園を出発したバスはのどかな田園風景の中を進む。韓国最北端のミョンパ村がまだ先にあった。少し走ると銃を持った軍人が立っていた民間人統制線を越えた。ここから先は、軍事最前線で許可無しには入れない。しかし、道路はのどかな田園地帯のままである。ミョンパ村の人達が農作業をしている。この辺りには地雷も埋まっているという。バスが通る道の両側には時折、迷彩色に塗られた、2m程度のコンクリートブロックが左右に数個並んでいる場所を通過する。このコンクリートは、ブロックの下の小さな支えを破壊すると、自重で道路に落ちる仕組みになっている。有事の際にはブロックを落とし、道路を遮断する目的で設置されているものと思われた。バスは統一展望台の丘の下に到着した。長い階段の上の白い建物が統一展望台であった。展望台の建物の1階には、北朝鮮の写真や、北朝鮮の靴や衣料品の展示があった。2階に上がると、双眼鏡が20台ほど並んでいた。北朝鮮側を見下ろす展望台になっている。美しい海は隔たりなく延々に続いていた。しかし山側には鉄条網の国境が見えた。北朝鮮側の村が見えると聞いていたが、双眼鏡でみてもよく分からなかった。韓国側が立てたという大きな看板が見えていた。海岸には有刺鉄線の柵が続く。江原道のどこからか、海岸線には鉄条網があり、海に出るには鍵のあるかかる入口から出入りしているようであった。日本では考えられず、少し可哀そうだなと思った。金剛山（クムガンサン）の雄姿も遠巻きで特定できた。最近は、韓国人が金剛山（クムガンサン）を訪れる事ができるようになったと聞く。我々も美しい金剛山（クムガンサン）に将来登れる日が来るだろうか？シャトルバスの時間となり、バスに戻った。統一展望台での写真撮影は禁止されていたが、韓国の人達が、北側をバックにピースサインで写真を撮っていた。ここも若い韓国の人達からすれば、観光地の一つでしかないのかもしれない。しかし、北の食糧事情は想像を絶すると聞く。同じ民族でありながら分断されてしまった人々。同じ時代を生きた人が生きている間に、祖国の願いが叶うだろうか？
8月9日 束草−雪岳洞−大青峰−五色温泉−束草
韓国で登ってみたい山に、雪岳山（ソラクサン、1708m）、漢拏山（ハルラサン、1950m）がある。束草に訪れたもの雪岳山に登ってみたい思いがあったためだ。雪岳山への登山ルートは非常に長い。日帰りの場合、五色温泉から雪岳山に登り、雪岳洞へ下るのが最も効率よい。今回はその逆コースで歩いてみた。自分は雪岳山の登山地図を持っていたが、国道7号線、雪岳山入口にある観光案内所では雪岳山の登山地図やパンフレットなどがもらえた。また日本語を話すスタッフもいて、雪岳山登山の相談も乗ってくれていたので、登山前に時間があれば、立ち寄ってみるのがよさそうである。
4時起床。雪岳洞（ソラクトン）へは��番の市内バスで行く。��番バスの始発は5時35分で、既に日は昇っている。人数が揃えばタクシーの方がよいかもしれない。旅館近くには24時間のコンビニがあって、この日も行動食など買い出してからバスに乗りこんだ。朝一番のバスも、途中のキャンプ場から大学山岳部が大勢乗ってきて、混んできた。30分で雪岳洞に到着。ここで入山料（2200ウォン）を支払い、いよいよ雪岳山の登山開始。権金城（コォングムソン）へのロープウエイはまで動いていない様である。車も入れそうなほどの広さの道になっている。時折、見える岩稜も青空にはえ美しい。この日は朝から良い天気であった。飛仙台（ピソンデ）を過ぎる頃から谷は深いV字渓谷となり、大学山岳部の数パーティが登攀準備をしていた。ここは岩登りのメッカでもあるらしい。渓谷はますます険しくなり、雪岳山への一般ルートは、岩に強引に取り付けた赤い階段を進むことになる。この渓谷を右に左に階段は進んでいる。三時間で陽瀑（ヤンポク）山荘に到着。営業小屋で、水流もある。小屋で食事をしているとリスが近寄ってきて逃げない。かわいい。
陽瀑山荘からV字渓谷は傾斜を更に増し、鉄梯子の眼下には美しい釜を持った滝が連続しているのが見えた。登山道は一度急な勾配を越えると尾根に出た。尾根通しで少し進むと最後の水場である喜雲閣（ヒウンガク）待避所に着いた（11時）。ここは尾根上の様であったが、小青峰（ソチョンボン）からの沢が入っており、水量豊富で冷たくて美味しかった。喜雲閣待避所では、先ほど陽瀑山荘で話をした英語の先生が引率している高校性達がいた。ここの小屋も営業していた。
沢で涼んだ後、急なルートを登る。ルートは沢から外れ明瞭な尾根をいく。やっと赤い梯子は無くなった。時折展望の利くところでは大青峰（テチョンボン）から中青峰（チュンチョンボン）への主稜線が、振り返ると馬登嶺（マドゥンニヨン）からの鋭い岩稜が見える。天気も良く。尾根上を抜ける風が心地良い。五色温泉から縦走してきたパーティがはやくも下山してきた。小青峰の山頂あたりで森林限界を越えたらしく、そこからはハイマツ帯となり、一気に展望が開けた。どうやって荷揚げしたのか、叔母ちゃんがビーチパラソルを広げ、ラジオを聴きながら、何か冷たいものを売っていた。小青峰のピークがここであったらしいが、標識無かったのか、素通りしてしまった。中青峰は山頂に気象観測用なのか白いドームが見えた、大青峰へのルートは中青峰の山頂を通らず、左側を巻いていた。中青峰を越えたところにあった立派な山小屋（中青待避所）で休憩する。大青峰はもう近い。雪岳山は、大青峰他の幾つかのピークからなる山の総称で、雪岳山という名のピークは無い。雪岳山というと岩稜の荒々しい風景を思い浮かべるが、山頂部は女性的で緩い傾斜のピークになっている。ガスが流れて大青峰が見えたり、ガスに包まれたりしていた。山小屋で軽く食べた後、山頂へと進む。絶好の登山日和に多くの登山者がこの日、雪岳山を楽しんでいた。13時53分、雪岳山最高峰の大青峰に到着した。雪岳洞が6時半だったので、7時間かかった事になる。テチョンボンと書かれている山頂の岩で交代に写真を撮った。
下山は五色温泉へと降りた。右足首が少し痛く、コースタイムきっちり3時間かけて五色温泉に下山した。下山は長かった。テント泊まりなのか、夕方近くなっても登ってくるパーティは後を絶たなかった。ここは韓国人にとって人気の山なのだろう。五色温泉からタクシーで襄陽（ヤンヤン）へ、襄陽からは��番の市内バスに乗り、束草の旅館に戻れたのは19時あった。長い一日は終わった。
雪岳洞→陽瀑山荘（2:50）→大青峰（4:10）→五色温泉（3:20）
8月10日 束草（ソクチョ）＝洪川（ホンチョン）
3泊した束草を後にして、再び自転車でソウルに向けて出発した。今日も朝からいい天気である。束草を出発して、この旅最大の難所が待っていた。束草（ソクチョ）は海と雪岳山に挟まれた場所にあり、ソウルに向けては雪岳山を越えなくてはならない。雪岳山越えのルートは2つだ。一つは国道44号線で寒渓嶺（1004m）を越えるルート、もう一つは市道56号線で彌矢嶺（826m）を越えるルートである。束草は海抜0mなので、自転車の峠越えはしんどい。56号線なら襄陽に戻らなくて良いこと、また標高も寒渓嶺に比べ低い事もあり、彌矢嶺を越えることにした。束草を出発して1時間。マウンテンバイクは漕げなくなり、押し始めた。2時間半ほどで彌矢嶺着。汗びっしょり。途中沢の流水で顔を洗い、その冷たい水を飲んだ。峠のドライブインでは暫しの休息の後、再び自転車に跨る。一気にトップギヤにあげスピードを上げた。車と同じスピードで走れる喜び。さっきまでの時速4キロの世界とは違う。反対側から自転車で峠を登っていた若者数名が木陰で休んでいた。手を上げて走り去ると歓声が聞こえた。国道46号線に合流した。昭陽湖へ注ぎ込む川と並行し、緩やかに下っているため、時速20キロが常時出て、ここの1時間はあっという間に距離を稼げた。麟蹄（インジェ）を過ぎ44号線を進む。春川へは46号線になるが、国道46号線は、昭陽湖を右に左に進むので、そのまま44号線で洪川（ホンチュン）を目指す事にした。新南あたりで少しへばったけど、洪川に無事到着。洪川は脇を川が流れており、涼を求めて河原には水遊びの家族がいた。洪川市内に入ってすぐのところにあった、カンピョン荘旅館に入った。日本人なんで珍しいのだろう、受付の娘さんは、自分が言葉に詰まっていると、クスクスと奥に居る母親と何やら話している。宿代2万5千ウォン。
走行距離109.5キロ（慶州から464.2キロ）
8月11日 洪川（ホンチョン）＝ソウル
洪川から10キロほど進むと、今回初のトンネル越えがあった。トンネルを越え、緩い下りでスピードを出していると、ソウル97キロの標識があった。よし、ラストスパートだ。
この日も快晴に近く、ジリジリと夏の日差しが暑い。上り坂で自転車を押し始めると、体中汗びっしょりである。今日は前輪から嫌な音がし始めた。楊平（ヤンピョン）という街の数キロ手前で小さい峠越えがあった。押して峠に登り、さて下りになったので飛ばすぞと自転車に跨った。しかし、前輪からキーキーとすごい音。前輪のベアリングのトラブルらしい。タイヤがある角度にくると非常に重くなっていた。ベアリングに油をさしてみたところ、何とかタイヤは回りはじめ、異音も小さくなってきた。油が効いたようで、そのまま様子を見る事にした。
九里（クリ）の手前で再びトンネルがあった。ここはトンネルが5、6個連続していた。一気に下りのトンネルを抜けると、河南の高層ビルが見えてきた。ソウルは近い。九里で緩い峠を越える頃には地下鉄駅も出てきた。
ソウルまで10キロという所で、遂に自転車が動かなくなった。前輪のベアリングが完全にロックした。油はたっぷりさしていたので手は無く、万事休すだった。暫く考え、仕方ないと、前輪を持ち上げて押し始める。幸いソウルに入っていたので、1キロも行くと自転車屋さんがあった。事情を話し見てもらう事にした。腕のいい叔父さんが前輪のベアリングを外して、新しいベアリングと交換していく。シャー、再び前輪は勢いよく回り始めた。前輪のタイヤの傷んだところ、ブレーキの甘いところ、念入りにいろいろ見てもらった。叔父さんには、慶州、束草と走ってきて来た事を話した。叔父さんと握手をし別れた。叔父さんは店の外まで見送りで出てきてくれていた。
見慣れた街並みが出てくると、ソウルの駅舎が見えた。夕方6時。今年も500キロの道のりを越えて無事、自転車旅行が終わった。感慨無量だった。いつもの明洞のクリム旅館に向かった。また来たよ叔父ちゃん。料金は昨年と同じ2万5千ウォン。夜は全州屋で、ビビンバ、パジョンと食べまくり、旅を回想しながら飲んだビールの美味しかったこと。
走行距離108.8キロ（慶州から573.0キロ）
8月12日 ソウル
自転車を分解し、再び輪行袋に収納した。今年も色々あったが、無事自転車は袋に収まった。自転車旅行の事を、自身のホームページに掲載していたところ、ソウルの朴さんという方と知り合い連絡を取り合っていた。実際に会う事になり、朴さんの仕事先の駅まで行ってみる事になった。駅はソウルから1時間ほど離れた郊外の白石駅であった。地下鉄3号線に乗って向かった。地下鉄3号線車内から夕陽の北漢山が見えた。美しかった。白石駅で、朴さんから、駅長さん、同僚の金さん、切符売りの女性の方、警備の方と一通り紹介して頂いた。朴さん、同僚の金さん、自分の3人で焼き肉を食べに行く事となり、朴さんの車で出発。朴さんは明日朝の始発まで仕事だというのに時間を作ってくれた。金さんは仕事を終え、もう着替えていた。朴さんは制服のままで、お酒も飲めず申し訳ないことをした。金さんと二人で眞露を飲んでしまった。韓国のこと、日本のこと、お喋りしながら楽しい時間が流れた。結局ごちそうになってしまった。駅でお礼を言って別れた。
8月13日 ソウル＝釜山
セマウル号は9時出発。帰省客が多いのか、セマウル号は混雑していた。ソウルから釜山へ。焼酎の残りがあったので、ラッパ飲みしながら車窓を眺めた。
釜山着。旅館探しは面倒なので、前回泊まった中央洞、ソウル荘旅館に行ってみる事にした。
8月14日 釜山港＝
韓国最終日、釜山タワーに行ったことが無かったので行ってみた。タワーに上がると、釜山港に出入りする船がよく見えた。裏側の山は金井山だ。
フェリーは行に乗った「はまゆう」ではなく、かなり古い感じの船だった。二等部屋で隣り合わせた人と話をした。ビールでは足りず、土産に買っていた釜山焼酎のC1を開けた。
8月15日 ＝下関＝東京
翌朝下関着。雨の日本に戻った。新幹線で東京に戻る。
いつも大荷物なので、今度は小さい荷物で、のんびり山歩きしてみたい。
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